MUSIC 2022.11.04

Amazon Original HEAT Vol.04 連載HEATという音楽現象を追う:吉岡賢人×VMO

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部
Photograph_Masashi Ura, Edit&Text_Ryo Tajima[DMRT]

『Amazon Original HEAT』(以下、HEAT)。各シーンで活躍する20人のキュレーターが、20組のアーティストをピックアップし、新たな楽曲とMVがAmazon Musicで公開されていくプロジェクトだ。
本連載では、キュレーターと選出されたアーティストとの対談を行い、HEATがどのような内容なのか、まだキュレーターがどのような思いでアーティストを選び、アーティストはそれにどう応じるのかをお届けする。
第4回目はVMO a.k.a Violent Magic Orchestra(以下、VMO)。ブラックメタルと基軸にテクノ、インダストリアル、ノイズを一体化させて表現するアートミュージックプロジェクトだ。
キュレーターは我らがストリートスケーター吉岡賢人。この2組ならでは! としか言いようとないHEATでの表現について。普段の姿のままに話し合ってもらおう。
 

Curator_吉岡賢人

Artist_VMO(Left to Right: ゴルゴロス、メイヘム、ダークスローン、ザスター)

本質的に自由な表現をしているのが互いの共通項

 

ー賢人さんがキュレーターとしてVMOを選んだのはなぜですか?

吉岡賢人(以下、賢人):自分が知っているバンドの中で、VMOは1番インパクトがあるんですよ。ライブも音楽も。そのスタイルからは何よりも自由な空気を感じます。スケボーも音楽も自由なものじゃないですか。でも、自由、自由っていう割に、どこか型にはまっている感じがして本質的な自由には到達している人は少ないと思うんです。そんな中、VMOは絶対的な個性があるし、好きなことを表現している集団だと思って。そこがカッコいいのでHEATに呼ばせてもらいました。
 
ダークスローン:ああ……そんな風に深く我々の表現について解釈していただけるのは実にありがたい。
 

ーそもそもですが、賢人さんがVMOの存在を知ったのはいつ、どのタイミングなんですか?

賢人:最初にVMOを観たのはバチカ(EBISU BATICA)なんですよね。コロナ禍に入る前のタイミンでした。それ以前にダークスローンさんのことは知っていて、ライブをやるという話を聞いて遊びにいったんですよ。
 
ダークスローン:アパレルショップや映像系の知り合いを経由してケンちゃん(吉岡賢人)の存在は認知していたんです。何かやっべぇヤツがいるらしいって。
 

ーVMOとEBISU BATICAによる不定期イベント『KRASS』ですね。

メイヘム:そうです。あの時期は何度かEBISU BATICAとイベントをやっていましたね。
 
賢人:ライブが始まるとき、可愛い女の子(ザスター)が出てきて『メロディでも歌うのかな?』と思ってたら、すっごい叫ぶし、どんどんイカつい男が登場して、音もビャーッ! って。次々に人が飛んで(ダイヴ)くるし、うわ、やっべぇ!って。予想を裏切られた感じだったんですよ。めっちゃ興奮したっすね。
 
ダークスローン:わかりやすい。非常にありがたい。
 

ーVMO的にHEATに呼ばれたときはどう感じましたか?

ダークスローン:プロジェクトの話はケンちゃんから話を聞いていたし、このラインナップの中にVMOが入るとはね、と。スケボーと音楽という差はあれど、ケンちゃんとは本質的な部分で見ている方向が共通する部分があると思うので、親和性の高い組み合わせなんじゃないかと思います。
 
メイヘム:ケンちゃんのスケーティングも派手ですし、パッと見のインパクトが強い。誰が見てもカッコいいと納得させられる滑りじゃないですか。そういう強さがあるという意味で、我々とは共通項があるんじゃないかと思いますね。
 
ダークスローン:ここまで自由にスケートで自己表現しているスケーターもいないじゃないですか。私にとってのナンバーワン・スケーター=吉岡賢人だと考えているので、HEATは光栄な機会だと思いますし、彼の自由さにはVMOの音楽表現とのシンパシーを感じています。
 

出来ないことができる HEATは熱いプロジェクト

 

ーでは、HEATはどんなプロジェクトだと思いますか?

