Interview:chilldspot
「一曲毎に手応えを感じる」意欲作
2nd EP『around dusk』Release

Interview:chilldspot
「一曲毎に手応えを感じる」意欲作
2nd EP『around dusk』Release

chilldspotの躍進が止まらない。先日開催された初のLIQUIDROOMでのワンマンも満員御礼、ジャスティン(Dr)、玲山(Gt)、小﨑(Ba)による力強く繊細なプレーと比喩根(Vo/Gt)の澄んだ歌声が、会場をすっかりchilldspotの世界観で染め上げていた。そこで披露された2nd EP『around dusk』がこの度、リリースを迎える。日々の喧騒から逃れ、ひとり夜の訪れを感じたい黄昏時に、そっと寄り添う個性豊かな楽曲が収録された本作は、chilldspotにとって初となる試みが随所に散りばめられた、彼らを更なる高みへと導く一枚。進化の一途を辿るchilldspotはいま何を考え、どんな思いを本作に込めたのか。二十歳というひとつの節目を目前に控えた4人の、10代最後のひと時を記録する。

L to R→ジャスティン(Dr)、玲山(Gt)、比喩根(Vo/Gt)、小﨑(Ba)

「全曲リード級で、フルアルバム分くらいの思い出が詰まった作品」

ーまずは最近のchilldspot事情を教えてください!

比喩根:私はYouTubeでゲーム実況を観るのが好きなんですけど、最近、新たに気になる実況者を見つけたので、その方の動画を見漁っています。あとは、漫画を大人買いしました。5〜6作品分の新作をトータルで30巻くらい。「人形の国」、「メイドインアビス」、「チェンソーマン」などなど。でも、過去の話から読み直しているので、新刊までなかなか辿り着けません(笑)。

ジャスティン:僕は、物作りが得意な友達が多いので、映像作品を作りたい友達の手伝いでカメラを回したり、ラジオが好きな子とは一緒にジングルを作ったりしています。いまは、自分の中学と高校の友達を繋げて、みんなでひとつのZINEを作ろうとしている途中です。玲山は?

玲山:実はつい最近、トランペットを買いまして。初心者用の手頃なものを。

ジャスティン:え!? 知らなかった。

玲山:最近バタバタしていて、まだ一回しか触れていないんですけど、とりあえず音は出ました。練習して上達したら、ギターとの二刀流にしたい。

小﨑:僕は最近ギターを本格的に始めました。同じ弦楽器だけど、ベースとはまた違った難しさを感じています。改めて玲山ってすごいなと思いました。

玲山:じゃぁギターは小﨑に譲って、僕はトランペットやって。

比喩根:ベースはジャスティン、ドラムは私が(笑)。

ー2nd EPの『around dusk』がリリースされますね。“黄昏時”などといった意味を持つ言葉だと思いますが、それは今作のキーワードでもあるんでしょうか?

比喩根:今までのchilldspotは、なんとなく“夜”の雰囲気を漂わせた楽曲が多いと思うんです。なので、私たちの新しい一面、“昼”のような明るい曲も作ってみよっかみたいな話を当初はしていました。でも、今作に収録する曲を選ぶ作業の中で、やっぱり“夜”のバランス感も必要だなと思って。だから今回はその間をとって、”around dusk”に。一旦全てやることが終わって、ただ夜を待つだけのひと時や、学生だったら放課後だったり。そのなんでもない時間も、この曲たちと一緒に過ごして欲しいなという思いを込めました。

ー時間帯で考えると、1曲目の「yours」は朝のように明るくて、爽やかな印象を受けました。比喩根さんらしい、聴く人の心に寄り添ってくれる曲ですよね。

ジャスティン:この曲のデモを聴いたとき、“らしいな”って思いました。比喩根自身、こういうことを言って欲しいんだろうなみたいなのが出ているし、それが1番伝わってくる曲。等身大で正直な曲という印象です。

比喩根:恥ずかしい(笑)。結構、自分の思ったことを書いているつもりが、歌詞に共感したという声を貰ったり、玲山も「Weekender」の歌詞に対して、共感したって言ってくれて。自分の思っていることって、意外とみんなも感じていることなのかもと思ったんです。“いけないと否定ばっかの君”の部分で、私が思っていることかもしれないけど、(EPを聴いてくれている)あなたもでしょ?みたいな意味も込めて、“君”と投げかけました。

ー「Line」は軽やかなピアノが印象的な楽曲ですよね。chilldspotの作品でピアノが入っているのは珍しいですよね?

