FASHION 2021.06.25

2Gで展開されるGraphpaperと空山基のコラボコレクション第2弾について 南貴之×小木​”Poggy”基史×南塚真史 トークセッション

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部
Photograph_Ryo Kuzuma

今年の2月に実現したカプセルコレクション”Graphpaper × Hajime Sorayama”。南貴之によるブランド、Graphpaperに空山基のアートワークが施され、2G限定で展開されたわけだが、その第2弾が登場する。前回も大いに話題を集めたコラボコレクションはどう誕生したのか。Graphpaperのディレクターを務める南貴之と、2Gファッションキュレーターの小木”Poggy”基史、2G内にNANZUKA 2Gも構えるアートギャラリーNANZUKAより代表の南塚真史の三者によるトークセッションから探っていく。

アーティストの作品をプリントすることへの徹底したこだわり

ー第1弾も兼ねた話に遡ると思うのですが、今回の”Graphpaper × Hajime Sorayama”のコラボはどのように誕生したんですか?

小木”Poggy”基史(以下、Poggy):話の始まりとしては、自分たちから南塚さんに「Graphpaperとアーティストがコラボしたら面白いと思う」って相談をしていた流れから、南くんに会いに行ったんですよ。そこで色々と話していたら「実は空山さんのファンなんだよね」って言われて。ちょっと意外だったんですけど。

南貴之(以下、南):いや、意外ですか?(笑)。

Poggy:でしたよ(笑)。そんなところから、とんとん拍子に話が進んだ感じです。空山さんが90年台に雑誌『ペントハウス』で連載されていた側面と、Graphpaperが持つ空気感が混ざり合ったら絶対に面白いことになると思っていたし、南くんとも随分長い間、会えていなかったので、このタイミングで一緒に仕事したいなって思いもあってオファーさせていただきました。

南:最初に話をいただいたときは、うちで大丈夫かなって思ったんですよ。Graphpaperのプロダクトにはグラフィックを入れたりしてこなかったので。それで、空山さんの作品を使用してもよければ検討させてほしいってことを伝えて、南塚さんの話になり、この三者のコラボレーションに繋がっていったんだよね。

南塚真史(以下、南塚):Poggyさんがプロデュースするうえで、南さんがディレクションするGraphpaperであれば、間違いがないものができるでしょうって思いましたね。

南:ありがとうございます。

Poggy:展示会に行って実際にグラフィックを施すアイテムをどれにするかを話し合いましたよね。「これに(空山さんの)アートワーク入れたら面白いんじゃないか」とか。ただ、生産のうえでは、南くんがプリントの入り方とか細部の細部までめちゃくちゃこだわっていてですね。けっこう何度も何度も試作を重ねまくって(笑)。

南:そうだね(笑)。そこだけはしっかりとしたいと思って。というのも、僕自身、プリントTシャツが大好きなんですよ。アーティストの作品がプリントされているTシャツはたくさんあるし、ストリートブランドもよくリリースしているけど、物によっては、ちょっとクオリティが気になってしまうものもあるんですよね。そんな中で、自分がやるんであれば適当にやっちゃまずいだろうと思って。アーティストに対してもすごくリスペクトがあるし、しっかりと向き合いたいと考えた結果、何度も刷り直しをして試行錯誤することになったんです。

南塚:そもそも、空山の絵をプリントするのってめちゃくちゃ難しいんですよ。

南:ただでさえ難しいうえに、僕らのプロダクトはTシャツとかだとプリントのインクが沈みやすかったり、プリントが難しい生地を使っているんで。でも、そのうえで、めちゃくちゃ綺麗にプリントを表現したいと思ったんです。すごい大変でしたけど、ちゃんと満足するものができたかなと思っています。やっぱり、自分が残念だと思うものはお客さんに出したくないし、関わっていただいたみなさんが「これはいいね」って思えるものを作っていかなくちゃいけないって考えが根底にありますから。

南塚:しかも、空山は厳しいんですよね。アーティストなら当然、洋服1着にかける予算なんて気にしないし、自分の作品を限りなく高いクオリティで表現したいと思うだろうし。そういう意味で、Graphpaperはプリント表現へのこだわりが全然違ったと思いました。

ー南さんはプロダクトに施す空山さんの作品をどう選んでいったんですか?

南:空山さんの作品と言えば、多くの人がセクシーロボットを連想しますよね。中でもマリリン・モンローのシリーズは有名じゃないですか。そんな中で、もっとも選ばなそうなものを僕が選ぼうと思って。今回、使用する作品候補の中には恐竜のものもあって、本当はそっちでいきたかったんじゃないかなって空気感も感じつつ、僕は「すいません、こっちで。僕がほしいんで」って言う(笑)。そもそも僕が作ってるブランド自体が、ある意味、利己的なブランドでもあるので、自分が着たいという意味で選ばせていただきましたね。

ー完成したアイテムを見ると、空山さんの絵のサイズが特徴的だと感じます。かなりミニマムにまとめてらっしゃいますよね。

南塚:空山の作品を使うにあたって、ここまで小さくしようとするという時点でなかなかですよ(笑)。

南:最初に2Gさんからご提案いただいたときは、もう少し違う形だったんですけど、色々考えた結果、今回は本当に全部決めさせてもらったんですよ。2Gチームに4回やり直してもらったり、僕らはグラフィックの位置だけで15回くらい修正を加えたりして。こういうのは実物でやってみないとわからないものなので、申し訳ないですけど、こだわらせていただきましたね。

Poggy:お陰で2Gチームも格段にプリントのレベルが上がりました(笑)。結果、自分のチームが南くんにすごくビビるようになるっていう……。

南:いやいや(笑)。なんかそんな風に言われることもありますけど、全然丸いですよ、身体と一緒で。

一同:

コンテンポラリーな見え方を洋服の上にどう実現できるか

ープリントの配置に関しては、どのように考えていったんですか?

