MAZZEL、SIRUP、Aile The Shota、さらにはグローバルガールズグループ・KATSEYEまで──。現在の日本の音楽シーン、ひいてはアジアや世界のポップミュージックを鮮やかに更新し続けている音楽プロデューサー・Taka Perry。
オーストラリア・シドニーでキャリアを築き、2022年以降本格的に日本での活動をスタートさせた彼は、単に音を組み立てる「ビートメーカー」の枠には収まらない。東京にある彼のアットホームな自宅スタジオにアーティストを招き、まずは何気ない会話や人生の近況を交わすことから彼の楽曲制作は始まる。
Taka Perry:そうですね。ざっくり言うと、音楽プロデューサー、作曲家、最近は作詞もやっています。生まれ育ちはオーストラリアのシドニーで、最初の10年くらいはそこでキャリアを作っていました。もともとは洋楽を中心に作っていて、2019年から2020年くらいに、ふと「自分、日本語も話せる家庭で育ったのに、日本の音楽に全然触れてこなかったな。それってちょっともったいないかもしれないな」と思い始めたんです。
それで、日本の音楽ってどういうものなんだろうと調べ始めたら、本当にかっこいいアーティストがたくさんいて。そのタイミングで初めて制作をしに日本へ来ました。いろんなアーティストとセッションをしていたんですけど、ちょうどその時期がコロナ禍だったんですよね。一度日本に来て制作をしたタイミングでロックダウンになって、その後2年くらいオーストラリアから出られなくなってしまったんです。
その期間にDMやインターネットを通じて、日本のラッパーやシンガー、アーティストの方たちとつながり始めて、リモートでいろいろ作るようになりました。
そこからコロナが落ち着いた2022年に再び日本へ来て、本格的にセッションを始めたんですけど、日本ってやっぱり業界も大きいし、サウンドの幅も広い。プロデューサーとして本当に面白い場所だなって気づいたんですよね。
そこから毎年3〜4回くらい、一回につき4週間ほど日本へ来てセッションをして、またオーストラリアへ帰るという生活を2〜3年続けていました。
そうしているうちに、気づいたら仕事がほとんど全部日本のアーティストになっていて(笑)。去年ついに拠点を東京へ移して、今は東京をベースに活動しています。
小さい頃は母親と妹がジャニーズ好きだったので、嵐とかHey! Say! JUMPとかは家で流れていました。でも、自分から本格的に掘り始めた時に最初にハマったのはJ-Hip Hopでしたね。JP THE WAVYや¥ellow Bucks、Awichあたりを聴いて、「こういう音楽って日本でもやってるんだ」と思ったのを覚えています。
──最初に日本へ来た時、一緒にセッションしていたアーティストはどんな方々だったんですか。
Taka Perry:最初はJP THE WAVYですね。当時は自分のアーティスト活動もやっていて、自分の曲にJP THE WAVYがフィーチャリングで参加してくれていたので、その制作をしたりしていました。あとはELLE TERESAさんとのセッションも、2019年頃にやっていました。
つながり方はいろいろなんですけど、最初はやっぱり自分で調べて、SNSでDMを送ったりしていました。その頃は僕のマネジメント経由で日本の業界の方ともつながっていたので、マネジメントや出版契約のネットワークを通じて知り合ったアーティストもいました。
Taka Perry:本当にアーティストによって役割は変わるんですけど、全体的に言うと、そのアーティストの最強版を引っ張り出す人、という感覚でやっています。
もちろんトラックも作ります。でも、このスタジオで悩み事の相談をしたり、人生の話をしたりして、その会話が曲のテーマにつながっていくこともすごく多いんです。だから単純に音を作るだけじゃなくて、その人が今何を考えているのか、どんなことを感じているのかを引き出して、それを音楽にしていく作業でもありますね。
Taka Perry:去年の10月くらいですかね。MAZZELの『BANQUET BANG』をここで作った時は印象に残っています。僕がうっすらトラックだけを作っていて、そこにSKY-HIさんとLOARさんが来て。三人でマイクを回しながら、宇宙語みたいな感じでメロディやフローを入れていったんです。
そうしたら、たぶん30分くらいで、何もなかったインストからフックが出来上がっていて。本当に良い曲ができる時って、気づいたら曲ができているんですよね。ここにはまだ一年くらいしか住んでいないんですけど、それでもたぶん40〜50曲くらいはこの部屋で作っています。
SIRUPさんのアルバムも結構ここで作りましたし、Aile The Shotaの曲もここでセッションで作っています。REIKOさんやAyumu Imazuさんの曲もそうですし、CHARAさんもここに来て制作しました。曲を作るプロセスは毎回違うんですけど、やっぱりこういうアットホームな環境で作れるのは大きいですね。
