MUSIC 2018.10.28

FOCUS : BANDERAS
1stアルバム『La Bandera』リリースインタビュー
from EYESCREAM NO.168

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

東京発の大編成サルサバンドBANDERASの1stアルバム『La Bandera』が8月10日にリリースされた。現在発売中のEYESCREAM10月号では、バンドのキーパーソンである小関一馬Izponへインタビューを決行。夜の荻窪でのリハ風景とともに掲載したその内容を、WEBでも特別にお届け。(この日はメンバー10人中6名の参加)

ーなぜサルサだったのか、結成した思いから聞かせてください。

小関一馬(以下、小関)「アフロビートやクンビアのバンドはいるけど、サルサはやっぱりちょっと敷居が高いというか。もっとストリートに根付いた、男くさくて悪そうなサルサバンドが出てくるといいなって思っていた。僕が中高生のときに聴いていたパンク、それこそ初期のブルーハーツとか(セックス・)ピストルズみたいなものが今ないなって。ブルーハーツみたいなサルサバンドがいたらいいのになってずっと思っていたから」

小関一馬(Pf)

Izpon(Bongo)

ー命がけでパンクを日本語に翻訳したバンド、ですよね。

小関「日本向けに解釈しているけど、かっこいい。ああいう感覚で自分たちなりのサルサができたらいいなって」

Tinnen(Cho,Per)

ーそもそもサルサに魅了されたきっかけは何だったんですか?

小関「もともと、90年代半ばにヒップホップDJをしていたんですけど、ジャズベースのヒップホップ経由でジャズも聴くようになって。そのうち自分で曲を作って演奏したいなって思うようになった。小さいときにピアノは習ってたんですけど、それはお遊戯レベルだったんで、ちゃんと勉強しようと。でもバークリー音楽大学とか行こうにもお金かかるな、どっか安く行ける場所ないかなって」

ーそれでキューバに!?

小関「ちょうどその頃、音楽を発掘していくなかでキューバ音楽に出会って、衝撃を受けたってのもありますね。調べていくと奥が深くて、ラテンのピアノもすごかった。で、キューバに行った。それが2003年かな。Izponとはキューバで出会った」

Izpon「その段階で俺はすでにキューバに2年くらいいたのかな。一馬くんは当時サーファーだったから、もっとガタイよくてシャープで、これはモテそうなチャラい感じのヤツだなっていうのが第一印象だった(笑)」

萩谷嘉秋(Vo)

藪本裕人(Ba)

ーIzponさんはどういった経緯でキューバに?

Izpon「俺は、コンガをうまくなりたくて。(人力トランスの先駆けである)AOAで何も知らないままパーカッションしてて、なんとなく人気も出てきたから調子乗ってたけど、あるとき突然、啓示が降りてきて。『ちゃんと勉強しなきゃ』って。で、すぐにAOAを辞めてキューバに行った。単純にコンガが生まれた国がキューバだったから。行ってみてサルサとか聴いたら、これ全然好きじゃない、って焦って。でも(キューバの民間信仰である)サンテリアの音楽に出会って、これはわかると。ミニマルな太鼓と歌がずっとループして、盛り上がってくると人がバタバタ倒れていく。『次のレイヴはこれだ!』って」

ーどうトランスするか。

Izpon「そう。BANDERASも俺のなかではその一環で。ヴォーカルの萩谷くんはサンテリアの専門家で、彼も同じ経験をしている。彼も俺もパーカッショニストで、キューバにいた頃はサンテリアの儀式で演奏していたんだけど、サンテリアって『太鼓と同時に歌も覚えろ』な世界だから、自然とヴォーカルもするようになるんだよね」

小関「で、結局キューバには3年くらいいたのかな。Izponやキューバ人と一緒にバンドをやったりもしながら」

Izpon「サンテリアの儀式は、華やかな会場じゃなくてゲットーの人ん家とかだった。儀式の中は厳かだけど、外は上半身裸でパンツ一丁のヤツらばっかりで、スリとかポン引きとかもちらほら混じりながら」

小関「Izponはゲットー中のゲットーにいたから」

Izpon「俺が太鼓習ってた先生とかバンバン物盗むんですよ。家に来てレッスンやってもらうんだけど、帰るときに先生のボディチェックしないと、絶対に何か無くなってる。『靴下膨らんでるぞ!』って(笑)」

小関「気づかないほうが悪い、っていう世界だから。隙を見せたほうが悪い」

Izpon「もちろんそんなキューバ人ばっかりじゃないけど。俺らが付き合ってたヤツらがそうだっただけで」

小関「でも、かっこいいプレイしてる人たちはそういう匂いした。悪くてかっけえなって、あえて付き合ったらほんとに痛い目に合う」

Izpon「そういうのをメンバーみんな経験してるから。俺らのなかでのラテンっていうのはそういうストリート感なんですよね」

ーそういった一連が“BANDERASのサルサ”の土台になっているんですね。

小関「で、自分たちの納得するサルサを追求していくと、いろんなストリートミュージックの姿勢とかマインドも入ってくる。今の10代や20代の人たちに『こういう音楽もあるんだよ』って示したい。もっとスリリングなリズムで、どことなくバカっぽくて、でも幸せになれる音楽」

小川岳史(Timbales)

ーどことなくバカっぽい、って最高ですね。

小関「それでいて、やってる人たちはそれを大真面目にやってるっていう。そういうバンドでありたいですね」


INFORMATION

『La Bandera』

発売中
https://www.salsadebanderas.com/

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