CULTURE 2025.03.20

藤井道人:けむりのまち第二十五回『それでは、次の旅へ』

Photography_Sara Masuda
EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

日々映画を作っていく中で忙殺され、失われていく大切なはずの記憶の数々。本連載は映画監督・・藤井道人が映画や人、言葉、その瞬間を保管しておくための企画である。「生きていく上で忘れてしまうだろう記憶たちの集積場」をテーマに、様々な出会いを通して、映画が作られていく過程や、映画業界の改善に向かっている様を伝えていく「けむりのまち -Fake town-」
第二十五回は、怒涛の日々を過ごす藤井道人の記憶と感情を書き落とす。

3月17日、上空午前3時。日本時間は午前9時と表記。
久しぶりの長時間フライト。腰も痛くて、なんかお腹が張っていて寝付けない。
でも、なんだかワクワクしている。どんなことが起きるんだろう、どんな出会いがあるんだろう。と自分の未来に想いを馳せたりしている。

日本アカデミー賞から2、3日経過し、ようやく皆様からのお祝いの連絡も落ち着いてきて、僕は日本から逃げました。嘘です。来年の作品の準備です。
折角なので、日本アカデミー賞の話も少しだけ。
『正体』に参加してくれたすべてのキャスト、スタッフ、そして観てくださった皆さま、マネージャーチーム、BABELのみんな、METEORAのみんな、家族、賞に投票してくれた皆さま、本当にありがとうございました。

一つだけ、クレームがあるとしたら、流星が受賞したときの僕の顔に寄りすぎですよカメラマンさん(笑)一般人、そんな近くで撮らないでしょ!ってみんなでオンエア見ながら叫びました。一生いじられるなこれ。でも本当に嬉しかったんです。
脳内ではAmazarashiの『パーフェクトライフ』が流れていました。
吉岡里帆さんも、本当に嬉しかった。一緒に受賞の喜びを分かち合えたら良かったけど、能登で素晴らしい仕事をしていることも、仲間の一人としては誇らしいです。

最優秀作品賞の『侍タイムスリッパ―』は僕までもらい泣きしそうになりました。
インディーズって、楽しい、けど辛い、報われる可能性はとても少ない。でも、本当に映画が好きで諦められない気持ちで続けている人もきっと多くて(僕らもそうでした)、
そんな人たちの想いを全部背負った最優秀作品だと思いました。
これからも『侍タイムスリッパ―』みたいな作品が沢山出てきたら、更に日本映画は面白くなるんだろうなと思いました。

※映画『正体』は第48回日本アカデミー賞にて最多12部門計13賞に輝いた。
優秀作品賞
優秀監督賞-藤井道人
優秀脚本賞-小寺和久 / 藤井道人「正体」
優秀主演男優賞-横浜流星
優秀助演男優賞-山田孝之
優秀助演女優賞-山田杏奈
優秀助演女優賞-吉岡里帆
優秀撮影賞-川上智之
優秀照明賞-上野甲子朗
優秀音楽賞-大間々昂
優秀美術賞-松本真太朗
優秀録音賞-米澤徹(録音) / 浜田洋輔(整音)
優秀編集賞-古川達馬
新人俳優賞-森本慎太郎
新人俳優賞-山田杏奈
話題賞-森本慎太郎

デビュー作でアカデミー賞話題賞をかっさらった『帰ってきたあぶない刑事』の原(BABEL LABEL監督)と会場で会えたことも嬉しかったですし、
舘さん、剛さん、カヤちゃん、いっそん、岡田将生さん(オー!ファーザー以来!)はじめ、沢山の尊敬する映画人に出会えて幸せな一日でした。

4月から、新作に出兵するため嘔吐寸前の激務なんですが、最近もう一つ自分の仕事を増やしました。それは『日本映画監督協会』に入会したことです。同期にはなんと水田伸生監督がいます。最近、交流会に参加してきました。
入会した理由は、日本大学芸術学部の教授だった松島先生からの推薦(少し強制気味な)だったのですが、今のところ、メリットもデメリットも感じていません。
それ自体を問題だと僕は思っていて、監督なのに、監督協会のことを知らない、知ろうとしていない人がほとんどだと思います。
でも、先生が僕を誘ったということにはきっと意味があるんだと思うんです。
なので、自分も意味を見いだせた時、監督の皆さま、強引な勧誘に出ると思うので、ビクビクしながら待っていてください。

最近観た面白かった映画『悪い夏』ですが、Netflixで配信が始まった『アドレセンス』というドラマが、狂ったようにすごかったです。プロデュースはブラッドピット。もう凄すぎ。観た人と語りながらもう一回観たいよ。
『ゼロデイ』も大好きでした。ロバートデニーロー!!!!って感じ。(感想赤ちゃん)

ルッソ兄弟の最新作『エレクトリック・ステイト』も素敵でした。監督の頭の中どうなってんだろ。
BABEL LABEL設立メンバーの一人、志真健太郎の監督作『MOGURA』もNetflixで沢山観られてるようなので是非皆さまもご覧ください。

最近読んだ面白かった本 『正義の申し子』『小隊』『なれのはて』
『アノーラ』『ブルータリスト』を帰国してから観るのが目標なんですが、その前にやることあるだろ!!と怒られそうなので、一生懸命仕事をまず頑張ります。

今年は、15周年キャラバンはじめ、新作映画や『イクサガミ』の世界配信など新しい藤井をお届け出来るように頑張ります。

それでは、来月は質問コーナーですね。沢山のご質問、お待ちしています。

※本連載にて、藤井道人監督への質問を募集。
監督が一問一答形式でお答えするので、
聞きたいことや気になることがある方は、
こちら宛にお送りください。

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