TOKYO BLUE EYES
by TETRO.
VISITORS : 003 Meirin
渋谷は鴬谷町の片隅に構えるヘアサロン、TETRO。目印は鮮やかな青いブルーのアパートメント。この場所には現代のサブカルチャーを形成するアーティストやクリエーターが足を運んでいる。カルチャーの発信地になりつつあるこの場所で聞こえる会話に耳を澄まそう。新たなるエネルギーの発見ができるかも。
壁が“TETRO BLUE”と呼ばれていることにちなんで”青き眼”=人の訪問を歓迎する目を持つ、この場所から東京の今を覗いてみる。連載第三回目に登場するのはアーティスト、Meirin。
今回、TETROのヘアメイクアーティスト、森田康平が待ち合わせたのは、“ZOMBIE-CHANG”としてアーティスト活動もこなすマルチな才能を持ち合わせたMeirin。彼女の魅力に惹かれると一貫の終わり。言うまでもなく森田もそのひとり。無限に広がる彼女の脳内構造は一体どうなっているのだろうか?
引き続き今回も写真は嶌村吉祥丸。なんと来る10月にリリースをするTETROのZINEでは、モデルでMeirin、写真は吉祥丸が務めており今ここに集まっているメンバーで、モンゴルに渡り撮影をしてきたのだとか。せっかくのいい折なので、吉祥丸も交えてひとつの作品が出来るまでの軌跡を辿って鼎談をする。
自然に触れ、還ることで見えてきた日常の“気づき”
ーTETROの次回ZINEの撮影で一緒にモンゴルに行ったそうで。
森田:そうなんです。Meirinちゃんにモデルをお願いして、写真は吉祥丸くんにお願いしました。この連載も撮ってくれていますが、吉祥丸くんは日本のフォトグラファーで僕は1番好きかもしれないです。
Meirin:私も!
吉祥丸:…!ありがとうございます。
森田:今までファースト、セカンドと写真集を作ってきて、次は絶対に吉祥丸くんに撮ってもらいたいと思っていました。となるとモデルは誰かな?って考えた時に、Meirinちゃんしかいないでしょって満場一致です。
Meirin:嬉しいです。
森田:Meirinちゃんは野性的だから、動物と相性がいいよね。って話しで吉祥丸くんが馬と一緒に撮りたいって言ってたんだよね?
吉祥丸:そうですね。少し前の僕の展示で“自然に還る”ということをテーマにしてずっとそれについて考えていました。そこで動物的本能とか人間らしさをMeirinに重ねて撮りたいと。その時はモンゴルは頭になくて、北海道とかとりあえず広大な土地でできたらいいなって話しは進んでたはずでした。
森田:お店のみんなでロケーションのミーティングをしている時に「熊本?北海道?いやいや、モンゴルでしょ!」って(笑)。
ー発想の幅がすごいですね。
森田:みんな最初、え?!…。って固まりましたが、「うん!モンゴルがいい!!」って瞬時にそこは決まりました。
Meirin:直感ですね。
森田:そうそう。そこで吉祥丸くんもMeirinちゃんも速攻でOKしてくれて。だから何も知らない状態でみんなで行きました。
吉祥丸:地名とかは周りに聞いたりしましたが、なんとかなるでしょってあえてそこまで詳しくは調べませんでしたよね。
森田:旅行でもなかなか行かない土地なので、すごく楽しかったです。
Meirin:楽しかったですね。自然に還るってテーマでしたが、モンゴルから日本に帰ってきて、木の下でゆっくりするのを日課にしないと落ち着かなくなっちゃったんですよ!葉っぱの音とか、雲の動きとか見ないとなんかリセットされなくて、本当に自然に還っちゃいました。
森田・吉祥丸:笑!
ー“気づいた”んですね!
