INFORMATION
betcover!!
『海豚少年 / ゆめみちゃった』
両A 面配信シングル配信中
Label:SOPHORI FIELD COMPANY
初単独公演「襲来!ジャングルビート’ 19」
2019年3月13日(水)
渋谷TSUTAYA O-nest
開場18:45 / 開演19:30
twitter: @betcover_tokyo
instagram: @betcover_18
Label: http://www.sophori.jp
気づけばテン年代、最後の年。音楽シーンを振り返ってみてもいくつもの潮流/トピックスがあって、そろそろ総括もしたくなってくる頃だけどそれよりも“これから”に目を向けたい。「未来は過去のなかにある」とも言うけれど、いやだからこそ未来を見据えることが結果、過去(やそこに横たわる文脈)を知れることにもつながるんじゃなかろうか。ということで、本特集「Breakthrough Music for 2019」では、来たる2020年代に向けて、EYESCREAMが追いかけていきたいホットな新世代たちにフォーカス。その音楽や存在そのものでもって、今という時代をブレイクスルーしていくミュージシャンの動向から、2019年とその先を眺めていくことにしよう。
いつの世も時代の変わり目は、それまでの流れを転覆させる動きが起きる。得体の知れぬところから新しいムーブメントが起き、次のあり方を指し示す人間が出てくるものだ。飽和しきった平成の終わりに風穴を開けるのは、19歳の音楽家・ヤナセジロウのプロジェクトbetcover!!ではないだろうか。
<それは南南西から/光を帯びてやってきた/けど恥ずかしいくらいにもう/僕はただの人間でした>とアフタービートで歌う『平和の大使』から、11分に及ぶダブとフォークとサイケのあいの子のような楽曲『ゆめみちゃった』まで、現在を生きることに対する居心地の悪さと同時に強くここで生きることを希求する楽曲を披露し、早くも世代を越えてコアなリスナーを虜にしている。
この日生まれ育った多摩から六本木に現れた彼は、明らかに体調を崩していたが、それでも自身の音楽感・時代感を誠実に語ってくれた。
東京からどんな音楽を鳴らそうとしているのか。時代に対する違和感や滾る情熱を音楽にぶつける彼のメンタリティに迫ってみた。
ーヤナセさんは現在19歳、自分で積極的に楽器に触れたのはいつ頃の話なんですか?
小学5年生の頃ですかね。叔父がギタリストで、ホコリかぶったアコギが押入れにあって。まだ全然使えたので、ひたすら弾いて遊んでました。…でもだんだん飽きちゃって(笑)。それに叔父が勘づいたのか、中1の頃スクワイアのストラトギターをプレゼントしてくれて。現代音楽とかジャズが好きだったのですが、技術的にどう考えてもコピーできないので、自分なりのやり方で弾いてオーバーダビングして遊んでました。
ー中学時代はバンドを?
吹奏楽部でフルートをやっていました。ザ・ソルソニックスの『Jazz in the Present Tense』のフルートのフレーズが格好よくて、どうしてもやりたくて。あとはジェスロ・タルっていうバンドのコピーを部活中にしていて、滅茶苦茶怒られました(笑)。
ー中学時代って男の子は割と運動部に入ることが多いじゃないですか? そのあたりは気にならなかったですか?
あんまり気にならなかったですね。うちの学校が全国大会常連の学校だったので男子も10人位いたし。ただ、僕の代は珍しく都大会までしかいけなかったんですけど…。
ーなんとも言えない思い出ですね。
そうなんです。部活が終わると、近所の公園でそいつらと、ずっとボーッとしてましたね。誰かがゲームしていたり、隣で寝たり、日向ぼっこしていたり。後はモンゴル相撲をしたり。結構血が滾るんですよね。……基本、陰キャなんですけど、まぁでも、楽しかったですよ。
ーヤナセさんが生まれ育った街って多摩で、のどかだけどどこか閉鎖的な空気もあって。betcover!!の音楽もこの土壌から影響を受けているような気がしたんです。多摩に思い入れはありますか?
