[AUGER®︎ ART ACTION]Vol.02:川上智之が撮る、形になろうとしている瞬間の美しさ

Photography_Hiroshi Nakamura, Edit&Text_Takuya Nakatani

[AUGER®︎ ART ACTION]Vol.02:川上智之が撮る、形になろうとしている瞬間の美しさ

Photography_Hiroshi Nakamura, Edit&Text_Takuya Nakatani

貝印によるグルーミングツールブランドAUGER®︎の掲げる「Kiss our humanity – 心に触れて“整える”時間」を生活に浸透させ、“自分と向き合う”ことで生まれる、新たな創造と可能性。その創造性をEYESCREAMがアーティストにぶつけ、自由に作品を構築してもらうシリーズ企画「AUGER®︎ ART ACTION」。第2弾は写真家・撮影監督の川上智之に3連作となる写真作品を撮り下ろしてもらった。

King Gnumillennium paradeなど数々のアーティストの写真やMVを手がけるほか、広告、ファッションムービー、映画と多岐に渡って撮影を行なう川上。EYESCREAMにおいても写真連載「End roll」を展開する彼が今回、写真を通して描き出したのは、形のないものが形になっていく過程の、その瞬間の美しさだ。刀鍛冶をそのルーツに持つ貝印から着想を得て、鉄を叩いた衝撃や溶けていく状態をモチーフとすることで貝印のヘリテージを表現。それをシルバーの紙にモノクロプリントするというアウトプットでAUGER®の世界観へ落とし込むという多層的な作品となった。

煙草とコーヒーで整える時間からアイデアが生まれる

ー今回、AUGER®から連想されるイメージを作品に落とし込むにあたって、どんなことを考えましたか?

川上智之(以下、川上):この企画の打ち合わせで貝印本社に伺ったときに、いろいろ資料を拝見していくなかで、貝印の大元にあたる刀鍛冶の、鉄を叩く感じを表現するのが面白いかなと思ったんです。そこから、形のないものが形になっていく過程の、叩いた衝撃や溶けていく状態といったものをモチーフにしました。形になるまでって抽象的な状態じゃないですか。今回の写真も、実際に火や鉄を直接的に撮っているわけじゃないけど、それをイメージさせるようなものにしたかった。そこはAUGER®というよりは貝印の部分ですね。そこからAUGER®に落とし込むときに考えたのがプリントの手法でした。AUGER®の直線的でモノクロな世界観がカッコいいなと感じていたので、刃物を連想させるシルバーの紙にモノクロプリントをすることでAUGER®を表現しました。貝印の歴史や、その商品ができるまでの工程をモチーフとしながら、AUGER®的なアウトプットにした作品です。

ー貝印のヘリテージと、その最新ブランドであるAUGER®の世界観を融合させたと。

川上:そうです。熱や硬さ、インパクトを連想させつつ、形になりきっていないものを表現したかった。形になろうとしている瞬間というか。像が崩れていたりするのはそういう意味合いも含んでいます。写真と映像の両方をやっているからこそ、とくに感じることなのですが、映像って(ストーリーや状況を)説明できるじゃないですか。写真は前後がわからないから想像するしかない。それがどう変化していくのか、その瞬間を切り取るのが写真ならではの面白さ。たとえば、刀鍛冶を映像で撮ったら、火に入れる瞬間や叩く瞬間、水につけて冷ます瞬間、といったそれぞれを描けると思うんですけど、写真だとどの瞬間を切り取るのかが大事。それをさらに抽象化したのが今回の作品ですね。

ーAUGER®には、整える時間を大切にしてほしいというブランドメッセージがありますが、川上さんが普段、自分を整えるためにしていることはありますか?

