Licaxxx × 荒田洸(WONK)「注文の多い晩餐会」
vol.18 〜TTT MSW玉田翔太の巻〜

photography_Yuta Kato

Licaxxx × 荒田洸(WONK)「注文の多い晩餐会」
vol.18 〜TTT MSW玉田翔太の巻〜

photography_Yuta Kato

DJを軸にマルチに活躍するLicaxxxとWONKのリーダー/ドラムスである荒田洸の二人が、リスペクトする人を迎える鼎談連載。第十八回は、ドメスティックブランドTTT MSWのデザイナー玉田翔太を迎える……のだが今回、荒田は体調不良のため残念ながらも欠席。Licaxxxとの対談としてお届けする。普段から交流もあり、ファッションも音楽も「コミュニケーションツール」だと語る二人による、“カッコいい”の捉え方とは。
EYESCREAM誌面には載りきらなかった部分も含めて完全版でお届けします。

作りたいものを作っているだけ

Licaxxx:いつから服を作り始めたの?

玉田:19歳の夏休みですね。なんとなく作って、なんとなく配っていたら、なんとなく形になった。これで生活できているからもうちょっとやってみようかな、という。

Licaxxx:意外とビジネスライクな(笑)。

玉田:デザイナーという意識はあまりなくて。

Licaxxx:服を作るときのインスピレーションはどういったところから?

玉田:テーマとか、こういう映画や音楽から影響を受けてとか、よくみんなそういうこと言うじゃないですか。でもそんなのないと思っている。普通に生きていて、こうやって喋っているなかで、こういう服あったらいいな、じゃあ作ってみようかなというくらい。

Licaxxx:着る人の想定はないの?

玉田:それもあまりない。「こうあるべき」というのが一切ない。自分で着たい服も作らない。作りたいものを作っていて、着るのは普通の服でいい。

Licaxxx:アノニマスなやつだ。

玉田:だからか、ファッションの人と遊ぶことってあまりなくて。自分の知らないことを知っている人たちと遊ぶほうが面白い。

Licaxxx:たしかに。私もDJ軸だけどファッションも好きだし。ドメスティックのブランドもよく着る。

玉田:FACETASMの印象が強い。

Licaxxx:そうだね。FACETASM、TOGA、C.Eが多いかな。あとはTTT MSWとDAIRIKUとSUGARHILL。なぜか『タモリ倶楽部』のときはいつもTTT MSWになっちゃう。スタイリストの(菅沼)愛ちゃんがいろいろ用意してくれるんだけど、結局TTT MSWが毎回ハマる。

玉田:愛ちゃんはいいですよね。トータルで最高。

Licaxxx:(撮影の)現場に絶対いてほしい。いつもお任せ。

玉田:C.Eはパリで展示会をしたときもすごいなと感じました。普通にC.Eを着ている人がいっぱいいる。何世代にも渡ってクラわせているスケシン(SKATE THING)さんはマジですごい。裏原がいまも最強すぎる。

Licaxxx:裏原文化、やっぱカッコいいんだよな。DJはそれがない。脈々と受け継がれてきたものというか。それぞれがやってきているのはあるけど。

玉田:ファッションはそこが強いですね。そうやって海外でやってきている偉大な先人がいるから。あと、DAIRIKUやSUGARHILLが支持されている流れは新鮮。いまの若い人たちって古着自体を通ってなくて、あそこに辿り着いているから。あれがファーストだと思っている。その感覚が新鮮で。わざわざ掘って突き詰めることが減ってきている。

Licaxxx:音楽も一緒かもね。90sリバイバルにしても。

玉田:自分は歴史を知りたくなってくるけど、そうじゃない楽しみ方もあるのかなって。知らないことも幸せやし、知ったら知ったで深すぎてたどり着かないから。でも、一回知ったからにはやらないと、とは思っている。

