MUSIC 2026.01.07

Interview: Jairo ビートボックス世界王者が描く純粋な音楽としてのビートボックス・アルバム“2CHANNELS”

EYESCREAM編集部
Photography_Masashi Ura, Edit&Text_Ryo Tajima(DMRT)

今、日本のビートボックスシーンが実に熱い。というのも、ビートボックスシーンにおいて絶対的な権威のある世界大会、Grand Beatbox Battleにて2024年に日本人ビートボックス・デュオ、Jairoが優勝を果たし、一気に注目を集めているからだ。
このJairoの勢いがすごい。テレビや音楽フェスに出演したり、CMに楽曲提供するなど、各方面から引っ張りだこ。音楽シーンからの注目も高まっている。そんな彼らが1stアルバム『2CHANNELS』を1月7日(水)にリリースする。そして、この作品を引っ提げて、1月17日(土)には代官山UNITで自主企画イベント「2CHANNELS」を開催する。ここでは、彼らがどんなデュオなのか。『2CHANNELS』はどんな作品なのかについて話を聞いた。

L to R_YAMORI, John-T

ビートボックスで何万人もが歓声を上げる世界を作りたい

ーまずは、Jairoがどんなビートボックスデュオなのか、というところから教えてください。2人はどういう繋がりでJairoとして活動することになったんですか?

YAMORI:John-Tは1つ上の先輩なんですが、2018年にビートボックスの現場で出会ったんです。

John-T:その後、お互いにビートボクサーとして活動していたんですが、コロナ禍に入って、現場での活動が出来なくなった時期に、作品を作ろうと思ってYAMORIに声をかけて1曲作ってYouTubeに投稿したりしていたんです。あとは、先輩がライブに誘ってくれた時に、「YAMORIと一緒に出たらいいんじゃない?」って声をかけてくれて、2人でライブをやってみたら想像以上に反応がよかったんですね。じゃあ、この感じで来年は世界大会(Grand Beatbox Battle 2023)が日本で開催されるから一緒に出場してみるかってことになって。そこで初出場で準優勝だったんです。

ーそもそもですが、どういうきっかけでビートボックスの世界に入っていったんですか?

John-T:高校の同級生がやっていた影響で始めました。その後、大学を跨いでのビートボックスサークルに出入りするようになってから友達がどんどん増えていき、サークル主催のバトルがあって出場したんですけど、初のバトルだったのに準優勝だったんですよ。そこからせっかくやるならもっと上を目指そうと思って色んな大会に出るようになっていったんです。

YAMORI:僕はビートボックスに出会ったのは小学5年生くらいの頃で、中学3年生の時に本格的に始めました。2017年に全日本大会を見にいったことをきっかけに、翌年に開催された地方の大会に出たのが初ビートボックス現場でした。その時は予選落ちだったんですけど、ずっと続けてきてコロナ禍前にはちょっと芽が出るようになってきたんです。その頃、すでにJohn-Tは別に相方と一緒に日本一になったりアジアチャンピオンになったりしていたので、カッコいい先輩として見ていましたね。

John-T:自分からすると、出会った頃のYAMORIは新世代の若手という印象があって、お互いにやっていることが違うから、各々の良さを活かしてやっていこと思って声をかけました。YAMORIは歌とビートボックスの融合というか、曲として聴かせることを意識している感じが当時からあったし、そういう意味で、他の若手とはちょっと違う個性を持っていていいなと思っていたので。

ーそして、Jairoとして活動し始めたのが2022年で、翌年の大会に出場することになるわけですね。Jairoが表現するもののコンセプトはありますか?

YAMORI:2人ともビートボックスを曲として構成するスタイルだったので、それがそのままJairoのスタイルになっていると思います。パフォーマンスとして見られがちなビートボックスを、もっとちゃんと普通に聞ける音楽として昇華させたいというところにこだわって活動してきました。

John-T:声を1つの楽器として捉えて2つの楽器を組み合わせて曲を作っていくようなイメージですね。

YAMORI:お互いに声を駆使したスタイルなので、Jairoとしてもそれを押し出しています。技やテクニックだけに頼るのではなく、声や曲のニュアンスだったりダイナミクスの変化で聴かせようと努力しています。

ーバトルという意味では、最初にお話があったようにGBB2023に出演し、準優勝を獲得して、翌年のGBB2024では優勝、王者に輝いたわけですよね。バトルでの優勝というのはJairoにとって欠かせないものだったんですか?

