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Liza「DWMT」
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2025年、プロデューサーのChaki Zuluとともに、ミックステープ感覚で制作しながらも確かな存在感を残した『PARAPARA MIXTAPE』。幅広い層に対してパフォーマンスをぶつけてきた、全国を巡るクラブツアー。一歩ずつ着実に歩みを進めてきたLizaだが、ここにきて2つのニュースが立て続けに舞い込んできた。
1つは、〈PUMA SKATEBOARDING〉とのコラボレーション曲「DWMT」のリリースだ。
そしてもう1つは、ゲーム『Chilla’s Art』の映画版『夜勤事件』主題歌抜擢である。これはどちらも、ただのコラボレーションではない。Lizaが「今までしっくり来ていなかった」と語るラップの新たなスタイルを見つけられたこと。長年の熱狂的ファンを公言してきたホラーゲームへの楽曲提供を自ら勝ち取ったこと。彼女が自らの力で願い、模索し、手繰り寄せた機会なのだ。
これまで感情の瞬発力で歌ってきたLizaは、徐々に、その奥にある価値観やアイデンティティにまで踏み込んで音楽を創作しはじめている。2026年、彼女はどこまで駆け上がるのか。迷いのない表情を見る限り、大きな期待を寄せてよいだろう。音楽活動について、「なんかもう最近楽しくて、仕方がない(笑)」と語るLizaに、最近の心の内を訊いた。
――2025年は、クラブツアーで全国をまわりましたね。パフォーマンスを重ねるごとに、手ごたえもありましたか?
Liza:だいぶ慣れてきましたね。前までは自分の表現をやるだけで精一杯だったんですけど、 こなしていくにつれて、お客さんと目線を合わせたり喋ったり、そういった対話ができるようになった。総じてあんまり緊張しなくなったのと、リラックスしてパフォーマンスができるようになったと思います。
――今回のツアーは、どういったお客さんが多かったんですか?
Liza:女の子が多かった。色んな場所で、「普段うちのクラブには来ないような子たちがこんなに来てくれるなんて!」って言われて。
――(ヒット曲の)「PARALLEL」で知った子が増えているんだろうか。
Liza:そんなに私のことを知らずに、イエーイって踊ってる子たちはやっぱり「PARALLEL」から入ってきたのかもしれない。
――若い子が増えている?
Liza:そう、 若い子は多いんですけど、意外と40代前後の男性も多くて。
――そもそもクラブに行く層にそういう人たちが多いのかもしれないですね。皆、リリックは覚えて歌ってるんですか?
Liza:最前とってるような子たちは覚えてる子が多いですね。だけど、 このアルバム自体がすごい(再生数が)伸びたっていうわけではなかったし、もともとChaki(Zulu)さんともミックステープくらいの感覚で出そうって話してた作品だから。全員が歌詞を覚えて、って感じではないかも。
――あと、ライブハウスとクラブだとカルチャーが全然違うっていうのもありますよね。
Liza:クラブツアーをしたことによって、今まで地方に行くことがなかったから、 普段自分を応援してくれている方々と会えて顔を見て直接喋ることができたし、それはすごく良かったです。経験値としてはプラスだったけれど、同時にクラブの難しさも感じました。クラブという環境と、自分の楽曲の温度差はどうしてもありますよね。だからこそ通過点としてクラブツアーが必要だったのは間違いないけど、まだまだ自分が行くべきところがあるなっていうのも感じました。

――でも不思議なのが、なんかまた表情が変わりましたね。自信にあふれている?
Liza:そうそう、なんか本当に、人に興味がなくなっちゃって。
――それ毎回言ってる(笑)。
Liza:いや、もう本当に本当に日々興味がなくなっている(笑)。前から人に興味はなかった方なんですけど、でもやっぱり何かネガティブなコメントが来た時に、その内容に対してどうこう思うわけじゃないけど「じゃあ 早く音源出さないと」って感じていた自分がいたんです。前は、そういう状況を覆してやるって欲求があった。
だけど今は、いろんなツアーや制作を経た上で自己理解も深まったし、 すごく自分に自信がついたので、 そういったコメントを見たとしても何も感情もわかないですね。 本っ当に何も感じなくなったんですよね。 だから、そういう面では精神力が培われたのかなって思う。
―――いよいよ本当に、人のことが気にならなくなってきたと。
Liza:もちろん、それが私にとって確かに足りてない部分だなっていうのを客観視した時にて感じた場合は
受け入れるんですけどね。でも基本的に、どの立場の人に言われてもほとんど影響を受けにくくなった。 自分の軸がますます定まってきたんだと思う。すでに作り終わっててこれから出していく曲も、「これLizaの曲だ」っていうのがどんどん分かりやすくなってきてるはず。
前がLizaらしくなかったってわけではないんですけど、 前のLizaらしさって、恋愛や生きてる上での感情を曲にする感じだった。「その時」に感じたことを曲にしてるから、自分が生きている上で大事にしてる核のアイデンティティを反映させた曲がそんなにいっぱいあったわけじゃなくて。あっても「PARAPRA」くらいだった。
―――その瞬間瞬間の感情というよりは、もっと自分の奥深くにある価値観を曲に投影できるようになってきたと。
Liza:そうそう、そういうイメージです。
――そういう変化って、Chakiさんにも何か指摘されましたか?
