Interview:ざきのすけ。
Major 1st Single 「彼は誰どき」
今の心境から探るこれまでとこれから

Photography_Hiroki Asano,
Text_Chie Kobayashi,
Edit_Maho Takahashi

Interview:ざきのすけ。
Major 1st Single 「彼は誰どき」
今の心境から探るこれまでとこれから

Photography_Hiroki Asano,
Text_Chie Kobayashi,
Edit_Maho Takahashi

ざきのすけ。がシングル「彼は誰どき」でメジャーデビューを果たした。テレビドラマ『合理的にあり得ない ~探偵・上水流涼子の解明~』の主題歌である同曲に込めた想いはもちろん、ざきのすけ。というアーティストを深掘りするべく、自身に影響を与えたカルチャーについても話を聞いた。

僕自身のもがきを音に表すことで、
救われてくれる人もいる

──先日公式Instagramで「#ざきのすけを構成する9枚」と投稿もされていましたが、初めに、音楽以外のカルチャーでざきのすけ。さんに影響を与えたものについて教えてください。まずは映像作品。学生時代には映像制作もされており、実際歌詞にも映像や情景を想像させるものが多く、映像作品から多大な影響を受けていると思いますが、特にクリエイティブな面で影響を受けた作品を1つ挙げるとしたら何になりますか?

インスタにも挙げた「ハウス・ジャック・ビルト」ですかね。尖ったホラー映画ではあるんですけど、裏に隠されたテーマも含めてすごく影響を受けました。

──もちろんスリリングでハラハラするという面白さはあると思いますが、ざきのすけ。さんはホラー映画の魅力をどのように感じていますか?

ホラー映画って、唯一心にストレートでぶん殴ってくる感じがするんですよね。その心をガッと持っていく強さにワクワクします。音楽でここまで心をガッと掴むためには何をすればいいんだろうということも思います。

──様々な本からも影響を受けているそうですが、小説だとどのようなものが特にお好きですか?

よく読むのは近代文学とSF。自分の目で見ているものとは全く違う情景で、かつそこで感情が動いているというものが好きです。好きな作品はたくさんありますが、夢野久作さんの小説は全部おすすめです。ホラーっぽさというか、猟奇的な描写もあるのですが、奇想天外な展開で面白いです。

──ホラー映画しかり近代文学しかり、ざきのすけ。さんは、自分の見えているものとは違う世界をエンタメに求めているように感じました。

それは自分でも感じます。僕はたぶん好奇心が旺盛なほうで「見ていないものを見たい」と常に思っていて。それを映画や小説に求めているんだと思います。

──そういう中で、ざきのすけ。さんにとって音楽とはどういうものですか?

音楽に関しても、常に新しいもの、新しい音を聴きたいと思っていますね。だから僕自身もいろいろなジャンルの音楽をやるんだろうなと思います。

──新曲「彼は誰どき」はまさに新たなざきのすけ。さんの魅力が詰まった1曲です。この曲はメジャーデビュー曲であり、テレビドラマ『合理的にあり得ない ~探偵・上水流涼子の解明~』の主題歌です。楽曲制作にあたりドラマの原作を読まれたとのことですが、ざきのすけ。さんは『合理的にあり得ない ~探偵・上水流涼子の解明~』から、どのようなメッセージを受け取りましたか?

人を信じられなくなりながらも、どこかで人を信じようともしている。読みながらそのもがきに救われる自分もいて。もがくことの大切さをすごく感じました。また、僕自身のもがきも音に表すことで、それを聴いて救われてくれる人もいるのかなとも思いました。

──ご自身のもがきと重ね合わせたとのことですが、ざきのすけ。さんの経歴だけ見ると、まだ10代のときに一発撮りオーディション『THE FIRST TAKE STAGE』のファイナリストに選ばれ、着実にリリースを重ね、22歳でメジャーデビューと、順風満帆にも思えます。ご自身では今の状況をどう捉えているのでしょうか?

