MUSIC 2022.10.28

Amazon Original HEAT Vol.03 連載HEATという音楽現象を追う:大野俊也×JIJI

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部
Photography_Toyohiro Matsushima, Edit&Text_Ryo Tajima[DMRT]

『Amazon Original HEAT』(以下、HEAT)。各シーンで活躍する20人のキュレーターが、20組のアーティストをピックアップし、新たな楽曲とMVがAmazon Musicで公開されていくプロジェクトだ。
本連載では、キュレーターと選出されたアーティストとの対談を行い、HEATがどのような内容なのか、まだキュレーターがどのような思いでアーティストを選び、アーティストはそれにどう応じるのかをお届けする。
第3回目、キュレーターはフリーマガジン『FLJ』編集長(元『Fine』、『WARP』編集長)であり、ハードコアバンドDBXのVo、DJとしても活動する大野俊也。セレクトしたアーティストはシンガーソングライターのJIJIだ。
発表された楽曲もJIJIならではのロックなわけだが、本対談ではロックミュージックが本来持ち合わせているカッコよさについて、互いの関係性を交えながら話し合う。

Curator_大野俊也

Artist_JIJI

ロックミュージックにある本質的カッコよさを感じた

 

ーまずは出会いから教えてください。

大野俊也(以下、大野):出会う前の話なんですけど、あるときインスタのおすすめでポンと出てきたんですよ。これだけパンキッシュでロックな人もなかなかいないから気になったんです。それで写真をチェックしてみたら、部屋のポスターがザ・クラッシュ(The Clash)やザ・スミス (The Smiths) だとか、僕が10代のときに好きだった音楽だったので、すぐにフォローさせてもらったんです。
 

ーSNSを介して繋がったのが始まりだったんですね。

大野:はい。その後、僕が音楽ページをお手伝いしている『Sandy magazine』(湘南から発信されるビーチラバーの為のファッション・カルチャー誌)で、JIJIさんを取材する企画があり、インタビュアーとしてオファーいただいたんですよ。それで、彼女のお家で取材させてもらったのが最初です。
 
JIJI:大野さんのことは『Sandy magazine』の方から聞いていて、調べてみたら、すごすぎる人だと思っていたんです。取材のときも「あまりにもレベチだから気が引けちゃいます」って編集部の人に言っていたんですよ。恐れ多くて。
 
大野:そんな話をしていたんだ(笑)。
 
JIJI:そう。最初はドキドキしていたんですけど、お話したらイメージと違ってすごく気さくな方で。インタビューも本当に楽しかったです。
 
大野:良いことを言っていただいて嬉しいですよ。最初の取材で家にお邪魔したとき、ジャックダニエルのボトルが部屋に転がっていて、ますますJIJIさんのことをいいなと思ったんですよね。僕も以前はお酒が大好きで、小さなジャックダニエルの瓶を後ろのポケットに入れてクラブへ遊びに行ったりしていたので。
 

―JIJIさん、お酒はウイスキー派ですか?

JIJI:お酒によって酔い方は変わるものだと思うんですけどウイスキーが1番性に合っていると感じるんです。すぐに酔えるし、あのクセがある味が好きです。
 
大野:同じですよ、間違いないですよね。頭にガツンとくる感じがいいんですよ。お酒なんてそうじゃないと。ロックだってそうじゃないですか。頭からガツンとこないと意味がない。そういう意味でもJIJIさんを知ったときに、ロックが持っている本来のカッコよさを感じたんですよね。それも好きになった理由の1つ。あと、8月に『Sandy magazine』のイベントで、僕がDJをやってJIJIさんがライブをしたんですけど、もうそれがすごく楽しくって。アフターパーティまでずっと盛り上がりましたね。
 
JIJI:あれはすごく楽しかったですね。大野さんも私が好きな音楽を織り交ぜながらDJをしてくれて嬉しかったです。
 
大野:普段はロックやHIPHOPをかけることが多いんですけど、女性のお客さんが多い日だったのでハウスやJIJIさんが好きなロックのハウス・リミックスもかけたんです。そしたら、お客さんが意外と踊ってくれて、5、6人からインスタ交換してください! なんて言われたから、『DJってモテるんだ……もっとやらなくちゃ』って思った1日でした(笑)。
 
JIJI:あはは!!
 
 

HEATには生身の音楽体験があると思う

 

ーこうして、大野さんがJIJIさんをキュレーションされたわけですが、オファーがあったときに、JIJIさんはどう思いましたか?

JIJI:趣味として音楽を始めて探り探りでやっている状態なんですけど、何をやるにしても金銭的なことを含めて制約があるんですよね。どうやったら多くの人に私の音楽を聴いてもらえるんだろう? って、ちょうど悩んでいる時期に誘っていただいたんですよ。だから、私にはぴったりの企画だと思いましたし、すごく大きなチャンスをもらえたと思っています。これで、また前に進めるんじゃないかって。
 

ー大野さんはHEATのことを、どんなプロジェクトだと感じてキュレーターを引き受けることにしたんですか?

