CULTURE 2021.06.08

[GROOMING GROOVE]
貝印と探る“整える”カルチャー
#02 BARBER SAKOTAで考える散髪という行為

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

時代というか、意識の流れみたいなものは確実に変容してきている2021年。自分と向き合う時間も、日々の生活を見つめ直す機会も多くなった。で、今日はどんな調子?

1908年創業の総合刃物メーカー貝印は、ツメキリやカミソリなどといったグルーミングアイテムも多数揃える。グルーミングとはすなわち自分をケアすることであり、そういった“整える”という行為/時間自体に意識的になることって、実は大切なんじゃないか。そこへのこだわりにこそパーソナルな魅力が潜んでいるんじゃないか。そう考えると、“整える”とはカルチャーだ、と言えるかもしれない。そこに漂うかっこよさこそ、いまにフィットする。

“整える”をひとつのカルチャーとして捉えて、そのグルーヴにフォーカスする連載シリーズ「GROOMING GROOVE – 貝印と探る“整える”カルチャー」
第2回は下高井戸の床屋、BARBER SAKOTAにお邪魔する。2020年には2店舗目となるCUT HOUSE KYODOを経堂にオープン。バーバーとしてはもちろん、コラボアイテムやお店オリジナルのプロダクトも人気を博す名スポットだ。オーナーの迫田将輝さんに聞くのは、バーバーで髪を切って身嗜みを整えるという行為のカッコよさ。
BARBER SAKOTAにとっての“整える”とは何なのか。

お客さんに教えてもらった“整える”カッコよさ

ーバーバーで髪を切ることのカッコよさ、そこで身嗜みを“整える”ことについて思うことは?

迫田将輝(以下、迫田):例えばデートだとか、何か特別な日の準備としてではなく、日々のルーティンの一部に「バーバーへ通う」という行為を取り入れているのがカッコいいのかな、と。うちのお客さんにも、髪が伸びている状態がないという人がいて、早い人だと2週間に1回くらいの頻度で刈り上げるんですよ。常に一定の長さをキープして清潔感を保っていることが、バーバーで“整える”カッコよさだと思います。

ーそういうお客さんは多いですか?

迫田:多いですね。“整える”という気構えを持つのではなく、常に一定のペースで自分にとっては当たり前の行為として整えている人が来てくれています。

ーそのようにバーバーで身嗜みを“整える”ことがカッコいいと迫田さんが感じたきっかけはどこにありますか?

迫田:自分の場合、そういうお客さんが増えて、彼らのライフスタイルを見ていてカッコいいと感じたんです。だから、お客さんに教えてもらった感じですかね。僕自体はそんなに頻繁に髪を切る方ではないんですけど、人によっては水曜の何時とか金曜の何時って決めてルーティンにしている人が増えてきて。そこで、こういうのカッコいいなって思ったんです。

※朝、お店に来てから開店までの準備作業を淡々と行う

ーそういう自分だけの生き方をしている人としてスケーターの人たちが思い出されます。BARBER SAKOTAは迫田さん自身もそうですし、お客さんでスケートをする人も多いですが、スケーターとバーバーの共通点はどこにあると思いますか?

迫田:けっこう難しいんですけど、僕自身スケボーしていて思うのは、スケーターって写真や映像を撮るときに、どう写ったらカッコいいかってところを意識しているんですよね。トリックのメイク度合いも、どれだけカッコいいのかがすべてですし、カッコよければオッケーって考えだと思うんですよ。もちろんプロの人からしたら全然違うかもしれないんですけど(笑)。ただ、僕の中ではそういう基準があって、それは自分の仕事にも通じるところがあります。いかにお客さんのヘアスタイルを整えてカッコよく見せていくかってことがバーバーのやっていることでもあるので、その部分においては共通しているところがありますね。

ーそもそもですが、BARBER SAKOTAはどんなお店だと思うのか。迫田さんご自身が思うことを教えてください。

迫田:5年前にオープンした頃は、なるべく普通の床屋さんであることをイメージしていたんですよ。ファッション感度の高い人だけ、とかスケーター限定というわけではなく、誰でも気軽に来れるようなお店を心がけて始まりました。だから、空間的にもニュートラルにあまり作り込みすぎずって部分を意識しているんです。最近だと、近所の子供やご年配の方もふらっと来てくれますし、最初に思い描いていたことがしっかりと実現できている感覚があります。

ー誰でも来やすいバーバーを目指したのは、どういう理由が?

