CULTURE 2017.12.31

〜Book Design Gallery〜あるいは、ジャケ買いするならどの小説か。

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部
Photography—Nahoko Suzuki Edit—Hikaru Fujii, Makoto Hongo Edit Assistant—Shu Nissen, Mami Chino

日本で海外文学を熱心に追う読者の数は想像以上に多くはなく、3000人ほどだと言われている。翻訳の仕事を始めるにあたって最初に編集者の人に言われたのは「海外文学は売れないんです」だった。いわゆる“ガイブン好き”な人たちが、自分の思い入れを大事に守るようにして続けている分野がかくいう文学の邦訳出版である。そんな理由で、本の一冊一冊が作られるプロセスは丁寧そのもの。それを物語るのが、作品の“顔”ともいうべき表紙である。イラストにすべきか写真にすべきか、色調をどうするか、などなど出版社(と、時には翻訳者)は作品に合わせて入念に表周りを作っていく。手に取ってもらい、さらに長く手元に置いてもらいたい、その思いとともに、訳出された文学の本は世に送り出されるのだ。ということで、レコードやCDに“ジャケ買い”があるのなら、本に“表紙買い”があってもいいはず。「おっ、これは!」と手にしたくなるカバーデザインをコンパイル。

『生まれるためのガイドブック』

“誕生”“妊娠”“受胎”、そして“愛”をテーマに、思いもよらない出来事に遭遇する!
ラモーナ・オースベル著, 小林久美子訳(白水社エクス・リブリス 2015年)¥2,400

『ティンカーズ』

2010年ピュリツァー賞フィクション部門受賞作。コラージュのように多層なストーリー。
ポール・ハーディング著, 小竹由美子訳(白水社エクス・リブリス 2012年) ¥2,100

『シガレット』

NY近郊に暮らす上流階級13人の複雑な関係。トロンプルイユのようなアルゴリズムが秀逸。
ハリー・マシューズ著, 木原善彦訳(白水社エクス・リブリス 2013年) ¥2,600

『神は死んだ』

「今ではすっかり有名になった私たち五匹は、創造主を食べた」。神を失った異才の世界。
ロン・カリー・ジュニア著, 藤井 光訳(白水社エクス・リブリス 2013年) ¥2,200

『ぼくらが漁師だったころ』

ネブラスカ大学リンカーン校で教鞭を執る、1986年生まれのナイジェリア人デビュー作。チゴズィエ・オビオマ著, 粟飯原文子訳(早川書房 2017年) ¥2,300

『私の名前はルーシー・バートン』

ワシントン・ポストなど有力紙誌で2016年ベスト・ブックス選出。全米45万部突破。
エリザベス・ストラウト著, 小川高義訳(早川書房 2017年) ¥1,800

『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹』

ソフィア・コッポラ初監督映画『ヴァージン・スーサイズ』の原作。甘美で残酷な青春譚。
ジェフリー・ユージェニデス著, 佐々田雅子訳(ハヤカワepi文庫 2001年) ¥780

『キャッチ=22 新版(上)(下)』

“CATCH-22”とは第二次世界大戦時でのアメリカ飛行士の軍規。痛烈な矛盾と風刺の傑作。
ジョーゼフ・ヘラー著, 飛田茂雄訳(ハヤカワepi文庫 2016年) 各¥1,180

『地球の中心までトンネルを掘る』

完璧な共感などありえないけど、ほんの少しだけ“普通”から逸脱した日常、それがわかる。
ケヴィン・ウィルソン著, 芹澤 恵訳(東京創元社海外文学セレクション 2015年) ¥1,800

『その日の後刻に』

村上氏曰く、ナックルを投げるピッチャーのような文章。エッセイ、インタビューも収録。
グレイス・ペイリー著, 村上春樹訳( 文藝春秋 2017年) ¥1,850

『優しい鬼』

呪文に洗脳された、かくも残酷で私的な長編ノベル。カバーフォトは著者本人撮影による。
レアード・ハント著, 柴田元幸訳( 朝日新聞出版 2015年) ¥1,800

『AM / PM』

午前・午後1~120時、時間がゆるやかにアンバランスにずれていく。新たな才能の処女作。
アメリア・グレイ著, 松田青子訳( 河出書房新社 2017年) ¥1,600

『美食と嘘と、ニューヨーク:おいしいもののためなら、何でもするわ』

原題の“Food Whore”は食べ物のためなら何でもする人のこと。美味しいには裏がある!?
ジェシカ・トム著, 小西敦子訳( 河出書房新社 2016年) ¥1,800

『レモン畑の吸血鬼』

現代アメリカ文学の最前線を牽引する女流作家、待望の第2短編集。大胆不敵な想像力。
カレン・ラッセル著, 松田青子訳( 河出書房新社 2016年) ¥2,700

『遁走状態』

「ここはどこ? 私は誰??」的のクラシックなプロットをモダンに昇華させた19の悪夢。
ブライアン・エヴンソン著, 柴田元幸訳(新潮クレスト・ブックス 2014年) ¥2,100

『大いなる不安』

危うくて不安で理性的……だけど、すぐにも破断しそう。人間への批判的な笑える視線。
セス・フリード著, 藤井 光訳(新潮クレスト・ブックス 2014年) ¥1,800

『五月の雪』

かつてシベリア強制収容所が置かれたロシア極東の町マガダンでのドラマチックな9篇。
クセニヤ・メルニク著, 小川高義訳(新潮クレスト・ブックス 2017年) ¥2,000

『こうしてお前は彼女にフラれる』

叶わぬ切ない9つのラブオムニバス。「どうしていつも、うまくいかないのだろう……」。
ジュノ・ディアス著, 都甲幸治・久保尚美訳(新潮クレスト・ブックス 2013年) ¥1,900

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