ありがたいことにスピード感はすごくあるなというのは僕も感じています。それゆえに、自分の環境や心の整理が追いついていないまま、どんどん先に進んでいる感じがして。そういう面での葛藤や焦りをずっと感じています。

──タイトルでもありモチーフにもなっている“彼は誰どき”はどこから?

原作を読んだときに、自分自身を見失っていた人が、もがいて自分自身を掴みとりにいくという、夜明けのようなイメージを抱いたんです。“彼は誰どき”という言葉の由来は、薄暗くて誰かわからない時間帯というところから来ていて。僕が原作を読んだときに抱いたイメージとリンクしました。

──配信リリースの際にはInstagramのストーリーズで「好きな歌詞を教えてください」という投稿もされていましたが、ざきのすけ。さんご自身が一番気に入っている歌詞を挙げるなら?

僕が一番本心を出したのは、1番のサビの<いつしかぼやけてしまった/一人称の明日を/心から願う夜明けを、探して>です。生きていく上で、いつのまにか自分自身の軸がぼやけてしまって、僕も“誰かにとっての自分”を生きることが増えていってしまっていたというか。“誰かにとっての自分”を生きるほうが簡単だと思うんです。だから僕も誰かから期待されている理想像を生きようとしてしまっていた自分がいて。だから「一人称の明日を心から願う」という歌詞は一番思い入れがあります。

──まさに先ほどおっしゃっていた、環境に追いつけていない焦燥感ですね。

はい、そうです。

──SNSではドラマをリアルタイム視聴している様子も投稿されていますが、実際にドラマで「彼は誰どき」が流れているのを見ていかがですか?

あまりに大きな出来事過ぎて、いまだにちょっと実感がないというのが正直なところで。でも主題歌について触れてくださるツイートを見かけると、ちょっとうるっときます。「頑張ってきてよかったな」と報われた気分になります。

──作曲はLASTorderさんが手がけています。初めてLASTorderさんからトラックを受け取ったときの印象を教えてください。

強い熱を感じました。トラックからも、前に向かっていくもがきみたいなものを感じたので、「これはいいものが作れるだろうな」と思いましたね。

──ざきのすけ。さんの作るトラックとはまた違う雰囲気の楽曲ですが、そこについては?

僕はずっとヒップホップやR&Bをやっていて、J-POPというか……ちゃんとしたメロディが乗る曲はあまり得意でないので、今回はすごく勉強になりました。

──それこそ得意のラップも入っていないですもんね。

はい。この曲で僕のことを知ってくださった方は、過去の曲を漁ったときに驚くだろうなとは思います。とはいえ、僕自身としては、メジャーデビューしたからには今後いろいろと変化を遂げていきたいなとは思っているので。

──ということは、今後はもしかしたらざきのすけ。さんが作った楽曲にもラップがないものや、ポップな楽曲が生まれるかも?

そうですね。いい塩梅を探りつつになるとは思いますけど。今まで僕はたぶん“踊れる”を考えて曲を作っていたのですが、今後は“歌える”を念頭に置いた曲も作れるようになりたいなと思っています。

──「ちゃんとメロディが乗る曲を作るのが得意ではない」とおっしゃっていましたが、メロディを歌うと、ざきのすけ。さんの歌唱力にも驚かされます。

ありがとうございます。個人的にはラップもボーカルもできるというのは武器だと思いつつ、そのバランスに関してはどっちに偏っていてもあんまり違和感がなくて。だからそのバランスは曲や作品によって変えていけたらと思っています。

──MVもまた面白い仕上がりになっていますね。柿本ケンサクさんがディレクションをされていますが、このMVにはざきのすけ。さんはどのように関わっているのでしょうか?

今回は監督の感性に完全に委ねたので、撮影中も「この作品は一体どうなるんだろう」と思いながら撮っていました。実際、面白いMVにしていただいてうれしいです。「目まぐるしく移り変わる日常の中で、自分が心底信じることができる道を探す」というテーマも曲にぴったりだと思います。そして僕はこのMVに、エイサップ・ロッキーのオマージュも感じて。僕はヒップホップ界隈にいたので、そのリスペクトも含めてすごく好きなMVになりました。

──デビュー曲となるこの「彼は誰どき」という楽曲は、今後ざきのすけ。さんにとってどのような存在になっていくと思いますか?

