Review:SixTONESが「こっから」の4分間に込めた本気のマイクリレー

Text_Chie Kobayashi

Review:SixTONESが「こっから」の4分間に込めた本気のマイクリレー

Text_Chie Kobayashi

SixTONESがニューシングル「こっから」をリリースした。表題曲はメンバーの森本慎太郎が、髙橋海人King & Prince)とW主演を務めるドラマ『だが、情熱はある』(日本テレビ系)の主題歌。ブレイクビーツに乗せ6人が怒涛のマイクリレーを繰り広げる、SixTONESの新境地を感じさせる楽曲だ。同曲を含めた本シングルの収録曲からは、彼らの進化し続ける姿が見えてくる。

SixTONESの新曲「こっから」が話題だ。音楽番組などでパフォーマンスをするたびにYouTubeのミュージックビデオの再生回数が大きく跳ね、グループ史上最速で3000万回再生に到達した。同曲は、オードリー・若林正恭南海キャンディーズ・山里亮太の2人の半生を描くドラマ『だが、情熱はある』の主題歌。初回放送時、主題歌はオンエアされるも楽曲についてのクレジットは記載されず、誰の楽曲かもわからなかったが、楽曲のインパクトは大きく視聴者の印象に残った。というのも、「こっから」はこれまでのSixTONESの楽曲にはなかったブレイクビーツに乗せたファンクチューン。ボーカルは6人によるマイクリレーでつなぐラップの応酬で、息もつかせぬ掛け合いはまるで漫才のよう。一聴しただけでドラマとリンクする。

そもそもこの曲は、今年1月にリリースされた3rdアルバム『声』収録曲「人人人」をきっかけに生まれた楽曲だという。同曲は全編ラップのSixTONESの新境地を示した楽曲で、当時セルフライナーノーツにて松村北斗は「僕はこんなSixTONESをずっと見てみたかった」とコメントしていた(https://www.sixtones.jp/koe/self-liner-notes/)。「人人人」を経て、“こんなSixTONES”をもっともっと見たい。その気持ちが形になったのが「こっから」というわけだ。しかし「人人人」から彼らはさらに進化。ラップをしながら彼らはさらに踊る踊る踊る。間奏ではマイクリレーならぬ、ソロダンスリレーも展開されている。6人のキャラクターも、歌やダンスにおいても、ひときわ個性の強い6人は歌いつなぐ、踊りつなぐことで自分たちの個性をひときわ輝かせ、その集合体としてのSixTONESの魅力を見せつけるのだ。

歌詞にも注目したい。<「俺、悪くない。なんも間違ってない」自分じゃない何かのせいにしたい>から始まるCメロや<劣等も嫉妬も叱咤なる燃料>など、ドラマで森本が演じる山里を彷彿とさせるフレーズが並ぶ。しかしそれだけでなく、<間違ってる未来でも俺には光ってる><順番通り行ってないだけで予定通り><まだまだ自分で決めつけんな限界>と、山里や若林をはじめとする劇中で夢を追い求める面々はもちろん、聴く者、そしておそらくSixTONESをも鼓舞する熱い言葉が並ぶ。またそれぞれのメンバーカラーにちなんだフレーズにも注目だ。

彼らは音楽番組やYouTube限定パフォーマンス企画「PLAYLIST」などで同曲を披露する際には、生バンドに乗せてのパフォーマンスにこだわる。生バンドと共に披露することで自分たちのパフォーマンスのクオリティが上がるということは、つまり彼らがしっかり全身で音楽を味わっているからに他ならない。また「PLAYLIST」ではバンドメンバーのクレジットも掲載されていることも書き加えておきたい。些細なことだが、teamSixTONESの、音楽と音楽に関わる人へのリスペクトを感じる一面だ。

シングルの初回盤Aには、さらにカップリング曲として「雨」を収録。SixTONESと雨といえばデビュー曲「Imitation Rain」を思い浮かべてしまうが、「雨」もメランコリックなピアノの旋律と叙情的な歌詞が印象的な1曲だ。恋愛の喪失感を描いた楽曲だが、「こっから」のカップリング曲として収録されることにより、別の側面も見えてくる。「こっから」が夢に向かってがむしゃらに走り続ける楽曲だとするならば、「雨」はその道のりの途中で打ちのめされた苦しみを歌った楽曲だ。しかし彼らは<羽捥がれても 手の届かない場所までも(中略)飛ぶ>のだ。苦しさにフューチャーしながらも、夢を諦められない人の歌だ。パーティー感のイメージのあるSixTONESだが、「雨」のような文学的な歌詞も似合ってしまうから不思議。それだけ彼らは根幹に多様な知識や文化的な一面を潜めているということだろう。

通常盤にはカップリングとして「FIREWORKS」「Tu-tu-lu」、前作シングル「ABARERO」のリミックスが収録される。「FIREWORKS」はラテンのリズムに乗せたヒップホップチューン。“熱帯夜に打ち上がる花火”がテーマだというだけあり、低音のラップと艶やかなボーカルで、情熱的かつセクシーな関係性を描き出す。一方「Tu-tu-lu」はアコースティックギターで奏でられるシンプルなサウンド。タイトル通り鼻歌を歌うようなラフさがあり、心地よいハモリなど「こっから」のような高速マイクリレーではなかなか味わうことのできない6人の歌心も感じることができる。「ABARERO」のリミックスは「Dark Electro Rock Remix」と冠され、メタルコアバンドサウンドのようなリミックスに。シングル表題曲としてヒップホップに強い布陣で作られた同曲だが、ここまでロックサウンドに変換されてしまうのが面白い。「こっから」を生バンドで披露する彼らが「ABARERO -Dark Electro Rock Remix-」を生バンドと共に披露するステージにも期待してしまう。

