作品が生まれ、シーンとして広がっていくまでの裏側には無数の判断と選択、そしてそれを担う人たちの仕事がある。「BEHIND CULTURE」は、KDDI「au Short」サポートのもと、音楽・映像・ファッション・アートといったカルチャーの現場で、その“裏側”を支えてきた担い手たちに光を当てる連載企画だ。職業や肩書きの紹介ではなく、思考や判断の基準、そして次の時代のカルチャーをどう見ているのか。執筆は、カルチャーのさまざまな側面に光を当てるジャーナリスト/研究者の竹田ダニエル。
BEHIND CULTURE第6回は、音楽の視覚表現を拡張し続ける映像作家/クリエイティブユニット、tsuchifumazu(watakemi・佐藤海里)。野田洋次郎「PAINKILLER」やパソコン音楽クラブのライブ演出など、ジャンルを横断して熱い視線を集める二人へのロングインタビュー。現場で生まれる人間らしいグルーヴ、AI時代における手触りの重要性、そしてこれからのVJカルチャーが目指すべき未来。ストリートの地続きにある彼らのインスピレーションの源泉に迫る。

L→R / watakemi、佐藤海里
──以前のインタビューで、「支える側としての感覚」がtsuchifumazuという名前にもつながっている、というお話があったと思います。実際に活動を続ける中で、裏方であることに対する感覚は変化していますか。最近は映像作家ご自身の名前や個性も前に出る時代になっていると思うんですけど、そのあたりについてはどう感じていますか。
佐藤:裏方であること自体は、多分変わっていないと思います。ただ、やっぱりSNSとかいろいろなものが普及してきて、それぞれが自分たちの色を出していくこともすごく大事なことだと思うので。裏方でありながら、自分たちの活動も広げていくということは、tsuchifumazuとしても大切にしているところではありますね。
watakemi:結構、アーティストと一緒に世界観を作っていくようなポジションに少しずつ変化しつつあるのかな、という感覚はあります。
佐藤:そうですね。単純にVJというだけじゃなくて、演出家みたいなところまで役割が広がっていっている感覚はあります。
──一般的な監督個人というよりも、本当にお二人の感覚が混じり合って成立している面白さがあるなと思っています。長く一緒に制作を続ける中で、「一人ではできなかったな」と思う表現はありますか。
watakemi:結構、毎回そうかもしれないです。一人で作ってしまうと、多分どうしても独りよがりになってしまう部分があると思うんですけど、あえて二人の視点が入ることで、それが良い意味で引き裂かれるというか。一歩二歩先に行ける感覚はある気がしています。
佐藤:そうですね。やっぱり二人なので視点が違うというところはありますし、お互いが作ってきたものがぶつかって、化学反応じゃないですけど(笑)、そこで何か爆発するものは毎回あると思いますね。
──逆に、「一人だったらこの発想はなかったな」と思うような、お二人ならではのエピソードはありますか。
佐藤:でも、それこそ毎回な気もしますね。
watakemi:そうなんですよね。僕はCGをメインに作ることが多くて、佐藤はモーショングラフィックスや動かしの部分を担当することが多いんですけど、結構きっぱり担当を分けることもありますし、「このパートは一緒に組み立ててみよう」ということもあります。そういう時は、お互いが作ったものを見てフィードバックし合ったり、一緒に考えたりするんです。
佐藤:そういう中で、合わさった時に想像以上のものができることは結構ありますよね。

──二人だからこそ衝突したり、意見がずれたりする瞬間もあると思うんですけど、その違いは作品にどう影響してきましたか。
佐藤:基本的には喧嘩とかはないですね。もちろんフィードバックは結構しますし、「ここはこうした方がいいんじゃないか」みたいな意見交換はよくあります。
でも、芸人さんのコンビとかで喧嘩している人たちを見ると、ちょっと憧れじゃないですけど(笑)、自分たちはそういうことができないというか、人に怒れない性格なんですよね。
watakemi:喧嘩することは今後の目標かもしれないです(笑)。
佐藤:でも実際は、お互い信頼し合っているところがあるので、それぞれが作るものを信じて突き進んでいるという感じに近いと思います。
──ミュージックビデオやライブ演出など、ジャンルも規模感もさまざまなアーティストと関わられていると思うんですけど、その中で「tsuchifumazuらしさ」みたいなものはどこにあると思いますか。
