Breakthrough Music for 2019
#03 No Buses

photography_Shiori Ikeno, text_TAISHI IWAMI

Breakthrough Music for 2019
#03 No Buses

photography_Shiori Ikeno, text_TAISHI IWAMI

気づけばテン年代、最後の年。音楽シーンを振り返ってみてもいくつもの潮流/トピックスがあって、そろそろ総括もしたくなってくる頃だけどそれよりも“これから”に目を向けたい。「未来は過去のなかにある」とも言うけれど、いやだからこそ未来を見据えることが結果、過去(やそこに横たわる文脈)を知れることにもつながるんじゃなかろうか。ということで、本特集「Breakthrough Music for 2019」では、来たる2020年代に向けて、EYESCREAMが追いかけていきたいホットな新世代たちにフォーカス。その音楽や存在そのものでもって、今という時代をブレイクスルーしていくミュージシャンの動向から、2019年とその先を眺めていくことにしよう。

#03 No Buses

東京を拠点に活動する現役大学生の4人組No Busesは、無名の存在であるにもかかわらず、2018年にYouTubeで公開した「Tic」のMVが40万回近い再生回数を記録し、一気に注目されるようになったバンドだ。アークティック・モンキーズの曲名をバンド名に冠しているように、2000年代のロックンロール・リバイバルやインディー・ロックの隆盛から受けた洗礼をストレートにアウトプットしたスタイル。そこに加えて、飄々としたクールなサウンドに内燃する強さと、シャイな若者が目いっぱい弾けたようなユーモアに富んだフレーズやビジュアル、すなわち“かっこいい”と“おもしろい”が同居したセンスも魅力だ。そんな彼らを、影響を受けた音楽やファッション、曲へのこだわりとさまざまな角度から紐解いていった。

やっぱりどうしてもバンドでやりたい

―もともとは近藤さんと後藤さんが、他のメンバーとスタートさせたNo Buses。バンド名はアークティック・モンキーズの初期の曲名からですが、2000年代のロックンロール・リバイバル~インディー・ロックの隆盛にはどっぷりはまったんですか?

近藤大彗:バンド名は仮で付けたんですけど、語感が好きで、けっきょく変えることなくここまできちゃいました。個人的に音楽にのめり込むようになったのは高校生の頃なので、2000年代のそのムーブメントは後追いです。アークティック・モンキーズもリアルタイムで聴いたのは2013年のアルバム『AM』から。そこから近所のTSUTAYAに陳列されていた”洋楽ならこれを聴け”みたいなコーナーで、レッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)とかストロークスを聴くようになりました。そのなかで、もっとも刺さったのがアークティック・モンキーズの1stアルバム『Whatever People Say I Am, That’s What I’m Not』だったんです。

後藤晋也:僕は、高校生の頃に友達からレッチリとかオアシス、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンを勧められて、ロックは好きだったんですけど、本格的にそういうインディーとかオルタナティブ・ロックを掘り下げるようになったのは大学に入ってからです。

―市川さんはどういうきっかけでNo Busesに?

市川壱盛:もともとはパンクとかを聴いていたんですが、ある日、早朝にメンバーの電話で起こされて突然誘われたんです。面倒くさかったから「じゃあいいよ」って答えてまた寝て、なんやかんやで今に至ります(笑)。

―杉山さんはどうでしょう。

杉山沙織:私は昔からインディーの音楽が好きで、No Busesのみんなとも友達だったし、やっている音楽も好きだったので、普通にライブを観に行ったりしてました。

―ということは、リスナー遍歴がもっとも長いのは杉山さんですか? 今日持っているクリスタル・キャッスルズのトートバッグも素敵です。

近藤:そうですね。彼女が一番長いです。

杉山:親がラジオばかり聴いていて、物心ついた頃から周りに音楽がたくさんあったんです。中学生の頃には積極的に自分でいろんな音楽を調べて聴くようになって、それでレッチリやジョン・フルシアンテのソロ、ニルヴァーナとかにはまりました。高校に入ってからは、インディー系を扱っている音楽サイトをチェックする毎日で、どんどんはまっていきました。

近藤大彗(Vo,G)

―実際にアウトプットしている曲に対して、2000年代のインディー・ロックやそのルーツにある1980年代のスミスなどが引き合いに出されることについては、どう感じていますか?

