Licaxxx × 荒田洸(WONK)「注文の多い晩餐会」
vol.04 〜稲葉友の巻〜

photography_Takao Iwasawa

Licaxxx × 荒田洸(WONK)「注文の多い晩餐会」
vol.04 〜稲葉友の巻〜

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DJを軸にマルチに活躍するLicaxxxWONKのリーダーである荒田洸の二人が、リスペクトしている人や、とにかく会ってみたいと思う人を迎える鼎談連載としてEYESCREAM誌面で展開している「注文の多い晩餐会」。第四回には、俳優の稲葉友が登場。J-WAVEにおいてラジオパーソナリティーも務めるなど活躍の幅を広げている彼を交えて、新年会気分のなか(年明け早々の取材だった)、熱い会話が繰り広げられた。誌面には載りきらなかった部分も含めて、完全版でお届けします。

ジュノンボーイは人生においての交通事故

荒田:今回はLicaxxxさんのつながりからですが、お二人はどういった出会いだったんですか?

Licaxxx:お互いがラジオDJをしているJ-WAVEの集まりで知りました。そのあと、友くんの出ている舞台を観にいって。大きな劇場で舞台を観ることってあまりないから新鮮でした。

稲葉:舞台を観にきてくれたから、僕もイベントに顔出さなきゃなって(Licaxxxの出演する)リキッドルームに行って、という出会いですね。そこから一緒に飲みにいくようになりました。

Licaxxx:会うまでは、仮面ライダーのイメージが強かった。あと、ちょうど私の世代のジュノンボーイだったから。

荒田:ジュノンボーイでグランプリになったのは高校何年のときだったんですか?

稲葉:高校二年のとき。2009年だから10年前ですね。

Licaxxx:ジュノンボーイが超盛り上がっていた時期だったし、それくらいの歳の頃って女子はみんなチェックしてるからさ。

荒田:チェックしていましたか?

Licaxxx:もちろん。そんなに追ってはなかったけど、押さえてはいた。

稲葉:何かと押さえてるもんね。こわいよ、この人。

荒田:その頃はLicaxxxさん、ジャニヲタのときですよね。

Licaxxx:そうそう。(ジャニーズが出ている)全部の雑誌を見てたから。

荒田:で、ジュノンボーイがきっかけで俳優をはじめたんですか?

稲葉:そうですね。グランプリをもらって事務所に入って。俳優をやりたいというよりは、そういうものだったというか。俳優やモデルになりたいわけでもなく、何の目標もなく受けて、グランプリをもらってしまったので。

荒田:だけど応募したのはなぜ?

稲葉:思い出づくりです。

Licaxxx:大事大事。

稲葉:高校の友達と一緒に応募して。当時はまだガラケーだったから、写メで簡単なの撮って、プロフィールを書いて送った。荒い画像のまま。

荒田:まわりの友達と一緒に受けたのに、残ったのは……。

稲葉:僕ひとりだけでした(笑)。そこからはあれよあれよと。

荒田:まわりの反応はどうだったんですか?

稲葉:グランプリを取った次の日も普通に学校だったんでやばかったですね。そんなに仲良くないヤツらがすげえ話しかけてきたり。「なんだおまえら」って思った。仲良い友達は、僕の性格をわかっているから穏やかに接してくれたけど。

荒田:共学ですか?

稲葉:そうです。

荒田:めちゃくちゃモテたでしょ?

Licaxxx:モテそう。

稲葉:どうやらモテていたらしいんですけど、アクションを何も起こされてないから自分ではわからなかった。告白もないし、連絡先の交換もないし、覗きに来て「きゃー」みたいなのも当然ないから。

Licaxxx:ちょっとこわかったんじゃない? ヤンチャそうだから、女子的にもあんまりいじっちゃいけない存在というか。

稲葉:たしかに、今ほどキャパは広くなかったですね。今は「なんでも大丈夫だよ」ってオールマイティーカードだけど。

Licaxxx:角立てないパターンだもんね。「俺は俺」感はあるけど。

稲葉:でも、(ジュノンボーイのグランプリは)僕にとって人生においての交通事故だと思っているんです。それで一生の職業を左右された。本当は、公務員になろうとしていた。

Licaxxx:へええ。現実的。

稲葉:両親ともに学校の先生だったので。大人になったら学校の先生になるという漠然としたものが幼少期からあった。高校の頃も、とりあえず教員免許を取ろうと思っていたので。

荒田:教科は?

稲葉:親父が技術家庭科の先生だったので、そっちの方面で取れたらいいなとなんとなく思っていました。

荒田:それが、ものすごい事故に遭ってしまい。

稲葉:そうです。いまや、平日の昼からこうやってアルコール飲んでいいお仕事に(笑)。

Licaxxx:たしかに(笑)。

“歩み寄り”と“引き寄せ”

Licaxxx:どこで演技に目覚めたんですか? こんなに演技に熱い男になってしまったのはいつから?

