BEAMS × スペシャの共同プログラム「PLAN B」Highlight : Season 8
from EYESCREAM No.174

Photography— Cho Ongo [EPISTROPH], Shinsaku Yasujima [EPISTROPH],Seiichi Kimura [東郷清丸], Kentaro Okumura [CHAI]
text—Kentaro Okumura

BEAMS × スペシャの共同プログラム「PLAN B」Highlight : Season 8
from EYESCREAM No.174

Photography— Cho Ongo [EPISTROPH], Shinsaku Yasujima [EPISTROPH],Seiichi Kimura [東郷清丸], Kentaro Okumura [CHAI]
text—Kentaro Okumura

東郷清丸 × kauai hirótomo
自分自身を再び発見する

ーkauai hirótomoとコラボレーションすることになった経緯は?

東郷清丸(以下、東郷):当時の僕のドラムで、アルバム「2兆円」のミックス・マスタリングをしてくれていたあだち麗三郎さんの紹介がきっかけで知り合いました。kauai君はあだちさんのバンドでビブラフォンを演奏していて「打楽器も叩けて音楽のセンスがいい」って聞いていて。後日、kauaiくんのツイッターでおもしろいドラムの叩き方をしてる動画を見て、フィーリングが合うんじゃないかと思ったんです。

kauai hirótomo(以下、kauai):僕は会う前から東郷さんの大ファンでずっと聴いていました。実はあの動画も、東郷さんが好きそうな感じを想像して撮ったんです。見てくれているかもしれないって。

ー今回は二人での楽曲制作が主軸でした。今回PLAN Bの企画で何をしようと思いましたか?

東郷:僕の曲作りは新しい演奏方法を試すことから始まることが多いのですが、その頃はギターを普通にギターとして弾く以外の方法で面白く使えないか、というアイデアをずっと温めていて。ツアーの中でkauaiくんと2人編成でのライブをしていたから、彼と一緒に楽器への新しいアプローチで曲を作るのが面白いんじゃないかな、と思ったのが最初です。

ーその制作のために、山梨での2泊3日の制作合宿を行いました。合宿でどんなふうに制作したのか教えてください。

kauai:ドラムセットを組むのに、1日目のほとんどの時間を費やしました(笑)。ドラムに張る皮やパーツをひとつずつ試して、一番合うものや一番いいチューニングを探しました。ドラムを組み直して次の時代の音を出したいとはずっと考えていたんです。こんなに自由にやれたのは清丸さんだからこそですね。

東郷:僕はアンプを設定したり、シンセサイザーで音を探したりしていました。途中、互いがイメージする音のリファレンスをかけたりしながら、ドラムセットが組み上がったのが22時くらい。そこから音を出しながら、彼のビートにあわせてギターを弾いたり。そんな感じでしたね。

ー1日目の終わりに焦りはありましたか?

東郷:ありましたけど、焦ってもしょうがないという気持ちもありました。僕のSoundCloudに普段からあげてる1分〜2分弱程度の曲は数時間で作っているし、心配だけど大丈夫だろうという気持ちだったかな。

kauai:曲の原型はいつできたっけ?

東郷:2日目にセッションしていく中で偶然見つけていったんだと思う。kauaiくんが叩いた4つ打ちに僕がベースラインをのせたらカッコよくて、そこに少し和音の進行をつけて、歌のメロディーを重ねてみたら、いけそうだなって。その後2人で構成を探ったんだよね。

ー「新文明」や「再構築」など、本編中には既存の概念に対して刷新を図るようなイメージを持つ言葉が頻出していました。

東郷:今振り返ると(合宿を実施した10月から取材日の12月半ばまでの)約2ヶ月の間にもいろいろな事があって、あの時僕が本当に思ってたことなのかは分かりません。恐らく、kauaiくんがドラムセットを組んでる時に言っていたことに同調したんじゃないかな。ただ、本当に自分が欲していることをもっと発見したいなとは思っています。kauaiくんのドラムの再構築が僕にすごく面白く映るのは、彼が「普通に」そうしているから。奇をてらっているのではなく、普通にやったらこうなった、っていうのが面白い。僕も自分自身の中のそういう部分を再発見したい、自分の声に気づきたい時間だったんだと思います。

kauai:僕はいろんな年代、ジャンルの音楽を聴くのが好きなんです。各年代にそれぞれの良さがあって、今自分が作る側なら、今しかできない作品を作りたい。全く新しいものを作りあげるというより、辿ってきた歴史の中から組み替えて、普遍的な音楽の魅力はそのままに再構築していきたいという気持ちです。今はいろんな時代にアクセスできるのがおもしろいから、(時代やジャンルを)飛び越えようっていう意識を持っています。

ー今回、制作のためにかなり古いバスドラムを購入し使用したそうですが、これもそういった意識の現れでしょうか。

kauai:1920年代の大きなバスドラムですね。確かに、一番象徴的かもしれない。本革が貼ってあって、音が野蛮で、情報量がなぜかとても多いんです。

東郷:可聴域の外にある音は人の耳には聴こえないけど、確かに振動していて、波がある。kauaiくんはそこに思いを馳せていて、このバスドラムにはそういった言い知れない魅力があります。kauaiくんは対極のものを共存させるのがすごく上手いよね。

kauai:個人的に、野蛮な音と、シンセのような洗練された音を組み合わせ試せた時の質感が好きですね。これからの時代はテクスチャー、手触り・肌触りがすごく大事だから、今はそういう音作りを目指しています。

東郷:僕は最新アルバムの「Q曲」が自分にとっての集大成になったから、また新しいことをイチから、より手応えが掴める形で突き詰めていきたいと思っています。基本は「音楽って面白い!」を体感できてれば幸せで、そこに基づいて歩みを進めることを徹底したい。出会う人たちみんなが人生を全うしてるから、勇気をもらっています。「よーし、俺も!」っていう感じで思ってるところです。

next》12月:CHAI × Hideto Hotta

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