川上:煙草とコーヒーですね。その時間のときにアイデアが生まれることが多い。整えるという意味ではそこですね。ぼーっとしながらもあるし、作品に対して考えようと思ってその時間を作ることもあります。映像はとくに、一人じゃなくていろいろなスタッフとともに作るので、喫煙所での会話から作品ができていくことが多いですね。机に資料を並べてそこに座って話し合っても、あまり大したことは出てこないこともある。日常会話のなかからのほうが「それいいね」というアイデアが出てくる。

振り返ると3年スパンで新しい表現に挑戦している

ー先ほど、写真と映像の両方をしているという話もありましたが、川上さんのキャリアとしてはグラフィックデザイナーからスタートしています。このあたりから今一度、掘り下げていければと思います。

川上:学生の頃はグラフィックデザインを勉強していて、そのままグラフィックデザインの会社に入りました。デザインの仕事をやっているうちに写真を見る機会が多くなって、そこから写真に興味が出て、気づいたらカメラを持ち出して撮るようになった感じです。そこから写真が面白くなって、デザインを辞めてスタジオにアシスタントとして入りました。そのスタジオで初めてちゃんと写真の勉強をして、3年ほど経った頃に独立して今に至る感じです。

川上のオフィシャルサイトより。ここに写っているものは10年以上も前の作品となる。

川上:オフィシャルサイトにあるこのあたりは、写真をはじめたときに撮っていたものです。まだ映像をはじまる前なんですけど、当時この写真を見た人から「シネマチックな写真」と言われたことがあって。意識してなかったけど、たしかにそう感じるだろうなと。今見ても、改めて気づかされますね。

ー写真が先にありつつ、そこから映像も手がけるようになっていったんですね。

川上:はい。MVの表現も好きだったので、アシスタントをしていたスタジオにあった映像機材を使って知り合いのミュージシャンのMVを撮るようになっていった感じです。なので、映像に関しては仕事としてやりながら覚えていったというか。独学ですね。

ーMVの撮影監督も多数手がけていますが、川上さんのなかで転機となった作品があれば教えてください。

川上:なんだろう……。YOUR ROMANCEの「Kids」(2015年)ですかね。初めて撮った映像と言ってもいいくらいのもので。これがきっかけになってMVの仕事もくるようになりました。

川上:振り返ってみると、定期的にやったことのないことを新しくやっているなって。3年スパンくらいで何も知らないところに足を突っ込んでいる。グラフィックデザインから写真、そして映像、今だと映像のなかでも映画を撮影するようになっている。映画は、これまで撮ってきたMVやCM、ファッションムービーとはまったく別物で面白いですね。

モノクロのほうが、より想像させることができる

ーそうして表現の幅をどんどん広げていっていますが、そのルーツにあるものは?

川上:昔からフォトTが好きで、古着でカッコいいフォトTがあると買っていました。今日着ているのもまさにそうですけど。有名な人の写真集よりもフォトTのほうが見慣れているというか、一番身近な写真がフォトTだった。あとはスケートカルチャーとロックとヒップホップ。全体的にアメリカの古い文化が昔から好きでしたね。自分が生まれていなかった時代のものって単純に新鮮じゃないですか。今起きていることより、こんな時代があったんだ、こんな風景があったんだ、こんな人がいたんだ、という。そのムードを今、味わうことはできない。そういうものに惹かれますね。

ー今回のAUGER®とのコラボレート作品もそうですが、川上さんの写真においてはモノクロ表現が多く見られます。川上さんにとってのモノクロの魅力とは。

川上:そもそもフォトTって印刷コストの問題もあってモノクロが多いじゃないですか。その初期衝動的な部分と、モノクロ写真が多い人に影響を受けたというのもあります。あと、モノクロにすると色という情報が消える。そうすることで年代がわからなくなったり、それが日本なのか海外なのかもわからなくなることもある。さっきの写真と映像の関係の話にもつながるんですけど、モノクロのほうが、より想像させることができる。そういう魅力はあるなと思っています。

ー最後に、今後表現していきたいものを教えてください。

川上:今はやっぱり映画の撮影ですね。あとは個人の写真作品もやっていきたい。新しいことを打ち出したいというタイプではないので、自分の好きな範囲でやり続けていきたいですね。

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