CULTURE 2019.08.09

Diggin’ in the Culture – from New York – #5: Let’s Play House!!!

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

Diggin’ in the Culture – from New York –

Photography – Koki Sato, Report – Mimi Tamaoki

音楽、アート、ファッションと、新しいサブカルチャーが生まれるのは、いつもこの街、NY。そこではリアルタイムで何が起こっているのか。現地からレポートしていく連載”Diggin’ in the Culture“。写真はKoki Satoさん、レポーターはMimi Tamaokiさん。

今回連載第5回目でディグしたのは、NYを代表するインディーズハウスレーベルLet’s Play House (LPH) 。

ネーミングの通り、ハウスミュージックのレコード会社であり、不定期にブルックリン、マンハッタンでハウスのパーティーもオーガナイズしている。レーベルの創始者は、ハウスDJ・プロデューサー・コンポーザーとして世界中で活躍するJacques RenaultとAnthemマガジンの元エディターNik Mercer!確か3年ほど前にLQQKで初めてNikに出会い、日本(四国)に留学したことがあるという話しから2000年代初期の渋谷オルガンバー、カヒミ・カリィ、ピチカート・ファイブなどの話で盛り上がった。それからレーベルの音源を時々送ってもらったり、イベントにも誘ってもらったりしてた。Thank you, Nik!!

地元ブルックリンをこよなく愛する2人が出会ったきっかけは、言うまでもなく『ハウスミュージック』。もともと仕事関係で知り合いだったそうだが、2009年にNikがNYに引っ越して来た時にお互いの音楽のテイストや人生観が似ていることから友達になり、よくパーティーに出かけたりしていたそうだ。そして、一緒にパーティーをやることに!それがLet’s Play Houseの始まりだ。今回の取材は、ウィリアムズバーグにあるDJ Jacques Renaultの自宅兼スタジオに集まることになった。

スタジオの片側の壁には、Jacquesのコレクションの膨大な数のレコードがずら〜っと並び、彼の音楽の歴史を象徴する。ワシントンDC出身のJacquesは、昔からレコード収集が好きで、シカゴの大学で建築を勉強し、シカゴ時代にハウスにどっぷり浸かったそうだ。NYに引っ越して来てからは、ルイヴィトンやアーバンアウトフィッターズ等のアパレル会社のショーウィンドウデザインの仕事に携わりながらDJをしていたそう。音楽の仕事が忙しくなってきたことにより、フルタイムで音楽に専念することに。


Jacques Renault

Nikはオハイオ出身で、ロスで大学へ行き、Anthemマガジンの編集の仕事をしていたそうだが、NYオフィスの立ち上げに関わるため、NYへ来た。『当時お互いに別のイベントをオーガナイズしていて、一緒にソーホーMercer Hotelの隠れ家バーSubmercerで“DJ Jacques Renault x Anthem magazine”のイベントをやることになって。Submercerは残念なことにクローズしちゃったけど、スペシャルゲストDJなんかも呼んで盛り上がった。それから他のイベントを一緒にオーガナイズすることになって、自然と浮かんだネーミングがみんなに親しみやすいネーミング“Let’s play house”なんだ』。とNikが語る。

Nik Mercer

『DJにフォーカスするんじゃなく、いろんなハコで、ただ単純に楽しいパーティーにしたかったのが理由。有名無名関係なく、国内、海外からもゲストDJを呼んだり。当時は、Submercer、Tribeca Grand Hotel(今のRoxy Hotel)やウィリアムズバーグのウエアハウス(今のVICEマガジンのビル)でよくやってた。ちょうど僕のレコードがリリースする時でもあって、そのタイトルも“Let’s Play House”にして、今のレコードカンパニー名にもなった』。とJacquesが話す。

その後も、ブルックリンのGood Room、今は無きOutput、Le Bain(Standard Hotel)、 Ace Hotel、Rough Trade NYC等の箱で、LPHパーティーをオーガナイズし、地元ニューヨーカーのナイトライフを盛り上げてきた。
そして2011年からは、世界中からオリジナリティに溢れた才能のあるアーティストを発掘し、ヴァイナル、デジタル12インチ、EPをドイツの名門レーベル、ケルンに拠点を置くKompakt Recordsからディストリビューション。もちろん、レーベルオーナーでもあるJacquesから岡山在住のハウスDJ・プロデューサーKeita Sanoの名前もリストに上がる。ニューヨークでは、Halcyon、Superior Elevation、 The Mixtape Shopなどのレコード屋で手に取ることができる。
DJとして世界を旅するJacquesは、“旅するセールスマン”とNikが表現していたが、A&Rとして旅先で出会ったアーティストをレーベルと繋いだり、レーベルの宣伝塔の役割を担当。一方Nikは、レコードのジャケットデザイン、ウエブサイト、マーチャンダイズなどのアートディレクションや音源のディストリビューション業を担当。

親友でもある2人が約10年一緒にLPHを続けてこれたのは、2人の絶妙なバランス感覚とお互いのリスペクトに尽きない。そして、型にはまらずに常にチャレンジ精神を持つ2人が1番嬉しいことは、『デジタル化が進んでも、物理的なプロダクトやカバーを手にとって楽しめること。それが第三者の手元でプレイされ、そのプレイされている姿をビデオで送ってくれたり、音楽を通して、人との距離が狭くなり、コミュニティになっていくこと』(Jacques)。