Liza:「人って変わるんだ」って言われました(笑)。
――(笑)。
Liza:というのも、ひとりで過ごす時間がめちゃくちゃ増えたんですよ。家にいる時も本を読んだり英語の勉強をしたり哲学的なテーマのドキュメンタリーを見たりしてて。知識がついてきたし、教養も深まってきた。
あと、自分のラップスタイルを見つける時間も作ったり、最近は制作している時間が多かったし、MVも撮ってなかったから、家でそうやって色々なことを吸収して試行錯誤したものをスタジオに持っていくと、Chakiさんにも気付いていただけて、人って変わるんだねって。少しづつではありますが実力がついてきているのだと思います。

――英語は、なぜ勉強しようと思ったんですか?
Liza:自分が今後目指す、大きいところにたどり着くためには必須になってくると思うから。ボイトレやダンスレッスンも同じ。もう 四年間くらいやってるんですけど、 今ダンスをライブで使ってるかっていうと別にそうじゃないわけで。 でも、将来目指してることを考えたら、実力が着くまでに時間がかかるものなのでやって損はないかなとおくべき。
――読んだ本を創作に取り入れることも多い?
Liza:ありますね。以前は、感じたことをそのまま表現していたんですよ。もちろんストレートに言う曲もあっていいけど、そうじゃないのも作りたくなった。 今作ってる曲だと、とある小説家の本のタイトルを歌詞に入れていて。自分は人より特別な人間だと思い込んでいる人が主人公とにして描かれている本なんですけど、そのタイトルを歌詞に入れることによって、遠回しにそういったことを暗示させてるんですよね。
—―ちなみに、最近はどういった作家を読んでますか?
Liza:最近は、フョードル・ドストエフスキー。
――やっぱりロシアなんですね!
Liza:自分にしかないものってなんだろうって思った時に、やっぱりロシアと日本の血を両方持ってることだなって。ルーツであり個性なのに、今まであまりやってきてなかったなって。
――さっき一人で過ごす時間が増えたって言いましたけど、友達関係はどうでしょう。
Liza:……うーんっとね……人に冷たくなったかもしれない。
――なぜ?
Liza:以前は、人との関係についても怒ってたじゃないですか。それって、まだ人に期待してたからだと思う。怒っているうちが花って言葉がある通り今はもう、誰かが自分にひどいことをしたとしても何も感じない。じゃあもういいです、って言って終わり。極端な表現ですが、この世界が仮にデスゲーム化したとしても、 私の命を売らないなって思える人としか友達でいない。
――なるほど(笑)。
Liza:はは(笑)。それくらい、信用してる人としか友達でいないってこと。

――新曲についてぜひお話訊きたいんですけど、「DWMT」っていうのは何かの略?
Liza:Don’t waste my time. ですね。私の時間を奪わないで、っていう。
――〈PUMA SKATEBOARDING〉とのコラボレーション曲ですけど、それによって普段と作り方で変わったところはありましたか?
