MUSIC 2022.12.16

Amazon Original HEAT Vol.10 連載HEATという音楽現象を追う:IMALU×SHOW-GO

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部
Photograph_Masashi Ura, Edit&Text_Ryo Tajima[DMRT]

『Amazon Original HEAT』(以下、HEAT)。各シーンで活躍する20人のキュレーターが、20組のアーティストをピックアップし、新たな楽曲とMVがAmazon Musicで公開されていくプロジェクトだ。
本連載では、キュレーターと選出されたアーティストとの対談を行い、HEATがどのような内容なのか、まだキュレーターがどのような思いでアーティストを選び、アーティストはそれにどう応じるのかをお届けする。
連載第10回目はキュレーターIMALUがSHOW-GOを紹介する。今回の企画が初対面という両者。IMALUが偶然ネット上でSHOW-GOの音楽を知ったことで、今回の組み合わせが実現した。
そんなわけで、今回はお互いがどんな存在なのかを自由に話し合ってもらった。

Curator_IMALU

Artist_SHOW-GO

私としてもHEATありがとうございます! という感じです
ーIMALU

ーまずは、HEATに対する印象や誘われたときのことを教えていただけますか?

IMALU:オファーいただいたときは純粋に嬉しかったです。他のキュレーターの方が選んでいるアーティストを見ても、どんな音楽を作る人なんだろう? って楽しみだったし、すごく良いプロダクトだと思ったんです。今、アーティストを見つけるのって大体ネットからだと思うんですけど、こうやって誰かが推薦する音楽を知れるのは、よりワクワクした気持ちになりますね。リスナーとして楽しめる企画だと感じます。

SHOW-GO:僕としては条件的にもありがたいですし断る理由が何もなかったというか。普段は納期などを気にせず音楽を作っている人間なので、HEATが初めて納期のスケジュールを設けたうえでの制作だったんですよ。今まで体験したことのない環境下での音楽作りになったので、刺激がありました。

IMALU:でも、私としては断られたらどうしよう? って不安はありましたよ。お会いしたこともなかったですし。

SHOW-GO:そんな! IMALUさんがキュレーションしてくれて本当に嬉しかったです。

ーお2人は今日が初対面になるんですね。

IMALU:そうなんですよ、ようやくお会いできる! と思ってすごく楽しみにしていました。最初、SHOW-GOさんのことは偶然SNSで見つけたんです。そこでヒューマンビートボックス(以下、ビートボックス)をしている映像を観たんですけど、スキルのすごさに驚きつつ世界観に引き込まれたんです。ファッションや映像などが完成されていて、すごく素敵だと思ったんですね。そこからWEBやSNSで、どんな活動をしているのか追いかけ続けていたんです。そんなときにキュレーターとしてお声がけいただいたので、真っ先にSHOW-GOさんの名前を挙げたんです。だから、私としてもHEATありがとうございます! という感じです。

SHOW-GO:ありがたいです、本当に。僕みたいな人間をピックアップしてくれて。

IMALU:初めてお話しするので色々聞いてみたいんですけどいいですか? SHOW-GOさんは北海道出身で今は京都在住なんですよね? 映像もどこか京都っぽさを感じる部分があって。

SHOW-GO:そうですね。今は京都に住んでいます。

IMALU:ビートボックスは昔からやっていたんですか?

SHOW-GO:14歳のときに始めたので9年前からやっていますね。それこそヒカキンさんが学校で流行ったりしていたので、YouTubeを観たりするじゃないですか。

IMALU:えっ! すでにヒカキンさんがいるっていう、そういう世代なんですか?

SHOW-GO:そうです。最初は音楽をしようと思ってやっていたわけではなくて、ビートボックスが上手にできたらクラスで人気者になれるかな? ってくらいの気持ちだったんですよ(笑)。そしたら、だんだんと楽しくなっていったという。

IMALU:きっかけはYouTubeだったとして、その後はどうやって練習していったんですか?

