MUSIC 2024.12.05

Talk Session: BATACOの「Prolegomenon feat. COLAPS and RIVER’」に見るビートボックスの魅力と未来

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部
Photograph_Masashi Ura, Edit&Text_Ryo Tajima[DMRT]

日本人史上初のアジアチャンピオンビートボクサーBATACOによる4年ぶりの新曲「Prolegomenon」に、世界を代表するビートボクサーであるCOLAPS、RIVER’が参加。
現代のビートボックスシーンを凝縮したような1曲が発表された。編曲は01sail(w.a.u)が行っており、MVは¥ellow BucksやWatsonといったアーティストの映像も手掛けるKen Harakiが担当。BATACOの活動や経歴を振り返りながら、本楽曲を介してビートボックスの魅力を知りたい。そんなトークセッションをどうぞ。
 

L to R_COLAPS, BATACO, RIVER’

ビートボックスは歌やラップの先にある歌唱表現

 

ー2019年まで数々のビートボックスバトルに参加し、2020年からの4年間はご自身の表現を追究されてきたそうですね。この期間は実際にどういうことを行っていたんですか?

 
BATACO:自分では修行期間と呼んでいるんですけど、2018年くらいにワイヤレスイヤホンのCMに楽曲提供させていただいて出演した際に、自分の中で新しいコンセプトが見えたんです。それを具体化するために、4年間ほど制作に集中して、自分の表現をブラッシュアップさせていったんです。並行して自分の制作環境を整える活動を行っていました。
 

ー制作環境を整えるというのは?

 
BATACO:例えばレーベルに所属したり、ということですね。録音芸術の観点からいくと、ビートボックスはどうしてもパフォーマンスとして認識されていて、他の音楽とはちょっと別物のように捉えられているんですよ。そこで、他アーティストと同様にちゃんとレーベルから作品を発表することで、世間に対するビートボックスのイメージを変えていきたいと思ったんです。
 

ーBATACOさんの中に出てきた新しいコンセプトというのは?

 
BATACO:ビートボックスを歌唱の延長線上のモノとして捉え直したいということです。大衆音楽の歌のコンテクストを辿ると、メロディと歌詞がある歌唱からトースティングを経て、ラップ誕生以降はメロディがなくても歌として成立すると認識されるようになったわけじゃないですか。そう考えると、次は言葉がなくてもいいと考えられるわけで、ビートボックスをポストラップ、非言語の歌唱という位置付けで考えているんです。今まで、ビートボックスはドラムマシーンの延長線上にあるものとして捉えられてきたんですけど、そうでなく歌やラップの先にあるものとして捉えて曲を作っていくということですね。具体的にどういう表現になるのかというと、それがメロディ重視なのかそうじゃないのかは、まだわからないという段階です。ビートボックスをやるアーティストが増えて、現在のヒップホップのようにバリエーション豊かな表現が生まれたら嬉しいです。


 

ーでは、リミックスverも発表した「Prolegomenon」は、いつ頃から制作されていたんですか?

 
BATACO:2年ほど前から曲もMVも制作を進めていて、この曲を1曲目にリリースしようってことを漠然と考えていたんですよ。MVも1年前にはできていましたね。
 

ーそのように、ビートボックスの在り方を変えたいと思ったのはなぜでしょう?

 
BATACO:最後に出場したバトルが2019年なんですけど、好成績を残したとしても何もなくて一瞬だけ輝いて終わっていく感じがしたんです。パフォーマンスが持つ刹那的な魅力はもちろんあるんですけど、自分がやりたいことは作品を作って提示し、残していきたいということだったんです。そのために、ビートボックスを音楽として世に浸透させていきたいと考えているんです。
 

ー「Prolegomenon」のメロディパートにおけるリリックからも感じられますが、曲を発表することで、ビートボックスのカッコよさを世間に広めていく活動をしたいと考えているんですね。

 
BATACO:そうですね。自分もそれなりにビートボックスの世界では結果を残してきたと自負しているので、シーンを背負う感覚は少なからずあるんですよ。他のシーンでライブするときは、ビートボックスシーンの顔として出ていくことも多いので、謎の責任感が自分の中に芽生えているんです。
 

ー国内のビートボックスシーンを底上げしていきたいという気持ちがありますか?

 
BATACO:国内だけではなく、世界のビートボックスシーンに目を向けていて、イメージとしては、ボートボクサーがシーンの外側で活躍できる場を作っていくという感覚です。今、ビートボックスのシーンと音楽のシーンが完璧に分かれているので、どちらも自然に行き来できるようにしていきたいんです。
 

世界の共通言語として平和的に繋がることができる

 

ーそのように世界に視点を向けているからこそ、リミックスでは海外のビートボクサー2名が参加することになったわけですね? 皆さんの出会いについて教えていただけますか?

 
BATACO:COLAPSは2018年に参加した『Grand Beatbox Battle』で、自分とSHOW-GOにフリースタイルをかましてきたんですよ(笑)。もちろん存在は知っていたんですけど、それがファーストコンタクトだったと思います。RIVER’は翌年の同じ大会のとき、ホテルから会場までウーバーをシェアしたのが最初ですね。
 
COLAPS:あのとき、2人とも時差ボケが大変そうだったよね。でも、すごいステージで素晴らしかったのを覚えているよ。
 
RIVER’:BATACOと出会った2019年、僕はまだ19歳で若かったし髪も短かったなぁ。懐かしいよ。
 

ーこの3人で「Prolegomenon」のリミックスをやろうと考えたのはなぜですか?