今の自分の心境も反映されている曲なので、出発地点でありながらも、何かあったときには立ち返れるホームのような楽曲になっていくんじゃないかな。

──シングルのカップリングには椎名林檎「丸ノ内サディスティック」のカバーが収録されています。まずは選曲理由を教えてください。

純粋に好きだからです。

──椎名林檎さんの楽曲の中でも「丸ノ内サディスティック」が特に好き?

僕はそれまで洋楽ばっかり聴いていたのですが、この曲を聴いたときに「日本語でこんなことできるんだ」とすごく新鮮な感覚になって。そこからJ-POPも聞くようになったんです。だから椎名林檎さんの曲の中で好きな曲はいっぱいありますが、この曲は日本で音楽をやっている上での自分のルーツになっている楽曲という意味で特別な想いがあります。

──アレンジもオリジナルとはガラッと変えていますが、カバーをするうえで意識したことを教えてください。

この曲をカバーしたいと言ったはいいものの、調べるといろんなパターンのものが出てきて。ほぼ全パターンやりつくされているんじゃないかと思うほどだったので、自分らしさが少しでも出せるように、でも原曲の世界観を崩さないようにというギリギリのラインを攻めました。

──今回のアレンジで一番のポイントを挙げるとしたら?

ベースとドラムがメインになっていく感じはけっこうこだわりポイントかもしれないです。あと、遊び心として2番のガラっと世界観が変わるところを入れたので、そこもこだわりポイントです。

──カバーして改めて気付いた「丸ノ内サディスティック」の魅力や発見はありますか?

唯一無二の温度感があるということですね。今回コードをガラッと変えさせていただいたのですが、コードを変えてもメロディが光るというのはとんでもないなと。さっき話した通り、僕は今メロディの付いた楽曲というものを課題にしているところがあるからこそ、そのすごさに言葉では表せないくらい驚愕しました。

──そんな思い入れの強い2曲が入った今作でメジャーデビューとなりますが、現在の心境はどのようなものですか?

正直、大きな出来事過ぎて実感がまだないですが、メジャーデビュー=プロの世界に足を踏み入れることだと思うので、その覚悟はちゃんと持っておかないといけないなと感じています。

──先ほど、状況に追いつけていないことが焦燥の理由の1つだとおっしゃっていましたが、今感じている音楽活動における1つのゴールや目標を教えてください。

実績的なゴールはあんまり頭の中にないですね。そう考えると、この葛藤は一生つきまとうのかもしれないです。表現を突き詰めるにあたって、自分の中で満足のいくものは一生作れないのかもしれないです。だからこそ進化することはたぶん一生やめないと思うので、常に最新でいることを目指していきたいなと思っています。

──常に最新でいるために、やっていることや大切にしていることなどはありますか?

インプットですね。あとは楽器をうまくなりたいと思っていて。ジェイコブ・コリアーやFKJみたいな、自分1人で完結するライブというものをいつかやってみたいと思っているんです。そのためには努力をし続けなきゃいけないなと思っています。

──DTMで曲を制作できる時代ですが、やはり楽曲を弾けるようになりたい?

そうですね。僕、結構アナログ人間で。自分の手でできないことをデジタルで補完するということに対して勝手に罪悪感を感じてしまうんです。だから「この曲、全部自分でできます」という状態でリリースするのが僕の理想です。

──ざきのすけ。さんの音楽のルーツがジャズなことも影響していそうですね。

あ、たぶんそれですね。プレイヤーとしての頂点みたいな方々を憧れて見てきたので、デジタルに頼らないみたいなマインドが生まれたんだと思います。

INFORMATION

ざきのすけ。

Major 1st Single 「彼は誰どき」
フジテレビ系 月曜10時ドラマ「合理的にあり得ない」主題歌
2023.05.31 release
配信:https://zakinosuke.lnk.to/h9E0th
CD予約:https://smar.lnk.to/5bLM3k_PKG

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