SHOW-GO:それもYouTubeなどの映像を観て、見よう見まねで繰り返しやっていったような感じなんです。

IMALU:ははぁ。それで、わりとすぐにハマったんですか?

SHOW-GO:じわじわハマっていった感じですね。何年か続けて、本格的にのめり込んでいったのは高校生の頃なんです。その頃、他に打ち込めるものがなくて気がついたらビートボックスが残っていたような状況です。

IMALU:そこから熱は醒めず、ずっと続けてきたんですね。

SHOW-GO:そうですね。僕は飽き性なんですけどビートボックスは飽きずにずっと続いていて今に至ります。

IMALU:へぇー! 楽器で曲を作ったりもするんですか?

SHOW-GO:楽器は鍵盤ハーモニカとかリコーダーくらいしか、学校で教わるようなものしかやっていなくて。というのも、そもそも音楽を聴かない人間だったんですよ。順番的にはビートボックスを始めてから音楽を聴くようになったんです。

IMALU:えっ!? ビートボックスから音楽に入った人って、まずは何を聴いたんですか?

SHOW-GO:入り口としてはゴリゴリのHIPHOPやEDMでしたね。オールドスクールのビートボクサーがスヌープ・ドッグの曲をカヴァーしていたりすることが多々あって、原曲を知らず聴いていて、後から逆に知るってことがあったんですよ。

IMALU:なるほど。ビートボクサーの音から音楽の世界に入っていったというのが面白いですね。今はけっこう聴くんですか?

SHOW-GO:今は聴きます! 昔と比べれば随分と色々聴くようになりました。

IMALU:私はビートボックスのシーンについて詳しくないんですけど、実際にやっているアーティストは増えてきているんですか? その辺りの事情はどうなのかな? って。

SHOW-GO:増えているようには感じますけど、僕自身、ビートボックスのシーンを深く掘り下げてチェックしているわけでもないので、よくわかっていないんです(苦笑)。自分のことしか考えていないというか。でも、自分の周りではちょっとずつ盛り上げってきているのかなって印象はあります。

IMALU:なるほど。実際にどうやってプロになっていったんですか?

SHOW-GO:最初はどっちかと言うと記録的な映像をアップしていたんです。そこから徐々に独学で編集を覚えてネットで配信したりYouTubeにアップするってことを高校生の頃からずっとやってきて。だから今もやっていることは変わらず、周りの環境が変化していって、気づいたら色んな人に観てもらえるような状況になっていったんですよ。これで食べていこうなんてことは考えていなかったので、今もプロなのかな? って感覚ではあるんです。むしろ仕事は別なことをやりたいと思っていたんです。

IMALU:えっ、そうだったんですか?

SHOW-GO:はい。デザイン系の大学に通っていてビートボックスは趣味という認識でやっていたんですけど、いつのまにか、こっち(ビートボックス)がメインになっちゃってたという感じなんです。そこはコロナ禍の影響もあって、2020年に学校へ行けなくなったときに休学して京都にプチ移住して、より真剣にビートボックスに向き合った期間があったんですよ。今思うと、それが大きかったのかなと。だんだんと音楽で忙しくなり、いつのまにか京都に住み着いて北海道に戻りにくくなり(笑)。

IMALU:いや、こうやってSHOW-GOさんの話を聞いていると本当に面白いです。じゃあ、コロナ禍になってからワッと変わっていったんですね。

SHOW-GO:そうですね。本当にコロナ禍きっかけで思いっきり人生が変わった気がします。

ビートボックスはやりたいことの1つなんです
ーSHOW-GO

IMALU:それにしてもすごいなと思うんですけど、今の人って絶対にSNSで発信しなくちゃいけないし、音楽だけじゃなくてYouTubeにアップするなら映像編集もできるようにならなくちゃいけないから、マルチな技術が必要になってくるじゃないですか。色々やらなくちゃいけないことがあると思うんですけど、それをどうやって学んで作れるようになっていったんですか?