稲葉:僕らの世代のジュノンボーイって、小池徹平さんをはじめ、お芝居に進む人が多かったんですよね。でも芝居なんてやったことなかったから、いきなりそう言われても……という。

荒田:最初の頃のモチベーションは何だったんですか?

稲葉:「責任」が120%。親父に「おまえには、(ジュノン・スーパーボーイ・コンテストに)応募した15,000人以上の人を蹴落としてきた責任がある」って釘を刺されたんです。その「責任」が何なのかわからないけど、わかるまでやってみようって。

荒田:重いですね(笑)。

稲葉:でも、行く現場行く現場、おもしろい人がいるんですよね。初ドラマでいうと、松重豊さん。初めて芝居で向き合ったときの、あの景色は忘れられないですね。芝居がなんだかわからないけど、そこで起こっていることがすごい、というのがド素人でもわかったというか。「これ、終わりないやつだ」ってワクワクした。果てがなくて、着地もできないけど、どこまででもやっていられるやつだ、って。スタッフさんにもすてきな人がたくさんいて、そういう人たちにちょっとずつの要素をもらって、「お芝居やっていこう」と思うようになったんです。

荒田:おもしろい。

稲葉:あとは、演劇の経験も大きいですね。テレビや映画といった映像は門が狭いので。演劇の舞台で経験を積んでいった。

荒田:舞台と映像は違いますか?

稲葉:極端に言うと、やることは変わらないです。でもやっぱり密度が違うというか。舞台のほうがシビアだし、危なっかしい。でも、ハマったときの爆発力は演劇が一番おもしろいですね。一生忘れられないだろうなっていう景色を、舞台上で何度か体験させてもらいました。

Licaxxx:最近はドラマが多かったと思うんですけど、ドラマの現場はどうですか?

荒田:それってどういった切り替えなんですか?

稲葉:何も切り替えないですね。やることは同じだって、信じたい。もちろん演劇の声量を出しちゃいけないとか、いろいろ変わってはくるんですよ。でも、(胸の部分を指しながら)ここで起こっていることは一緒でありたい。そこはなるべくシンプルにしたいから。

Licaxxx:こういう熱い男なんです。

荒田:役づくりはどうやっているんですか?

Licaxxx:たとえば、映画『春待つ僕ら』はどうでしたか? これまでの役と全然違っていたから。

稲葉:宮本瑠衣役。

Licaxxx:原作のキャラと友くんの普段のキャラがあまりに違うから、どうなるんだろうなとは思っていた。

稲葉:そのときは、“歩み寄り”と“引き寄せ”をやります。たとえば、僕と役のキャラクターが100m離れていたとして、それを100m寄り切ってできちゃう役もあれば、逆に自分のほうに引き寄せていくこともある。

荒田:引き寄せるってどういうことですか?

稲葉:胸ぐら掴んで引っ張ってくる感じ。自分の要素を混ぜ込んじゃって、似た色にするというか。

荒田:原作とのせめぎ合いありそうですね。

稲葉:それは正直、関係ないです。作品へのリスペクトはもちろんありますけど、あまり原作に縛られちゃいけないと思っていて。

Licaxxx:映画は映画でおもしろくなることを目指そう、みたいな?

稲葉:さっきの話でいうと、ちゃんと50m地点でいいものになるように。近寄りすぎると僕がやった意味がなくなるから。

荒田:寄りすぎても意味がないというのはおもしろいですね。

稲葉:そうなると、ここ(原作のキャラ)に来れる人だったら誰でもよくなる。ちゃんと自分がやる意味を、こっそり忍ばせています。

Licaxxx:あの映画で、(杉野遥亮と)喧嘩するシーンは友くんそのまんまだった。

稲葉:あれは、自分のために自分を出すんじゃなくて、杉野が突っかかってくることに対して、こっちもぶつけていかないと衝突が起こらないから。芝居をする上で、相手にどう響くかなというのは考えていて。ちゃんと衝突が起きないと次に進まない。と思っていたら、地の部分が出てきていた、という順序ですね。

Licaxxx:あのシーンはみんなの真骨頂になっていて、配役の裏側に個人がいるなって感じられるシーンになっていた。

稲葉:今の時代って“リアルさ”を求めているものが多いというか。『万引き家族』の樹木希林さんとか安藤サクラさんとか、別次元だから。リアルなお芝居がいいものだってなっちゃうと、日本の映画がちょっとつまんなくなっちゃうと思う。お芝居の上手い人がリアルに演じるのはいいんです。でもその人たちは、嘘みたいに上手いだけだから。ただただリアルなお芝居に憧れてはじめた人がいても何にも辿り着けない。誰も育たなくなる。そこは危ういなと感じています。

好きな映画、漫画、アニメ、畑作業

Licaxxx:好きな映画は?