Liza:ラップで大きな変化があったんですよ。色んなラッパーの方がよく言ってるのが、「ラップをするにあたってまず必要なことは、自分のラップをする声を見つけることだ」って。歌う時とラップする時って使う喉の位置がまた違うんですよね。それは知ってはいたけど、今までちゃんと深掘ったことはなかったんです。でも、この数ヶ月の間に色んな制作をしていく中で、ラップがなかなかうまくできないっていうもどかしさがありました。
そこで今回、突き詰めてようやく自分にしか出せないラップのトーンを見つけられたんです。それが初めて反映されたのが、この曲。この声のトーンでラップしてる日本の女性ラッパーを私は知らないし、自分のキャラと一番合ってるラップだと感じています。
今までって、圧があるラップだったと思うんです。「~だ、~だ」って言いきる感じ。でもよく考えたら、自分の性格って人に対して何かを強く言っていく感じじゃないんですよね。だから、強いラップをやりながらどこか違和感を感じていて、Lizaというラッパーは、もうちょっと緩くてめんどくさそうな声質とトーンでラップしてる方が合う。今回の曲はすごくカッコ良くラップできてると思います。
――なるほど。 それは分かる気がします。誰かを批判したり自身をフレックスしたりって、強いキャラで強い声の人がやると合うけど、Lizaさんはちょっとまたそことは違いますよね。
Liza:そうですね。 このラップをした時に、Chakiさんが「え?」って反応をしてくださって。その時、ちょうど2週間くらい前に「もうちょっとラップうまくなった方がいいね」って話をしていたのがレコーディングの時にこのラップができて「これだね!」みたいに言っていただけて、私しかできないラップにたどり着いたと思う。
――そもそも、どうやってたどり着いたんですか?
Liza:こういうちょっとハスキーで抜け感ある歌い方をするアーティストで、もともと好きな人がいて。で、その人がラップしてる楽曲があって、 それをまず真似してみた。
でも、ちょっと違くて。それで、徐々にトーンをずらしていって、ボイスメモに入れて。それを同じ日にやると頭がこんがらがるから、別日に聞いてやっていったら、「え? ここ一番気持ちよいかも?」っていうトーンがようやく見つかって。
——確かに、今まで取材させてもらった中で、具体的なラップの話ってあまりなかったかもしれない。
Liza:そうかもしれないです。だから、今初めて自分がラップ巧いって自信を持って言えます。前まで自分のラップの曲があまり評価されてこなかったのも、そりゃそうだろうなって。あと、私はやっぱり品性のあるラップがしたいと思っていて。そういう人はいないから。強いことは言っても、品があるラップ。
——Lizaさんのラップは、品性もですけど、インテリジェンスも感じますね。確かに、そういう女性ラッパーはあまりいないかもしれない。
Liza:そうそう。
——ちょっとEDMっぽいノリもあて、今までのLizaさんの曲調にはなかったし、Chakiさんのビートとしてもすごく珍しいタイプですよね。でも、ラップが乗ったら完全にLizaになってる。
Liza:今それを聞いてて思ったのが、 昔は私はビートにどう馴染んでいくかばかりを考えてたんですよ。でも今は、どんなビートが来てもLiza色に変えるっていうのができるようになった。
――確実に進化していると。
Liza:そう。この見た目で、外であまり遊ばず家で勉強しかしてないから(笑)。でも本当に、ようやく自分の表現がまとまってきた気がします。自信もついてきたし、何が来ても大丈夫って感じ。今年はあまりメディアにも出てないし、ツアーと制作中心だったんですよ。だから、来年がすごく楽しみ。蹴散らしたい。
――蹴散らしたい(笑)。
Liza:あはは(笑)。そうそう、それでね、めっちゃヤバいことがこの前あったんですよ!

―—ヤバいこと?
Liza:自分が本当に本当に大ファンで、大好きでずーっと好きだったホラーゲームシリーズがあって。すごい人気のゲームの作者で、『Chilla’s Art』っていうんですけど。本当に大好きだから、年始に白濱の神社に行った時に「どうしてもそのゲームに関わりたい」ってお願いをしたんです。
そうしたら、初の映画化が決まったって話しを聞いて。もう、この主題歌は絶対に私がやらないと気がすまないと思って直筆でお手紙を書いて。『Chilla’s Art』に影響を受けて私は「PARASOCIAL」という曲も作ったし、深く本当に思い入れがあるゲームなんですよ。そうしたら、通って。主題歌が決まったんです。
――おおぉぉ!
Liza:もう、ヤバいじゃないですか。感情も脳みそもたっぷり使って、Chakiさんと繰り返し繰り返しやり取りして作って、やっと楽曲ができて、主題歌になりました。そんなことある!? 本当に、そんなことある!? って。
――だって、それだけ昔からファンということは、誰よりもゲームの世界観を知り尽くしているし、それに合った音楽というのも分かってるってことですもんね。
Liza:そうです。メジャー感と、今までのLizaらしいダークさがちゃんと融合してると思う。
――Lizaの2026年が楽しみですね。どう蹴散らしていくのか楽しみにしてます。どんどん自信に満ちてきてるし、この表情を見てると期待しかない。
Liza:なんかもう、最近楽しくて。仕方がないので(笑)。だから、めちゃくちゃ楽しみにしてて。