そうですね。「多摩ニュータウン」の構想って、昭和期にサラリーマンのオアシスを作ろうとしたもので。でも、あんまり定着しなかった感じが好きです。一気に開発にして、あるところで突然時代が止まっている感じになんとも言えないよさがありますよね。
ーbetcover!!の曲を聴いていると、社会とか都会とか現実に対する違和感を感じて。自分とそういったものに対する距離を決めあぐねている、…そういうフィーリングの曲が多いのはなんでかなって思っていたんですよ。
ああ、なるほど。僕、都会が嫌いですからね(笑)。東京ってそこで何をするのかっていうのが結局大事なのであって、そうじゃないと、東京に洗脳されてしまうじゃないですか。あと日常と地続きのものではなくて、非現実的なものに向き合いたいからですかね。ロックが描こうとする虚像とか根底にある美しさにストレートに向き合いたいと思っています。
ーという割には歌詞で視点がミクロとマクロを行ったり来たりしますし、音像もリヴァーヴィーだったり、言葉の扱い方が多重的な意味を孕んでいる印象を受けるんですけど。
一本筋が通ってる感じといえばいいのでしょうか。…僕、魂がこもってない音楽は嫌なんです。フィッシュマンズの佐藤さんが昔から言ってる『猪木イズム』に共感していて。あんなにヘラヘラした音なのに、ひとつのことにまっすぐやり通す意志を感じるじゃないですか。坂本慎太郎さんもそうです。なんであんなスカスカなのに、ずっと聴いていられるのか研究していて。
ー確かに。
自分の中の信念を曲げないというか。…今巷で聴かれているのってロックにお洒落な要素が追加されているものばっかりで。なんというか、苦手なんですよ(笑)。…フリッパーズ・ギターとか、コーネリアスとか絶対仲良くなれないだろうなって。
僕と同年代の音楽やってる奴らって、正直やろうと思えば何でもやれるんですよ。時代もジャンルも全部が混ざっているのが当たり前だし、だからたまにジャンルを聞かれると本当に困る。…というか、不思議な気持ちになるんです。色んな音楽を聴いてきたので、僕自身どこがルーツか実際わかっていないので。だから逆に影響元ここに絞ろうみたいなことを最近あえてやっていて。逆の逆の逆で(笑)。
ーたとえば、『ゆめみちゃった』は11分の大作ですけど、この楽曲のエピソードがあれば教えてください。
あれはフィッシュマンズやキング・タビーのダブの要素をモロ入れてみたり、音量のバランスもわざとぐちゃぐちゃにしたんです。好き嫌いは分かれるんでしょうけど、やりたいことを詰め込みました。…レコーディングの時、エンジニアさんには8分のデモバージョンを渡していたのですが、アイデアがそこから膨らんでしまったので3分伸ばして、レコーディングも1日追加してもらって。
ーずっと展開し続ける楽曲ですよね。
アイデアを詰め込んでいるのは全部、自分が飽きないためにやっているんですよ。サビを3つくらい用意したのは、人の曲を聴いたら1番で飽きちゃうケースが多くって。歌詞も曲の流れに合わせて揃えるより、ツラツラと書いたものをそのまま譜割りに載せるよう心がけました。「デモみたい」って意見もあるかもしれないけど、その方が「ナンバーガールみたいで面白いじゃん」って思ったので。でもまだ、目指しているものの途中というか(笑)。…本当はもっと音の輪郭がぼわんっとぼやけたものを目指してます。
ー『平和の大使』なんかは、拍のとり方や言葉の置き方が印象的ですよね。言葉を先に書かれたのですか?
いえ、基本は音が先です。歌詞を書くの苦手で。書きたいではなく、何も考えず書いていくうちにいつの間にか意味が通っていたりするんですよ。そこから意識的に削っていきます。実は『平和の大使』って最初ラップ調だったんです。それを歌メロっぽい感じにして、日本語のポエトリーリーディングと音楽を両立させたくて。
ー音楽以外からはどういうものから影響を受けるんですか?
