DJを軸にマルチに活躍するLicaxxxとWONKのリーダー/ドラムスである荒田洸の二人が、リスペクトする人を迎える鼎談連載。第十六回のゲストにはこれまでと打って変わって、福岡ソフトバンクホークスの石川柊太投手を迎えた。高校3年までは野球に明け暮れた荒田のつながりから実現したこの組み合わせ。活躍の場は違えど、各分野のトップランナーたちだからこそわかりあえる/つながっていく、興味深いやりとりをどうぞ。
EYESCREAM誌面には載りきらなかった部分も含めて完全版でお届けします。(※雑誌EYESCREAM 2022年3月号からの転載となります)
表現している人のことを尊敬している
Licaxxx:調べてみると、同い年で、誕生日が2日違いでした。
荒田:マジ?
Licaxxx:(石川投手が)12月27日で、私が25日。
石川:2日先輩ですね。
Licaxxx:どういった人かいろいろ調べていたら、ももクロヲタなんですね。あーりん推しの。私、このあいだあった(百田)夏菜子さんのソロコンで、曲間の演出の曲を担当しました。
石川:ええっ! 演出だと本広(克行)さんですよね?
Licaxxx:そこまで知ってるんですね(笑)。
石川:本広さんには仲良くしてもらっています。
Licaxxx:ももクロの舞台や映画は基本的に本広さんがやっていて、ライブはまた別の人が演出しているんですけど、今回の夏菜子さんのソロコンは本広さんが演出していたので、そこから話をいただきました。
石川:ももクロのライブ演出や美術をやっている人たちとめっちゃ仲良くて、そのつながりで本広さんとも何度かご飯を食べに行きました。
Licaxxx:野球選手ってももクロファン多くないですか?
荒田:マー君(田中将大/東北楽天ゴールデンイーグルス)然り。ももクロきっかけで仲良くなったりは?
石川:あまりないですね。ももクロ好きで一番話すのは、宇佐見(真吾/北海道日本ハムファイターズ)かな。生まれ変わったら音楽やりたいなと思っていて。というのも、ももクロは“アイドル”としても大好きなんですけど、お二人もそうで、表現している人のことを尊敬しています。
荒田:ありがとうございます。ももクロ以外だとどんな音楽を聴くんですか?
石川:TikTokで音楽を見つけるくらいです。あとはアヴィーチーも好きなのでEDMを聴いたり、ULTRAやTOMORROWLANDといった海外フェスの映像もよく観ています。クラブに行ったことないんですけど。
Licaxxx:そういったフェスに行きたくなったりは?
石川:海外のものだったら行ってみたいですね。
自分の強みはなにか認識して、その強みで勝負する
荒田:野球をはじめたのはいつ頃ですか?
石川:小学2年くらいですね。小中は軟式で、高校から硬式。ずっとピッチャーで、サードやセンターも少しやっていました。そこまでピッチャーにこだわってなかった。
荒田:僕は中学の頃、シニア(リーグ)だったんですよ。少年野球やっていた頃は選抜に選ばれたりもしてたんですけど、中学でシニアに入ったら、化け物みたいなヤツばっかだった。そこで諦めてしまいましたね。プロになるのは絶対無理だなって挫折した。中2で球速135km/h投げるヤツがいたりして、レベルが違いすぎるなと。高校までは野球やったんですけど。
石川:いつからプロを意識したのか、よく聞かれるんですけど。いけるって思ったタイミングがあったわけではないし、いけないって思ったタイミングもなかった。
荒田:化け物みたいなヤツを見ても?
石川:いま思えば、負けず嫌いすぎたのかもしれないですね。「無理だな」と思うタイプではなかった。当時、実力的には全然だったんですけど。高校1年で球速118km/hとかだったので。高校のあいだで15km/hくらい上がって、大学に入って一年目に肘をこわした。そこから一年くらいランニングばっかりしていて、そのあとに投げたら146km/h出ました。
Licaxxx:なんで?(笑)
石川:なんなんですかね。ランニングしまくって、めっちゃ足が速くなったんですよ。長距離というよりは、坂道ダッシュとかハーフポールとか短距離をやりまくった。で、投げたら速くなっていた。そんなもんですよ。でも、大学の一年先輩にライアン小川(小川泰弘/東京ヤクルトスワローズ)がいて、あの人が全部投げていたので、試合で投げることはなかなかなかった。
荒田:そこから育成に?