比喩根:初めてでした。この曲のアレンジが全然まとまらなくて、私たちの楽曲面でサポートしてくださっているディレクターさんに相談してみたら、ピアノのアイディアをくれて。ピアノが入ることで、一気にワクワク感が増して、曲にまとまりが生まれました。

ジャスティン:アレンジに関してはこの曲が1番苦労しました。いろんなパターンを作りましたね。

ー歌詞に“私大人になっちゃったのね”と書かれていますが、今年二十歳を迎える皆さん自身、そう感じることはありますか?

比喩根:こうしてインタビューをしてもらえるようになったり、聴いてくれる人が増えるたびに、「私ちゃんと責任を持って頑張らなきゃな」って、気が引き締まることが多くて。大人の仲間入りを実感させられます。ジャスティンは4月頭に、1番最初に二十歳になるね。

玲山:オレから見たら、ジャスティン大人になったなって思う。考え方とかが、落ち着いたなみたいな。

ジャスティン:真面目な話をすることが増えたのかもね。メンバーとも、友達とも。もしかしたら、それが大人になったってことなのかも。

小﨑:僕も、音楽に対する向き合い方が変わったなと自覚しています。真面目になった。高校の頃、軽音楽部で弾いていた、“ただ楽しい”みたいな考えはなくなって、音の強弱やドラムとの合わせ方とか、プロとして意識するようになりました。ライブでも、しっかりパフォーマンスすることを考えたり。

玲山:僕は子供っていいなって思う瞬間が増えたことに、大人になったことを感じる。

ジャスティン:どういうタイミングでいいなって思うの?

玲山:レコーディングに行くときとか、二子玉川の河川敷に幼稚園生がたくさんいて。めっちゃ平和だなって。

比喩根:それってすごく素敵だよね。高校卒業してまだ一年しか経っていないけど、もうJKの新語もわからないし。あっという間に10代が終わるね。

ー「夜更かし」は皆さんのそんな大人な一面を感じた曲でした。比喩根さんの声色も、また表情が違いますよね。

比喩根:私の中で「夜更かし」は、今回1番苦戦した楽曲です。感情の表現方法に関して1番こだわった曲である分、すごく悩んでしまい、他の曲は多くても3〜4テイクで撮り終わるのに、この曲だけ12テイクくらいやりました。いろんなことを意識し考えて歌うと、私の良さが出なくなると、周りのスタッフさんから指摘されていて。それからRECまであまり考えすぎないことを心がけつつ、でも自分がどんな感情で曲と向き合っているのか、聴いている人にそれが伝わらないと意味がないから。どこで切るのか、息継ぎの間だったり。そこは意識しています。あとこの曲は、ギターの音色の雰囲気がかっこいいよね。

玲山:いい感じのアナログ感を出していて。あえて音を歪ませる感じ。この曲は音を詰め込みすぎると、曲の雰囲気と合わないなと思ったので、ギターは間を持たせることを意識しました。なので、逆にひとつひとつのフレーズが際立っているのかもしれません。

小﨑:僕はこの曲から、“夜更かしを楽しむ” ような雰囲気を感じたので、高い音も間に入れて心が弾む感じにアレンジしています。

ジャスティン:ドラムで言うと、自分の好きな要素が1番詰まった楽曲かも。時々、歌詞に出てくる音をドラムで再現してみたくなることがあって。この曲の2番のAメロは、あえてドラムは叩かず、アンビエントな音だけで構成しています。歌詞に“風”などのワードが出てくるから、風でカーテンが揺れて、何かに当たっている音の雰囲気とかをシンバルで再現してみたり。今作の中ではこの曲が1番、そういった遊び心を取り入れています。

ー今作では、chilldspot初のコラボ楽曲が2曲も収録されていますよね。「music feat.LINION」はLINIONさんとの国境を超えたコラボとなりましたが、制作を進める上で、どのようなやりとりがあったんですか?