Nikにとっては『LPHは彼のサウンドボックスであり、アパレルやレコードカバーのデザインなど、自分のクリエイティビティをフルに発揮できるツール』。そして今後の予定は、『マーチャンダイズのアイテム数を増やし、レコードに関しては、今までリリースしてきた音源はクラブサウンドが多いから、もっと自宅でチルしながら聞けるサウンドもリリースしていきたい』(Nik)。『そして、ジャンルの壁を超えて、これからも才能のあるDJ・プロデューサーを発掘してコミュニティを盛り上げ、音楽のある生活の素晴らしさをみんなに感じてもらいたい』(Jacques)。

LPHがこれまでに製作してきたプロダクト群。

毎回連載をする度に感じるのは、パッションを持っていれば、それが不思議とカタチになり、周りにいる人たちを魅きつけ、コミュニティが出来上がること。そして、デジタルツールのおかげで、世界中の人との距離感が狭くなり、気軽にコミュニケーションがとれ、コミュニティが大きくなっていく。過去の連載を通して、幾度かアナログカルチャーの素晴らしさを再認識したが、その一方、デジタルツールのおかげで、世界と即座に繋がることができる今の時代にも感謝であり、何をどう表現し、伝えていくか?ということが今後の課題ではないだろうか?

Five Questions For You
Jacques Renault
https://www.instagram.com/jacquesrenault/

①NYを一言で表現すると?
エクストラバガンザ。華やかで興奮するような娯楽。この街が大好きなんだ。どんな人でも何かしら楽しめる要素を持っている。何か夢中になったものがあったら、それに対して、探求できるチャンスがあるのもこの街の魅力。DJの仕事でいろんな国に行って気がつくことは、この街でやりたいこと全てをやるのは不可能だってこと。今はここにいる間にできることを楽しんでるよ。

②NYのどこが好き?嫌い?
好き:いつでも新しい何かがある。音楽、映画、ギャラリー、食べ物、出会う友達など限界がなく、気軽に遊びに行くことができる。
嫌い:他の大都市と同じで、生活費、交通渋滞、人混み。

③NYの好きな場所
ブルックリンのイーストリバーの近所にずっと住んでいるから、ウィリアムズバーグブリッジに近い公園には思い入れがあるね。マンハッタンが一望できる距離だから、マンハッタンを眺めながら色々思い出に耽ったり。昔はブリッジを渡ってよくマンハッタンとブルックリンの往復をしていたけど、今はほとんどブルックリンにいる生活で、橋を渡って行く距離にはもうしばらく行っていないな。

④朝起きて一番初めにやることは?(平日&休日)
平日:早起きして、コーヒー作って、NPR聞いて、電話でいろんなアプリをチェックして。天気が良かったら、デスクで仕事する前に外でランニングして、音楽制作する前に、メールチェックに没頭。
休日:もし前日の夜にDJプレイがあったら、少し遅めに起きて、平日と同じような1日のサイクル。

⑤もし大統領だったら、何をする?
みんながもう少し簡単にヘルスケア制度に加入できるようにすること。

Five Questions For You
Nik Mercer
https://www.instagram.com/lphnyc/

①NYを一言で表現すると?
たくさんの言葉があてはまるけど、この街の複雑さとか、僕と街の複雑な関係を表現するとしたら、『エリプティカル』。いつも進化しているから、NYという街を1つの言葉で表現するのは正直難しいな。

②NYのどこが好き?嫌い?
好き:人間性。毎日うるさくても静かでも、全ての人に何かしら居場所があって、みんなが暖かく快適に過ごせる場所。うわべだけでは知られてないけど、長く住めば住むほど、NYの魅力や思いやりの深さを実感することができて、それが不思議なことに、すごく居心地がよくなるんだ。
嫌い:汚くて散らかっていて、疲労困憊なカオス状態。工事の雑音やパトカーのサイレンス、ストリートをブラブラ歩き廻る浮浪者、マナーのない地下鉄の手すりに捕まっている人たち。いつも何かしら少なからず乱雑な状態であるところ。

③NYの好きな場所
ダウンタウンだったら、バッテリーパークにあるIrish Hunger Memorialやマンハッタンブリッジとブルックリンブリッジに囲まれてイーストリバーが一望できるTwo Bridges。ミッドタウンだったら、ブラウンストーンの建物が並んでいて、ギャラリーが多いチェルシー地区やパークアベニューにあるボックス型のシェイプをした光沢感のある超高層ビルMetLife Building。風格のある豪華な大邸宅が並ぶ、僕の近所Vanderviltアベニュー&Clintonアベニュー。好きな場所をあげたらがキリがないけど、East Village Books、BookoffやKinokuniyaも。忙しい現実から少しブレイクをとるなら53丁目のMomaのフィルムスクリーニング、そして、チャイナタウンで食材のショッピングをするのはエキサイティングで楽しい時間だな。

④朝起きて一番初めにやることは?(平日&休日)
平日:電話チェック、その時に読んでいる本を数ページ読んで、家の地下にあるローイングマシーンで、30分から60分ほどエクササイズ。そのあとに、ニュースPodcast、「Up First」 か「The Daily」をオンにして、ガールフレンドがコーヒーを作っていなかったら、僕が作る。ずっとCHEMEXコーヒメーカー!
休日:平日のサイクルとほぼ同じだけど、少し落ち着いた朝のスタートかな。

⑤もし大統領だったら、何をする?
全てを1日だけ休止すること。

ARCHIVES
Diggin’ in the Culture – from New York – #4: Dizzy Magazine
Diggin’ in the Culture – from New York – #3: Public Housing Skate Team
Diggin’ in the Culture – from New York – #2: Nothin’ Special
Diggin’ in the Culture – from New York – #1: Dirty Tapes NYC

INFORMATION

Let’s Play House!!!

http://lphnyc.com
https://soundcloud.com/LPHNYC

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