賢人:最高っすよ。
 
ダークスローン:間違いない。
 
賢人:こういうプロジェクトでは、やりたくても出来ないことが多々あることが多いじゃないですか。でも、HEATはアーティストがやりたいことを実現させてくれる企画だと思うし、なかなかここまで行き届いた展開のものはなかったと思います。HEAT、めっちゃ熱いっすよ。
 
ダークスローン:ありそうでなかった非常に斬新な企画だと我々も感じております。
 
賢人:今回、いくつかの候補をピックアップさせてもらって、その中からHEATチームが最終的なアーティストの決定を出したわけなんですけど、そこでVMOが選ばれたっていうのも超熱いです。VMOの良さが伝わったんだってことが嬉しいんですよ。
 
メイヘム:最高ですね。この機会を経てVMOが色んな人に知れ渡ることになったら嬉しいです。
 
一同:…………(沈黙)。
 
メイヘム:なに、嫌なの? お前たち。
 
ダークスローン:いや、まったくもって実にありがたい……ということを噛み締めているの。
 

ーアートミュージックプロジェクトでもあるVMOですが、どんな集団なのかを教えていただきたいです。まず、皆さんのお顔についてですが……。

ダークスローン:我々の顔に滲み出ているのはコープスペイント、死化粧です。死人ですから、当然こうなるわけです。
 

ーなるほど。みなさん、死人でらっしゃった。どのような音楽性なのかも教えていただけますか?

メイヘム:我々はブラックメタルと電子音楽の融合を表現しています。ゆえにブラストビートの上に叙情的なトレモロピッキングのギターフレーズが乗り、疾走感や絶望を叫んだりもする。そういう極端な表現を様々なエレメントと織り交ぜて提示しています。
 
ダークスローン:ブラックメタルは色で言うと寒色。そこにテクノを掛け合わせることで、結果的に、ああいうサウンドに昇華されているんです。自分なりのポップス表現でもあります。
 

ーそういった音楽性の背景には、どういったバックボーンがあるんですか?

ダークスローン:私、デジタルロックがものすごく好きで、中でもプロディジー(The Prodigy)が格別なんですよ。それしか聴いていない時期もあったぐらいです。特に「Firestarter」という曲が好き過ぎて、毎朝学校に行くときの家の扉を開けるサウンドトラックとして聴いていたんですよ。そんな生活を送りながら、将来的にこういう音を出したいと思っていたわけですね。そこから色んな人と知り合って、どんどん色んな知識が入ってきて、ブラックメタルと出会い、ケンちゃんと出会い、という流れですね。


 
メイヘム:あら、突然のプロディジー話。そうでしたか、そうでしたか。
 
ダークスローン:うん。


 
メイヘム:そして、我々が成り立って行った背景には、とある物語が存在するんです。
 
ダークスローン:ええ。もともと、なんだっけな。えっと、2099年だかに古代文明的な、退廃的した世界の中で宇宙人的な存在として……。あれ? 何のレコードを探しあてるんだっけ?
 
メイヘム:こうなったらもうプロディジーでいいんじゃないですかね。
 
ダークスローン:そっか。で、そこから感覚の合う仲間を集めてやってきて、急に可愛い子(ザスター)がやってきて。
 
メイヘム:つまり、謎に包まれているグループなわけです。
 
ダークスローン:そういうことです。
 
メイヘム:ライブ前にオープニング映像を流すことがあるんですが、そこに我々にまつわる物語を要所要所小出しにしている段階なので、まだ全貌を披露していないんです。この状況で、ケンちゃんがHEATに誘ってくれたというのは非常に意義深いことですね。また少し我々のことを世間に伝える機会となるのではないかと思っています。そういった意味で、“選ばせた”という側面もあるかもしれません。
 

ー“選ばせた”とは?

メイヘム:Amazon MusicのHEATチームが、なぜ吉岡賢人のセレクトリストからVMOを選んでしまったのか。それは、そういうコントロールがなされていたと考えられるわけですよ。我々によって。
 
賢人:通りで……。初めてライブを観たときに肩にズシッてきた気がしたんですよ。
 
メイヘム:話せるやっちゃな! (吉岡賢人も)だんだんと死化粧になっていくでしょうね。
 

VMOのネクストステージを表現したHEAT用の新曲

 

ーなるほど。〜死化粧は伝播する〜恐ろしい話です。では、今回のHEATでレックされた楽曲について教えていただけますか?

ダークスローン:タイトルは「sun revolves around the moon」。まだ、ケンちゃんにも聴かせていない出来立ての新曲で、HEAT用に書き下ろした楽曲です。そもそもタイトルも極秘です。
 

ー書き下ろし! では、HEATのプロジェクトとも紐づいている楽曲になっているんですか?

