8月11日にリリースされたyonawoの2ndフルアルバム『遙かいま』。彼らの新境地とも言える今作に収録されたリード曲「哀してる」は、揺るぎない“あい”が壮大な世界観で描かれた、yonawo初のバラード作品だ。曲の美しさも去ることながら、哀しい狂気を孕んだ女性を描いたMV、そして何よりも、その女性を演じた堀田茜の鬼気迫る演技に見惚れてしまった。実は以前からyonawoのファンであったと話す堀田と、yonawoのメンバーによる対談が実現、ちなみに両者が直接顔をあわせるのはこの日が初めて。「哀してる」の話からはじまり、好きなお笑い芸人や、今後の展望についてまで。表現者としてそれぞれのフィールドで活躍する堀田茜とyonawoの交流の場にお邪魔した。
「曲を聴いた瞬間、何故か涙が溢れて止まらなかった」ー堀田茜
ーまずは堀田さんがyonawoを知ったきっかけや、その魅力から伺っていきたいと思います。
堀田茜:3年前くらいにYouTubeで「矜羯羅がる」の映像を発見して、「すごいバンドがいる!」と思って、リピートして何回も聴いていました。「天神」、「浪漫」、「rendez-vous」とか、全部のアルバムが大好きです。もともとミクスシャーな雰囲気の曲は好きだったけど、私の中ではyonawoの楽曲が一際、異彩を放っていました。絶対、人気者になるだろうな〜と思っていたら、やっぱり、いろんなメディアで見かけるようになって。ファンとしては嬉しい反面、みんなに知られたくないな、みたいな思いもあったり(笑)。
yonawo:ありがとうございます!めちゃめちゃ嬉しいです。
ー「哀してる」MV出演のオファーを受けた際の、率直な感想を教えてください。
堀田:MVって、アーティストの方が時間をかけて紡いで、いろんな人を巻き込み形にした一曲を、視覚的に表現するってことだから、それに出演するのには覚悟が必要でした。だから私にとって今作への出演は大きな挑戦でしたし、それがyonawoの作品だなんて、こんなにも嬉しいことはないなと思って現場に臨みました。ずっとお芝居に興味があったのでいろんなオーディションを受けてみたり、コツコツやってきましたが、壁にぶつかることも多くて。「哀してる」を聴いた瞬間、何故か涙が溢れて、撮影中も止まりませんでした。そんな経験は初めてで、曲に凄く助けてもらいました。だから、私も全力で作品にぶつかっていけたし、全てを出し切れました。
荒谷翔大(Vo):僕はいい意味で、怖さをまとった作品だなと感じました。堀田さんの表情に鬼気迫る感じを覚えました。
野元喬文(Dr):すごく現実的な作品ですよね。最近のMVは作られた世界観というか、リアルではない気がして。「哀してる」のMVでは、そのフィルターが全部取っ払われていて、怖さや生の感情が全て伝わってきたし、だからこそ引き込まれました。
斉藤雄哉(Gt):MVって言うより、映画だった。
荒谷:あの何分間でそう感じさせるのは、相当すごいことですよね。やっと直接感想を伝えることができて、僕らも嬉しいです。
「どんな人にも流れている一本の真っ直ぐな線みたいな感情」ー荒谷翔大(Vo)
ーyonawoのみなさんは「哀してる」はどんな想いで作った楽曲だったんですか?
荒谷:どの曲に対しても作り始めは、コンセプトがあるようでなくて。曲が出来上がっていく過程だったり、インタビューなどを通して、無意識にあったものが、意識の中に浮かび上がってくる感じなんです。「哀してる」は詩先で、音は後からつけました。なんとなく、歌謡曲やバラードみたいなメロディーを作りたいなとは思っていて、歌詞には自分の中にある感情を素直に落としました。「涙が溢れた」って言っていただいて、めちゃめちゃ嬉しいです。
堀田:歌詞がめちゃくちゃ素敵ですよね。選ぶワードもそうですし、一曲を通していろんな情景が描かれている印象を受けました。MVの撮影中はずっとその曲が流れているので、普通は聴き飽きてしまいそうなのに、「哀してる」はずっと聴いていたいと思いました。それが曲の持つパワーですよね。
荒谷:哀愁の“哀”を選んだのがこの曲の大きな軸で、自分の中での“あい”のイメージを表現しています。愛と平和みたいなものとは違う“あい”が、僕にとってはしっくりくるんですよね。この曲を通して、それが誰かに伝わるかなと思って。
堀田:それは、恋愛を通しての感情ですか?
