Interview:kojikoji
1st Full Album『Mining』で綴る素直な感情

Photography_Ryohei Obama
Text&Edit_Maho Takahashi

Interview:kojikoji
1st Full Album『Mining』で綴る素直な感情

Photography_Ryohei Obama
Text&Edit_Maho Takahashi

kojikojiが全曲作詞を手がけた1stフルアルバム『Mining』を8月31日(水)にリリースした。“採掘”を表すタイトルの通り、⾃⾝の内⾯を掘り下げた本作は、これまでのkojikojiらしさを深めながらも、サウンドの幅をぐっと広げている。メランコリックに揺蕩うグルーヴから、優しく寄り添う歌声、そして乗せるフロウは軽快に。収録曲には、東里起とニューリーがトラック提供した楽曲や、大橋トリオが提供した楽曲に、原点ともいえる弾き語りを含む11曲が揃い、初回限定版CDにはLIQUIDROOMでの初ワンマンの音源が収録された。歌唱という表現留まらず自ら言葉を紡いだ経緯と、対峙したから見えてきた感情と音について。新たな階段を登りはじめたkojikojiの現在地を探る。

「プレッシャーに思うことをやめた」

ー6月のワンマンライブ以来ですね。初ワンマンとは思えないほど素敵な公演でしたが、改めていかがでしたか。

[Photo Report]kojikoji 1st solo show @LIQUIDROOM

自分の歌を聞きに来てくれた人だけの空間で、終始楽しく自由に歌えたことが嬉しかったです。後日ライブ音源を聞いたときに、かなり緊張していたのが伝わりましたが(笑)。10月には、今回のアルバム『Mining』のリリースツアーもあるので、その時はもっと余裕を持って歌いたいです。

ー今から楽しみです。そんなアルバム『Mining』について、ワンマンの時点でいくつか収録曲を披露されていましたが、制作はいつ頃スタートしましたか。

昨年の夏ごろからです。フジロックに遊びに行った翌日に、その思い出を歌にしたのが「true to true」で。苗場の景色を浮かべて作ったこともあり、音源にする前にライブのアレンジをニューリーと考えたときも、自然の中で聞きたい曲をイメージしました。

ー今作は全曲の作詞と大半の作曲をされていますが、手がけようと思ったきっかけは?

ライブを重ねていく中で、歌うことでの表現で魅せている反面、自分の言葉では感動させられていない気持ちをどこかに感じるようになって。「true to true」をマネージャーに聞いてもらったときに『kojikojiらしくて良いじゃん』と言われて、作詞に対して勝手にハードルを上げていたけれど、こういう感じで良いならできそうだなと思い、その頃から書きはじめました。

ー前作のEP『PEACHFUL』(2021)の際は、EP『127』(2020)を超えることに対するプレッシャーを感じていたそうですが、今回はそういったストレスなく制作できましたか。

プレッシャーに思うことをやめたという感じですね。書きはじめの頃は、とにかく作ろうという使命感もありましたが、書き終えてみて、比較を恐れるような出来になっていないと思えています。音作りやアレンジなども含めて、とにかく納得した物を作れました。

ー今回、編曲やトラックはどなたにお願いしましたか。

ニューリーには「true to true」、「poyon」、「wan-tan」、「味のないsummer」の4曲をお願いして、私が伝えた音のイメージに沿って作ってもらいました。その他の楽曲は、Small Circle of Friendsの東さん(東里起)にトラックを提供してもらっています。

ーここからは、楽曲ごとに伺っていきます。「poyon」は憂鬱さもありながら、タイトル通り“ぽよん”という擬音を感じさせるサウンドですよね。

ベースで鳴っている音は、最初に私が叩いて入れた音にドラムと歌を重ねたんですけど、音が“ぽよん”と鳴っていたので、データを保存するときにその名前にしたんです。トラックの音数を最小限にして、きっちりと拍に合わせているのに対して、歌声がそこにカチッと合わないフラストレーションが憂鬱さを演出してるのだと思います。

ー対して、「ペタッ」は鍵盤ハーモニカなども入って、アルバムのコメント『不安とじゃなく温かい涙と寝る日もあっていい』という言葉にぴったりな温もりを感じました。

ちょうどこの曲を作っているときに、その文章を書きました。今回、制作で行き詰まることも多かったのですが、少しの工夫で乗り越えられることにも気づけて。〈⼀歩進めば新しい壁が襲ってくるように⾒えていたけど 階段を作れるようになって帰り道が楽しくなった〉はそのことを書いています。鍵盤ハーモニカは、大橋トリオさんのライブに行ったときに、大橋さんが使っているのを見て個人的に買いました。ずっと使う機会がなかったのですが、「ペタッ」の暖かい曲調に鍵盤ハーモニカのような息で歌う楽器が合うと思い、ワンマンでのアレンジ版としてニューリーにお願いして。結果的に、ライブに来てくれていた東さんとも相談して音源にも入れることにしました。