Meirin:そうですね、今までちゃんと葉っぱの音とかも聴いていなかったなって思って。1日に1回は外に出て耳をすまさないと引きこもってる感覚になります。
森田:僕自身よく日常の音を聴いていたのですが、モンゴルでみんなと星を見たり、自然の音を聴いて、やっぱりそれに勝るものはないですね。すごく壮大で首都・ウランバートルから1時間くらいで大草原とか流れ星もみれて本当にすごかった。
Meirin:私見そびれちゃったんです、流れ星(笑)。
森田:そうなの(笑)?その中で撮る吉祥丸くんの写真は最高だったな。もうすぐ展示をやるので楽しみにしていてほしいです。Meirinちゃんもリリースに合わせて楽曲も書き下ろしてくれます。
Meirin:はい!今までの活動とかを考えず、自然に還ったその状態で曲を作れる機会なので、本当に自然のままに作ることが出来そうで私も楽しみです。
ー気の許せる間柄で製作が出来るのは、すごくいいですね。
森田:僕たちはアーティストじゃないから、ひとりでは絶対に出来ないんです。いろんなツールで点と点が繋がるというか、化学反応が起きて毎回面白いものができる。ファッションなんだろうけどファッションではない。作られすぎてない。吉祥丸くんじゃないとあのMeirinちゃんは撮れないですし。
Meirin:私も吉祥丸さんだから本来の部分が出せる。本当に自由なところを引き出してくれるし、自由だけどちゃんと綺麗に切り取ってくれるので、すごいなぁと思います!
ーおふたりともべた褒めですね!吉祥丸さんいかがですか?
吉祥丸:ありがたいです。基本撮る時は何も考えてないので。逆に言えば技術的なことは広告写真を長いことやっている方には及ばないですし、距離感と関係性だけでできるだけ何も考えないで撮ることで、写ってる人の最大限というか素材のままを摘み取る感じです。
森田:わかります。すごく考えて準備してもMeirinちゃんのイメージを崩したくはないし、洋服も私物に少しプラスするくらい。ヘアメイクも素のMeirinちゃんには勝てないものがあります。それがすごくよかったし、今まで引き算がすごく大事だと思っていたけど、足し算をいかになじませるかってところ。それがすごく課題だなって思いました。音楽も写真もそう。どこか違和感だけど、そこに落とし込んでなじませるっていうのが、吉祥丸くんの写真からすごい感じる。誰もが目にする光景なんだけど、そこにいい違和感が出てると思うから僕は好きなんですよね。何もしなくてもいいんだけど、何かを足してそこにまた化学反応を出せるようなことができたらいいなと反省というよりこれも“気づき”ですね。
吉祥丸:それって根底的な“気づき”を得ていますよね。自然に還るっていう。
森田:ほんとに。
Meirin:私自身も制作も終わりいろいろ全て出し切った状態でモンゴルに行って、自然に還って一旦自分の生活から離れて俯瞰して自分を見ることができて、普段自分はこんなふうに行動していたんだなってことに気がつきました。
ー今の音楽にも影響していますか?
Meirin:結構煮詰まって毎日考えてたっていうか、煮物を作っていて焦げてるのにずっと混ぜ続けてたって感じ。焦げていたのに自分がそれを美味しいと感じていて、でも本当は丸焦げだから全く美味しくなくて。なのでそれを一度捨てようと思って鍋の中を空にしました。いま水を煮込んでる最中。でもそれって全然煮物を作らなくてもいいんだなってことです。蒸発しちゃって水がなくなっちゃったらそこにまた水を足したらいいし、それは森田さんが言った気づきと一緒で、入れすぎてもダメだし、やらなすぎてもただ蒸発しちゃう。ちょっと入れたら何かが起こるっていうか、そういうことの方が作品も生活もご飯もそうだなって思いました。そういうことと同じ?
森田:うん、似てると思う。料理の話しになるんだけど、ご飯とかもやっぱり自分の好きな人、家族だったりパートナーが気持ちを込めて作った料理って、プロが作った高級な美味しい料理よりも勝るはず。髪の毛を切る時とか、気持ちを入れるとそれだけで全然違う。吉祥丸くんの気づきは?
吉祥丸:なんでしょうね。頻繁に海外に行ってますが、モンゴルは初めて行った土地でしたが、場所の気づきよりも朝起きたら、Meirinがひとりで踊ってたっていう出来事があって…。
Meirin:もう!忘れてた!
吉祥丸:ゲルに泊まっていて。朝起きたら音楽聴きながらですよね…草むらの向こうで散歩しながら踊ってたんです。それで森田さんに「吉祥丸くん、ちょっと起きて!」って起こされました。
森田:みんなでしばらく遠くから眺めていました。めっちゃいいね天才だねって!