荒谷:恋愛って、一時的な感情なのかなと思っていて。この曲での“哀”は愛情ともまた違う、どんな人にも流れている一本の真っ直ぐな線みたいな。沈黙でありつつ叫ぶような、永遠につながる一瞬的なもののような、揺るぎない“あい”。どっちも対局の中にあるけど、誰にでもそんな感覚があるんじゃないかなと思っていて。僕としてはそこが一番心地よくて、美しいものだと思っています。MVを作るにあたり、監督にもそんな内容を伝えて、そこに監督自身の解釈も加わり、あの作品に繋がりました。
ー堀田さんは監督と、どんなやりとりがあったんですか?
堀田:最初に愛情と悲しみは表裏一体で、その繊細なラインを表現したいというお話がありました。あとは、愛するが故の悲しみって、ある意味狂気的なものを孕んでいるから、そういう人間らしさを表現したいとも話しました。私も自分の中の哀しみを凝縮して、はっと表に出す感覚で演じています。
野元:MVの堀田さんのメイクがすごく印象的だったので、気になっていて。
堀田:メイクで眉毛は消して、さらに映像で処理してもらってあんな感じになりました(笑)。あそこまでのメイクをしたのは初めてでした。そもそも監督とは、最後の最後で、「あ、堀田茜だったんだ!」って気づくくらい、誰だかわからなくさせたいって話をしていて。
野元:最後の方で、一瞬だけ手が出てくるシーンがあるじゃないですか?あの意図とかも改めて、監督に聞いてみたいなと思います。
堀田:結婚式を予定していた女の子が、旦那さんに先立たれてしまったというストーリーなんです。結局旦那さんに会えたのか、会えなかったのか……観てくれた方の捉え方次第という感じの表現ですよね。
ーラストの波に打たれているシーンは、息を呑みますよね。
荒谷:すごく綺麗でした。
堀田:無抵抗のまま波に打たれ続けることって、なかなかない経験じゃないですか?実は耳の中に砂がいっぱい入って、撮影から2ヶ月くらいたった今でも、お風呂上がりとかに出てくるんです(笑)。
荒谷:え、なんかすみません!
堀田:(笑)。いい思い出だなって思っています。
ーその他にも、苦労したシーンなどはありますか?
堀田:森のシーンとかですかね。すごくきれいで、気持ちの良い場所だったのですが、着物を着たまま森の中を這って進まないと行けなくて。なかなか大変でした。あとは、最後のシーンで夕日を狙っていたこともあり、結構時間がなくて。あの乱れたメイクから、ラストのすっぴんの状態に戻すまで、10分くらいしかなかったんです。バタバタだったけど、それはそれでよかったのかもしれないです。「哀してる」を最初に聴いたときは、今までのyonawoの曲とは違う印象を受けたし、世界観が壮大だったから、どんなMVになるのか想像もつかなかったけど、素晴らしい作品に仕上がっていますし、ほんとにどのシーンの撮影も、楽しい思い出しかありません。今日、直接みなさんから感想を聞くことができてよかったです。
ーここからはせっかくなので、お互いに気になっていたことを、ざっくばらんにお話ししていただければと思ってます!
堀田:yonawoファンとしては、仕事の話以外で、メンバー間ではどんな話をしてるのか気になります。みなさん、学生時代からのお知り合いですもんね。
荒谷:僕と雄哉が中学時代のサッカーのクラブチームが一緒で、雄哉が同じ高校になった、のもっちゃんと慧を僕に紹介してくれて知り合いました。音楽の趣味もめっちゃ合うけど、慧が芸人さんに詳しくて、僕も好きなんで教えてもらったりしています。慧は結構マニアックなところが好きだよね。
堀田:私もお笑い好きです! 一押しの芸人さんはどなたですか?