watakemi:多分、明確なビジュアルとして「あ、これだ」みたいなものはあまりないと思うんです。ただ、僕らが制作する時にいつも考えているのは、アーティストサイドにどれだけ共感して作れるか、ということなんですよね。
アーティストが持っている面白さとか、その人ならではの魅力みたいなところにフォーカスして、そこから手を動かしていくことを毎回やっている気がします。だから、そのあたりなのかなと思ったりはしますね。
佐藤:確かに。寄り添うというか。
watakemi:そうですね。結構そこは大きいと思います。何かしら直接お話しする機会は必ずありますし、その上で制作を進めていく感覚があります。
──その中で、特に印象に残っているアーティストやプロジェクトはありますか。
watakemi:個人的には、野田洋次郎さんの「PAINKILLER」のミュージックビデオですね。普段は二人だったり、かなり少人数でミュージックビデオを作ることが多いんですけど、その時は外部のCG制作会社の方々と一緒に制作したのと、監督も僕と鈴木健太さんの二人体制で、普段とはかなり体制が違ったんです。
その時は映像としての組み立て方もかなり違っていて、正直すごく大変でした。でも完成に向かうアプローチの仕方として、いろんなやり方があるんだなということを学べたというか、かなり印象に残っています。
普段少人数でやる時は、最初に骨組みみたいなベーシックな部分をある程度作ってから、そこにどんどん肉付けしていく感覚なんです。でも「PAINKILLER」の時は、最初から完成形が見えていないといけないというか、コンテの段階からかなり細かい部分までイメージとして持っておかないといけなくて、そこは本当に大変でしたね。
佐藤:僕は横で見ていて、ずっとヒーヒー言ってるなと思ってました(笑)。
watakemi:そうですね(笑)。
佐藤:僕が印象に残っている仕事は、やっぱりパソコン音楽クラブの『Love Flutter』のライブ演出ですね。ほぼ全曲の映像や演出を担当していて、場所もSpotify O-EASTという大きなLEDを使える会場だったので、新しい試みもたくさんありました。
パソコン音楽クラブのお二人、西山さんと柴田さんからの期待も感じていましたし、それが良い意味でプレッシャーにもなっていて。その中で制作したので、最終的に大成功で終われたことも含めて、すごく印象に残っています。
watakemi:普段関わっている他のアーティストよりも、パソコン音楽クラブさんとはかなり長い間一緒にやっているので、毎回どんどん深いところまで話すようになるんですよね。
佐藤:関係性もどんどんアップデートされていくというか、毎回新しいことに挑戦しながら積み重ねてきた感覚があります。その分、クオリティも少しずつ上がっていったと思いますし、『Love Flutter』の時は本当にやり切ったなという感覚がありました。
──ライブ演出では、一曲ごとにイメージを重ねながら映像を作っていくんですか。
佐藤:そうですね。一曲一曲、その曲ごとにイメージを膨らませていきます。もちろんセットリスト全体の流れもあるので、その空気感は大切にしながらなんですけど、やっぱり重点を置くのは一曲一曲のクオリティですね。そこにフォーカスして作っていました。
──以前のインタビューで、おかもとえみさんの「Subway」について、ギミックっぽいものが昔から好きだというお話をされていたと思います。最近も、つい試したくなる表現や、意味はないけれど惹かれてしまう映像のようなものはありますか。
watakemi:惹かれてしまう映像。そうですね。個人的なところで言うと、自分が制作しているものの話になってしまうんですけど、前に人工生命的なものが好きだという話をしたと思うんです。何かしらの箱庭の中で、小さい生き物たちが生まれて、死んで、餌を食べたりする。大したことは何もしていないんですけど、そういう生き物のサイクルみたいなものが延々と続いていくものを、最近ちょっと試作したりしていて。
何の役にも立たないんですけど、ずっと見続けられる感覚のあるものが好きなんです。でも一体これは何に着地するんだろう、という感じもあって。日々、答えがあるのか分からないですけど、そういうものには結構ハマったりしていますね。
佐藤:僕は、Mellow Cruiseというヒップホップのフェスで神戸に行った時のことが印象に残っています。tsuchifumazuで全体のVJを担当していたんですけど、その現場が終わった夜に、ホテルの近くにあったインド料理屋にたまたま入ったんですね。そこでカレーを食べながら話していたんですけど、店内のモニターにインドのMVみたいな映像が流れていて。
インド料理屋って結構そういう映像が流れがちだと思うんですけど、それを見ていたら、丸ワイプとか、トランジションの仕方がすごく原始的で。逆にかっこいいなと思ったんです。
