[ZINEspiration]Vol.04 安野谷昌穂

photography_Kayoko Yamamoto, text_Yuri Matsui, special thanks_ KOSAKU KANECHIKA

[ZINEspiration]Vol.04 安野谷昌穂

photography_Kayoko Yamamoto, text_Yuri Matsui, special thanks_ KOSAKU KANECHIKA

毎回、クリエイティブに携わる人々に、お気に入りのZINEをレコメンドしてもらう連載シリーズ『ZINEspiration』。今回登場してくれたのは、アートブック『STEIDL-WERK』にフィーチャーされ、COMME des GARCONS SHIRTの16-17AWコレクションにも作品が起用されるなど、各界から注目を集めるアーティストの安野谷昌穂。

「自然から制作のインスピレーションを受ける」と語り、コラージュ、ドローイング、スプレーなど、多様な手法でプリミティブかつアブストラクトなイメージを描き出す安野谷昌穂が、初めて自身のZINEを制作したのは学生の頃だったそう。

「どんな作品を作ってるか聞かれた時に、携帯を見せるのが嫌で。紙媒体で見る方が記憶に残るし、ZINEにしておけば、そのまま見せたりプレゼントできるなと思って。それに最初のZINEを作った当時、部屋も頭の中もカオスだったから、その作業で少し整理できるかなと。パリの『0fr.』という店が昔、中目黒にもあって、以前個展もやったんですけど、この春にパリの本店でも展示させてもらったら、予想通り最高の店で。ブックショップ兼ギャラリーなんですけど、新刊から古本まで毎日新しいものが増えて、すごく混沌としてるんですよ。巨匠の新刊の画集の横に、超無名なアーティストのZINEがあったり、そこにいると宝探しみたいで」

現在、KOSAKU KANECHIKAにおける沖潤子との二人展と、NOMA t.d.での個展『O GOD GOOD』が開催中の彼。自身の制作についてこのように分析する。

「自分の中に感覚としてあるものを、どうやったら伝えられるかという模索のプロセスが今の活動になっているんだと思います。日常の出来事に対する自分の意見や反応、違和感を理解するために作っているというか。作っている時は衝動的な部分や感覚的な要素が多いから、後から見返したり、作品を通して人と話したりすると、やっと自分自身でも『なるほど、こういう作品なのか』と」

最後に彼が感じるZINEの魅力をこのように語ってくれた。

「その人の作品の片鱗が見えることがいいなと思います。それこそ、Fanzineが生まれた当時も、それを見て『面白そうなバンドがいるからライブに行ってみよう』ってなっていたんだと思うし、ZINEが面白ければほかの作品も見てみたくなりますよね。そういうライトなきっかけにできるのがいいところかな」

【安野谷昌穂がレコメンドするZINE5冊】

Erik Steinbrecher『Möhren in Athen』

「4、5年前に知り合いの書店のオンラインストアで買って、捨てるか、友達にあげるかしようと思いつつ残ってきました。終始、写真の上ににんじんを乗せて撮ってて。多分、しっかり茹でられたにんじんを(笑)。最初はにんじんって分からなくて、インクで遊んでるのかなと思ってたんですけど。悪い言い方をすると、『しょうもなー』っていうことをひたすらやってるところが好きで。しょうもなさを極めたというか。小さめのサイズなのもいいし、Nievesから出てるのがびっくりです」

Maya Rochat『ma tête à couper』

「このZINEは装丁がちょっと変わってるんです。じゃばらの作りで、印刷も自分でやってる感じで、DIYが効いてるのがいいなって。100部しかないし、少数なのもZINEならでは感っていうか。マヤ・ロシャはフォトグラファーとして少しずつ名前を聞くようになってきましたけど、買った当時は彼女のことを知らなくて。大体、手に取った時のファーストインプレッションでオブジェクトとして面白いと思ったものを買うので、あとからどんな人か調べることが多いかもしれません」

Mark Gonzales, Harmony Korine『adulthood issue two』

「マーク・ゴンザレスとハーモニー・コリンが、昔作ってたZINEシリーズの復刻版ですね。すべてが1冊にまとまってるものもあるんですけど、これは1冊ずつで当時のZINEを再現してて。僕も10冊近く持ってます。しょうもないドローイングと、『なにこれ?』っていう写真や詩が載ってるんですけど、デザインもあまり気にせず作ってる風なのに、センスがいい人たちだから、感覚でできちゃってる感じがさすがだなって。軽いのに、超おしゃれっていう。それぞれの作品はしっかりあるのに、二人でユルいところを共有して作った感じが好きですね」

『The Dead Will Rise Again A Little Furthur Down the Road』

「僕が思うZINEの要素が全部入ってる1冊です。スペインのサン・セバスチャンにあるビオ食品の店で見つけてきて。ヨーロッパはビオを突き詰めまくってる人が結構いて、ひとつの宗教みたいな感じなんですよ。そこの商品は普通に好きなんですけど、店に行くと集会に誘われたり、確実にその宗教に入れようとしてくる(笑)。この店には、冊子やいろんな国の支部から送られてきたインビテーションがいっぱい置いてあって、中身を読まずにビジュアルで選びました。『これぞZINE』って思ったのは、もともとZINEってFanzineみたいに、バンドのファンが『私はこれが好き』っていう気持ちを冊子にして配ってたものだから。これはまさにそんな感じがして。タダでいいから持っていってくれ、みたいな。ZINEはフリーが最強だと思います」

安野谷昌穂『ATMAN Issue2: escape velocity』

「これは安野谷というアーティストのZINEです(笑)。100部手作りのZINEを作った中の6部だけをさらにスペシャルにしたもの。まあ、6部だけやったところでめんどくさいなと思ってやめちゃったんですけど。毎ページが玉手箱的な、ページを開けていくごとに、驚いたり嬉しくなったりするものを作りたくて。中のページにスプレーを吹き付けたり、窓をすりガラスにするための100均のフィルムを貼ったり、できる限りDIYで作ってます。お金をかければキリがないし、どこまでがZINEと言えるのか分からない感じがするから、できるだけ安くDIYで作るのがいいんじゃないかなと思って」

安野谷昌穂の展覧会はKOSAKU KANECHIKA、NOMA t.d.でそれぞれ開催中。

INFORMATION

『沖潤子|安野谷昌穂』展

会期:〜2017年10月7日(土)
※日・月・祝は休廊
時間:11:00 – 18:00(火・水・木・土), 11:00 – 20:00(金)
会場:KOSAKU KANECHIKA
(東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 5F)

安野谷昌穂 『O GOD GOOD』

会期: 〜2017年10月1日(日), 14日(土), 15日(日)
※7, 8日 close
時間:13:00-19:00
会場:NOMA t.d.
(東京都渋谷区広尾3-12-4)

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