迫田:BARBER SAKOTAをオープンする前に勤務していたお店が表参道にあるNYに本店を持つお店で、バーバーなのにコーヒーだけ飲みに来て、立ち話して帰るような人もいて、その雰囲気が街に馴染んでいると感じていたんです。実際にNYにあるバーバーに行って髪を切ってもらったこともあるんですけど、お洒落にこだわっている人から、普通に散髪に来ている人まで様々な種類の人が集まっている空気感がすごくいいなって。それを東京でやりたいと思って。

ーそのようにして始まり、今では地元の人からファッションシーンにいる人まで。BARBER SAKOTAは幅広い層に支持されています。ファッションカルチャーの観点から見ると、今の東京を示すスポットの1つになっていると思います。そういう名所的な場所になっていった理由は、何だと思いますか?

迫田:お店の待合スペースが広かったので、ここを活かして何かできないかなって考えたんですよ。そこで、イベントを不定期で開催してきたんですが、それがきっかけで新しい人がBARBER SAKOTAを知ってくれて、髪を切りに来てくれるようになったり、その人たちがさらに知り合いに紹介してくれたりしながら、徐々に広まっていったんじゃないかと思います。

ー人が人を連れてくるような流れで。

迫田:はい。イベントは、常連さんに新しいものを見せるきっかけを作りたいって気持ちと、新しい人にもBARBER SAKOTAを伝えたいという両方の思いがあって始めたことだったので、そこにお客さんたちが反応してくれて嬉しかったんですよね。だから、色々やってみようと思ったのが始めたきっかけです。

何十年もできる仕事を同じ道具で

ーでは、さらにルーツのお話を。迫田さんがバーバーになろうと思ったのは、なぜですか?

迫田:高校3年生のとき、まず大学生になりたくないっていう理由から、手に職つけたいと思って仕事を探して。当時は美容師全盛期だったので専門学校に見学へ行ったんですが、そこで理容クラスもあることを知り、これは渋いし長く続けられるんじゃないかと思って選んだんですよね。

ーそこで美容師ではなく、バーバー(理容師)だったのは?

迫田:当時、自分が歳をとったときに仕事している姿をイメージしていて、バーバーの方が想像できたんですよね。もちろん、美容師も何歳になってもできるんでしょうけど、自分の場合は理容師で。20年、30年と続けられる仕事の方が絶対いいと思いましたから。

ー確かに。では、迫田さんが仕事するにあたって欠かせない道具について教えてください。

迫田:道具だと、バリカンとハサミは欠かせない。そんなにこだわりはないですけど、ずっと同じ物を使ってますね。同じ物を買い替えながら。刃も研いだり変えたりしながら長く使っています。変に新しいものを増やすこともないし、修理できないぐらい壊れてしまったら、同じものに買い替えて。そういう意味で、ハサミはここ10年くらいずっと同じものです。

ー新しいものに変えない理由はあるんですか?

迫田:やっぱり手に馴染んでいるし、そこに安心感もあるので、あまり冒険をしないっていうのはありますね。信頼できる道具って、僕らの仕事にとっては重要だと思うんです。今使っているカミソリは学生だった頃から使っているので、もう15年は使っていますし、ハサミも1番最初にお店に営業しに来た人から買ったものなんで、ブランドで選ぶということもないんですよ。

ー長く使うことにも意味があると思いますか?

迫田:そうですね。物に対してはめちゃくちゃ愛着持って使っているタイプなので。悪く言うと、物が捨てられないっていうか(笑)。ずっと残しておきたいっていう感じはあります。そんな中で仕事道具として選んでいるポイントは、壊れたりしたときに、すぐに同じもので替えがきくかどうか、というところですね。お客さんを施術していて道具が壊れてしまうことはよくあるので、そのタイミングで取り替えられる物なのかどうかってところは気にしています。道具が変わって自分の施術が狂ってしまうとよくないですからね。

バーバーで“整える”が生活における習慣にあること

ー物という意味で、今回の企画を記念して、貝印とのコラボ・紙カミソリを製作していただいたわけですが、これについても教えていただけますか?

迫田:紙カミソリのデザインをお願いしたデザイナーは前々から知り合いで一緒に遊んだり飲んだりしていた友人なんですが、いつか自分の仕事をお願いしたいと思っていたタイミングだったので今回晴れて実現させることができました。あと、僕の中で貝印さんのイメージが彼がやっていることと合いそうだなって直感的に感じたんですよ。このタッグであれば、楽しくなるんじゃないかと思って。

ーその貝印のイメージというのは、どういう感じでしたか?