大野:今はSNS時代だから、どうしてもフォロワー数の多い人が注目されるじゃないですか。でも、SNSに力を入れていなくても業界にコネがない人でも才能がある人はいっぱいいるわけで、そういう人たちにとってすごく良い企画だと思ったんですよ。音楽の聴き方という点でも、キュレーターがアーティストを紹介するという形式が良いですね。昔はライブハウスやクラブで新しい音楽に出会ったり、先輩や友達からおすすめを教えてもらって「この人が言うんだったら間違いない! 」ってなったりするような、生身で知る音楽体験があったと思うんです。HEATではそれがまた新しいやり方で出来るし、僕からすれば、「こんなにカッコいいアーティスト(JIJI)がいるんだよ」って提示できたことが良かったです。
 
 

コロナ禍でずっと音楽が好きで生きてきたことを思い出した

 

ーこの機会に、JIJIさんがやっている音楽についても教えていただきたいと思います。モデルもやられてらっしゃいますが、どういう経緯で音楽を始めたんですか?

JIJI:昔からギターは弾いていたんです。何か音楽をやるために、というわけではなく時間があるときに趣味程度にやっていた感じだったんですよね。それが、ちょうどコロナ禍に入って家にいなくちゃいけなくなったときに1人で色々と考える時間が増えてきて。モデルの仕事もできなかったので曲を作ったりしていたら、すごく良いものが出来たので、せっかくなら誰かに聴いてもらいたいと考えるようになって音楽活動を本格的にスタートさせたんです。
 

ーコロナ禍によるステイホーム期間の影響が大きかったですか?

JIJI:そう。それまで1人で考え込むなんてことなかったんですよね。自由気ままに生きてきたので。仕事もせず家にいたら、自然と自分は何がしたいんだろうとか、今やっていることは本当にやりたいことなんだろうかとか考えちゃって。そんなときに親と電話していたら「小さい頃から好きだったよね、このバンド。今はギター弾いてる?」なんて話になったんですよね。結局、過去を振り返ると、ずっと音楽が好きでやりたいと思いながら生きてきたんだなって、そのときに思って。
 
大野:お父さんもロック好きなんですよね?
 
JIJI:はい、父がザ・スミスを好きで。小さい頃からドライブをするときはよく流れていたんです。
 
大野:JIJIさんの年代で、好きな音楽が80年代のロックが多いというのも面白いですよね。どうやって知ることになったんですか?
 
JIJI:もともとBerBerJin(ヴィンテージセレクトショップ。バンドTシャツも多数取り扱う)で働いていたので、Tシャツを売るにしても、そのバンドのことを知らなくちゃいけないと思って勉強していったんですよ。そしたらどんどん知識が身についていって気づけば大好きになっていました。フガジ(Fugazi)やトーキング・ヘッズ(Talking Heads)だとか、深く感情がこもっていて作った人のライフスタイルも含めた世界観が感じられる音楽をどんどんに好きになっていって。そういう音楽を聴いていると、私自身もそっちに吸い寄せられてだんだんとロックなライフスタイルになってきているような気がしています。
 
 

作り手の感情と世界観が楽曲に体現されている

 

ーそれでは、HEATで制作した楽曲について教えていただけますか?

JIJI:「Just a girl」という曲で大切にしてきたお気に入りの1曲です。歌詞は『今、あなたがここにいたらどうなっていただろう。戻ってきてほしいから私は生きて待っているよ』といった内容の、いわゆる失恋の歌ですね。リリース時期もハロウィンが近いので、MVはそれにちなんだ形で制作しているんですよ。ショートムービーっぽい感じでゾンビとか出てくるかも。
 
大野:ゾンビ? いいですねぇ! 「Just a girl」はすごくJIJIさんっぽい曲だと思いましたね。アップテンポなんだけども、パーソナルな一面が感じられて、JIJIさんの感情が曲にしっかりと落とし込まれてるし、アートとして表現されているからすごく良い曲だと思いました。ロックも色々あるけど、僕は明るいだけではなくネガティブな気持ちも音楽として表現することでアートに昇華しているものが好きで、JIJIさんの曲にはそれを感じるんですよね。ロックという音楽が持つカッコいい世界観が体現されていると思います。


 

ーちなみに、他のキュレーター×アーティストで気になる組み合わせはいますか?

大野:窪塚くん(窪塚洋介)がKen Francisをセレクトしているのが面白いですよね。僕もラッパーの子から教えてもらって、ヤバいと思っていたので楽しみですね。
 
JIJI:大野さんがそう言うなら、きっと間違いないんでしょうね。私も楽しみになってきました。
 

ー最後に、今後一緒にやってみたいことなどはありますか?

JIJI:大野さんが冒頭に仰っていたイベントが、私もすごく楽しかったんですよね。また、あんな風に一緒に音楽を楽しむ空間が作れたらいいなと思いますね。
 
大野:そうですね。僕は以前『CLUB ADDICT』というロックで踊るパーティをやっていたんですよ。JIJIさんと一緒に出たイベントでも思ったんですけど、HIPHOPや四つ打ちも楽しいけど、ロックで踊るのっていいなって。今みんなが思っているロックとは違う、カッコよくて踊れるロックを提示したいなと改めて思いましたね。そのイベントでもご一緒したいし、JIJIさんにはどんどんカッコいい曲を出してほしいし、僕の友達をどんどん紹介していきたいです。

ARCHIVES

Amazon Original HEAT Vol.02 連載HEATという音楽現象を追う:Yosuke Kubozuka×Ken Francis

Amazon Original HEAT Vol.01 連載HEATという音楽現象を追う:Katoman×ego apartment

Amazon Original HEAT Vol.00 -連載HEATという音楽現象を追う 番外編- : Interview_Koji Yahagi(Amazon Music Content Production Director)

INFORMATION

Amazon Original HEAT

JIJI「Just a girl」10月26日リリース

Amazon Original HEAT

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大野俊也
https://www.instagram.com/toshiyaohno/

JIJI
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