藤井道人:けむりのまち第二十二回『そろそろ、さようなら、2024年』

日々映画を作っていく中で忙殺され、失われていく大切なはずの記憶の数々。本連載は映画監督・藤井道人が映画や人、言葉、その瞬間を保管しておくための企画である。「生きていく上で忘れてしまうだろう記憶たちの集積場」をテーマに、様々な出会いを通して、映画が作られていく過程や、映画業界の改善に向かっている様を伝えていく「けむりのまち -Fake town-」。第二十二回は、藤井道人の総括2024。

もう、12月。街が年の終わりに向けてソワソワしてきている。街は激コミ。タクシーは激コミ。飲食店も激コミ。一年が終わる瞬間ってとても好きなんです。

「来年こそは、良い年になる気がする」って、もう何度思ったことでしょう。毎年、さして変わらないんですけどね。そうやって、自分の愚かさを自覚するにも年末年始は最適です。皆さまも、一年本当にお疲れ様でした。なんとなく、今年の総括をしていけたらと思います。

活動としては、映画は『パレード』『青春18×2 君へと続く道』『正体』と三本を公開しました。

『パレード』は大切な人とのさよならの映画、『青春』は自分の未来へのスタートとなる映画、『正体』は今の自分の集大成のような映画。全て、僕にとって思い入れのある作品になりました。『正体』はまだまだ公開中、他の作品はNETFLIXでご覧になれます。未見の方は是非ご覧ください。今年はプロデュース業務も忙しかったです。何といっても、私、サラリーマンですから。愛社精神炸裂していますから。がんばりました。

ドラマ『透明なわたしたち』『INFORMA 闇を生きる獣たち』『わかっていても』と、ABEMA×NETFLIXドラマを3本プロデュースしました。かかわり方は作品ごとにそれぞれですが、どれも監督はじめ、キャストスタッフの皆さまの尽力のお陰で完成しました。本当に感謝しております。

そして、そして、本業でもある監督業ですが、今年はNETFLIXオリジナルドラマ『イクサガミ』一択の一年でした。岡田准一さんはじめとする最高のキャスト、スタッフの皆さまと駆け抜けた半年間は、本当に楽しかったし、辛かったし、何よりも未来への指針になりました。まだまだ改善できることや、自分への反省点ももちろんありましたが、長いこと同じチームでやってきた、その道のりの一つのゴールでもあったように感じました。色々な情報が出ていくのは来年です。是非お楽しみに。

『イクサガミ』撮影後は編集と執筆と来年の準備に追われながら、こうやって文章を書いています。来年は、またまた、心労が半端じゃない作品が控えています。全く挑戦したことのない分野なので楽しみです。

来年からは、執筆だけの作品や、プロデュース作品も継続してご縁があれば頑張っていこうかなと思っています。今年見た作品についても、あまり書かないので、雑文をタラタラと。今年の映画はなんといっても『シビルウォー』が最高でした。アレックスガーランド監督と対談出来たのも忘れ難い経験になりました。

邦画では『夜明けのすべて』がとてもよかったです。監督すごいなと思いました。

配信作品だと、AppleTVに秀作が多かった印象です。『ダーク・マター』『推定無罪』『ディスクレーマー』など、力作が多かったです。ただ、日本で観てる人いなすぎて全然語れないというジレンマ!!アマプラの『ザ・ボーイズ・シーズン4』も最高でした。特に、最終話の「シーズンクリフハンガー」とも言うべき、畳みかけは凄すぎて少し泣いちゃいました。誰か、本当にザ・ボーイズみたいな作品作りませんか?

Netflixとパートナーシップ契約しているのに他社ばかり褒めても怒られるので、最高傑作の『白と黒のスプーン』もピッ
クアップしたいです。僕、リアリティショーというものに一ミリも興味がなかったのですがこれはやられました。最高でした。
『地面師たち』のヒットも、綾野剛さんの弟分としては嬉しかったです。見たことのない剛さんでしたね。ピエールさんの「もうええでしょ!」は居酒屋にいると沢山聞こえてきます。ああ、これが社会現象ってことなんだなと。僕は、『自慢師たち』が好きです。

U-NEXTでは『フランチャイズ』というマーベルの裏側みたいなコメディドラマが最高でした!ディズニーは最高傑作『ムービング』があるのでだいぶ評価甘いのですが、今年は『暴君』でした。ヤクザと怪物の掛け算って正気か!?みたいな。パクフンジョン監督、リスペクトです。

と、書いているとキリがないのでこの辺で。

今年は、日本のみならず台湾をはじめ様々な海を越えた同志たちと出会うことが出来ました。映画が繋いでくださったご縁です。本当に、映画を職業に選んで良かったと思いました。アレックスガーランド監督の言葉ですが、観客と監督の関係は『想像』と『対話』だそうです。本当にそうだなと思います。これからも、観客の皆さまが『想像』し『対話』出来る作品を目指して頑張ります。

そして最後に。来年で弊社『BABEL LABEL』が15周年を迎えます。15年……長かったなあ……。おじさんになっちゃったってことだなあと。沢山の方に支えられてここまでやって来ることが出来ました。本当に感謝申し上げます。来年は沢山のBABELとしての催しごとがございます。楽しみに待っていてください。

長々と書いてしまいましたが、今年、一年、本当にありがとうございました。
来年も攻めて、熱狂して、楽しんで、精進してまいりますので宜しくお願いいたします。皆様にとって2025年が素晴らしい一年になるように祈っております。

2025年の新年一発目は、質問コーナーですね。なんでも、お待ちしております!
あと、企画もマンネリ化してきたので、こういうのやってほしい!的な要望があれば、お気軽にリクエストしてください。

それでは、良いお年を。

藤井道人

※本連載にて、藤井道人監督への質問を募集。
監督が一問一答形式でお答えするので、
聞きたいことや気になることがある方は、
こちら宛にお送りください。