カッコいい見た目のヤツって、その中身もカッコいい

Licaxxx:服のデザイナーのなかでは、いろんな人とコミュニケーションを取っている印象はある。

玉田:だいたいみんな、遊びからつながっている。そもそも特定のコミュニティだけに向けたいわけじゃないから。服があるといろんな人と知り合えるから、そこはよかったなって。

Licaxxx:コミュニケーションツールだね。

玉田:パリで展示会するのも、パリの友達がほしいから。

Licaxxx:それはマジわかる。私も海外でDJするときってその感覚が強い。

玉田:そこまでヒップホップを好きなわけじゃないのに、周りにはそういった人たちが多くて、とりあえず俺に聴かせてくるんですよ。Giorgio Givvnとかもそう。俺が良いって言った曲は売れるっぽくて(笑)。

Licaxxx:ヤバい(笑)。

玉田:音楽は好きだけど、詳しいわけじゃないから普通に聴いて意見を言えるというか。こういう音楽がいいんだろうなという感覚はなんとなくわかるので。(オカモトレイジの主宰する)「YAGI」の物販を作るときも、レイジくんから「どう思う?」って連絡あって、「これはこの色に変えたほうがいいですよ」「じゃあそうするわ」みたいな。

Licaxxx:広い視点があって、審美眼もあるから。

玉田:あの人たちってすごく凝り性だし、自分の世界がありすぎる分、世に出すときにわからなくなっちゃっている。だから俺のフィルターを通すとちょうどよくなる。

Licaxxx:私もバランスというか、そういうのは意識している。DJでかける曲は4つ打ちだけど、服はヒップホップのテンションだったり。そうすることでヒップホップの人たちにも興味を持ってもらいたいところもある。

玉田:いま、ヒップホップの人たちが増えたじゃないですか。こないだ芸人さんと話したとき、お笑いというカルチャーがヒップホップに変わってきているという話になって。昔の人たちはお笑い芸人がカッコいいものだったから、芸人に憧れて目指す人が多かった。いまはそれがヒップホップになってきていると。だからヒップホップ自体がポップカルチャーになりつつある。

Licaxxx:それは納得いくね。

玉田:やり口も一緒だなと思って。自分のスキルで成り上がって金稼いでいく。だから、ヒップホップとお笑いって一番近いのかなと思っている。D.Oさんとか見ていてそう思った。あの人って本気でふざけてるから、めちゃめちゃカッコいい。

Licaxxx:エンタメだもんね。それでいうとDJは……。

玉田:世界で見るとDJってすごいじゃないですか。海外と日本の差が激しいだけで。

Licaxxx:日本だと地味な扱いになる。日本にはホームパーティーの文化がそもそもないから、なんとなく音楽がかかっていて、そこでみんながワイワイ飲んでいるというのがない。どうしてもライブみたいに、観て、知っている曲で同じ行動をとる、になるから。

玉田:DJカルチャーは、日本の国民性とは合ってないもんね。

Licaxxx:そう。

玉田:周りにDJやヒップホップの人たちはいっぱいいるけど、自分としては全部を受け入れ体制なわけじゃないですか。別に問わないというか。

Licaxxx:そうだね。ヴァイブスが合えば、どんなジャンルの人でも、どんな世代の人でも。

玉田:服ダサいヤツの音楽はダサいですからね。服に興味なくても、スタイルのある人がいい。服なんでもいいって言ってる人って、音楽もなんでもいいと思っているから。

Licaxxx:そこに精通してはいるんだろうけど、見た目のセンスがあまりよくない人もいるもんね。

玉田:カッコいい見た目のヤツって、その中身もカッコいいから。それは何にでも言えますね。

Licaxxx:たしかにそうだね。


玉田翔太

TTT MSWのデザイナー。
@ttt_msw


Licaxxx

DJを軸にビートメイカー、エディター、ラジオパーソナリティーなどさまざまに表現する新世代のマルチアーティスト。
@licaxxx

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