 
BATACO:海外に広めるためにどうするのかってことを考えたときに、パッとCOLAPSのことを思い出したんですよね。それで一緒にやろうと思って、最初客演は1人だけの予定だったんですよ。COLAPSは刻むのがうまいし、「Prolegomenon」は刻みを想定していた曲だったので。今回、自分のバースを録り直すのに当たってメロディックな要素を入れるのにトライしたらうまくいって、こうなると、もう1人メロディの要素を入れられるボクサーがいたら面白いんじゃないかと思って、RIVER’にも声をかけたんです。
 
RIVER’:BATACOがインスタからDMをくれて、どういう風にビートボックスを乗せるかをフランスで考えていたんだ。その後、日本で開催されたバトルに参加したときにBARACOの自宅でレコーディングしたんだよ。録音するときはエアコンを切らなくちゃいけなくて本当に大変だった……。東京の夏は恐ろしいほど暑いから。すでにあるトラックにビートボックスを乗せるのは初めてのことだったんだけど、すごく面白くて、より良くなるようにバースの中でどこにアクセントを置くかを工夫していったんだよ。作業はすごくスムーズに進んだよね。ただ、レコーディング用のビートボックスを考えていて、実際にライブでやることは考えて作っていなくて。それが、この間のバトルのときに急遽ライブで披露ことになって、めっちゃ大変だった(笑)。
 
COLAPS:僕もそう(笑)。実際に通してやるのは難しいよね。
 
RIVER’:僕は最後にレコーディングしたんだけど、当初はもっとテクニカルに刻む感じで考えていたんだ。だけど、2人のバースを聴くと、もっとメロディがあった方がいいんじゃないかなと思って。それが自分の強みだしね。その流れは、普段のバトルにも通ずるものだったと思う。
 
COLAPS:僕も普段通りの自分らしいビートボックスが表現できたかな。表情豊かな聴こえ方になるように工夫して、それが実現できたと思う。
 
COLAPS:実際にリリースしてみたら、リスナーから嬉しい反応がもらえて受け入れてもらえているのが嬉しいね。新しいことにトライするのは怖いことだけど、やれてよかったと思う。
 
RIVER’:イヤモニを付けてライブしたけど、それも初めてのことだったし。普段はマイク1本でステージに立つのがビートボクサーなんだけど、こんなに新しい表現できたのは嬉しいし、すごくいい経験になったよ。


 

ー改めて、ビートボックスの魅力を教えていただけますか?

 
RIVER’:ビートボックスはバトルカルチャーの中で進化してきて、テクニックを披露することが中心にあるものなんだけど、ハイレベルなビートボクサーを見るのは、オリンピクの金メダリストや、例えばショパンコンクールに出るようなピアニストの技術を目の当たりにするのと同じようなものだと思う。そんな風に楽しんでもらえたらいいんじゃないかな。一方で、今回のBATACOのプロジェクトのように、音楽性を追究してクリエイティブなことを表現するビートボックスもあるから面白いよね。今後もいろんなプロジェクトが出てくると思うから、そこに注目してほしいな。
 
COLAPS:今の時代は以前に比べてすごくビートボックスにアクセスしやすくなっていると思うし、いろんなビートボックスの表現があるよね。例えば、ビートボックス界のレジェンド、イギリスのReeps Oneはビートボックスとビジュアルアートを組み合わせたことをやっているし、BATACOのプロジェクトがあったりSHOW-GOのような生き方があったり。今からビートボックスを聴こうと考えている人は、いろいろ聴いたうえで自分がどういうタイプのビートボクサーを好きなのかを選んで掘っていけばいいんじゃないかな。
 
BATACO:ビートボックスは世界共通の言語で、言葉の壁を超えて海外のビートボクサーともコネクトすることできるんですよ。COLAPSとの出会いなんてまさにそう。ビートボックスで会話して繋がることができる。そんな風にピース振るに人と人を繋げていくところが魅力なんじゃないかと思いますね。あとは全部、人間が発している音なので、その人独特のサウンド感があったり、人間ならではの温かみがあるので、そこも他のジャンルとは違う部分だと思います。
 

ー今後、BATACOさんがやりたいことはどんなことですか?

 
BATACO:世界に向けて常にアプローチし続ける活動をしていきたいと思います。国内と世界、両方での活動を並行して行っていくための活動基盤を作っていきたいと考えています。


 

INFORMATION

BATACO – feat. SHOW-GO「Prolegomenon」配信中
https://ssm.lnk.to/Prolegomenon

BATACO feat. Colaps and River’ 「Prolegomenon REMIX」配信中
https://ssm.lnk.to/Prolegomenon_Remix

BATACO「Light」配信中
https://ssm.lnk.to/Light_b

BATACO
https://www.instagram.com/bataco3.0/
https://x.com/BatacoBeatbox
 
COLAPS
https://www.instagram.com/colapsbbx/
 
RIVER’
https://www.instagram.com/river_bbx/





 

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