5月21日(土)、22日(日)、千葉・幕張メッセ国際展示場9〜11ホールで開催されたヒップホップフェス『POP YOURS』。各日それぞれのヘッドライナーにPUNPEEとBADHOPを迎え、2日間合わせて37組ものヒップホップアーティストが出演した本フェスは、2日間合計で約16000人の観客を動員。またYouTubeの生配信は約18万人が楽しんだ。
以下、レポート。 (文:宮崎敬太)
・DAY1
初日の記念すべきトップバッターはdodo。「足下が悪いなか今日はみんな来てくれてありがとうございます」と開演の挨拶。この日の関東地方はあいにくの雨模様。だが開場時間には入場ゲートに長蛇の列ができるほど多くのヒップホップファンが集まった。『POPYOURS』は全席指定でマスクは常時着用。大声、歓声、合唱は禁止。アルコール販売もなし。そんな中、dodoは“era it”、”Swagin like that“などを熱唱した。続いて登場したのはバーチャルYouTuberのピーナッツくん。「今日は面白がられにきたわけじゃなくちゃんとカマしに来たから!」と宣言。“グミ超うめぇ”ほかエモいラップをぶちかました。SKY-HIはMCバトル勃興期に小さいクラブでビール瓶を投げられたエピソードを回想。このビッグフェスに呼ばれた感謝の意を伝え“Brave Generation Remix”などをラップ。
全身からエネルギーを放出して場内の空気を一変させたDADA、東京のオルタナティブでミクスチュアな感覚を体現した(sic)boyに続き、NEW COMER SHOT LIVEには「ラップスタア誕生!」で注目されたCYBER RUI川崎の注目ラッパーCandee、ralphとの“Kick Up”が人気のJumadiba、東京のニューカマークルー・Sound’s Deliらがパフォーマンスしフレッシュな空気を見せ付ける。
ヴォカールとラップを融合させたスタイルのOZworldはスタイリッシュなトラップに乗せてポジティブなメッセージを届ける。“NINOKUNI”のイントロが鳴ると観客はスマホライトを点灯してレスポンスした。VaVaは6月1日にリリースされる約3年ぶりの3rdアルバム『VVARP』から“tAtu”を歌う。”Fruite Juice”ではCreative Drug Stroreの盟友・BIMが客演した。
金髪をコーンロウに編み込んだSALU。TikTokでバズった“Good Vibes Only”から日本語ラップのクラシック“RGTO”まで様々なスタイルでDAY1の中盤を盛り上げた。続く田我流はバックDJのMAHBIEに加え、サックスに後関好宏、トランペットに川崎太一朗という編成。stillichimiyaが全員集合した“やべ〜勢いですげー盛り上がる”や、“ゆれる”のアカペラなど感情を揺さぶるパフォーマンスを披露した。「今日は友達いっぱい連れてきてるから」と話したJJJは“Cyberpunk”でBADHOPのBenjazzy、“filter”でCampanellaを呼び込む。また“2024”ではバックDJも務めたKID FRESINOがマイクも握る。故Febbのラインに差し掛かると、まるでFla$hBackSの3人がメッセの舞台に立ってるようだった。
STUTSは登場するなり、MPCでファットなキックを連打。あまりの音の大きさに驚いた。そのグルーヴでBIMとRYO-Zをフィーチャーした“マジックアワー”などをプレイ。さらにドラマ『大豆田とわ子と3人も元夫』の主題歌“Presence”にBIMとDaichi Yamamotoを呼ぶサプライズも届けてくれた。
LEXはメインステージ、花道、突き出しのセンターステージ全体を使うハイクオリティなパフォーマンスを見せた。ライブDJはKM。ダンサーを引き連れ花道を歩きセンターステージでラップする姿はまさに新世代のスター。“Romeo & Juliet”などに加え、大ヒット曲“なんでも言っちゃって”にはJP THE WAVYをフィーチャー。その流れからWAVYのライブへ。1曲目はLEXとOZworldがゲストの“WAVEBODY”。“We Comin’”からはパートナーのNiina、Amami Queenらおなじみのダンサーたちが舞台を華やかにする。ラストは映画『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』のOST曲“BUSHIDO”で締めた。
KANDYTOWNのライブは同じ大所帯クルー:ウータン・クランさながらのパワフルさ(実際に“Paper Chase”をウータンの”C.R..E.A.M.”の上で披露)。ステージにはオカモトレイジの姿も。なんのてらいもなく徹頭徹尾クールを貫けるのが彼らの強みだ。“R.T.N.””One More Dance”などあついマイクリレーで終盤を盛り上げた。
DAY1のトリ、PUNPEEはオープニング映像から設定盛り盛り。2042年の未来からタイムマシンに乗って2022年の幕張にやってくる設定。映像が終わると後方の大型ビジョンが開いて、タイムマシンに模した実車が登場するなんともPUNPEEらしいオープニング。ビジョンを存分に使って『水曜日のダウンタウン』や『ODDTAXI』など自身が関わったコンテンツを惜しみなく見せていく。サービス精神の塊。名曲“Renaissance”をはじめ、OMSBをフィーチャーした“Life Goes On(あんじょうやっとります)”、スカート(澤部渡)が歌う“ODDTAXI”、STUTSとの“夜を使いはたして”など、視覚的にもエンタメ要素が満載で観客の疲れをぶっ飛ばすライブをかました。
・DAY2
快晴となったDAY2はダンスミュージックを取り入れたどんぐりず、バイブスをたぎらせるFuji Taito、ダークな声と卓越したラップスキルが魅力のRalphが登場。午前中からすごい勢いのライブが続く。NEW COMER SHOT LIVEにはSkaai、eyden、homarelanka、MFSが大舞台に臆することないパフォーマンスを見せた。
