Text—Kohei Aoki Photography—Nahoko Suzuki [Still] Edit—Hikaru Fujii, Makoto Hongo Edit Assistant—Shu Nissen, Mami Chino
EYESCREAM12月号、テン年代のアメリカ文学特集はもうご覧になっていただけましたか?
アメリカ文学を読むんじゃなく、観るのなら。ということで、
この年末年始中に、読んでおきたい、観ておきたい作品を本誌からピックアップ。
部屋でのんびり過ごす時間を、いっそう豊かにしてくれること必至です〜
金融業で成功を収めた若き大富豪が、マンハッタンを徘徊する白いリムジンの後部座席に乗りながら経験する破滅の日──
Photo/Entertainment One/Photofest/Getty Images
現代アメリカ文学のトップに君臨し続ける、巨匠作家ドン・デリーロによる2003年作の『コズモポリス』は、2008年に起こったリーマン・ショックに端を発する金融恐慌と、それが契機となって起こった2011年のウォール街占拠をまるで予見していたかのように書かれている。その予言の書を2012年に映像化したのが、『ザ・フライ』や『ヴィデオ・ドローム』といった破滅的でショッキングな映像を得意とする鬼才デヴィッド・クローネンバーグだ。2010年代はリーマン・ショックとウォール街占拠の影響で、資本主義の没落をテーマにする映画が多く制作された。現実の政治・経済状況をもとにしている作品やノンフィクションが多い中で、本作の異質さは際立っている。二人の幻視者によって作り上げられた『コズモポリス』という名の黙示録が描くのは、グローバル資本主義の悲劇ではなく、世界の崩壊それ自体だ。「資本主義の終わりを想像するよりも、世界の終わりを想像するほうが容易い」と批評家はしたり顔で言うが、こんな奇妙な想像の仕方は、他の誰にも絶対できない。
〜文学と映画〜アメリカ文学を読むんじゃなく、観るのなら。
01. 『プレシャス』