石川:そうですね。
荒田:育成選手でホークスに入団して、そこから激しい競争があったわけじゃないですか。どんな感じでした?
石川:うーーん。ライアン小川を見ていたおかげで、基準値は高かった。彼は新人賞を獲っているんですけど、大学と同じピッチングしていたんですよ。それを見て「なるほどね」って。でも、千賀(千賀滉大/元福岡ソフトバンクホークス、今期よりニューヨーク・メッツ)のピッチングを見たときはドキツイなと思いました(笑)。
荒田:どういったところが?
石川:ただ純粋に、ボールが指から離れてホームに着くのが速い。ピピンッっていくんですよね。
荒田:そういうのを見てきて、自分に足りないものがなにかわかっていた?
石川:というよりは、あの人の強みはなにか、自分の強みはなにか、という認識。その強みで勝負する。自分の場合は指のかかりだったり、球の質だったり、そこをコーチにも買ってもらっていたので、そこで勝負するんだという。育成時代に怪我もしたけど、いいトレーナーやコーチにも恵まれましたし。なにが成功の源かと言われると、わからない。
荒田:出会いかもしれないですよね。我々もそうですけど。
石川:そうですね。学生時代に出会った仲間や指導者に恵まれてきた。それでしかない。自分のなかで諦める気持ちにならなかったのは、そういった人たちが支えてくれて、自信をつけさせてくれたからだと思います。
恋愛と一緒で時間が解決してくれる
荒田:いまって石川さん、最速155km/h以上投げるじゃないですか。意味わかんないですよね。人の構造的に。
石川:思いっきり投げていますからね。
荒田:プロの投手って、試合中、思いっきり投げるってあるんですか?
石川:試合中ですか? 思いっきりですよ。
荒田:そうなんだ。テレビで見ていて、すごくゆっくり投げているように見える人もいるじゃないですか。もう引退しましたけど杉内(俊哉)投手だったり。
石川:テレビだとわかんないですけど、横で見ていると、体幹ギャッていってますよ。思いっきり投げないと抑えられないです。ホントおもしろいように、球を置きにいったら打たれる。打たれてもいいからストライクを入れろ、ってよく言うけど、それすると10割打たれます。それを、思いっきり投げることで3割にする。思いっきりなんですけど、なんていうんだろう、100%をどう80〜90%で出すかの、思いっきりですね。中継ぎや抑えは全部100%でいけますけど、先発だと長いイニングを投げないといけないので。
荒田:なるほど。
石川:思いっきり投げることもむずかしいじゃないですか。自分の身体を最大限に使って、出し切って、ブン投げる。それでさえ大変な技術で、そこに変化球もある。しかも“きれいに投げる合戦”じゃない。きれいさを競うわけじゃなくて、どんな変な投げ方であっても、相手バッターを抑えればいいという。あと、身体ってなまものなので、昨日と今日で状態が全然違う。ということは、投げるときも毎回違ってくる。
荒田:じゃあ正解がない?
石川:正解は「打ち取ること」なので結構はっきりしている。そこを忘れないようにはしています。
荒田:そうなると、自分のベストだと思える投球ができているにも関わらず打たれる場合と、その逆もあるわけじゃないですか。そのあたりはどう折り合いつけるんですか?
石川:恋愛と一緒で、時間が解決してくれる。
(一同笑)
Licaxxx:時間なんだ!
石川:時間ですね。打たれた日は、やっぱり夜眠れない。もっとこうしてればよかったとか引きずっている。それが、中6日経って、次の登板になると忘れるんですよ。
Licaxxx:上書き保存されるんだ(笑)。
石川:結果がダメだったときに、これまでやってきたことを否定してしまって、新しいことに手を出してみるけど結局、次の登板がうまくいかなかったこともある。だから変えなくちゃいけないところもある。その見極めはむずかしいですね。
荒田:そこは指導者も一緒になって?
石川:そうですね。でも結局は、自分のなかでこれだ! って決めて進まないといけないので。
荒田:では最後に、今後の抱負を聞かせてください。
石川:いろいろありますけど、まずはファンに喜んでもらえるように。ももクロのおかげでファンの気持ちもわかるし、ファンが喜ぶ目線というのは見えているので。そういうところ含めて「ももクロありがとう」ですね。
荒田:すげえな、ももクロではじまり、ももクロで終わるという。
Licaxxx:さすがヲタだったという。