SHOW-GO:動画編集も全部独学なんですけど、やっぱり最初は何もわからないし機材もなかったので、できることならば誰かにお願い気持ちはあったんですよ。だけど、高校生にはそんな予算なんてないし、自分でやらざるを得なかったんです。とりあえず中古のカメラを買ってパソコンを用意して、わからなくてもアプリケーションを開いて手探りでやるしかないって状態でした。

IMALU:そこで嫌にならなかったのがすごいと思いますよ。私なんて何かやろうと思っても難しくてわからないと、なかなか手がつかなくって。

SHOW-GO:それは僕もです。でも、同時は高校生でしたし衝動で突き動かされるようなものがあったんですよね。得体の知れない勢いというか。そういうものに後押しされて徐々に技術が身についていったんだと思います。あと、適当にやっていたから嫌にもならなかったのかなと。今からだったら、ちょっとしんどいかもしれないです(笑)。

IMALU:いやー、SHOW-GOさんって行動力がすごいですよ! そうやって今はアーティストとして生活しているなんて素晴らしいです。

SHOW-GO:そんな……ありがとうございます。でも、音楽以外にもまだまだやりたいことがあるんですよ。ビートボックスはその1つでしかなくて。

IMALU:他には何をやってみたいんですか?

SHOW-GO:それこそ僕も2拠点生活に憧れていて。今は京都と北海道を行き来していますけど、どちらかに人が集まる場所を作るようなことをやってみたいんですよね。というのも、音楽って実態がないものじゃないですか。1人で部屋に篭って制作するものだから、京都で生活しつつ、どちらかの場所で骨董品のセレクトショップをやってみるだとか、まったく逆のことをやってみたいなぁと漠然と思っていいるんですよ。

IMALU:今の話を聞いていても、SHOW-GOさんはこのままビートボックスだけを続けていく人間じゃないって気がすごくします。色々と好きなことをやって、それを実現していくんだろうなって。それが性格にも合ってるんでしょうね。そう感じました。

あえてビートボックスではなくトラックの曲で
ーSHOW-GO

ーIMALUさんにおっしゃる通りですね。では、ここで今回のHEATで発表した曲についても教えてください。タイトルが「LEGACY」ということですが、どんな曲でしょう?

SHOW-GO:HEATのオファーをいただいてから作った曲なんですよ。まずビートボックスの曲でいくかトラックに歌を載せるかで悩んで。他アーティストにビートボクサーがいなかったんで、そっちの方が面白いかなと考えたんですけど、今回のHEATではプロジェクトとして制作予算を用意してくれたじゃないですか。

ーそうですね。制作費をHEAT側が一部用意するというのは全アーティスト統一の条件です。

SHOW-GO:そんなの初めてのことでしたし、こういう機会だからこその曲を作ろうと考えるようになったんですよね。で、これは僕の個人的な見解なんですけど、ビートボックスの曲は予算をかけないで作ることに1つの美学を見出しているんです。そういうルーツですし。なので、ビートボックスの曲をHEATで出してしまっては、いつも通り過ぎて面白みに欠けるんじゃないかと。

IMALU:なるほど。

SHOW-GO:せっかくIMALUさんにもらった機会ですし、今までにない新しいことにチャレンジしてみたくて、トラックの曲にしたんです。HEAT自体はコンセプトの1つに次世代の音楽シーンに向けた部分があると思うんですけど、あえて「LEGACY」=遺産という逆の意味を示すタイトルにしようと思って。僕は昔から日本史や京都だとか、歴史あるものが好きなので、それをリリックにも落とし込んで表現しようと考えたんです。

IMALU:うん、こういう一面もあるんだなっていう意外性もあってすごくいいと思いました。良い意味で世界観がしっかりしている人なので、逆にこういう心地よい楽曲っていうのは、また新たな魅力が表現されているんじゃないかと感じましたね。トラックも作ったんですか?