南:単純に大きくプリントして、というやり方ではなく、すごくコンテンポラリーな見え方にしたいと思ったんですよね。アーティスティックな位置を考慮した空間的配置を洋服の中で出来ないかなって考えがベースにありました。あと、着たときにどう見えるかは、今回すごく考えましたね。だからサンプルが上がってきた時点で、人に着せて位置の修正を加えていったりしたんです。僕が、というよりも生産側の人は本当に大変だったんじゃないかと思いますよ。

ー着用時の雰囲気も重視して進行されていったんですね。

南:そうです。Graphpaperは1着に使用する生地の分量がすごく多いので、着る人によって肩線の位置や雰囲気が変わるんですよね。だから色んな体型の人に着てもらって確認していきました。最終的に僕が思う1番カッコいい場所にグラフィックを入れることができたと感じています。

ー今回のコラボコレクションは、どんな人に手に取ってほしいと思いますか?

Poggy:これは自分の勝手な解釈ですけど、空山さんの作品を使用した洋服は派手なものが多いと思うんです。そうなると、なかなか日常的に着る機会が少なくなってしまうと思うんですよね。そんな中、今回のコラボは普段の生活にあってもマッチするデザインに仕上がっていますし、今の日本人の着こなしに馴染むものになっていると思います。そういう意味でも多くの人の日常に溶け込んでくれたら、と。南塚さんは第1弾コラボの際のシャツ、かなり着ていただけていますよね。

南塚:そうそう、ヘビーローテーションですよ。

南:これも本当はもっと小さくしたかったんですけど、さすがに再現性がなくなっちゃうんで、この大きさに収まったという。でも、よくこのサイズ感で作ったなって改めて思います。

ー最後に。今回のコラボ作は、空山さんのファンも注目するものだと思います。90年代以降、ストリートブランド×コンテンポラリーアートの組合せは多く存在しましたが、現代において、アートを着るという感覚はどのようなものになっていると感じますか?

南塚:最近のハイプマーケット的なものの根底にある流れは、みんなが良しとするものに集中するというエネルギーがあると思うんです。でも、根本的なストリートの概念って、人と違うことをするっていう精神ですし、そのカッコよさを発見する目利き力が大事なんだと思います。そのようなカウンター的な精神性が、リンクしてるから空山の作品は愛されているのかなと。その流れの中で、アートに限らず洋服に関しても、少数だけど良いものを作っているという価値観が評価されることを目指して、物作りしていきたいですよねってことは、3人でもよく話をしましたよね。

Poggy:そうですね。僕は洋服が大好きでこの世界に入った世代ですが、洋服をたくさん所持するヒエラルキーはどんどん下がってきていると思っていて。アーカイブ的に残るものがほしいとか、持っていることで投資的な意味があるとか、誰かのためになるサスティナブル的な意味だとか。あとは、アートのように所持できる洋服っていうのも、この先大切になると思ってます。あと、違う見方からの考え方ですが、レオパード柄って定番ですよね。みんな着ていると思うんですけど、2000年代頭にレオパード柄が流行って、その頃はトレンドで終わると思っていたんですよ。それが柄としてずっと残り続け、今では定番柄になっているんです。バンダナ柄も同じような道筋を歩んでいて1つの柄として定着していくんじゃないかな、と。それと同様に、アートを着るということも一過性のトレンドではなく今後は1つの定番柄のようになっていくのかもしれないですね。

南:今回、空山さんとGraphpaperのコラボにおいては、同じ日本人という民族のアイデンティティがあったうえでやらせていただきましたけど、このプロダクト自体がアーカイブされるような物になっていくだろうな、という予感があります。そのベースとなるボディに僕らがなれたっていうのはすごく良かったと思っていますね。このボディがGILDANなのかGraphpaperなのかってことの真価は見せれたんじゃないかと。こういう考え方ってストリート的だしHIPHOP的なんですけど、考え方は共通しつつ、アウトプットの形がストリートブランドと今回のコラボでは異なっているという感じなのかな、と。僕個人の意見ですけど、アートとファッションの関わりって、そういう考え方のうえにあるんじゃないかと思います。

INFORMATION

Graphpaper × Hajime Sorayama

6月25日(金)~
P-ROOM THE WORLD OFFICIAL STOREにて先行販売開始

7月2日(金)~
2G TOKYO、2G OSAKAにて店頭販売開始

S/S Oversized Tee / Hajime Sorayama
¥23,100(TAX IN)
WHITE、GRAY、BLACK

Border S/S Pocket Tee / Hajime Sorayama
¥20,900(TAX IN)
WHTxBLACK

Broad Oversized S/S Regular Collar Shirt / Hajime Sorayama
¥33,000(TAX IN)
WHITE、GRAY、BLUE、BLACK

Wooly Cotton Wide Tuck Chef Shorts / Hajime Sorayama
¥35,200(TAX IN)
BLACK

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