watakemi:大人数でめちゃくちゃ踊っているんですよ。しかもすごく豪華なセットで。なのにトランジションが丸ワイプだったりして、そこに予算をかけなかったのか、あえてなのかは分からないんですけど、それが結構衝撃的でしたね。
佐藤:面白かったですね。
watakemi:結構見入っちゃいました。
佐藤:久々に食らった映像だったかもしれないです。
──どういったものからインプットを得ることが多いですか。例えば意識的に見るようにしているものがあるのか、映画でも音楽でも何でもいいんですけど。
watakemi:僕は結構TikTokが好きで、TikTokで映像を見ることが多いです。iPhoneで一日一時間の制限をかけるくらい、結構見入っちゃうことがあって。SNS時代というのもあるのかもしれないんですけど、幅広い映像が簡単にいろいろ流れ込んでくるんですよね。
例えば海外のフェスで、海外のVJの方がどういうオペレーションで、どういう機材を使って映像を出しているのか、みたいなPOVの映像が流れてきたりするんです。それが結構、自分の知らなかったやり方で映像を出していたりして、勉強になることがあります。あとは日本国外のCGクリエイターの方たちのいろいろな映像のスタイルも流れてきますし、流れがかなり速いというか、日々移り変わっていくものをキャッチする上では、ああいう縦型スクロール系のものを見ていると、保存ボタンを押してしまうことが多いですね。
佐藤:思わぬ発見みたいなものは、SNSには多いですね。
watakemi:フォローしているところ以外からも、いろんなアルゴリズムがあるんでしょうけど、発見的な映像がかなり流れてくるので、そこは大きいかもしれないですね。
佐藤:僕は昔からずっとVimeoという映像のプラットフォームを使っています。国内外の作家さんたちが映像をシェアし合う動画サイトなんですけど、Staff Pickみたいにクオリティの高い作品が選ばれる項目があって、そこで海外の作家さんの映像を見たりしています。
そこから自分の好きな作家さんをフォローして、その人が何を見ているのかも見られるんです。好きな作品のリストを作ることもできるので、その作家さんがどういうものを見ているのかを、インプットとして取り入れたりしています。Vimeoはずっと昔から使い続けていますけど、Instagramももちろん使いますし、選択肢の幅が増えた感覚はありますね。
watakemi:確かに、昔はTikTokなかったですもんね。
佐藤:そうですね。
watakemi:あとはInstagramも、昔は保存機能がなかったですけど、今は保存機能があるし、しかもカテゴリー分けも結構できるようになっていて。
佐藤:名前をつけたりとかね。
watakemi:だからグラフィック、ミュージックビデオ、ライブステージみたいに、いくつかのカテゴリーを作って、細かく残す手段は増えてきたなという感覚があります。
佐藤:だいぶ手軽にはなりましたよね。
watakemi:昔はEvernoteとかにリンクを貼っていました。

──これまで制作してきた作品の中で、これは本当に大変だったなというMVや映像はありますか。技術的な部分でも、アイデアがまとまらなかったことでもいいんですけど、苦戦したからこそ印象に残っているエピソードがあれば聞きたいです。
watakemi:毎回、楽勝なことはないですね。
佐藤:毎回、何か乗り越えているものはありますね。
watakemi:結構、毎回の現場でライブがスタートする直前まで手を動かし続けることは多いです。これはVJの話なんですけど、ライブが開幕する直前まで修正していることが結構あって。それはもちろん好きだからというのもありますし。
佐藤:ギリギリまで良いものにしたいという気持ちはありますね。
watakemi:直近だとPOP YOURS 2026のlilbesh ramko君のライブ演出を、僕らtsuchifumazuでやらせてもらったんですけど、その時も僕と佐藤と、マネジメントの方と三人で一つの部屋に前日の夜から缶詰になって、朝方までひたすら映像を作っていました。
佐藤:そうですね。
watakemi:近くのアパホテルに泊まって、そこで缶詰になって作って、朝方そのまま現場入りして、実際に映像を流して。本当に直前まで映像を修正していました。
佐藤:それを本人に見せに行って、「大丈夫ですか?」って確認したりとか。あれはもう卒業制作みたいな感じでしたね。毎回ヒリヒリしながら作っています。
watakemi:計画性がめちゃくちゃないわけではないんですけど、踏ん張るところで、体力があるうちに踏ん張っているみたいな感覚ではありますかね。