最近だと60-70年代のフランス映画とか、昭和期の邦画やNODA・MAPさんの『エッグ』っていう舞台とか。得体の知れない勢いのあった昭和特有のギラギラした感じが大好きで。もしかしたら、自分達の世代は考え方が一周廻ってるのかな。僕の音源を聴いた60代の人から「久しぶりにキタ!」みたいな熱いメールが届いたりして、50-60代とは闘魂スピリットでつながっているんじゃないですか(笑)。逆に20代中盤以降であまり共感できる音楽をやっている人がいないんですけど。
ーなぜ共感できないんでしょう?
心地よかったり、安全だったりするものに飽きちゃったんですよね。もはや、ロックがロックじゃない時代だから言葉が形骸化しちゃって。その感じを変えたいと思っています。僕がわかりやすい「ロック」をやってるわけじゃないけど、精神的にはそうでありたいっていうか…。10年以上前から日本のロックは飽和しているから、…ほんと終わりですよ。
ーそんななか、betcover!!が現れましたね。
ヒュッと(身振りを交えて)行けたらいいですけどね。僕の音楽はジャンルも横断もないので自由で、何が何だかわからないからみつけやすいのかもしれないですね。もはや、今音楽に耳を傾けている人はいないのかもしれないけど、自分は魂を削った音楽を作りたいんです。
ー改めて、betcover!!に共通する輪郭が定かじゃない音像や郷愁を誘うフィーリングはどこからやってくるのでしょう?
僕が音楽で描こうとしているのは、“ハッピー・サッド”のフィーリングなんです。この間観た映画『シング・ストリート』で主人公の兄貴が言っていた言葉なんですけど。僕的にはアース・ウィンド&ファイアーの『September』なんかまさにそうで。音の空間的にはハッピーなんですけど、でも確実にサッドなんですよ…。メロが明るい方が悲しみが浮き彫りになってなぜかグッと来てしまう。そういう音楽を創りたい。
ー描きたいものを客観的に対象化できているのは何故でしょうか?
わかんないです(笑)。けれど、1つ言えるのは僕の青春は、中学時代に終わっているんですよ。吹奏楽部でコンテストの賞を獲って、青春っぽいことをやったけど、高校1年生のときに学校を中退したので。感覚的には20代と一緒なんじゃないですか?
ー高校時代に思い出はないんですか?
僕、お腹が弱いので大体朝のスクールバスの時間に間に合わないんですよ。乗り遅れた日には、歩いて1-2時間かけて山奥の学校に行っていて。ナンバーガールの『ハイカラぐるい』を聴きながら田んぼ道を歩いて。あの経験はすごくよかったですね。その山道で音楽を聴いているときが一番青春のピークだったかもしれません。それからしばらくはオリジン弁当のバイトばっかりした暗黒の時期だったので。
ーだから精神的には成人していると?
じゃないかなぁ? だから今中学生をテーマに曲を描いているんです。中学生ってなんかエモいなって。最近ってキラキラしたものばかりもてはやされて、閉ざされた学校の空気にスポットライトが当たらないじゃないですか。でも放課後の学校って殺伐としていた記憶がありますよね。何ていうか…闇の夕暮れ感がある。
ーというと?
眠る間際に脳裏に過ぎる夕暮れみたいな景色ってあるじゃないですか? 目を閉じて真っ暗なんだけど、田園に広がるイメージが湧く瞬間。そんな空気感の楽曲ができました。次のアルバムは「海豚少年」に始まってこれに終わる気がしていて。1曲1曲で起承転結があって、安全じゃない、熱く滾ったものにしたいですね。もしかしたら、次の時代もそういうものになるんじゃないですか? わからないけど(笑)
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『海豚少年 / ゆめみちゃった』
両A 面配信シングル配信中
Label:SOPHORI FIELD COMPANY
初単独公演「襲来!ジャングルビート’ 19」
2019年3月13日(水)
渋谷TSUTAYA O-nest
開場18:45 / 開演19:30
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