“あなたに逢いたくて”〜EYESCREAM的人物図鑑〜
Page.04 趣里

Photography_Cho Ongo, Edit_Asami Yamane

“あなたに逢いたくて”〜EYESCREAM的人物図鑑〜
Page.04 趣里

Photography_Cho Ongo, Edit_Asami Yamane

例えばちょっと昼過ぎの、なんかモラトリアムな時間に、交差点やなんかを渡っていると『今、すれ違ったあの人、何をやっている人なんだろうな』とか気になる人が稀にいる。これだけ聞くと、どんだけ危ない思考で街を歩いているんだよ、と突っ込まれそうだが、何気なく気になる人というのは、人間の本能的な細胞的な何かが、こんがらがって脳に指令を出しているという、いわゆる1つの繋がりがある人物なのだとか(そうでないとか)。ならば話しかけてみましょう、相手は人間なんだもの。言葉通じるでしょ。そして教えてもらいましょう、あなたのこと。そう、あなたに逢いたくて、ここにカメラマン連れてテレコ片手に歩いて来てるんだよ。という連載”あなたに逢いたくて”〜EYESCREAM的人物図鑑〜。
魅力のあるクリエイターやアーティストをEYESCREAM目線で勝手に紹介させていただく。4ページ目は女優の趣里さん。

近頃一際目に止まる女性がいる、それが趣里だ。出演作品ごとで全く違う印象を感じる不思議な魅力の持ち主。ちょうど主演映画『生きてるだけで、愛。』の公開を間も無く控えているので、数年前とは違うオーラを纏った彼女に直撃してみよう。
目の前に笑顔で現れた彼女の一目瞭然の透明感にまずハッとする。ふと見せるその横顔には、なぜだろうか張りのある信念を感じる気配。本映画の原作を読み、「作品に出てくる人は針が振り切れていて胸が苦しくなるけれど、人間の芯である部分や大切なことが身体に深く刻まれる感覚がありました。」と語る彼女に、作品のことを絡めて自身が持つ素心を教えてもらった。

“どう演じよう”ではなく、ただただ彼女のことを想っていた。

ーまず、脚本を読んだ時の感想をお聞かせください。

寧子を通して自分が今までに経験した様々なことを思い出しました。自分とは表現の仕方は違うけど人間の芯の部分が描かれていたので、心が揺さぶられ、映画の持つ力を脚本の時点でひしひしと感じました。寧子を救いたいと思ったし、同時に自分も救われたいと思ったのかもしれません。私自身、過去に挫折を経験した時にエンターテイメントに救われた経験があります。この脚本を読ませて頂き、この作品は誰かの心に寄り添えるかもしれない、何かを踏み出すきっかけになれるかもしれない、と思いました。この寧子という女性は私が、絶対に演じたいと思いました。

ー趣里さんの目線からみた今回の“寧子”はどんな女の子ですか?

寧子はどうしても放っておけない子だなと感じました。苦しいことも自分自身がわかっていて、変われないこともわかってる。だけど、どこかで人や外の世界に期待していて。人が好きだからこそ、頑張って関わるけど上手くいかないことばかりなんです。自分自身を客観的にわかっている子だと感じることができたので「頑張れ」って素直に応援したくなりました。

ー共感できたんですね。

そうですね。人それぞれ大なり小なり似たような精神状態の時って日常の中にありますよね。だからなおさら、“鬱っぽい”って一体なんだろう?って考えさせられました。“普通”ってなんだろう?と。とても人間らしさを感じました。

ーそんな寧子を演じるにあたり、趣里さんなりに心がけたことを教えてください。

撮影に入るまで半年ほどの期間がありましたが、たくさん寧子のことを考えて想像していました。でもそれは、“どう演じよう”とかではなく、ただただ彼女のことを想っていました。撮影中は相手とちゃんと向き合うこと、そして自由にいられたらいいなと思っていました。

ー複雑な役ですが、難しさはありましたか?

なぜ寧子がこうなっているのかを、脚本や監督のイメージ、客観的にみた私自身のイメージと噛み砕き、とても理解できたので難しさはとくになかったです。現場でもスッとうまく感情がはまりました。

ー自分ではない誰かを演じることで、大切にしていることを教えてください。

演じた役の気持ちは自分に返ってくると思うので、自分と向き合わざるを得なくなります。自分が逃げている部分も、過去に苦しかった部分も。自分と向き合って、それを組み立てて意識を役へと持っていきます。あとは現場ですべてを取り払って感情を入れるというのが一番いいかなって今は思っています。準備はしたから、あとは自然と反応していけばいいなと考えてます。

“諦めないこと”。生きてればいつかは絶対に報われる瞬間に出会えるから大丈夫。

ー自分自身はどんな人だなと感じていますか?

