三船雅也率いるROTH BART BARONが不定期に開催しているイベント“BEAR NIGHT”の第4弾が、昨年に続き今年も日比谷野外音楽堂で行われた。会場にはファン・コミュニティ“PALACE”のスタッフが縁日をイメージして制作したという熊の顔出しパネルや輪投げといった出し物が並び、クラシカルDJの水野蒼生がかける荘厳なシンフォニーが鳴り響く中、ゆるやかな勾配になった通路を走って昇り降りする子供や、氷結ストロングのロング缶を座席に並べたオッサン（私）などが思い思いの時間を過ごしていた。

　北島優一、Ryu (Ryu Matsuyama)、KOTETSU、Emilio Buonanniなど“BEAR NIGHT”に向けたメンバーも迎えたこの日のライヴは、『無限のHAKU』収録の「H A K U」からスタート。序盤はアッパーな曲が続いたが、陽が傾きかけた頃に静かな「糸の惑星」が始まると、先ほどの子供の母親らしき女性が「ママこの曲好き！ママこの曲好き！」と連呼。こんな周囲の話し声も雑音になることなく、野音の開放感や蝉の鳴き声と混ざり合って、むしろ心地良いアンビエンスを生み出していた。

　この日のテーマは“歌うロット”ということで、中盤には様々なゲストが登場。近年交流のさかんなASIAN KUNG-FU GENERATIONのGOTCHがステージに招かれ、ダニー・トランペット＆ザ・ソーシャル・エクスペリメントの「Sunday Candy」ばりの多幸感溢れるフローを聴かせる「The Age」、ロットの「極彩｜IGL(S)」を三船とデュエットすると、声出しが解禁された客席後方からは、大きな歓声が上がっていた。

　革ジャンに缶ビール、白のグレッチというロックンローラー三種の神器で現れたのは、a flood of circleの佐々木亮介。三船がプロデュースしたソロ曲「We Alright」とロットの「春の嵐」を歌うと、説得力のあるダミ声ヴォーカルで観客を圧倒していた。一方、オープニング・アクトも務めたタイのバンドSafeplanetは、この日のために三船と共作したという新曲を披露。ほんのりとサイケリックなギター・サウンドは、ロットにとっても新境地になりそうだ。

　ライヴの終盤には、三船がニュー・アルバムを年内にリリースすることを発表。興奮冷めやらぬままアンコールの「鳳と凰」で大団円を迎えたが、気づけばオッサンの氷結ストロングは4本目が開けられ、さっきまで走り回っていた子供はさすがに疲れたのか、座席に寝そべって目を閉じていた。老朽化に伴い、来年以降の改修が決まっている日比谷野音。その最後の姿は、ロットバルトバロンと共に、この日集まった子供たちの瞼にも焼き付いたことだろう。この勢いのままに出演する、フジロックフェスティバル最終日のステージも楽しみだ。