ART 2020.03.02

被写体から意味を排除し、アブストラクトな様相を出現させる写真家、横山隆平の個展

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

モノクロフィルムによる都市写真を発表してきた京都在住の写真家、横山隆平の個展が馬喰町のギャラリースタジオBAF studio tokyo,において3月6日(金)より開催される。

本展では3mの大型作品を含む新作が発表されるが、その制作過程において、横山は自身のライフワークである3000枚を超えるストリートスナップ(路上の写真)をプリントしては浴槽で洗いをかけ、さらにそこにプリントするという行為を繰り返すことで、街の壁の経年変化を表現。そうしてできた写真をレイヤーに分け、UVプリンターという特殊な印刷機で出力し、その特徴である”盛る”技術を取り入れることによって、見る角度によって違う表情が立ち現れるという、まったく新しい写真作品を作り上げた。

制作にあたっては、京都の老舗印刷会社であり日本で最も革新的な印刷技術を開発してきたサンエムカラーが協力。作家と技術者の妥協のない制作理念が結実した。

以下、作家によるステートメントだ。

始まりはグラフィティだった。正確に云えばグラフィティの存在そのものだった。僕はその在り方をいくつかの要素に解体し、様々な状況、環境、メディウムを混在させ、印刷方法と紙を作業の度に変更しながら、プロセスを辿った。幾度となく、その作業を繰り返すうち、次第に、被写体は徐々にその意味を成さなくなっていた。映像から意味は排除され、アブストラクトな様相が出現する。手元には、何が写っていたか判然としないプリントだけが残っている。そこには崩れた文字や記号、風景の断片が匿名的に転がっているだけだ。その物体はそれでも写真でいる。そこが何処かであり、何かが確かに存在したという事だけは変わらない。例えばそれは、幾人もの手を渡り、繰り返し聴かれ、擦り切れて傷つき、音飛びし、いまやノイズしか聴こえなくなってもなお切実に音を鳴らし続ける草臥れたレコード盤のように。その物体はそれでも写真でいる。僕はストリートフォトグラファーだった。僕にはそれで充分だった。映像に或るものを拭い去る時、確からしさ、は、やがて。

INFORMATION

BAF studio tokyo, presents
Ryuhei Yokoyama Photo Exhibition “WALL Stanza”

会期:2020年3月6日(金) – 3月20日(金)
13:00 – 20:00 ※金・土は13:00 – 22:00 ※日・月は休廊
会場:BAF studio tokyo,(東京都中央区日本橋横山町6-14 日本橋DMビル4F)
作家:横山隆平

・オープニングレセプション:3月6日(金)17:00 – 22:00

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