ーそうだったんですね。「はぐれ雲」は大橋トリオさんが楽曲提供をされたそうですね。

そのライブにお邪魔させてもらったときに、『いつかご一緒にできたら嬉しいです』とお話はしていて、今回実現させていただきました。デモの段階で曲の世界観が広がっていたので、そこに合う歌詞を探りながら作る感じで。メロディに対して歌詞をつけるのは初めてだったので、時間がかかりました。

ーkojikojiさんの歌詞は、日常の描写と空想的な表現を行き来するようなイメージです。

あまり意識していませんが、自分の日常を歌にすることが多いです。例えば「wan-tan」は沖縄本島から石垣島を旅した時にワンタンを食べたときの話で、サビの〈すっと雲を飲み込んだ感覚〉は、ワンタンを漢字で書くと、雲呑(=雲を呑む)になることから来ていたり。「味のないsummer」は、事務所のみんなでご飯を食べたり、飲んだ後に事務所に向かう帰り道などを切り取っていて。今作の中で唯一、物語っぽく作詞したので、恋愛っぽいニュアンスに聞こえると思います。普段はあまり恋愛的な歌詞は書かないので、自分のことではあるけど自分事になりすぎないように、架空の恋人たちを思い浮かべて書きました。伸びやかに歌う曲は今までになかったので、ライブでやったら気持ち良いだろうなと思います。

ー前作はBASIさんの作詞ということもあり、俺という一人称や強めのリリックがいい意味での違和感を生んでいましたが、今回は私や僕などあらゆる一人称が馴染んでいる気がします。

全員が自分のことのように受け取れるにしたくて。この曲をkojikojiが歌うなら、“僕”にした方が自分事として聞きやすいだろうな、とか曲の雰囲気によって感覚的に一人称を使い分けています。

ーなるほど。今回は弾き語りも2曲入っていますよね。

ずっと弾き語りをやってきたので、ちゃんと残していきたいと思って入れました。「終着地点は秘密」は、アレンジを頼むことも考えていたんですけど、曲としての味が出ると思い、最終的に弾き語りにしました。もう一方の「⻑い朝」は、携帯のボイスメモで部屋のノイズ音を録っていたり、少ない音の中でいい雰囲気になったと思います。弾き語りから知ってくれている人も多いので、そこでアガってくれたら嬉しいです。

ー弾き語りからグルーヴ感溢れるサウンドまで、曲によってヴォーカルの幅も広がった印象です。

最近のライブなどで、『PEACHFUL』の楽曲をやるときも、音源より冷たい声色で歌っていたり。自分の中でクールに歌いたい気持ちがあるのかもしれないです。そういう意味で、「Rosewood」や「じっくりコトコト」、「陶芸」は最近のムードに近い気がします。

ー「じっくりコトコト」のグルーヴ感はさすがだと思いました。

今回の東さんのトラックは、BASIさんに提供するストックからビビッときたものを使わせてもらっていて。トラックを繰り返し聞く中で、自然とリリックが浮かんだのですが、BASIさんっぽいフロウが出てきたので、私も少しびっくりしました。もちろんBASIさんには到底及びませんが、気に入っています。

ートラックでいうと「陶芸」は、今作の中でも異彩を放っていました。

手をつけてから少し置いていたので、これが最後にできました。アルバムの構成を考えたときに、盛り上げを加えたいと思い、他の曲よりも跳ねるキャッチーな感じにしていて。サビが英語の曲を作りたかったので、そこにも挑戦しています。トラックの音も華やかでテンポも早いので、いつもと違うkojikojiが出せたと思います。

ー最後に、今後の展望を教えてください。

制作を通して、自分はどこで悲しくなり楽しくなるのか、素直な気持ちや考え方と向き合えました。歌詞を書くことで内面的な整理がついて、歌詞や作曲の楽しさも感じられたので、もっと表現できる幅を増やしたいです。ライブも今はまだ二人体制ですが、いずれは大きな会場で人数を増やしたセットも披露できたらいいなと思っています。コロナが落ち着いたら、台湾など海外でもライブをしてみたいですね。

INFORMATION

kojikoji
1st Full Album『Mining』

release:2022.08.31(Wed)
https://asab.lnk.to/kojikoji_mining
[track list]
01. true to true
02. poyon
03. ペタッ
04. Rosewood
05. wan-tan
06. 味のないsummer
07. 終着地点は秘密
08. ⻑い朝
09. はぐれ雲
10. じっくりコトコト
11. 陶芸

・通常盤【CD】
¥2,800(税別)/¥3,080(税込)
・初回⽣産限定【CD+CD】
¥3,500(税別)/¥3,850(税込)
恵⽐寿・LIQUIDROOMにて開催された初のワンマンライブ「kojikoji 1st solo show」のライブ⾳源のCDを加えた2ディスク仕様

-kojikoji 1st tour- MINING

2022/10/17(月)@LIQUIDROOM (東京都)
開演:19:00~ / 開場 18:00~
2022/10/19(水)@FUKUOKA BEAT STATION (福岡県) 
開演:19:00~ / 開場 18:00~
2022/10/20(木)@BIGCAT (大阪府)
開演:19:00~ / 開場 18:00~
 https://eplus.jp/sf/detail/3610640001?P6=980&P1=0402&P10=10

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