田中慧(Ba):銀兵衛とかですかね。マセキに所属してたけど、今はフリーになったのか。あとはゼンモンキーとか。「ワタナベNo.1決定戦」の王者ですね。僕はネタを観るのが好きなので、「M-1」や「キングオブコント」などの3回戦や準々決勝などを、片っ端から観てます。
堀田:すごい、事務所まで網羅しているんですね(笑)。帰ったらすぐ観ます。
田中:堀田さんはどなたが好きですか?
堀田:シソンヌさんの昔のネタを掘ったりするのは好きですね。地上波じゃ放送できないようなネタが、YouTubeに上がってたりするので。「お楽しみクジ」とか。
田中:あれ、やばいですよね(笑)。あんな独特でインテリな感じもするのに、そういうドリフ的なネタもあるのが面白い。まさか、お笑いの話で盛り上がるとは(笑)。
荒谷:堀田さんの好きなミュージシャンを教えてください。
堀田:ずっと好きなのは、クラムボン、ハナレグミ、フィッシュマンズですね。最近だと、STUTS、ラブリーサマーちゃん、showmore、EVISBEATS……いろいろ聴いています。
斎藤:日本のアーティストが多いですか?
堀田:割とそうですね。洋楽だと、トム・ミッシュやクリーンバンディット。ザ・ナインティーンセヴンティファイヴやレディオヘッドとか。学生のときに結構聴いていました。皆さんは普段、どんな音楽を聴いているんですか?
荒谷:みんな結構バラバラですね。僕は森進一さんの「おふくろさん」や中島みゆきさん、玉置浩二さんとか、歌謡曲が多いです。いいなって思った曲は、随時みんなで共有してます。
斎藤:なので、アレンジのアイディアを出すと、これあの曲から持ってきただろ、みたいなのがバレます(笑)。
堀田:yonawoの皆さんは最近めちゃめちゃ注目されていて、このアルバムを出したことで、またさらに話題を集めているじゃないですか。何か心境の変化などはありますか?
荒谷:あんまり実感は、ないかもしれないです。
野元:地元のスーパーに行ったら、「哀してる」が流れていて、それをSNSに載せたら、「うちの地元でも流れてた」みたいな反応をもらって。少し実感しました。
堀田:私も最近yonawoの曲をかけていると、あ!って言われます。それって、プレッシャーですか?それとも、モチベーションになりますか?
荒谷:僕は勝手にプレッシャーに感じてしまうタイプ。ライブとかもめっちゃ苦手で、歌詞とか飛ばんかなとか不安になる。
野元:目をつぶって音だけに集中すると、安心してプレーができるんですよね。だから、緊張したら目をつぶるようにして。
堀田:私もめちゃくちゃ緊張するタイプなので、本番前とかは絶対ひとりの空間を作るようにして、深呼吸をしています。あとは、頭の中を真っ白にすることを心がけたり。
荒谷:堀田さんは、どんな俳優を目指していますか?
堀田:コメディもシリアスも、幅広くできるような役者さんになりたいと思っています。芸人さんとご一緒させてもらう企画もあるので、バラエティのイメージは持ってもらっていると思いますが、そうじゃない一面も表現していきたいですね。なので、今回のMVの出演は、その第一歩にもなりました。yonawoの皆さんは、今後どうしていきたいみたいなのって、ありますか?
荒谷:バンド活動を続けていけたらいいなと思っています。
田中:止まらずに続けることって一番すごいし、簡単なように見えてたけど、難しいことだと思う。
荒谷:そういう人ほど、いろんな努力をしているんだろうなって。
堀田:本当にその通りですよね。芸能のお仕事も、それが一番難しいことだと思います。音楽的にやりたいことみたいなのは、あったりしますか?
荒谷:雄哉が最近、軸となるものを決めた上で曲を作っていく、コンセプトアルバムの様な、ミニアルバムを作ってみたいと言っていて、それはめっちゃ面白そうだなって思ってます。あとは一曲毎にやりたいことも違うので、その都度やっていく感じですね。
堀田:これからも、ずっと応援しています!