Meirin:恥ずかしい〜。みんなが起きてるなんて思ってなかったです。
吉祥丸:人目とか場所とかを全部取っ払って素のままの人間らしさをMeirinのダンスから感じて、自分自身が、振り切れていないことに気づきました。みんな尊敬していますし、その人間らしさに気づくことができました。
森田:でも人間らしさは吉祥丸くんも出てたと思います。吉祥丸くんって賢くて寡黙な雰囲気があって、ちゃんとその場に溶け込んでくれる人で。居心地がいいから空気みたいな人です。みんな絶対嫌な気持ちにならない。でもモンゴルで毎晩大富豪をしていましたが、吉祥丸くんは基本強くてずっと勝っていましたけど、最終日に負け越した時に初めて生身の吉祥丸くんが見れました!
Meirin:初めて吉祥丸さんの人間味を感じたかも知れません!
ーお互いモンゴルで人間味を感じたんですね。
Meirin:でも吉祥丸さんは人間でもあるし魔法使いです。吉祥丸さんが写真を撮る時って謎の宇宙空間が生まれるんです!
森田:僕もそれを感じます。モンゴルでも夕暮れを撮ろうとしていて、日没まであと30分ってタイミングの時にガイドさんが車を爆走させながらスポットの岩場まで連れて行ってくれました。その景色に圧倒されてMeirinちゃんが涙して、「なんで涙が出るんだろう、目に何か入ったのかな?あ!感動だ!」って言っていて。
Meirin:そうなんです。コンタクトが乾燥したのかな。って思っていたら、違うこれは感動だったのか!って。
森田:でも本当に美しい瞬間で。僕らも感動で涙が出ました。
Meirin:え?そうなんですか?知らなかった。
森田:Meirinちゃんが言っていたみたいに吉祥丸くんが異空間を作っていて、その瞬間ってヘアメイクも直すとかそんなんじゃないんですよね。この空間を崩さないように僕らはいなくなった方がいいって思って隠れていました。
Meirin:吉祥丸さんは異空間を作ろうと思って魔法を出してるんですか?
一同:笑!
吉祥丸:いや、出してるつもりはないです。
Meirin:え!本当に?!出てるって言われません?
吉祥丸:言われません(笑)。
Meirin:私異空間は吉祥丸さんにしか感じませんよ!出来上がった写真ももちろんなんですけど、異空間を作る天才だって現場ですごく感じますもん。不思議な感覚、撮られている時も急にディズニーランドに来た!って表現が下手くそですが、急にキラキラするんです。
ー本人は気づいてないですけど、きっと魔法を出してるんですね。
吉祥丸:出してるん…ですかね。
Meirin:出してますよ!初めて撮ってもらった時から思っていました。「この人すごい…!なんかおかしい!」って。なんかキラキラしてる!
森田:それって意図的にできることじゃなくて自然なものですよね。さっきの話しに戻りますが、Meirinちゃんが吉祥丸くんはディズニーランドって言ってましたが、僕は同じことをMeirinちゃんにも感じています。今出てるアルバム「PETIT PETIT PETIT」は本当にテーマパークみたい!遠足に行くみたいな高揚感を楽曲に感じます。
Meirin:それを言ったら私は森田さんに髪の毛を切ってもらう時に感じますよ!次どんな髪型にしてくれるんだろうとかワクワクしてます!ジェットコースターに乗るけど、安全バーがついてるから絶対に落ちない!っていう安心感なので身を任せられますね。
ーこの対談は、魔法使いの集いですか…(笑)。
森田:タイプの違う魔法使い(笑)。
Meirin:嬉しい(笑)!
ーZINEの完成が楽しみですね!
森田:終えた時に“絶対にいい!”って確信できました。出来上がった写真も、想像以上に良かったです。完全燃焼ですね。いつもスマートな吉祥丸くんも3日目なんか出し切った感がすごかったです。
Meirin:シャキッとしてるとこしか見たことがなかったから、みんながヘトヘトになってるのが見れて本当によかったなって思います。人の完璧じゃないところを見せ合うっていいですね。
森田:本当は見せたく無いところだからね。
ーこの時代、SNSとかでも自分の見せ方ってどうにでもできるじゃないですか。良く見せたりとか。
森田:そういう時代だからこそ本質的なものって問われると思うし、その見て呉れだったり表面的な部分じゃなくて、Meirinちゃんのように自然に還るじゃないけど、そういうものが大事になってくるんじゃないかな。
Meirin:いろんな人のダメなところを見てみたいですね。SNSで言うと、全部クールな写真ばかりの人が鼻をほじっているところとか。ダメなところって本当はカッコいいですよね!
