ART 2022.09.28

AIという他者に主体の座を受け渡すことでステレオタイプの脱構築を目論む。岸 裕真の個展「Moon?」が開催

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

人工知能(AI)を用いてデータドリブンなデジタル作品や彫刻を制作し、高い評価を得る現代美術家、岸 裕真の個展「Moon?」が神宮前HARUKAITO by islandで開催されている。

岸は1993年⽣まれ。2019年東京⼤学⼤学院⼯学系研究科修了、東京藝術⼤学先端芸術表現科修⼠課程に在籍し、AIを中⼼としたテクノロジーを駆使した作品を制作している。AIを「Artificial Intelligence」ではなく「Alien Intelligence」(異質な知性)として扱い、1つの知性としてAIと共創することで「⼈間とテクノロジー」の関係性を読み替えることを試みている。

本展「Moon?」はすべて新作で構成されており、AIと⼈の関係を⽉と地球の関係に見立てた詩的な空間が提示される。たとえば、モネの睡蓮をモチーフにしたギャラリーの天井に展開されるインスタレーション作品は、ガラス張りの天井に3Dプリントされた睡蓮が浮かぶものであり、根を失ったリミナルな空間を許容するための舞台装置となっている。

ほかにも「黄昏は黄昏に似ている」という写真作品においては、世界各国の⼣焼けの写真を岸が収集し、オリジナルのAIに学習させることで⽣成した架空の⼣焼けのイメージを、銀塩プリントでやきつけることで、AIが描いた⾵景を現実にあったかのように発表する。「それは写真家が⼀度、⾵景をカメラのボックスに受け⽌めて、印画紙にやきつけることでリアルに存在したことを伝える行為と近似している」とも言えるだろう。

本展は、空間設計に黒木契吾、アートディレクターに中村直人、エンジニアに中嶋亮介、サポートに寺脇麻依子などさまざまなコラボレーションにより成り立っており、布施琳太郎による詩やテキストもその構成要素となっている。

これらの構成において岸はニコラ・ブリオーの「ラディカント」を着想元としており、自らのルーツ(根)を固着させるのではなく、都度張り替える思想を、人間とAI、リアルとバーチャルという二項対立間の振動に当てはめることに挑戦する、という展覧会となっている。

INFORMATION

Moon?

会期:2022年9月23日(金) – 10月16日(日)13:00 – 19:00
会場:HARUKAITO by island(東京都渋⾕区神宮前6-12-9 BLOCK HOUSE 2F)
※月〜水休廊
作家:岸 裕真
会場設計:黒木契吾
エンジニア:中嶋亮介
グラフィック:中村直人
サポート:寺脇麻依子
執筆:布施琳太郎

主催:アイランドジャパン株式会社
http://islandjapan.com

POPULAR