稲葉:思い出深い作品でいうと、邦画だと岩井監督の『リリイ・シュシュのすべて』と犬童監督の『ジョゼと虎と魚たち』。事務所に入ったばかりのときに、映画のことも全然わからなかったから、とりあえず毎週6本は見る、ということをノルマとしていたんです。その最初の頃に見たのがその二本だった。これまで見てこなかったような映画だったし、なんかじんわりとずっと離れない映画ですね。初舞台で忍成(修吾)さんと共演したとき、震えましたもん。「『リリイ・シュシュのすべて』のヤバい人だ!」って(笑)。洋画は、最近だと『ゴーン・ガール』がよかったですね。お芝居も圧倒的だったし、人間の根っこのもっと奥、球根みたいなところが(お芝居のなかに)あるなと感じた。女優という生き物には勝てないなって思いましたね。男って人間的に足りないんだなって。……あとでも、普通に「『ショーシャンクの空に』が好きです」って言える自分でありたい(笑)。「好きな映画は?」って聞かれたときに、「『ショーシャンクの空に』です」って言えない風潮ってあるじゃないですか。

Licaxxx:あるあるある。

稲葉:でも『ショーシャンクの空に』も『グリーンマイル』も、おもしろいじゃないですか。

Licaxxx:わかるわかる。それもわかる。

荒田:漫画とかは読みますか?

稲葉:漫画は、90年代だと『宮本から君へ』と『カメレオン』。最近だと『あひるの空』が好きですね。アニメは、最近だったら『転生したらスライムだった件』。

Licaxxx:あれ、めっちゃおもろい。

稲葉:あれは漫画でも読んでいて。異世界ものっておもしろいですよね。何度も見ちゃうのは『サイコパス』ですね。

Licaxxx:最近、ハマってるものは?

稲葉:みかん畑。親父がもともとやっていて、週末に休みが合うときは一緒に行っています。朝4時くらいに出発して、明るくなる頃に畑に着いて、昼まで畑仕事して、火を焚いて持ってきたものを焼いて、景色を見ながら昼飯を食べる。その時間だけ、めちゃくちゃネイチャーな時間を過ごしています。ただただ趣味ですね。

Licaxxx:農作業楽しそう。

僕はもう、立たなくなっちゃった

荒田:何かのインタビューで、「昨年感じた悔しい気持ちを今年は全部クリアにしていきたい」と話していたのが印象的でした。どういうことなのかなって。

稲葉:悔しいこと、ありません?

荒田:常にありますよ。でもそれって人によって違うと思うんですよ。僕は、同世代に(ジャズ・ドラマーの)石若駿とか(King Gnuの中心人物である)常田大希みたいな天才がいるから、そういった天才に振り落とされないようにがんばろうとは思っているんですけど……。そういうことじゃないですよね。

稲葉:というよりは、自分のなかのことですね。応えられなかったこととか、もっと別のやり方があったかもしれない、とか。ああやっておけばこういうことができたのかな、とか後から鮮烈に思うことがある。プライベートでも仕事でも。そういう後悔を今年はしないように。

Licaxxx:我慢の年ってありますよね。

荒田:同世代の活躍を見て、腹立ったりはしないんですか?

稲葉:僕はもう、立たなくなっちゃった。

(一同爆笑)

稲葉:これ、違う話になってない?

Licaxxx:ワードがやばい。

稲葉:同い年くらいの役者が活躍していることに対して、認め方を覚える、というか。僕の場合は、そのほうが自分も生きるかなと思っているんです。

稲葉友

1993年1月12日生まれ、神奈川県出身
2010年、ドラマ『クローン ベイビー』(TBS)で俳優デビュー後、映画、ドラマ、舞台で幅広く活動。
3/23(土)より配信のdTV×FODドラマ『花にけだもの~Second Season~』、今年秋以降公開の映画『ダウト-嘘つきオトコは誰 ? -』に出演のほか、6/22(土)より浅草九劇で公演の舞台『エダニク』(鄭義信演出)にて主演が決定している。
J-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』(毎週金曜11:30~16:00生放送)にてナビゲーターを務めるほか、アプリ版ぴあにてコラム『話はかわるけど』連載中。
https://yu-inaba.lespros.net/

荒田 洸

“エクスペリメンタル・ソウル・バンド”を標榜するWONKのバンドリーダーであり、ドラムスを担当。
@hikaru_pxr

Licaxxx

DJを軸にビートメイカー、エディター、ラジオパーソナリティーなどさまざまに表現する新世代のマルチアーティスト。
@licaxxx1