難しいですね。自分の事って、自分でもまだまだわからないのです。でも面倒くさい人だなって思います(笑)。

ー面倒くさい!それはなぜですか?

悩みがちですね。「もういいじゃん気にしない方がいいよ!」とよく周りの人から言われます。あんまりそんなふうには思われないんですけどね!…すごく弱い、です(笑)。
もうちょっと楽天的に考えられてもいいのかなぁ。って考えたりそんな性格だったらいいなって思うことも多々あります。人に見せない部分で結構揺れ動いていて、いま私の事をどんな人間なんだろうなぁと考えると、やっぱりとても弱い人間だと思います。

ーそれは変えていきたい部分でもある?

そうですね、そういう考え方って必要ない時もあるので、そんなの心配したってしょうがないのかなとも思いますけど。ノストラダムスの予言とかあったじゃないですか。そんな予言ですら、本当に当たってしまうかも!ってソワソワしてしまいます(笑)。

ーかなり慎重派ですね!

慎重です(笑)!

ー映画の中で“変化”もキーワードの一つだったと思いますが、自分自身を切り開いていく為に必要なことって、なんだと思いますか?

“諦めないこと”だと思います。諦めてしまうことっていっぱいあるし、もうダメかもと思う時だってたくさんあります。でも生きていればなにかは…っていう希望の気持ちを持っていたいですね。だってそれこそ「生きてるだけで、愛。」ってもうこのタイトルそのものです。

ー頑張っていれば、報われる瞬間はきっとやってくるってことですね。

あとは、自分だけじゃないってことですね。世の中には色々な人がいるし、自分だけが辛いんじゃないって思うこと。辛い時って取り残されて自分だけが地獄にいるような感覚に陥るじゃないですか。でももっと辛い人だっていて、踏ん張ろうとしているはずだって。だから諦めてどうするんだと言い聞かせます。それにふと周りを見渡せば、手を差し伸べてくれている人もいます。それに気づかない時って本当に辛いと思うんですけど、でもちょっとでも視野を広げると、スッと簡単に入ってきたりするもんですよね。なのできっと生きてればそういう瞬間にいつか出会えるから大丈夫。

ーその通りかもしれないですね。

落ち込むなら落ち込んじゃってもいいと思う。とことん落ち込んで、あとは這い上がるだけだ!って思えるのが一番なのかなって感じました。

ー仕事のひと区切りなど、日常で何か達成した時のご褒美はありますか?

私かなりのインドアなんです(笑)。これといって趣味も浮かばないのですが、やっぱりそう考えると美味しいご飯を食べに行く時が一番ですね!その瞬間が一番幸せです。仲良しのお友達と、ちょっと今日は美味しいものを食べにいこうとか、ここに行ってみたいなって話したりしている時からもう幸せです!

ーいいですね!至福の時間は大切ですね。

至福の時間と言えば、基本的にあんまり外に出たり旅行など行かないタイプなんですけど、1人で京都に行ったりすることは好きです。少し時間があったら東京を離れて、その場の空気を感じに行きたいですね。日々の生活の中で大切だなって瞬間を大事にしたい。それが仕事にも生きるし、自分が自然体で過ごせるために重要なことだと思います。

ー最後に完成した映画を観ての感想とメッセージをお願いします。

自分が出演している作品の感想を言うのはとても難しいなと思うのですが、まずは素晴らしいキャストのみなさん、スタッフの皆さんとご一緒できた喜びがありました。そしてみんなの想いをのせた1カット1カットがとても愛おしく、皆様の純粋な想いが伝わってほしいと強く思いました。
“身近な人のことを思い出す”でも“こういう人もいるんだな”でも“大切なひとのことをより大切に思う”でも、なんでも良いのでこの映画をみて、何か1ミリでも感じて頂けたら嬉しいです。私自身は、寧子のことを好きになった自分を発見し、まず自分のことを愛してあげてもいいのではないか、そんなことも想いました。

自らを弱いと表現した彼女だったが、乗り越えようと努力をする為の潜在にある強さを持っているからこそ、そう感じるのかもしれない。撮影中も彼女の笑顔から目が離せなかった。自分のペースで一歩ずつ確実に成長を遂げる現時点の姿は、とてもエネルギーに満ち溢れている。飾らず柔軟に“今”をしっかりと歩む趣里の今後は楽しみで仕方がない。

日々生活していく中で、自分の理想像に近づくことはなかなか安易ではない。失敗もたくさんするし、反省ばかりの毎日かもしれない。でも少しでも、自分を理解して前に進んでいける方法があるはず。目線をあげて周りを見渡して、日頃に存在する温かみを見つける手がかりに、ぜひスクリーンに足を運んでみてはいかがだろうか。

INFORMATION

趣里
http://www.topcoat.co.jp/artist/shuri/
Twitter : @shuri_0921

映画『生きてるだけで、愛。』
2018年11月9日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
http://ikiai.jp/