近藤:そもそも音楽という概念を知ったから音楽を作ろうと思ったわけで、言われて然るべきだと思います。だからまったく抵抗感はないし、もしそういったインディー・ロックと同じ目線で見てもらえているなら、すごく嬉しいです。

―インディー・ロックは今、数字のうえでは厳しい状況です。その現状をどう捉えていますか?

近藤:たしかに、世界的に失速気味ですよね。とは言え、僕たちのような音楽性でも、メロディーやリフがめちゃくちゃ良ければ、気にしてもらえると思っています。今の日本で流行っている音楽って、とにかくいろんなものが詰め込まれていて豪華な感じが多いと思うんですけど、僕らはそういうものとは違って、全体は引き締まっていながらも出るところは出ている、みたいな。どこかシニカルな部分が音にもフレーズにも歌メロにも出るようには意識しています。

―「Tic」は、まさに今おっしゃったことが、すごくポップに表れた曲だと思います。

近藤:「Tic」はその時なりに、自分たちがやりたかったことを体現できたし、それが伝わったのなら嬉しいことではありますけど、正直満足できていない部分も多くて、想像以上に伸びたのは本望かというと……。

―「この段階であまり騒がないで」と思った?

近藤:そこまでではないですけど、今思うともっといろいろできたかなって。でもいい曲だし好きな曲です。

後藤:プリプロというか、試しに録ってみたなかで一番よかった曲、という感覚だったので。

No Buses – Tic (Official Video)

―確かに、次の作品『Boring Thing EP』では明らかに音が良くなっています。

近藤:録る環境が良くなったのがいちばん大きいと思うんですけど。それまでの完成した曲をライブでやるだけという感覚から、しっかり音作りを見直しました。

―でも、あまりやりすぎるとインディーならではの粗削りな熱やローファイ感覚が削がれて、面白味がなくなってしまう。

近藤:まさにそうですね。気を張って綺麗になりすぎると、根本的にやりたいこととは違ってくるので、そこも意識しています。

後藤晋也(G)

市川壱盛(Dr)

後藤:近藤が作った曲への思いやフレーズの雰囲気を再現できるようには努力していて、そこで今もっとも意識しているのは音作りですね。新しくライブでやっている曲は、すごくソリッドになってきているので、音がすごく重要。

近藤:僕と他のメンバーでは耳も違えば手癖も違うので、僕が想像していた感じとは違う音になることもある。でも、それがすごくいい味になることも多々あって。それってバンドをすることの意味だと思います。

―バンドをやる意味。なるほど。今はオンラインで世界中の才能豊かな人たちと繋がることもできて、そこでも個人レベルでは予想だにしなかったことは生まれるわけじゃないですか。そう考えると、近くにいる者同士でパートを決めて曲を演奏する、というスタイルは、ネガティブに捉えれば制約だとは思わないですか?

近藤:たしかに、バンドという形態で活動する人たちは減ってきているように思います。正直、曲は一人でも作れるしバンドじゃなくても活動はできる。でも、やっぱりどうしてもバンドでやりたいんですよね。同じフレーズでも弾く人によって印象は変わる。その感覚を、信頼できる固定した仲間と一緒にシャアして合わせていくことで、高まっていく感覚が好きなんです。

音楽から連なるファッションや時代の空気感

―ビジュアル面について意識していることは?

近藤:かっこつけすぎるのが似合わないんですよね。あとは、みんなシャイ。そこは素直に出しているというか、まあどうやってもそうなるんですけど。

―MVではいつも踊っていますよね。まさに、かっこつけられないシャイな人のちょっとシニカルな感じとユーモアが溢れるダンスというか。

近藤:そう言えばMVは全部踊ってますね(笑)。僕なりに楽しんでいる感じです。

No Buses – Cut My Nails (Official Video)

―アートワークもいいですよね。『Boring Thing EP』のジャケットは、ペットボトルと竹筒とネズミを組み合わせた写真が不思議だけどしっくりくる。

近藤:アートワークはすべて杉山に任せています。彼女は音楽だけでなく、ファッションやカルチャーもすごく好きで感性が面白い。デザインに関して、僕から意見を言うことはほとんどないですね。

杉山:もともとちょっと変わったところにフォーカスした写真を撮るとことが好きで。パソコンが得意なわけでも、アプリをそこまで使いこなせるわけでもないんですけど、いろいろと試行錯誤しながらやっています。

