DJを軸にマルチに活躍するLicaxxxとWONKのリーダー/ドラムスである荒田洸の二人が、リスペクトする人を迎える鼎談連載。第十七回は、ラッパー森とトラックメイカー/プロデューサーのチョモの二人からなる中毒者続出のユニット、どんぐりずとの会合。渋谷のうどん酒場で集まり話すうち、ゲストの二人の意外な(?)パーソナルな側面も見えてきた、笑いの絶えない一夜となった。
EYESCREAM誌面には載りきらなかった部分も含めて完全版でお届けします。
ミステリアスでいたい
荒田:久々ですね。WONKの(井上)幹さんがどんぐりずの大ファンで、対バンに誘ったのが最初の出会いかな。
Licaxxx:あれは意外な2マンだったから、マジで行きたかった。私は、翠月で携帯を無くしたって騒いでいる人がいて、それがじつは森だった。でもそのときは認識してなくて。認識したのは、ちょうどその2マンのあった日の夜中に(不眠遊戯)ライオンに行ったときに紹介してもらって、ちゃんと喋った。
森:翠月のときはめっちゃ酔っ払って、いろんな人に「俺の携帯知りませんか」って聞いていたみたいで。(お酒を飲んで)突き抜けちゃうと全然覚えてないんですけど。
荒田:ヒップホップだと誰に影響を受けているの?
森:俺はケンドリック・ラマーです。90sだとザ・ルーツ、ア・トライブ・コールド・クエスト、ファーサイド。
荒田:フロウは参考にするの?
森:たぶん、無意識的に。
Licaxxx:発声の仕方も英語寄せだよね。
森:そっちのほうが気持ちいい。
荒田:ラップにグルーヴ感あるもんね。
森:めっちゃうれしい。Campanellaさんも超好きです。影響はそこですね。結構でかい。
Licaxxx:いいね。チョモくんは?
森:チョモは、ホントない。自分でやるのが好き。
Licaxxx:そうなんだ。普段はなに聴いてるの?
チョモ:今日は(大阪からの)帰りの新幹線で、マイケル・ジャクソン。
Licaxxx:幅広いね。ビートのアイデアとかリファレンスとか、そういうのをやるときは?
チョモ:そういうときは、森が。
森:俺のほうが意外とディグるんですよ。「これめっちゃいい」って送りつけて、聴かせまくって、それでチョモのアンテナに引っかかったら、つくる。でもあまりこういう話は人に教えたくない。秘密にしておきたい。自分のことあまり語りたくないんですよ。ミステリアスでいたいから。
Licaxxx:ミステリアス(笑)。
森:でも現場に行くとバレちゃうんですよ、バカさが。
荒田:バカを装っているだけでしょ?
森:そこは隠しておいてください!
変化球を投げてきそうなものだけど、じつはドストレート
荒田:ニューEP「4EP3」、よかったです。
Licaxxx:聴いた聴いた。がっつりUKの感じだね。
森:そうですね。俺ら大好きUK。
荒田:俺は「Oto mafia」が一番よかった。攻めてるね。
Licaxxx:全部よかったなー。「Funky Grandma」がさ、「このアシッドの感じでFunky Grandmaって題名ズルいわ」って思った。
森:あれ、ライブでやるときに「おばあちゃんに向けた曲です」って言ってやります。
Licaxxx:あれは笑う。
荒田:曲をつくるときってなにを考えてつくっている? 「おもろい」かどうかとか?
チョモ:今回は“刺激”オンリー。刺激をいかに感じるか。
Licaxxx:結構、DJユース狙いなのかなと思った。
森:そうですね。今回はクラブ強め。
Licaxxx:現場で遊んでいる感が伝わってきて、私はすごくうれしい。実際、現場で顔を合わせることよくあるよね。あとは、「曲はこうだけど構成はこうしよう」みたいな、へんな狙いがないのもよかった。
荒田:たしかに。特殊な曲の展開はするけど、奇をてらっている感はない。変化球を投げてきそうなものだけど、じつはドストレートっていう。
森:すげえ。その言葉もらいますわ。
(一同笑)
荒田:トラックをつくるときに悩むことはないの?
チョモ:どれだけいじっても全然よくならない、みたいなときは止めます。
荒田:ボツにする勇気は持ってるんだ。
チョモ:そうですね。いつかなんかで使えればいいな、みたいな。
荒田:わかる。掘り出して聴いてみて、いいじゃんってなるときもあるもんね。制作中にケンカすることないの?
チョモ:制作中はないですね。突っ走り系です。普段は、たまに。
Licaxxx:普段はなにでケンカするの?
森:意外とネチいやつで。
チョモ:チリツモ系。森が携帯なくすと、全部俺に連絡くるんですけど、それって俺は関係なくない? とか。
森:タクシーによく忘れるんですよ。
荒田:それを責められてもなにも言えなくない?
森:いや、逆ギレです。
チョモ:「しょうがなくない? 遊んでたんですけど」って。森の主張はね、ホント揺るがないんですよ。
Licaxxx:それは愛され感がすごいね。