佐藤:フジロックでもパソコン音楽クラブのVJを担当したんですけど、あれも民宿というかAirbnbみたいな宿があって、そこに何日間かいましたよね。
watakemi:フジロックが始まる一日前くらいかな。
佐藤:もちろんその前から映像制作はしていたんですけど、現場にデスクトップとかを持っていって、一部屋、共用スペースみたいなところを勝手に陣取って、制作部屋みたいなものを作ったんです。そこで缶詰というか、みんなで横並びに並んで、ひたすら映像を作り続けるみたいなことをやっていました。その時も結構ギリギリまでやっていた記憶があります。
watakemi:結局、本当に直前のタイミングだと、僕がRED MARQUEEのVJブースに機材をセットアップしている間に、Kairiはまだ宿で素材を作っていて、同時並行で、最終的にSSDを持ってきてもらうみたいなことをしていました。
佐藤:本当はFred again..とか見たかったんですけど、全然見られなかったというか(笑)。
watakemi:フジロックに行ったのに、配信を見ながら作業する、ということが結構毎日ありました。もちろん楽しくてやっているんですけど(笑)。

──先ほどもお話に出ましたが、いろいろな規模感やジャンルのアーティストと関わっていらっしゃると思います。チームによって現場の空気感や依頼のされ方もだいぶ違うと思うんですけど、制作現場やライブの現場で印象的だったこと、もしくはアーティストとのやり取りで考え方が変わった出来事はありますか。
watakemi:最近ですと、海外のアーティストの方たちと仕事をさせてもらうことが今年増えていて。NinajirachiさんというDJの方が来日された時に、僕らが東京公演のVJを担当させてもらったんです。その時はもちろん日本語ではなく、英語でコミュニケーションを取っていました。
僕は幼少期に少しだけ海外に行ったこともあって、多少英語は話せるかな、くらいの感じでいたんですけど、思っていたよりもちゃんとやり取りというか、コミュニケーションが取れて。その中で、日本にはない海外ならではの映像演出や見せ方、やり方みたいなものを、コミュニケーションを取る中でいろいろ新しく知ることができました。それで少し、海外の方に興味が湧くというか、視界が開けたような気がします。
──日本と海外の映像の違いはどんなところに感じましたか。
watakemi:もちろんアーティストにもよるとは思うんですけど、Ninajirachiさんの場合は、クリエイティブディレクターのような方が一緒に同行していて、その方から素材も提供してもらいつつ、結構こだわりというか、細かい指示もありました。
佐藤:結構、VJ卓の後ろに、我々の後ろにいて、指示が飛んでくるみたいな感じでした。でも、あれはすごくライブ感があって面白かったですね。
watakemi:具体的なところで言うと、スクリーンが黒い状態をあまり続けないでほしい、とか。あとは素材の一つ一つにしても、日本でああいう映像を作っている方はそんなにいないよな、と思うタイプの映像だったり、見せ方だったりして。日本にいたらあまり見ることのできないような映像たちだなというのは、すごく強く感じました。
佐藤:2024年にSTARTO ENTERTAINMENTのカウントダウンライブが毎年あったんですけど、それが年末から年始ではなくて、別の時期に変わったイベントがあったんです。そこでもう全員大集合みたいなライブがあって、そのオープニング映像を僕が担当しました。
クリエイティブディレクターのような立場の方が嵐の松本潤さんだったんですね。実際に打ち合わせをしていく中で、いろいろな方々とすごくやり取りをされているんですけど、あまりメモを取っていなくて。でも、的確に指示を出されているんです。
記憶力もすごいですし、全体を見る俯瞰力みたいなものもあって。彼自身もアーティストだと思うので、その二面性を見た時にすごく驚きました。世の中にはこんな人もいるんだ、みたいな感覚があって。自分がああいう人になれるかと言われたら多分なれないと思うんですけど、かなり衝撃を受けました。

──今の社会では、一瞬でつかむフックやキャッチーさが重要になってきていると思います。一方で、tsuchifumazuさんの作品には、ノイズや余白、ちょっとした引っかかりのようなものが残っている印象があります。その感覚は意識的に作っているものなのでしょうか。
佐藤:結構、読後感みたいなものは重要だなと思っていて。あまり多くを語らずに、最後に少し余韻を残すじゃないですけど、そういうことは割と意識的に作っていますね。
watakemi:二人とも、あまり見たことがあるものを作りたくないというか。
