BEAMSとスペースシャワーTVによる映像プログラム、PLAN B。現在発売中のEYESCREAM No.172では、今年3月からの総集編として、Black Boboi、KID FRESINOのインタビューに加え、国内からAAAMYYY、D.A.N.、STUTS、Tempalay、TENDRE、台湾からは9m88(ジョウエムバーバー)が参加した特別編、PLAN B IN TAIPEIのフォトレポートを掲載中。WEBでもそのスペシャルダイジェストをお届けする。
Black Boboi × BINDIVIDUAL
“より気持ちよく音楽と向き合える環境”
ー今回のコラボレーションはBlack Boboiが所属する〈BINDIVIDUAL〉でした。BINDIVIDUALについて簡単に教えてください。
小林うてな(以降 U):去年私たちが立ち上げたレーベルなんですが、いわゆる「レコードレーベル」を作りたかったわけではなくて。もちろんレコードレーベルとしての機能も持っていますが、それよりも各々の制作をサポートし合ったり、悩みをシェアし合うことで、みんながより楽しく、より前向きに制作に取り組めるようにする、そういった環境を作っていくのが目的です。
ー所属しているメンバーは?
U:バンドはBlack BoboiとHOPI、kultcutz名義で音楽をつくっている及川君(※編注:祐天寺〈drlin.〉の美容師でもある)に、レーベルとバンド全般において様々なことをサポートしてもらっています。そしてビジュアル周りを担当してくれているアートディレクターのsemimrrowさんが所属しています。
ーレーベルを作ろうとしたきっかけは?
U:いつだったか、カフェでほいちゃん(ermhoi)と「ソロっていろいろと大変だよね」っていう話をしていた時に、レーベルやろうかなと思ったのがきっかけです。私自身、音楽にもっといい気持ちで向き合いたい、自分をとりまく音楽の環境を変えたいと思っていて、それで漠然とレーベルのようなものをやりたいと及川君に相談したら、ある日semimrrowさんを連れてきてくれたんですよね。
semimrrow(以降 s):及川君とは彼の美容室のイベントのフライヤーをデザインしていたこともあって知り合いで。ほとんど概要を知らされず打ち合わせに呼ばれて行くと、うてなが「レーベルをやりたい」と言ってきた。何かの縁だと思ったし「誘われたことはとりあえずやる」がモットーなので、そのままノリで加入しました。
ーBINDIVIDUALができたことで、音楽制作との向き合い方に変化はありましたか?
ermhoi(以降 e):私の場合、制作にかける時間や生活スタイルが全く変わって、以前のことを覚えていないくらい充実しています。これまでソロだったのが、Black Boboiが始まったことで、この3人でもっと多くの人に聴いてもらえるようにという感覚が芽生えたし、気持ちの面でも音楽に力を入れ始められた気がします。
Juli Shortreed(以降 J):もともと私は自分の制作に“終わり”を作れなくて、だから一度もソロの作品を世に出したことがなかったんです。自分一人の作業だと、その日によって良いと思うテイストが変わったり、新しいアイディアが浮かんだり、曲に決着をつけられなかったんですね。BINDIVIDUALをやることになってからすぐに色々な締め切りができて、まずBoboiの2曲ができた。その後、せっかくだからソロも作ろうとか、色んなデッドラインが決まって、ついにソロの曲もリリースすることができました。2人に相談してアイデアをもらいながら前に進めたことは、私にとって大きな収穫でした。
ー今回のPLAN Bでは、番組の中では初めてのフルCG作品でした。どのようにコンセプトを固めたのでしょうか。
J:変な企画もいっぱい考えたんですが、やっぱりまずはBoboiの音楽を聴いたことのない人にも興味を持ってもらいたいから、音とビジュアルでシンプルに見せようということになりましたね。
U:やっぱりまずやるべきはそこだねって。BINDIVIDUALのビジュアルイメージを担当してくれているのはsemimrrowさんなので、ディレクションも自然と彼にお願いしようということになりました。
s:今回僕は全体のディレクションとデザインコントロール、脚本を担当しました。CG部分もディレクションしていますが、実際に動かすのは別のプロに頼んでいます。
ー本編は1話〜4話まで通貫した物語が描かれていますね。これはどのように決めたのでしょうか。
e:semimrrowさんから、とってもSFなストーリーがみんなのLINEグループに送られてきたんです。「蜘蛛の糸」でしたよね?
s:はい。脚本は芥川龍之介の「蜘蛛の糸」をベースにしています。誰もが知っている蜘蛛の糸の物語をベースに、ドラマチックな部分や、Black Boboiが持つ音楽性、BINDIVIDUALが目指す未来を噛み砕いた脚本を作って、みんなに見せたんです。
ーなぜ蜘蛛の糸だったのでしょう。
s:Boboiの曲には最後に救われるというか、ダークなんだけど光が存在している、というイメージがあるんですね。いつも、曲を聴いたときには彼女たちに自分が感じたイメージを伝えるようにしているんです。今回だと、霧が濃いウェットな場所にいるのに、彼女たちには自分の声が届いている……その様子を「光」で例えられたらいいなと。
Black Boboi:いい話…!(笑)(この記事の)全編、この話でいいんじゃないですか。
s:(笑)。この本編で、主人公はずっと、何かを探している。それは最愛の人かもしれないし、自分が導かれるための光か、出口なのか。そもそもここはどこなのか、自分は誰で、何がしたいのか……。そういった、感情的・視覚的な葛藤に苛まれている状態から、救われていく様を描きたかったんです。
J:主人公が内なる自分と対面するというストーリーの中なのに、途中で私たちを実写で登場させるという方向に切り替わったじゃないですか。出すことに葛藤はありませんでした?
s:それはもう、もともとは他者が存在しない世界が作りたかったから、どう入れるかはすごく葛藤しましたね。それで色々と調べた結果「三美神」というローマの美人像があることを知り、この女神に彼女たちを例えようと思いつきました。三美神が司る「魅了・美貌・想像力」を「聴覚・視覚・感情」へと置き換えて、彼女たちが最終的に救いの極地へと持っていくという構成です。僕的にはこれは「SFラブレター」ですね。
ー今回のプロジェクトを経て、A面へフィードバックできるようなことはありますか?
U:semimrrowさんに脚本を作ってもらうにあたって、Boboiのみんなで曲ごとのストーリーを文章にして、伝えることにしたんです。その曲がどういうテーマをもった曲なのかって、ライブを重ねていくと慣れていって、意識が薄まりがちだし、努力なしでは全員の意識を揃えられない。そういう意味で、一つひとつ、改めて確認し合えたのは良かったです。
e:制作途中のCGの段階を見せてもらった時、CGの美しさと、自分たちの曲の空気感の交わり方がびっくりするほど美しくて、鳥肌が立ったんですよ。このヒリヒリした感じをライブでも再現したいなと思わされましたね。
s:CGの仕事はしてきましたが、一つのプロジェクトの中で映像監督として機能し、かつ物語をイチから作ったのは初めてで、貴重な経験でした。作っていく上で、Black Boboiと自分の感覚がマッチした印象があります。彼女たちの世界観は、実写で表現できることのほうが少ない。だからこそ、もっとこういう作品を作りたいなと思いました。
next》9月:KID FRESINO × Kazuhiko Fujita