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グローバル刃物メーカーの貝印によるグルーミングツールブランド「AUGER」の世界観をモチーフとして、アート作品を通じて表現/拡張させるべくEYESCREAMにおいてシリーズ連載してきた「AUGER︎ ART ACTION」。これまでに上岡拓也、川上智之、YABIKU HENRIQUE YUDI、Margt(PERIMETRON)、オートモアイが参加してきたが、この5アーティストの作品が一堂に会するエキシビジョンがsequence MIYASHITA PARKにおいて3月18日〜21日の4日間に渡って開催された。その模様をレポートする。
来場者には雑誌EYESCREAM No.184のバックカバーで展開したAUGER︎ ART ACTIONの総括ページをまとめた冊子が限定無料配布された。
渋谷のライフスタイルホテルsequence MIYASHITA PARK 17階の客室3つを使用して展開された本エキシビジョン。[ROOM 1]のSUITE(1701)では上岡拓也、川上智之、YABIKU HENRIQUE YUDI、[ROOM 2]のJUNIOR SUITE(1710)ではMargt、[ROOM 3]のKING(1705)ではオートモアイの作品がそれぞれ展示された。
MIYASHITA PARKの屋上に広がる宮下公園を抜けてホテルのレセプションに通じるカフェの入り口で受付を済ませ、エレベーターで17階まで上がる。まずは[ROOM 1]からスタート。広々としたスイートルームに設置された3名の作品は、客室自体の持つ洗練された空気感に、少し違和を与えるように干渉しながらも溶け合うように存在していて、窓の外に広がる都心の街並みとも呼応するようで。とくに北側の窓からは代々木公園や渋谷から原宿へと連なる明治通りを一望することができるという抜けのよさで、その眺望も含めて展示を満喫する。洗面台にはAUGERのアイテムが整然と並んでいて、その様もクールだ。
続く[ROOM 2]は、扉を開けた瞬間から「ここはどこ!?」と一瞬自分を疑うような、迷い込んでしまった感ハンパない。さっきまでホテルの通路を歩いていたはずなのに……。これぞMargtの真骨頂ともいうべき遊び心と過剰さと没入感、となればもう昂揚しかない。“男の夢が詰め込まれた無限鏡”をテーマとした作品を祭壇に見立て、そこに至る一本道が敷かれている。そこをソワソワしながら通り抜けてスロットを回すと……ここから先は体験した人だけがわかること。その恍惚感たるや。次はいつのタイミングでお目にかかれるか、心待ちにしたい。
Margtルームでブチあがったまま[ROOM 3]へ移動する。客室に入ると、オートモアイによる大型のドローイング作品が眼前に広がる。しばし圧倒される。先ほどまでハイになっていただけに、自身のチューニングも整えながら、作品世界へと入り込んでいく。
本エキシビジョンのために描き下ろされた作品は、本来は窓になっている部分をすっぽりと覆い、埋め込まれるように展示されている。外光や外からの情報が入ってこないため、自ずと作品と対峙しやすくなる、という構成だ。これら作品と向き合っているうちに、そこに描かれたシーンの一部が自身のプライベートな記憶と接続されていき、忘れていたはずの思い出がふいに浮上してくるから驚く。ザワザワと、感情が揺さぶられる。気がつくと自分と向き合っている状態で、時間は有意義に過ぎてゆく。
奥の洗面スペースに進むと雑誌EYESCREAM No.184のバックカバーにもなった作品の原画が掲げられていて、AUGERアイテムとの調和も見事だ。ここだけ窓からの自然光が差し込んでいるから、自然ふと現実に返る。そんな鑑賞体験。
エレベーターで階下に降りて、sequence MIYASHITA PARKを後にしたときにはなにかいつもと違った日常が広がっているようで、これってアートを通して「自分と向き合う」ことをしたからなのかなとか。そういえばAUGER ART ACTIONもまた、「“自分と向き合う”ことで生まれる、新たな創造と可能性」をテーマとしてきたのだから、まさにそういうことか、とひとりごちながら、春の陽気で浮き足立った渋谷の街を歩くのだった。
各作品に込められた作家の思い、意図は以下より読むことができる。バナーを軽やかにタップして、合わせてどうぞ。