外のスタジオだと時間制限もありますし、「何時までに終わらせなきゃいけない」というプレッシャーもあるので、僕の家に来てもらって、時間を気にせずリラックスした状態で作れると、やっぱり作品は良くなると思います。
──これまでここに来たアーティストの中で、特に忘れられない制作体験はありますか。
Taka Perry:やっぱりエピソードの数で言うと、SIRUPかもしれないですね。さっきも話したように、SIRUPは結構ノープランでここに来て、会話をしながら曲のテーマが出来上がることが多いんです。
トラックを作りながら、一緒にマイクを回して、デタラメ語でメロディやアドリブを入れていく。その中から良い部分を切り取って、「このメロディいいね」とか言いながら組み合わせて、そこに歌詞を乗せていくんです。本当に一日で、何もないところから歌詞まで含めてほぼ完成することも多いですね。
この部屋ではもう5〜6回どころじゃなく何度もやっているんですけど、毎回、朝は何もなかったのに、夕方にはMP3になって曲が出来上がっている。あの瞬間は今でも毎回ワクワクしますね。
Taka Perry:やっぱり邦楽って独特なんですよ。洋楽と比べるとコード進行も複雑ですし、転調もありますし、全体的に情報量が多い。最初はそういう日本独特のサウンドも作りたいなという気持ちがありましたし、今もあります。
ただ、やっぱり僕は海外から来た人間なので、洋楽育ちのサウンドを日本に持っていきたいという感覚で今ここにいるんです。だから「一番日本っぽい曲を作りたい」というよりは、自分が納得できるサウンドを作っていった結果として、日本と海外の感覚が自然に混ざり合う方が自分らしい。
僕自身、日本語と英語の両方の環境で育ってきたので、作る音楽も自然と邦楽と洋楽の間にあるものになるんですよね。だからあまり「これって日本っぽいかな」ということは意識していなくて、自分が良いと思えるサウンドを追求していくと、結果的にウェスタンとジャパニーズの要素が混ざり合うことが多いです。
Taka Perry:やっぱり海外だと、セッションっていうのがずっと前から当たり前のようにあって、とりあえず集まって曲を作ろう、みたいな雰囲気なんですよね。洋楽のアーティストって、結構曲のストックをめちゃくちゃためるんです。例えば100曲作って、その中から10曲に絞ってアルバムにする、みたいな制作スタイルが普通だったりして。
でも日本のアーティストと仕事をし始めて感じたのは、みんなそういうスタイルというより、「アルバムの曲を一緒に作りたい」とか、「次のシングルを作りたい」とか、何かしらの制作に向けてセッションに来ることが多いんですよね。やっぱり日本のアーティストは、一曲一曲をすごく大切にする。だから僕もプロデューサーとして、「この一曲をもっと良くしたい」「もっと頑張りたい」っていう気持ちになれるんです。そこはすごく違いとして感じましたね。
Taka Perry:たぶん一番多いのは会話ですね。制作的にはメロディからでもトラックからでも始められるんですけど、やっぱり最初にアーティストと会話をしないと、何を作るかがそもそも分からないので。
さっきも話したように、アーティストがここに来て、「今日はどういう曲を作る気分?」みたいな会話から始まることが多いです。人生の話をしたり、お互いの近況を話したりしているうちに共通点が出てきたり、「この言葉いいね」みたいなものが見つかったりして、そこから「この言葉を軸に曲を作ろう」みたいな流れになる。やっぱりテーマなんですよね。それがまさにプロデューサーのスキルだと思っています。
僕が「プロデューサーはビートメーカーと違う」と思っているのもそこなんです。日本で音楽活動を始めた頃は主にヒップホップをやっていたので、やっぱり「ビートメーカー」という肩書きで呼ばれることが多かったんですよね。もちろんビートメイキングもやるんですけど、僕は会話もするし、アーティストから曲を引っ張り出したりもするし、作詞作曲もするし、楽器も弾く。だから、その「ビートメーカー」っていう箱詰めが、ちょっとなんか自分的には惜しいなっていう気持ちがあったんです。
それで、ヒップホップ以外のアーティストとも曲作りができたらいいなと思うようになって、そこで初めて本格的に制作し始めたのがSIRUPでした。たぶん2023年とか2024年くらいだったと思うんですけど、SIRUPと歌モノを作り始めたことをきっかけに、今一緒に仕事をしているいろんなアーティストともつながるようになった。自分の中でも、ヒップホップのビートメーカーから、プロデューサー・作曲家へと少しずつ認識が変わっていった感じですね。