森田:わかる!映画とかでも、完璧じゃない主人公の人が僕は好き。
Meirin:トム・クルーズは、かっこよすぎちゃうかも。
一同:笑!
森田:ユーモアがあった方がいいよね、ジム・キャリーとか?
Meirin:でもちょっとおどけてる人の方が、絶対色々考えてるので怖いです!見抜くじゃないけど、この人怖そうっていうのありますよね?心の中で何か思ってるみたいな。
森田:あるある!一瞬でわかるかも。
Meirin:「あ、この人ジムさんだ…!」ってわかりますもん。
ージムさん(笑)!
ーお三方を見ていると、エネルギーをお互い、貰ってはあげて。あげては貰って。といいバランスですね。
Meirin:リサイクルだ!
森田:循環!
吉祥丸:それが、本来の在り方だと思います。人の仕事っていうものは、一番わかりやすい例でいうと、ご飯を作ってあげたから何か恩返しをしてあげるとか。
Meirin:ケーキを作ってあげるとか!
吉祥丸:そういう話ししたよね。ポケットにあるビスケットをあげるって話し。
Meirin:してた?!
吉祥丸:今回自然に還るとか動物的なものを撮りたいって話しをしていた時に、結局僕らがやってる写真を撮るってエネルギーとか音楽を作るエネルギーが、自分の為だけじゃなくて周りの人を幸せにすることもできる。自分のポケットのビスケットをみんなに分け与えるってことだよねってMeirinと話してた気がします。
森田:すごくいいこと言ってる!
Meirin:そんなこと話した気がする(笑)。
ーMeirinさんと吉祥丸さんの会話は、なんだかセンテンスは全く違うのに噛み合い方の相性がいいですね。
森田:そうなんですよ!真逆なタイプな気がするんですけど、根本が一緒で聞いていてすごく面白いです。
吉祥丸:真逆かもしれないです。僕って作品に対して結構コンセプトを堅苦しい感じで考えちゃうタイプなんですけど。多分Meirinは具体的ワードを出すんだけど、より抽象化できている。歌詞ってすごい抽象的じゃないですかワードとして。例えば、アルバムにもある“レモネード”ってすごい具体的な言葉だけど。Meirinの中では、抽象的で感情が具体的なものに宿ってるんですよね。それがすごいなと思いました。
Meirin:真逆だけど、私と話ししてくれて嬉しいです!
一同:笑!
SEASON STYLE DATA :
Medium Bob
森田:Meirinちゃんに初めて会ったのは2年前くらいかな。ブランドのレセプションで話す機会があったんだよね。
Meirin:ちょうど私がZOMBIE-CHANGでの活動を始めたくらいの時でしたね。美容院って得意じゃなないのですが、TETROにおいでよ!って誘ってくれて行きたいなぁって思って。森田さんに髪の毛をやってもらってから、しっくりきすぎて他の人にお願いできなくなっちゃいました。気が張らないからカットもカラーも安心できる。
森田:会うとお互い素の感じだよね。Meirinちゃんも優しいし、なんかすごい親近感が湧く。
Meirin:気の使い方も似てるし根本が似てるのかも!
森田:Meirinちゃんは、ピュアさが魅力的だよね。でもちゃんと芯が通っているんです。でも喋る時はいつもふざけてばかりで内容がない会話をずっと話してるよね(笑)。
Meirin:あんまり覚えてないことばかり(笑)。
森田:でも真剣な話しになるとふたり共グッと入るからそれがまたいいよね。
edit_Asami Yamane
TOKYO BLUE EYES by TETRO
VISITORS : 001 高良健吾
VISITORS : 002 jan and naomi
VISITORS : 003 Meirin
VISITORS : 004 山田智和
VISITORS : 005 yahyel
INFORMATION
Meirin
ZOMBIE-CHANG New Album 『PETIT PETIT PETIT』
発売中
ROMAN-016 ¥2,000+税
Roman Label / BAYON PRODUCTION
PCI MUSIC
01. レモネード
02. イジワルばかりしないで
03. ときどき、わからなくなるの
04. モナリザ
05. 愛のせいで
06. WE SHOULD KISS
07. なんかムカツク
08. オニオンスライス
ZOMBIE-CHANG “PETIT PETIT PETIT” RELEASE TOUR!
2018年09月22日(土) @ WWW