杉山沙織(B)

―ファッションもNo Busesの特徴だと思います。2000年代から活動しているバンドだと、ストロークスやホラーズはファッション面でも注目を集める存在ですが、そこに対する意識はどうでしょう。

近藤:僕は音楽よりファッションのほうが先で。従兄がデザイナー志望で、ヴィヴィアン・ウェストウッドとかが大好きで、その影響もあって服は小学生の頃から好きでした。シド・ヴィシャスのTシャツをもらって、セックス・ピストルズを聴かせてもらったり。当時はピストルズの魅力まではわからなかったんですけど。

―わかるようになると、なお愛着が湧きますよね。

近藤:そうですね。今着ているシャツも、従兄のおさがりでセディショナリーズのものです。

―杉山さんは、どんな流れでファッションに目覚めたんですか?

杉山:私は音楽からです。映画にしてもファッションにしても音楽との繋がりを辿っていきました。私が好きなUKのインディーも、モッズやパンクから脈々と繋がっているじゃないですか。そういうことを調べて、好きなアイテムを採り入れてみたり、ときにはお洒落だと思うバンドのファッションをコピーしたり。

―起点となったUKのインディーとなると?

杉山:高校生の頃に好きになったスウィム・ディープですね。

―スウィム・ディープのファッションって、イギリスのバンドだけどグランジやスケート寄りですよね。たしかに、出てきたときはハッとしました。

杉山:そうですね。スウィム・ディープのほかにも、当時のバーミンガムが面白くて、ピースとかジョーズとか。あのあたりの空気やファッションを参考にしていました。

―後藤さんは、はにかみながら黙っておられますが。

後藤:正直なところ、二人のファッションの話はほとんどわからなくて……。(市川に向かって)聞いてた?

市川:……聞いてたよ!

近藤:今起きたみたいな反応(笑)。でも最近はお洒落するようになったよね。

―後藤さんは、見た目だけで言うとストロークスのニック・ヴァレンシのようなイメージがあります。

後藤:ギタリストとしてはアルバート・ハモンドJr.派ですけどね(笑)。本当はレディオヘッドのジョニー・グリーンウッドみたいな、細くて色白で不健康そうで、ああいう感じになりたかったけど……。

杉山:細くなりたいとか言ってますけど、めちゃくちゃご飯食べるんですよ。うどん食べてどんぶり食べてカレー食べて、みたいな。

―では最後に。これから先のことについても聞かせていただけますか?

近藤:もっと違うことをやりたい気持ちもあって、2019年はまずアルバムを1枚出して今までの流れを終わらせて、そこからまたしっかりリリースしていけたらと思います。

―もっと違うこととは?

近藤:そこまで様変わりするわけではないですけど。今ってNo Busesはガレージっぽいイメージがあると思うんです。それよりももっとタイトな、「Tic」の延長線上にある流れで、とにかくいいメロディーを際立たせていきたいと思っています。

INFORMATION

No Buses
「Boring Thing – EP」
now on sale

「Boys Missed The Bus」
Artist: No Buses × Tomato Ketchup Boys
Format: casette
Release Date: 2019/3/3
Price(casette): 1,500 yen (+tax)

TRACK LIST:
[side No Buses]
1. Pretty Old Man
2. Little Boy
3. Cup Of Coffee

[side Tomato Ketchup Boys]
1. Blue Moon
2. Tilt
3. Stairs

※東京(3/3)・大阪(3/14)で開催される「No Buses×Tomato Ketchup Boys presents “MOTHER SHIP”」の来場者特典スプリットカセット

[LIVE SCHEDULE]
2019/2/3(日) 下北沢BASEMENTBAR
2019/2/8(金) 下北沢BASEMENTBAR
2019/2/10(日) 大阪・南堀江SOCORE FACTORY
2019/2/23(土) 下北沢THREE
2019/2/24(日) 水戸『えーじゃないか』
2019/3/3(日) No Buses×Tomato Ketchup Boys presents “MOTHER SHIP” @ 下北沢BASEMENTBAR
2019/3/14(木) No Buses×Tomato Ketchup Boys presents “MOTHER SHIP” @ 大阪・心斎橋Pangea

Twitter: @no_buses_band
Instagram: @nobusesband
SoundCloud: https://soundcloud.com/user-226922346

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