Text—Kohei Aoki Photography—Nahoko Suzuki [Still] Edit—Hikaru Fujii, Makoto Hongo Edit Assistant—Shu Nissen, Mami Chino
EYESCREAM12月号、テン年代のアメリカ文学特集はもうご覧になっていただけましたか?
アメリカ文学を読むんじゃなく、観るのなら。ということで、
この年末年始中に、読んでおきたい、観ておきたい作品を本誌からピックアップ。
部屋でのんびり過ごす時間を、いっそう豊かにしてくれること必至です〜
今、アメリカで最も優れた映画監督は誰か?──ずばり言おう、それは ポール・トーマス・アンダーソン(PTA)である。ニューヨーク・タイムズはPTAの『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』を“21世紀最高の映画1位”に選び、英国BBCは“21世紀の名作映画100本”の中で PTA監督作品を三作品も挙げている。PTAの目下の最新作『インヒア レント・ヴァイス』は、トマス・ピンチョンの『LAヴァイス』が原作だ。 レインボーカラーに彩られた1970年のLAを舞台にマリファナを常用するヒッピー探偵が難事件に挑む──
Photo/Warner Bros./Photofest/Getty Images
これが本作の大筋だが、正直に言おう、この原作小説においてストーリーはさほど重要ではない。この小説を傑作たらしめているのは、グルーヴの効いたドラッギーな文体と、物語に憑依したパラノイアが加速していくその読書のドライブ感にこそある。そんな原作を映画化するにあたり、PTAはサイケデリックなロックンロールと極上のファンク、メロウなソウルで画面を満たし、物語を高速で回転させ続けることにより、観ている私たちを高揚感の渦に巻き込む。圧倒的な個性を持つ文学を映像化することなど可能なのか?──それに対しての完璧な答えのひとつが、ここにある。