SIRUPとの出会いもDMでした。Cody Jonを竹田ダニエルがSNSで取り上げたことをきっかけにSIRUPとCodyが繋がって、曲を作ろうと話していたそうで。自分も竹田ダニエルにDMを送って「SIRUPとCodyで曲を作りましょう」ってDMを送ったんです。僕は前からCodyと楽曲を作っていたんですけど、その時ちょうど僕がシドニーと東京を行き来していたので、シドニーでCodyとセッションして曲を作って、それを東京へ持ってきてSIRUPと続きをやって、またシドニーへ持ち帰って続きを作る、という流れができたんです。そのプロセスが、僕の移動スケジュールにちょうど完璧にハマって。それで生まれたのが「2MANYTIMES」という曲でした。
──キャッチーだけど新しい曲を作ろうとする時、「これはいけるな」と感じる瞬間はありますか。
Taka Perry:何がヒット曲かは毎回変わるんですけど、リスナーの視点で考えると、一回聴いて、次に聴いた時にはサビが歌える曲なんじゃないかなと思います。メッセージ性は強いけど、メロディは覚えやすい。だから僕は、いくらトラックを頑張っても、その上に乗るメロディがキャッチーじゃなかったら意味がないと思っていて。セッションする時は、トラックよりもまずアーティストと一緒に一番強いメロディを探すことを優先しています。強いメロディがあれば、トラックは後からどうにでもなるので。
Taka Perry:ありますね。デタラメ語でみんなでマイクを回しながら歌って、それをいろんな場所にはめ込んでいくんです。例えば、Bメロで歌ったメロディをAメロに持っていったらどうなるんだろう、とか。そういう実験をよくやります。そうすると、たまに間違った場所に貼っちゃうんですよね。例えば、本来ここじゃないところに一小節が入っちゃったり。でも、聴いてみたらそっちの方が良かったりする。いわゆるHappy Accidentってやつですね。
ボーカルだけじゃなくて、僕がピアノで間違ったコードを弾いたとか、シンセで間違った音を出したとか、そういうこともあります。そうやって、自分が計画していなかったサウンドがトラックに入り込むと、新鮮さもあるし、僕は結構盛り上がりますね。
──イメージしていたものを再現するというより、偶然を受け入れる感覚なんですね。
Taka Perry:そうですね。スタジオは研究所みたいなもんなんです。常にいろんな音を投げて、メロディを投げて、最初はできるだけ情報量を増やしていく。そこからある程度形になってきたら、今度は引き算をしていくんです。最終的には最小限の音でトラックが伝わる状態が理想なので、シンプルさもすごく大事にしています。
Taka Perry:J-POPって世界的に見ても独特なんですよね。日本が島国だというのもあると思うんですけど、アイドルとかアニメソングとか、すごく日本らしい文化がある。だから昔は、海外のアーティストとコラボしようという気持ちも今ほど強くなかったと思うんです。でもここ4〜5年くらいで、日本のアーティストが海外のアーティストとコラボしたり、フィーチャリングしたりする機会がかなり増えた印象があります。
僕も洋楽から入って邦楽の仕事をしている人間なので、日本のアーティストが海外のアーティストとコラボするのは純粋にうれしいですし、僕自身、英語と日本語の両方を話せるので、その間に入ってそういう制作を進められたらいいなと思っています。
もしかしたらK-POPが世界的に大きくなったことも関係しているのかもしれません。K-POPは韓国国内だけだと市場規模が限られているので、最初から海外へ輸出することを前提に発展してきた文化だと思うんです。一方で日本は、世界でもトップクラスに大きい音楽市場なので、以前は「国内だけで十分成立する」という感覚があったと思うんですよね。だから海外とコラボする必要性がそこまで見えていなかった。
でも今は、日本のアーティストも海外のアーティストとコラボしないと、音楽的に鎖国していってしまうという感覚もあると思うので、そういう流れが自然に生まれてきているんじゃないかなと思います。
Taka Perry:やっぱり海外とのコラボですね。日本のアーティストが海外のアーティストとコラボすればするほど、日本の業界にとってもメリットがあると思うし、その結果として海外のリスナーが日本の音楽に触れる機会も増えると思うので。
ただ、その一方で、邦楽ならではの良さは絶対に残した方がいいと思っています。前にも話したように、邦楽ってコード進行が複雑だったり、転調があったりする。それは本当に日本の音楽の魅力なので、守るべきものだと思うんです。だから、日本らしさをなくさずにグローバルへ出ていくことが、一番大事な勝負なのかなと思いますね。