Hideyoshiは“TOKIOKI”で「今日はTOKYO YOUNG VISIONみんな連れてきたぞー!」と叫んでYoung Dalu、OSAMI、Big Mikeを呼び込んだ。人気曲“Innocence”では観客が一斉にスマホをかざし、会場と一体になって熱狂と幻想が交差するライブを作り上げた。kZmは一発目から“TEENAGE VIBE”で場内のテンションのギアを上げる。メッセの観客がぶち上がる様子を見て「俺らのやってるヒップホップでこんな景色が見られると思わなかった」と話す。“27 club”の前には観客全員を座らせてから合図で全員ジャンプさせる。フェスならではの一体感が強まった。
Daichi Yamamotoはソウルシンガーを思わせるスーツ姿。前半は“Let it Be”、“One Way”、“MYPPL”(KM)とグルーヴィなナンバーを畳み掛け、後半は“Afro”、“Everyday People”など内省的なナンバーをしっかり聴かせた。1stEP『Black de.ep』が発表された2008年に、MONJUが幕張メッセでライブすると誰が想像したか。“Blackdeep”などヘッズにはたまらないナンバーを連発して、輝くようなグルーヴで観客を揺らした。
C.O.S.A.は信念を落とし込んだ歌詞を魂でスピットする。“LOVE”、“Cool Kids”、“知立Babylon Child”、“Mikiura”、“Girl Queen”など新旧織り交ぜたナンバーで自身の多面性を表現した。Tohjiはのっけから“Higher”、“mallin’”というフロアバンガーを投下。Elle Teresaが客演した“GOKU VIBE”、“ULTRA RARE”、“POOL SIDE”といった代表曲から、“ねるねるねるね”、“Super Ocean Man”といった新曲まで、新世代のバイブスを炸裂させた。
5lackはCM曲になった“東京”に加え、2ndアルバム『WHALABOUT?』から“That’s Me”、1stアルバム『My Space』から“Hot Cake”といったクラシックを連発。観客を狂喜させる。続くのはBIM。バックDJにはCreative Drug StoreのdooooとDJ ZAI(SIMI LAB)、ギターは竹村郁哉(Yogee New Waves)、ベースはスズキシンゴ(Ovall)、キーボードはTAIHEI、ドラムはカンノソウ(BREIMEN)というスペシャルなバンドセット。“BUDDY”ではPUNPEEも登場した。一方¥ellow Bucksは東海のエネルギーを全身から発するカリスマ。“Ready or Not”のあと「去年は後半にいろいろ騒がしたけど、2022年も俺は騒がしていくぜ」と自信満々。名古屋の伝統から新たなヒップホップの怪物が生まれた。後半にはJP THE WAVYが登場して¥ellow Bucks版“WAVEBODY”を歌う。
Awichも凄まじいライブだった。暗転した会場に一筋のスポットライトが当たり、彼女の半生を歌う“Queendom”からライブはスタート。大切な友人・kZmを招いた“NEBUTA”では2人は熱い抱擁をかわし、観客がスマホのライト点灯した“Revenge”ではAwichも涙を拭った。また故郷である沖縄のことを歌った新曲“TSUBASA”には愛娘・Yomi Jahもラップで参加。大ヒットソング“Remember”はもちろんKEIJUと。最後に“BAD BAD”を歌った後、Awichは「『POP YOURS』、来年もやろう!みんながもう1人ずつ連れてくれば次は倍の広さでできるじゃん」と話し、Awichはもちろん観客もスタッフもみんな笑顔になった。
大トリはBAD HOP。メンバー全員にスターの風格が漂い、ステージ上での存在感が凄まじい。切り込み隊長Benjazzyが「最後まで盛り上がれるやつらは手を上げろ」と叫ぶと“Handz Up”から“Poppin”とアゲ曲を連発。ステージでも火柱が巻き上がる。“Chop Stick”、“Ocean View”、“Suicide”など新旧のさまざまなテーマのナンバーをこれでもかと連発した。また彼らの現在地を歌った“Bayside Dream”は、ヒップホップは社会の外にいた人たちが社会の中へアクセスするためのツールであることも実感させた。2日間にわたる『POP YOURS』を締めくくったのは“Kawasaki Drift”。「川崎市で有名になりたきゃ、人殺すかラッパーになるか」は、日本語ラップの新しい定番パンチライン。この1ラインにヒップホップのコンテクストが詰まってる。表面だけじゃない。ディグすればするほど新しい魅力が見つかる。ヒップホップは現代のポップカルチャーなのだ
INFORMATION
POP YOURS
日程:2022年5月21日(土)・5月22日(日)
場所:幕張メッセ国際展示場9~11ホール
出演者
DAY1:5月21日(土)
PUNPEE
DADA
田我流
dodo
JJJ
JP THE WAVY
KANDYTOWN
LEX
OZworld
ピーナッツくん
SALU
(sic)boy
SKY-HI
STUTS
VaVa
《NEW COMER SHOT LIVE》
Candee
CYBER RUI
JUMADIBA
Sound’s Deli
(AtoZ)
DAY2:5月22日(日)
BAD HOP
Awich
BIM (BAND SET)
C.O.S.A.
Daichi Yamamoto
どんぐりず
Fuji Taito
Hideyoshi
kZm
MONJU
ralph
5lack
Tohji
¥ellow Bucks
《NEW COMER SHOT LIVE》
eyden
homarelanka
MFS
Skaai
(AtoZ)
オフィシャルサイト
popyours.jp
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メールアドレス (事務局) info.popyours@spaceshower.net
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