比喩根:私たちが一旦、日本語と英語だけの音源を作って送ったら、LINIONさん側がこれでやります!と快諾して、中国語を足してくれたので、データのやりとり自体は少なくて。初めて画面越しでお会いしたのは、曲が完成してからでした。初めてのコラボ楽曲だったから、自分たちはそれが普通だと思っていましたが、結構特殊な環境で作っていたんですね(笑)。

ーいつものchilldspotとはまた違う、どこか異国情緒漂う楽曲になっていますよね。

ジャスティン:2番のLINIONさんがメインで歌うパートだけ、改めて彼の楽曲を聴き込んだ上で、彼が好きそうな曲をイメージして作りました。なので、そこだけガラッと曲調を変えています。

玲山:僕らもLINIONさんを意識して作ってはいますが、どちらかと言うと、LINIONさんが僕らに合わせてくれた感覚ですね。

ジャスティン:実はLINIONさんからしたら、すごく大変だったのかも(笑)。

ー「your trip」では、ヨルシカのn-bunaさんとのコラボですね。n-bunaさんらしい疾走感のある楽曲ですよね。演奏も歌も、すごく難しそうだな…と思い聴いていました(笑)。

ジャスティン:間違いなく、1番難しかったですね(笑)。僕はこの曲がレコーディングに1番時間がかかりました。単純にスピードも早いし、いろんなフレーズも入っているし、テンポが半分になったり、静かになってから復活したり……展開が目まぐるしい曲なので、そこに追いつきながらレコーディングするのが難しくて、時間がかかったかなという印象です。

ーn-bunaさんとはどんなやりとりがあったんですか?

比喩根:元々デモはあって、ある程度メンバーでアレンジを模索してから、自分たちがこの曲に入れたい要素、「爽やかで、夏っぽくて」みたいなワードをn-bunaさんにお伝えして、一緒に確認しながらアレンジを加えてもらいました。レコーディングもn-bunaさんにディレクションしていただきながら、進めて行った感じです。ボーカルもいつもの感じとは全然違うので、歌っていて楽しかったです。私は、中学生の頃からn-bunaさんが大好きで、いつかご一緒してみたいと思っていたので、早速夢のひとつが叶いました。

玲山:最初の打ち合わせで、「ある程度僕らのライブでも再現できる楽器の中で作りたい」みたいなことはn-bunaさんにお伝えしていて。

比喩根:いつものヨルシカだとね、ピアノが印象的だから。

玲山:その中で音のバリエーションを出すために、ギターで特殊な音を出したり、新しい楽器の使い方や弾き方も学びました。n-bunaさんと一緒に音作りができて楽しかったです。

小﨑:ベースも今までchilldspotではやってきていない、n-bunaさんらしい速さや爽やかさがあったので、いつもの感覚で自分が作るベースラインとの違いにびっくりしました。今回学んだことを、今後の曲作りに生かしていきたいです。

ー最後に、改めて『around dusk』はどんな一枚になったと思いますか?

比喩根:全曲リード級な作品だと思う。コラボ楽曲が2曲あるのもそうだし、1曲毎に手応えがあって、全曲通して聴いても飽きない。いい塩梅でこの5曲がセレクトできたのかなと思う。全員キャラは立っているけど、チームワークを感じるみたいな。

ジャスティン:確かに、前作のアルバム『ingredients』よりもジャンルの幅は広いけど、まとまっているのかなと思います。あと僕は、小見山峻さんが撮影してくださったこのジャケットもすごく好き。今回、子供たちが自由に遊んでいる様子を撮影するのがテーマで、すでにシングルで出ている「yours」と「your trip」のジャケもそのときの1カットを使用しています。『around dusk』のジャケットは、子供たちが遊び終わった後の“木”を写した写真なんですけど、子供が去った後の空気感と、タイトルの“around dusk”がすごくマッチしている感じがしていて。後片付けがすごく大変だったのも、いい思い出です(笑)。

比喩根:そうだね。それも含め、このEPは5曲しか入っていないけど、フルアルバム分くらいの思い出が詰まった一枚だなと改めて思います。

INFORMATION

chilldspot
2nd EP『around dusk』

2022.03.30 Release

Track list
01. yours
02. line
03. 夜更かし
04. music feat.LINION
05. your trip

https://linktr.ee/chilldspot

Photography-Ryutaro Izaki
Text-Mizuki Kanno

POPULAR