なお初回盤Bのカップリングは、今年行われたライブツアー「慣声の法則」のライブ音源。「S.I.X」「Special Order」「フィギュア」「RAM-PAM-PAM」「WHIP THAT」「Outrageous」というEDMのアップチューンばかりでつないだメドレーだ。もはやこのトラックに関しては説明不要だろう。初回盤Bには同じメドレーの映像を収めたDVDも付属するのであわせて見たい。

アルバム『声』リリースのあと、ニューシングル「ABARERO」で本格的なヒップホップへと切り込んだ彼ら。「こっから」では「人人人」で“挑戦してみた”形だった6人によるマイクリレーを、さっそく武器に替えた。見よう見まねだけではなく、真摯にヒップホップと向き合ってきたことだろう。そんな彼らが“こっから”どのような未来を見せてくれるのか。

こっからは余談だが、「こっから」が彩るドラマ「だが、情熱はある」も佳境だ。「だが、情熱はある」は、前述した通り、オードリー・若林正恭と南海キャンディーズ・山里亮太の半生を描いた作品。それぞれコンビとして人気も知名度も得ながらも、どこか“たりない”ものを持つもの同士、いわゆる“じゃない方芸人”という呼ばれ方もされてきた。そんな2人がテレビ番組「たりないふたり-山里亮太と若林正恭-」や、そこから派生したライブ『明日のたりないふたり』にたどり着くまでの日々が描かれている。ドラマは若林・山里の幼少期から描かれ、2人がどのような人間であるのか、どのようなお笑いをやりたいのかというところまで深掘り。その結果、それぞれが相方と出会い芸人としてのスタートを切った瞬間にまず感動し、相方とすれ違ったり、なかなか売れなかったりと苦悩する日々に視聴者は自身の人生を重ね、そしてコンビとして一つの成功を収めたあとの葛藤を知り、共に悔しさを味わいつつも続きが気になるという具合に、リアルかつ丁寧で情熱のある脚本と演出で視聴者を釘付けにしている。さらに当初、お笑い芸人役としてジャニーズ所属のアイドルがキャスティングされていたことに批判的な意見も飛び交っていたが、蓋を開けてみれば、髙橋、森本をはじめとするキャスト陣の精巧かつ情熱のある役作りも話題に。実際、山里本人が毎週ドラマを見ながらリアルタイムで感想をツイートもしている。なお「こっから」についても「こっからが相変わらず最高にかっこいい。絶対この歌は私のことを歌ってる」と絶賛している
https://twitter.com/yama414/status/1670425443353370626s=46&t=77xbm8YH5CLhOjAzN3zA3Q)。「たりないふたり」に感化され楽曲を作った、Creepy Nutsならぬクリー・ピーナッツ(演:かが屋)も気になるところ。ドラマの主題歌として「こっから」だけでなく、髙橋が所属するKing & Princeの「なにもの」もW主題歌としてドラマを盛り上げているところもニクい。ドラマは25日に最終回を迎える。最終回で描かれるのは、コロナ禍の2021年5月に行われた「たりないふたり」無観客解散ライブ。なにものでもなかった、どこかたりない、“だが、情熱はある”2人が、こっから、どのような想いで舞台に上がるのか。

ちなみに「こっから」の尺は4分弱。「M-1グランプリ」は4分ネタで競い合うことと一致するのは偶然かはたまた? 4分間でいかに人の心を動かせるか。SixTONESの本気の4分は、こっから始まる。

INFORMATION

SixTONES 「こっから」

初回盤A
価格¥1,760
CD+DVD
¥1,760
スリーブケース仕様
CD
1. こっから
2. 雨
DVD
こっから -Music Video-
こっから -Music Video Making-
こっから -Music Video Solo Movie-

初回盤B
価格¥1,760
CD+DVD
価格¥1,760
スリーブケース仕様
CD
1. こっから
2. Medley from「慣声の法則」at 横浜アリーナ (S.I.X ~ Special Order ~ フィギュア ~ RAM-PAM-PAM ~ WHIP THAT ~ Outrageous)
DVD
Medley from「慣声の法則」at 横浜アリーナ(S.I.X ~ Special Order ~ フィギュア ~ RAM-PAM-PAM ~ WHIP THAT ~
Outrageous)

通常盤
価格¥1,100
CDのみ
初回仕様:スリーブケース仕様+フォトブック20P
CD
1. こっから
2. FIREWORKS
3. Tu-tu-lu
4. ABARERO -Dark Electro Rock Remix-
5. こっから -Instrumental-

・SixTONES公式HP
https://www.sixtones.jp/
・SixTONESOfficial YouTube Channel
https://www.youtube.com/c/SixTONES_official
・SixTONES Official Instagram
https://www.instagram.com/sixtones_official/
・SixTONESソニーミュージック 公式Twitter
https://twitter.com/SixTONES_SME

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