佐藤:綺麗にパッケージングはしたくないんですよね。ちょっとした気持ち悪さだったり、変な感じだったり、そういうところが作品に落とし込まれているのかなと思います。
ただ、ちゃんと映像の核となるフックみたいな部分は意識しています。キービジュアルになるような部分というか、そういうところは結構意識しているので、おのずとそうなっているのかなと思います。
──今のSNS時代、フルで見て初めて成立する感情や、切り抜きでは伝わらない空気みたいなものを残したい感覚もありますか。
watakemi:そうですね。そういうふうに組み立てて制作しているからこそ、残したい気持ちはあります。
佐藤:やっぱり最近のコンテンツって、一瞬で消費されちゃうじゃないですか。だからこそ、ちょっとでもとっかかりがあることが重要な気がしていて。何かしら視聴者だったりお客さんの印象に残る作品になってくれればいいなという感じですね。
──質感を扱いながらの作品には、どこか手触りのようなものも感じます。AIや生成ツールが進化している中で、人が作る映像に残るものは何だと思いますか。
watakemi:個人的には、作り手の手垢というか、汗というか、血というか。生々しい温かみというのか分からないですけど、そういう癖みたいなものが必ずあるのかなと思っていて。そういうものは、まだAIにはできないと思います。
佐藤:さっき話したフジロックでの追い込みみたいなことって、多分すごく人間の感情に左右されるパートだと思うんです。最後の最後まで絞り取るじゃないですけど、頑張って作り切るみたいなところはAIにはできないような気がしていて。
具体的に言うと、アニメーションのカーブの追い込みだったり、最後の最後までこだわるところだったり。そういう部分が人間にしかできないところなんじゃないかなと思ったりします。

──以前のインタビューで、幼少期の金属の端材のお話などもお伺いしたと思います。重複してしまっても全然問題ないのですが、今振り返ると、そうした経験が今の制作につながっていると思いますか。
佐藤:僕は結構ずっと工作が好きだったんですよ。昔から好きで。ベイブレードって、僕らが小学生の時にすごく流行ったんですね。本物も一個持っていたんですけど、いっぱい欲しくて、段ボールをチョキチョキ切って、レイヤーをいっぱい重ねて、爪楊枝を刺して、回すコマみたいなものを大量生産していました。
昔から作ることはずっと好きで、それが今にも生きているんじゃないかなと思います。いろんな人に配っていましたね。恩着せがましい子どもだったと思います(笑)。
watakemi:僕は小さい頃にレゴをかなりずっとやっていました。住んでいた環境が、ちょっと危ない地域で外に出るのが怖かったので、結構ずっとレゴをやっていたんです。
今思えば、最近の制作の流れとしても、最初にベースになるものを作るというか、骨組みみたいなところを作ってから、肉付けを徐々に足していって、どんどん組み上げていくみたいな過程があります。それはひょっとしたら、小さい頃にレゴで遊んでいた時に、街を作ったり、家や道路や車を勝手に作ったりしていたこととつながっているのかなと思います。
最初にラフな感じで作って、そこから足していくみたいなことをやっていた記憶があって、そういうものを作る過程みたいなものは、今もそこまで変わらないのかなと思ったりしています。
──普段どんなものを見たり、どんな場所に行ったりする中でインスピレーションを受けることが多いですか。また、日常の中でつい気になってしまうものみたいなものがあれば聞いてみたいです。
watakemi:一時期、クルーザーにハマっていた時期があったんです。スケートボードの板にソフトホイールを付けた、音が静かで滑りやすさに特化した乗り物なんですけど、それで例えば新宿から渋谷までの間を、山手線に乗らずに移動するみたいなことをよくやっていて。
そうすると、普段だったら見逃してしまう景色とか場所を観測しやすいんだな、ということに気づいた時期があったんです。かわいいお店の雰囲気だったり、面白い看板だったり、そういうビジュアル的なところがインプットになる瞬間が結構あって。
だから今でも、時間がある時は近い距離でもあえて遠回りしたり、別の手段で移動したりすることがあります。昨日通った道を通らずに別の道を歩いてみるとか。そうすると、古いグラフィティが見つかったり、面白いポスターが貼ってあったり、変な書店があったりして。そういうところから影響を受けることは結構ありますね。

佐藤:僕は、人の動きを見ていることが多いかもしれないです。この人は今何を考えているんだろう、みたいな想像をするゲームを、頭の中でついやっちゃうというか。
