[SEARCH OSAKA / KYOTO Vol.2]

大阪・京都のショップから見るカルチャーのムード。
ギャラリー&ブックストア(前編)

photography_Hanako Kimura, text_Yuri Matsui

[SEARCH OSAKA / KYOTO Vol.2]

大阪・京都のショップから見るカルチャーのムード。
ギャラリー&ブックストア(前編)

photography_Hanako Kimura, text_Yuri Matsui

昨春お届けした、東京のアート/カルチャーのムードを探る特集企画「SEARCH TOKYO」。ところ変わればカルチャーも変わるということで、今回は「SEARCH OSAKA / KYOTO」として、3回にわたって大阪・京都のアート/カルチャーシーンを探っていく。Vol.2・3ではリアルな現場からカルチャーの現在地をお届けするため、EYESCREAMが選んだ大阪・京都のギャラリー、ブックストアを紹介する。

山本製菓
24年前に閉鎖されたおかき工場の気配と痕跡を知覚する

ディレクターの池田昇太郎さんの祖父母がかつて営んでいたおかき工場を活かし、友人とともに2015年にオープンしたスペース、山本製菓。24年前に工場が閉鎖されて以降の状態にまったく手を加えておらず、名称や看板、おかきを製造していた機械なども、往時のものがそのまま息づいている。「プロジェクトスペース/スペースプロジェクト」を称している山本製菓は、プロジェクトを実行するスペースでありつつ、この場所をどのように運用していくか、この空間がどのように生成していくかを観察するというプロジェクトでもある。そうした特性からか、山本製菓で行われる展示は、この特異な空間との対話を通じて生まれるものが大きく、日々の天候や日差しのうつろいも作品を構成する一部のように反響していて、展示のたびにがらりと空間の色彩が変わってゆく。


INFORMATION

山本製菓

大阪市西成区天下茶屋東2-5-5
営業時間:展示によって異なる
http://www.yamamotoseika.com/

《近日開催》
Shin Degawa exhibition『ただいま、執着中。』
2019年5月17日(金) – 27日 (月)

VOYAGE KIDS
旅の途上でディープな道草を

通天閣のお膝元、新世界市場の中に店舗を構える、VOYAGE KIDS。店主が、以前この場所に住んでいたおばさまから「あんた、ここで何かしいや」と告げられたことをきっかけに、50年ほど前の建物をDIYで作り直し、2015年末にオープンした。もともと店主にとって身近な存在だったというグラフィティカルチャーを中心に、ZINEやグッズを取り扱っている。チャーミングな店名は「1日中、接客で英語しか喋らない日もある」というくらいの観光地だからこそ、旅の最中に路地に迷い込んだときに、ふと見つけたら嬉しく思えるような場所でありたい、という思いから名付けたとのこと。店主は「ZINE SWAP MEET CAMP」という、さまざまなアーティストのZINEを集め、軽トラで日本中を津々浦々ツアーし、ゲリラ的に出店するという試みも行っている。今年のゴールデンウィークにも企画しているようで期待だ。


INFORMATION

VOYAGE KIDS

大阪市浪速区恵美須東1-21-14(新世界市場内)
営業時間:12:00 – 20:00 / 水・土・日曜のみ営業
https://voyagekids.theshop.jp/

MAGASINN KYOTO
街を編集する「泊まれる雑誌」

二条城からほど近く、空き家を利用したゲストハウスが多い地域にあるMAGASINN KYOTO(マガザンキョウト)は、ギャラリーであり、ショップであり、宿泊施設でもある。そのコンセプトは「泊まれる雑誌」。オーナーの岩崎達也さんは、もともとディレクターとして新規事業の開発に携わる仕事をしており、その仕事柄もあって、多くの人と出会えるハブとして、元・牛乳屋さんを改造したこの場所を設けた。宿泊は1日1組。京都や旅にまつわるアイテムが置かれたショップスペース内の壁には、雑誌らしく「広告枠」も。現在、MAGASINN KYOTOは地域の町内会長も務めており、近隣の空き家を活用したい人を誘致したりと、横の関係を広げていくことに面白さを感じているのだそう。編集は、街まで広がっていく。


INFORMATION

MAGASINN KYOTO(マガザンキョウト)

京都市上京区中書町685-1
営業時間:月・木・金 16:00 – 20:00 / 土日 14:00 – 20:00 / 火・水曜定休
※宿泊無休
https://www.magasinn.xyz/

《近日開催》
KG+EXHIBITION 時代をアーカイブする
2019年5月3日(金) – 6月30日 (日)

FOLK old book store
オフィス街のスパイシーな書店

FOLK old book storeを訪れた人がまず気になってしまうのは、きっと、カレーのにおい。そう、FOLK old book storeは書店でありながら、1階に人気スパイスカレー店の「谷口カレー」が間借りしていて、「本屋の存在を知らない人も多いかも(笑)」と話すのは、店主の吉村さん。スパイスの香りをくぐり抜けて地下に降りると、新刊や古書、雑貨などがぎゅぎゅっと詰まった親密な空間が広がる。もともとは自身の蔵書をフリマのように売り始めたところから、いわく「お店屋さんごっこの延長」でスタートし、店舗を移しながら徐々に規模を拡大して、今年で9年目。併設のギャラリー空間で行われる展示企画も「今年は攻めていきたい」とのことで、要注目。


INFORMATION

FOLK old book store

大阪市中央区平野町1-2-1 1F+B1F
営業時間:火〜金 13:00 – 20:00 / 土日 13:00 – 18:00 / 月曜定休
http://www.folkbookstore.com/
《近日開催》
「トーチコミックスフェア」
2019年5月15日(水) – 26日(日)

ライブ「明るい部屋」出演:横沢俊一郎・てらだりょうへい
2019年5月18日(土)

スケラッコ「平太郎に怖いものはない 後編」発売記念サイン会
2019年5月19日(日)

「約50人のブックカバー展」
2019年5月〜9月 巡回予定

「SEARCH OSAKA / KYOTO」
Pulp×VOU×ペフ鼎談

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