韓国新世代アーティストの肖像

Korea’s New Generation -韓国新世代アーティストの肖像-

韓国新世代アーティストの肖像

Korea’s New Generation -韓国新世代アーティストの肖像-

Korea’s New Generation

3 Qim Isle : ファンクの火種を守る探求者

Qim Isleは自身のやりたいことを、しっかりと貫くアーティストだ。それはSamuel Seoとの新しいコラボユニットであるProject Elbowにも、しっかりと反映されている。彼の中にはファンクネス、PrinceやGeorge Clintonから影響を受け、さらに本人曰く「ミュータントに」アップデートしたグルーヴが息づいている。

1988年生まれのIsleにとって、しかしPrinceやGeorge Clintonはリアルタイムに聴けるアーティストとは言い難い。「僕の父がブラックミュージックが好きで、特にJames Brownとかを。”Sex Machine”で「Get on up」って言っているのがBooty Collinsで、それをさらに辿るとGeorge Clintonに行き着いて、子供の頃からファンクばかり聴いていたんです」という。そこからIsleはPrinceに行き着き、テープ、レコード、CDでほぼ全てのアルバムをコレクトする大ファンになった。

서사무엘 (Samuel Seo), 김아일 (Qim Isle) – Mango MV

同世代で、そこまでPrinceをコンプリートする人はいなかったと話すIsleに、同世代の韓国で影響を受けたアーティストはいるかと尋ねると、「うーん..」という反応。そして返ってきた答えは意外なものだった。「あ、日本にはいます。KOHH。トラップのトラックだと、同じ感じのフロウになってしまうんですが、KOHHはちゃんと本人だけの発音のスタイルがあるから。音楽がグローバル化して、みんな似たような音楽をしてるじゃないですか。その中でも本当になんか自分だけのものを持ってる気がします。そういう人たちはみんな好きです」と。やはりオリジナリティーを、とても大事にしている。他にも日本の音楽について聞いてみると子供のときは、日本の音楽番組を違法ダウンロードして、SMAPなどを観ていたというが、決して「ジャニーズファンではなく、ファンキーな曲があるから観ていた」と念を押してくれた。

韓国で好きなアーティストとしてはMISOやDEANをあげてくれたIsle。さらに自身のテイストに近いアーティストとしてはViniciusやXin Sehaの名前も。これから自身がどんなアーティストになっていきたいかという問いには、「ファンクの火種を殺さず、残していけるアーティストになりたいです」と力強く答えてくれた。ただファンキーであればいいのかというと、それも違う様子で、自分で作りたいものは「ちょっとひねくれた感じ、アバンギャルドなファンク」だという。

今後のリリースプランについても、ただ音楽だけをリリースするのではなく、展示などイベントという形でやっていきたいと話すIsle。その優しくも、強い意志を感じさせる視線には迷いはないようだった。

photography_Tammy Volpe text_Tetsuro Wada translation Risa Sahira

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