Taka Perry:本当にみんな違う流れですね。でもDMはめちゃくちゃ強いです。今ってiPhoneを開けば誰にでもメッセージを送れるじゃないですか。送ったから確実に返事が来るわけではないけど、送らなかったら100パーセント返事は来ないので、とりあえず送る。その返事から制作が始まることもありますし、逆にオフラインで知り合うこともあります。
アーティストの友達と飲みに行って、二軒目で誰かが合流してきて、そこで知り合って。その後セッションをして、そこからリリースにつながることもあります。だからオンラインとオフライン、両方でネットワーキングしている感じですね。
──今はご自身から声をかけることと、声をかけられることではどちらが多いんですか。
Taka Perry:最初の頃は圧倒的に僕からでした。でも今は半々くらいですね、ありがたいことに、アーティストや事務所の方が僕の名前を知ってくれていて、そこから声をかけてもらうことも増えました。
──活動を続ける中で、音楽との向き合い方は変化しましたか。
Taka Perry:そこまで大きくは変わっていないですね。最初から自分がやりたいことは今も変わっていなくて。ただ、あまり真剣になりすぎないことは大事にしています。音楽って、作る時に楽しくないと「何のためにやっているんだろう」ってなってしまうので。どんな規模のプロジェクトでも、小さいものでも大きいものでも、楽しみながら作ることはすごく大事だと思っています。
Taka Perry:AIって、音楽業界でも制作側でも、もうめちゃくちゃみんな使っているか、使っていても使っていると言わないか、そのどちらかだと思うんですよね。でもクリエイターとしては、AIをそこまで恐れる存在だとは思っていません。
むしろAI音楽が大きくなればなるほど、リスナーは改めて人が作った音楽の良さを知ると思うんです。だからAIがクリエイターの仕事を持っていくというよりは、その逆で、AIが大きくなればなるほど人が作る音楽の価値をもっと際立たせてくれるんじゃないかなと思っています。
例えば僕がボーカルを入れて、その声をAIで女性ボーカルに変換して、「ガールズグループだったらどう聴こえるかな」と試すこともありますし、AIから別の視点のアイデアをもらって、それを自分の制作プロセスに取り入れることもあります。
ミックスやマスタリングもそうですし、例えば納品時のトラック名の整理みたいな作業をAIが30秒でやってくれるなら、その10分を制作に使える。それは純粋にメリットだと思いますね。
──セッションでは、アーティストが曲に乗っているかどうかも感じ取るんですか。
Taka Perry:めちゃくちゃ分かりますね。部屋の空気で分かります。曲を作っていて、本当はそのアーティストが今の方向性に乗れていない時って、すぐ分かるんですよ。逆に、アーティストが乗ってきた瞬間は部屋のエネルギーが変わるので。
僕はセッションの時、最初に会話をして方向性を決めるんですけど、その方向性がある程度見えたら、最初にアイデアを入れるのは結局僕なんですよね。パソコンに向かって「最初に何を入れようか」と考える。実はそこが一番怖い瞬間なんです。
そこで良いアイデアが出せなかったら、アーティストも乗ってくれない。だから最初の30分は本当に必死です。アーティストが乗ってくれるアイデアを探して、そこがハマったら少し安心して、一緒に制作を進めていく。そういう流れが一番多いですね。
特に規模の大きいプロジェクトとか、大きなアーティストとの初めてのセッションはプレッシャーがあります。一回目がうまくいかなかったら次につながらないかもしれない。でも一回目でしっかり信頼関係が作れたら、二回目以降はすごく楽になるんです。
もちろん事前準備もするんですけど、例えばそのアーティストの過去作品を聴いて、「こういう曲を作りたいんだろうな」と思って準備していても、実際に来たら「今日は真逆のことがやりたい」と言われることもある。「次のアルバムはアフロビーツでいきたいんだよね」みたいなことも全然あるので、そういう意味では事前準備だけでは対応できない部分もありますね。
──最後になりますが、今後挑戦してみたいことやビジョンはありますか。
Taka Perry:やっぱり僕はグローバルに活動し続けたいですね。日本のアーティストと制作を続けながら、アメリカやイギリスのアーティストともコラボしたいですし、現地へ行ってセッションもしたい。
その結果として、自分のグローバルなネットワークを通じて、日本のアーティストと海外のアーティストをつなげられたら、それもすごく面白いと思っています。日本の音楽には本当に素晴らしい魅力があるんですけど、日本だけに集中しすぎると、自分自身のグローバルな感覚も薄れてしまう気がするんです。だから常に世界全体を意識しながら、日本で音楽を作り続けていきたいですね。
──一緒に制作してみたいアーティストはいますか。
Taka Perry:たくさんいるんですけど、日本だと米津玄師さんとか、Vaundyとかのポップスですね。