迫田:改めて貝印のことを調べたら、色々とスタイリッシュでカッコいいことを実践されているんだなと感じて。そこに見合うデザインであることと、BARBER SAKOTAが本来持っている印象のバランスを考えてデザイナーにオファーしたんです。

ー鮮やかなグラデーションのタイポグラフィが目を惹きます。

迫田:この表現は全部デザイナーにお任せして、僕からは具体的なアイディアは出さなかったんですよ。自由にやってもらった結果、こういう形になっているのが自分としても嬉しいですね。文字通り、本体の素材が紙というのもいいですね。

※貝印×BARBER SAKOTA×EYESCREAMの紙カミソリ。
エコの観点や「いつでも清潔で快適」を提供する“1Day カミソリ”という観点から紙素材に着目し、世界初*の「紙カミソリ™」を商品化したもの。そこに今回の企画を踏まえてオリジナルのグラフィックを施している。
*リンス構造を備えた金属ヘッドと紙ハンドルからなるカミソリ(特許第6825162号)

迫田:紙に印刷したときの色味や物としてのイメージはデザイナーとも話し合いながら、ロゴの鮮やかさが映えるように製作を進めたので、手にしてくれる人はそういう点も見てくれたら嬉しいです。今回のコラボレーションならではのデザインだと思うので。

ー最後に、繰り返しになりますが、迫田さんにとって“整える”とは、どういうことですか?

迫田:やはり習慣なんだと思います。僕の場合は週一で整体に通うのが習慣で生活の一部なんですが、同じように当たり前のこととして髪の毛を同じ状態に保ち続けるということが”整える”ことなんだと思います。うちは、お客さんが帰るタイミングで次の日を予約する人が多く、その周期は人によって異なりますが、その人の中の生活サイクルの1つに”整える”ことを組み込んでいることが、それに繋がってくるんじゃないでしょうか。

また、BARBER SAKOTAのポップアップ“Frame by Frame”も開催決定。
場所は代官山 蔦屋書店 ギャラリースペースにて。6月15日(火)からの開催となる。
本記事で紹介した貝印×BARBER SAKOTA×EYESCREAMのコラボ紙カミソリはここでしか手に入らないので、詳細はインフォメーションからチェックを。

INFORMATION

[GROOMING GROOVE]
貝印と探る“整える”カルチャー
#02 BARBER SAKOTAで考える散髪という行為

BARBER SAKOTA
https://www.barber-sakota.com/
https://www.instagram.com/barbersakota/
https://twitter.com/MASAKISAKOTA

貝印
https://www.kai-group.com
https://www.kai-group.com/store/

INFORMATION

BARBER SAKOTA POP UP STORE “Frame by Frame”

2021年6月15日(火)〜7月2日(水)
代官山 蔦屋書店
-参加アーティスト-
相澤有紀
等々力 悠
udai
Mayuka Katano & Kosuke Katano
SHOTA OKAMOTO

下高井戸に店を構える街の床屋、BARBER SAKOTA。

その店主 迫田将輝氏によってキュレートされた作品の展示が、6月15日(火)より代官山 蔦屋書店 ギャラリースペースにて始まります。
“Frame by Frame”とは”フレームごとに”、”コマ送りの”という意味の言葉。
今回のエキシビションでは、写真・音楽・映像・科学・アートなど、それぞれのシーンで活動する若手アーティストたちが捉えた『今の空気感』を表す作品が”フレームごとに”展示されます。
さらにスペース周辺の棚には、BARBER SAKOTAがオープン以降作り続けてきたオリジナルのプロダクトや、長年集めてきたアイテムも”枠ごとに”ディスプレイされる予定。
また作品を包むフレームは、BARBER SAKOTAや姉妹店CUT HOUSE KYODOとも親交の深いNOTEWORKSに特注したものを使用。
BARBER SAKOTAのこれまでの歩みやつながりを振り返るとともに、これからの世代の流れにスポットを当てた内容となっています。

貝印×BARBER SAKOTA×EYESCREAMの紙カミソリ プレゼント対象者
当ポップアップストアにて下記、いずれかのアイテム購入者に先着でプレゼント
・今回のアートワークを使用したオリジナルTシャツ
・BARBER SAKOTAオリジナルキャップ

※紙カミソリは数に限りがございますので予めご了承ください

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