配信ライブシリーズPark LiveからD.A.N.のライブ映像が公開中

先日、Ginza Sony Parkの配信シリーズ「Park Live」にてD.A.N.のライブがYouTubeにて生配信された。メロウかつSF的な世界観をお届けした模様は、Sony Park公式YouTubeチャンネルのアーカイブよりご覧いただきたい。

以下、ライブレポート。

配線がむき出しになったコンクリート打ちっぱなしの空間は、どこか退廃的な雰囲気をも醸す長方形の壁に囲まれている。ここは、去年9月末に一時閉園した「Ginza Sony Park」の地下。2024年の完成を目指して現在建て替え工事中だが、その一角を利用し昨年末より「Park Live」が再始動し実験的なライブパフォーマンスが定期的に繰り広げられている。
今夜、この場所で音を奏でるのは3人組オルタナティブバンドD.A.N.。昨年11月にリリースしたサードアルバム『NO MOON』をひっさげ、配信では初となる3人編成での出演だ。櫻木大吾(Gt, Vo, Syn)と川上輝(Dr)はうずたかく積み上げられた機材に囲まれた状態で横並びになり、市川仁也(Ba)はその2人と向き合う形でベースアンプの前に立つ。まずはアルバム『NO MOON』のラストを飾る表題曲からこの日のライブはスタート。月が焼失し少しずつ変容していく世界ついて歌うこの曲は、SF的なコンセプトのアルバムを象徴するナンバーであると同時に、何もかも変わり果ててしまったアフターコロナの世界を生きる、私たちに一筋の希望の光を指し示す楽曲だ。
オリジナル音源では打ち込みのリズムに生ドラムを融合させていた川上だが、この日はリズムマシンを駆使して重層的なリズムを繰り出し、そこに市川がうねるようなベースを重ねていく。櫻木はProphetのシンセを弾きながら、艶かしいファルセットボイスと地声を使い分けソウルフルなメロディを歌う。〈I don’t know I don’t know where am I now ? I don’t know where I’m going? where I’m going to?〉というフレーズは、コロナ禍で多くの人が感じている「不安」であり、人間誰しもが持つ「我々はどこからきて、どこへいくのか」という根源的な問いでもある。
ダビーなインタールードを挟んで演奏されたのは、「SSWB」。2017年にリリースされたEP『TEMPEST』冒頭曲で、オリジナル音源は躍動するベースラインと抑制の効いたドラム、小林うてな(Black Boboi)によるスティールパンが織りなすミニマルなアンサンブルが印象的だった。が、ここではリズムマシンの無機的なビートとオリエンタルな響きのシンセを前面にフィーチャーし、ベースは時にシンプルなフレーズで曲の重心を支え、かと思えば高音のアルペジオでボーカルに絡みつく。ストイックなまでに削ぎ落とされたサウンドプロダクションから、より多層的・重層的な方向へとシフトした『NO MOON』仕様のアレンジといえるだろう。
「Fallen Angle」は、『NO MOON』の中でも一際アグレッシヴなナンバー。ケモノの鳴き声をミックスした不穏なシンセをバックに、歌心たっぷりのベースと櫻木の弾くアンビエントなエレキギターが混じり合う。スモークの焚かれた真っ暗な空間をいく筋ものレーザー光線が切り裂いていく、映像作家Ryuichi Onoの演出も圧巻だった。
“安心は大概 簡単ではない”と歌う、まるで今の世界情勢を予感していたかのような「Borderland」を経てラストはアルバム『NO MOON』のラストを飾る「Anthem」を披露。「誰もが聴いて盛り上がってくれるような、文字通りアンセムみたいな楽曲が作りたかった」と以前、彼らにインタビューした時に櫻木が語ってくれたが、まるで点描曼荼羅のような幾何学的なベースラインやバレアリックなリズム、縦横無尽に飛び交うシンセサウンドが混じり合い、プログレッシヴな展開を見せるこの曲はD.A.N.の新境地。近年、UKラッパーに傾倒している櫻木が曲の中盤で披露するラップは、この日のハイライトといえるだろう。
「D.A.N.でした、ありがとうございました」と短く挨拶し、この日のライブは終了。“Revolution For Changes 今 時代の変わり目”と歌う、「Anthem」のメロディがいつまでも耳に焼きついて離れない。すでに確立したスタイルさえ手放し、変化していく彼らの姿にただひたすら胸が熱くなった。
Text_Takanori Kuroda

INFORMATION

Park Live

2日時:2022年3月19日(土)21:00~⁠
配信:YouTube(Sony Park公式チャンネル)
出演者:D.A.N.

アーカイブ視聴:
https://youtu.be/nWEY9QzEPBs