ダークスローン:紐づけるも何もタイトルにしようかと思ったほどです。我々は常に新しさを求めているので、この斬新な企画に合うように、そして我々自身もネクストステージにいけるように、そう考えて制作しました。ザスターのイメージを聞かせてもらえますか?
 
ザスター:上下のない青い亜空間の世界線で何かが1体で舞っている。
 
メイヘム:“翼をください”ってこと? 飛ぶの?
 
ザスター:まだ、飛ばない。翼はもうある。
 
ダークスローン:そう、翼はある。
 
メイヘム:あるの? 翼はあるんで〜っていう? 使わないけども?
 
ダークスローン:ま、ほぼほぼ四つ打ちです。

一同:笑。
 
ザスター:そして……。
 
ダークスローン:言うの? 言っちゃうのね? そう! トランスですね!! 何せ我々なんでトランスだけで終わらないですけどね。青いトランスだけども〜? っていう。
 
ザスター:自由。
 
メイヘム:きた! 言った! コンセプトは“翼をください”です。
 
賢人:そうなんすか(笑)?
 
ダークスローン:違う、“翼をください”じゃない! 「翼をください」はもう世の中にある!
 
メイヘム:ちょっとコンセプトが渋滞してきたんでね。もう楽曲解説はやめにしましょう。

ーえっ! は、はい。

 
ダークスローン:まとめますと、我々はブラックメタルなんで普段はブラストビートを使うことが多いんですが、今回は四つ打ちなんです。もちろん、そこにメタルのエッセンスはもちろん落とし込んでいるし、VMOのネクストステージを表現できているのでリスナーの方々にもご期待いただきたいところではあります。四つ打ちからの~? という展開になっております。
 

ーVMOにとって四つ打ちビートは初になるんですか?

 
ダークスローン:いえ、これまでにも何度かありますが?
 

ーそれは失礼しました。

賢人:楽しみっす。
 
ダークスローン:MVの方では、今の言葉を体現している世界観が描かれているので、それも合わせて楽曲の世界を知っていただきたいですね。現在制作中です。
 

ーそのMVには賢人さんが登場したりするんですか?

ダークスローン:サブリミナル的にですか? 10秒おきにケンちゃん、とか。サブリミナル・ケンちゃんですか?
 

ーいや、わかんないですけどもーーー。

賢人:オレ出たいっす! サブリミナル効果的にでもいいんで。
 
ゴルゴロス:それ、サブリミナルかどうかはさておき、できるかも。
 
メイヘム:やれそうです。湧いてきましたね、イメージが。

※インタビューの際、MVは制作途中だった

 

ーちなみに、HEATの他ラインナップで気になる組み合わせはありますか?

賢人:鋭児、この前一緒にやってませんでしたか?
 
メイヘム:対バンしましたね。鋭児のボーカル(御厨響一)とは一緒に酔っ払いを助けたことがあります。だから、彼らもまた、こちらの世界へやってくることでしょう。もう死化粧が出始めた頃合いかもしれません。
 
ゴルゴロス:Kabanaguくん、個人的に非常に楽しみですね。一緒にゲームやったりとかするので。
 
賢人:いや~、どれもいいですよね。全部気になるっすよ。
 
ダークスローン:そうね!
 
メイヘム:よっしゃ、みんなでアゲてこ!
 

ーちなみに、賢人さんとの協業という点ではどうでしょう? 今後何か一緒に活動する予定はありますか?

ダークスローン:ケンちゃんとはJapanese Super Ratというパンクバンドを一緒にやっていますね。
 
メイヘム:この間、O-EASTでライブ観ましたけどカッコよかったです。ステージからスケボーでバーンと降りていって。
 
ダークスローン:ケンちゃんは華があるからね。全然喉も潰れないし、驚かされっぱなしっです。こちらのバンドでも作品を制作中です。ある種、最速のアルバムを目指していて、ケンちゃんにしかできないことをやろうと思っています。
 
賢人:色々早いっすよね。
 
ダークスローン:百聞は一聴にしかず。乞うご期待あれ。

ARCHIVES

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Amazon Original HEAT Vol.00 -連載HEATという音楽現象を追う 番外編- : Interview_Koji Yahagi(Amazon Music Content Production Director)


 
 

 

 

 
 

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