SHOW-GO:そうですね。映像は知り合いに作ってもらいました。音は全部自分ですね、今回は。

日本史や京都が好きだってことが曲に反映されていますね
ーIMALU

IMALU:全部自分でやっちゃうっていうのがすごいんですよね。リリックの内容をもう少し教えてもらえますか?

SHOW-GO:過去の価値あるもの、受け継いでいくべきものを、これからの時代を生きる人間として忘れないでいようって意味合いのことを歌っています。日本の神話、例えば古事記や日本書紀などから着想を得ているんですよ。

IMALU:その辺りも歴史や京都が好きだったりするってところと通じるものがありますね。古事記や日本書紀とか、そういうところからインスピレーションを受けることは他の曲でもあるんですか?

SHOW-GO:あります! そういう本はよく読んでいて。インスピレーションを受けるという意味では、あとはアニメなどですね。

IMALU:へぇー! 日本史って、どの時代が好きなんですか?

SHOW-GO:古代史がけっこう好きなんですよ。古墳とか見ると気分が上がりますね。歴史の中でも実際に実在したのかどうか、本当にあった出来事かどうかが不明な部分もあるのが古代史で、ある意味ではファンタジー性も感じるしロマンがあるんですよ。

IMALU:そうなんだ! それは面白いですね。そういう観点からSHOW-GOさんの音楽を聴くと、また違った魅力に気づくことができますね。

ーHEATにおいて、他の組み合わせで気になるアーティストはいましたか?

SHOW-GO:僕はJUMADIBAさんが好きなのですごく楽しみです。ラインナップをもらったときに名前があって嬉しいなって。

IMALU:そうなんだ! それは楽しみですね。私は大野さん(大野俊也)が知り合いなので、ロックな印象もある人ですしキュレーションされたJIJIさんがどういう音楽をする人なのか気になっていたんですよ。あとは、窪塚さんも誰を選ぶんだろうって思っていたんで、また新しい音楽を知れました。今後公開されていくアーティストの楽曲もすごく楽しみです。

ー今回が初対面だったわけですが、今後何か一緒にやるとしたら、どんなことが考えられますか?

IMALU:SHOW-GOさんのこれからがすごく楽しみですし、今後も活動をチェックしていきたいですね。あと、SHOW-GOさんのライブを観たいです! 奄美でイベントとかどうですか? マイク1つあればできたりするわけですもんね?

SHOW-GO:わぁ、素敵ですね。奄美に行ってみたいです。身軽なんで、マイクさえあればできますから。

IMALU:実現できたらいいですね。まずはこれを機会に仲良くなりましょう!

SHOW-GO:はい! 是非お願いいたします。

ARCHIVES

Amazon Original HEAT Vol.09 連載HEATという音楽現象を追う:YATT

Amazon Original HEAT Vol.08 連載HEATという音楽現象を追う:EYESCREAM×ONENESS

Amazon Original HEAT Vol.07 連載HEATという音楽現象を追う:奥冨直人×Kabanagu

Amazon Original HEAT Vol.06 連載HEATという音楽現象を追う:Jun Inagawa×Frog 3

Amazon Original HEAT Vol.05 連載HEATという音楽現象を追う:GUCCIMAZE×Miku The Dude

Amazon Original HEAT Vol.04 連載HEATという音楽現象を追う:吉岡賢人×VMO

Amazon Original HEAT Vol.03 連載HEATという音楽現象を追う:大野俊也×JIJI

Amazon Original HEAT Vol.02 連載HEATという音楽現象を追う:Yosuke Kubozuka×Ken Francis

Amazon Original HEAT Vol.01 連載HEATという音楽現象を追う:Katoman×ego apartment

Amazon Original HEAT Vol.00 -連載HEATという音楽現象を追う 番外編- : Interview_Koji Yahagi(Amazon Music Content Production Director)

POPULAR