どういう家庭があって、どういう人生を送っているんだろうとか。電車の中でぼーっと人を眺めながら、それぞれいろんな人生があるんだろうな、と考えたりするんです。結構ロマンチックな話かもしれないですけど(笑)、そういうことはたまにやりますね。
watakemi:想像を膨らませるテクニックみたいな。
佐藤:それが生きているのかどうかは分からないんですけど、「この人は帰って何を食べるんだろう」とか、そういうくだらないことを考えたりしています(笑)。
──ミュージックビデオだけではなくて、アーティストのビジュアルや世界観そのもの、いわば音楽の「顔」を作る立場でもあると思います。日本の音楽業界って韓国やアメリカのクリエイティブを参照することも多い一方で、海外から見ると日本独自の感覚やバランス感覚がユニークに映っている部分もあると思うんです。実際にさまざまなアーティストと関わる中で、今の日本の音楽ビジュアルの面白さや、逆に課題に感じている部分はありますか。
佐藤:僕らが語っていいのかという話もありますけど(笑)、日本って本当にいろんな文化がミックスしていると思うんですよね。漫画だったりアニメだったり。
watakemi:結構とっ散らかっているというか。でも、それが日本の面白さでもある気はします。
佐藤:新宿の看板とか、ああいうごちゃごちゃしている感じもそうですし。島国だからこそ、小さい空間の中にいろんなものがぎゅっと詰め込まれている感覚がありますよね。
例えばアメリカと比べると、向こうは余白や余裕があって、道路も広かったりする。でも日本には、日本にしかない密度感みたいなものがある。それは独特の感覚なのかなと思います。
それが結構、僕らにも影響を与えてくれているというか、ありがたいところでもありますね。
──ライブ演出もそうですし、海外と比べた時に、例えばVJという職能そのものの認知度だったり、予算感だったり、そういった部分で課題を感じることはありますか。
佐藤:VJ予算問題はありますよね(笑)。
VJだけじゃなくて裏方全般ですけど、そういう人たちに割かれる予算だったり、還元のされ方だったりは、もう少し改善されてもいいのかなと思います。
こんなに頑張っているのに、これしかもらってないのか、みたいなことも正直ありますし。そういうところは課題なのかなと思いますね。
watakemi:これは勝手なイメージかもしれないんですけど、海外はみんな対等な雰囲気でステージを作り上げている印象があるんです。
VJや照明、PAといったスタッフに対する認識も、海外の方が深いのかなという感覚があって。
海外のアーティストとやり取りする中で知ったんですけど、予算にしても細かい手当てにしても、本当にいろいろな項目が細かく設定されているんですよね。そういうところでも結構差があるのかなと思います。
扱われ方というと少し違うかもしれないですけど、そういう認識の部分も含めて。
佐藤:VJに対する認知の差も大きいと思います。もちろん認知度の問題もあると思うんですけど、そういう意味では海外との差はまだまだあるんじゃないかなと思いますね。

──前回、初の個展も開催されていたと思います。今後、tsuchifumazuという活動をどのように広げていきたいですか。また、ミュージックビデオやライブ演出を超えて挑戦してみたい表現や、将来的に目指していることがあれば教えてください。
佐藤:さっきの話にもつながるんですけど、もちろん海外は視野に入れています。最近は海外アーティストのVJを担当したりする機会も少しずつ増えているので、そういった経験を積みながら、国内外で活動の範囲を広げていきたいと思っています。
watakemi:やっぱりコラボレーションが楽しいんですよね。自分たちが持っているものが海外でどう見られるのかというか、どこまでtsuchifumazuが通用するのか、力試しみたいなところもあると思うんですけど。
やっぱり国内にはない刺激がありますし。
佐藤:文化の違いもありますしね。
watakemi:そういった交流というか、いろんなものが混ざる場所として取り組んでいきたいなという気持ちはチームとしてあります。
あと、下の世代に向けてという意味でも。
佐藤:僕ら自身はこれからも手を動かし続けると思うんですけど、後輩の育成だったり、そういう場所づくりみたいなこともちゃんとやっていきたいと思っています。
もう少し土壌を耕して、文化として伝えていける環境を作れたらいいなと思っていますね。自分たちだけが作り続けるというよりも、その先につながる場所をしっかり作れたらいいなと考えています。
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