John-T:そうですね。やっぱり、GBBは全ビートボクサーにとって夢の舞台で、そこに挑戦したいっていうのは誰もが思うことなんですよ。

YAMORI:中学生の頃から動画で見てきた憧れの世界でしたからね。そこに出場して準優勝した時には、すでに翌年のことを考えていました。なにせJairoとしてやっていくうえで、世界一という称号があるのとないのでは全然違ってくるので。そのためにも優勝したかったんです。

John-T:やっぱり2位と1位じゃまったく違いますから。優勝を経て、Jairoとしての次なる活動が見えてきたんです。

ーそんな中で、1stアルバム『2CHANNELS』が1月7日にリリースとなります。前作、2025年2月リリースのEP『Jairo』と比べて、どんな違いが生まれ、どんな作品になったと思いますか?

YAMORI:前作EP『Jairo』は世界大会のために曲をまとめたものなので、曲に対して制限時間1分30秒という枠があったんですよ。なのでメロディのパートをタイトにまとめなくてはいけなかったり、ビルドアップパートに時間を割けなかったりしたんです。それに対して、『2CHANNELS』は自由に自分たちが好きなように制作を進めていきました。表現できる幅が一気に広がったというのが1番の違いです。

John-T:自由に制作しながらも、淡々と曲を進めるだけではなくビートボックス的な盛り上がりパートは忘れずに盛り込んでいきました。

YAMORI:具体的な曲作りの違いとしては、小さい“トン”っていうサプライズの後に、大きな“トーン”、その後にさらにデカい“ドーン”みたいな。ちょっと文字にすると変なんですけど(笑)、ドロップしていくような感じの構成が曲に入れられるようになったのが大きいです。ただ、一方で、自由だからこそまとめるのが大変っていうのもありましたね。もっといける、まだやれるっていう感じで自分たちでハードルを上げちゃっていたので。

ーなるほど、バトルという縛りがない分、楽しいけど大変だった部分があるわけですね。メロディがふんだんにあって聴きやすい曲があるのも印象的でした。

YAMORI:2曲目の「FLASH」や8曲目の「Flower」は、ほとんど歌のパートで、よりポップスの要素が増したのかなと思います。そこも今作ならではの特徴になります。

ー制作についてはどのように行ったんですか?

YAMORI:セッションっぽい作業を経て生まれる曲と、John-Tが考えてくる曲があるという感じです。あとは自分発信のものもあり、という感じですね。

John-T:そこでいくと「FLASH」、「Flower」はYAMORI発信で、セッション形式で作ったのは「Paradise」です。

YAMORI:ただ、どの曲にも共通しているのはライブでかませるかどうかってことですね。僕らはライブ至上主義的なところがあって、もちろん音源でも聴きやすいようには作るんですけど、やっぱり現場でかませないと意味がないので。

John-T:そうだね、ビートボクサーたるものそこはしっかりとかましたい。

ーではライブをするためのアルバムでもあるわけですね。

YAMORI:音源としてしっかり整えて切り貼りして制作をする人もいるんですけど、僕が思うビートボックスの魅力は生々しさだったり、揺らぎからくるリアリティやダイナミズムの変化だと思っているので、聴きやすさを担保しつつ、ライブでも同じことが表現できるような曲作りを意識しました。

ーレコーディングも基本的に2マイクでの一発録りなんだとか?

YAMORI:ほぼそうです。せーので録り始めてクリックも鳴らさず。今時のやり方じゃないんですけどね(笑)。

ーすごいな(笑)。今作、やはり普段ビートボックスを聴いていない人にも届けたいという思いが強いですか?

YAMORI:もちろんビートボックスシーンの期待には応えたいですし、それを背負って音楽シーンに殴り込んでいこうと思っているので、どんな音楽を聴いている人にも届けたいですね。

John-T:ビートボックスシーンの人たちには、「これこそJairoの曲だわ」って思ってもらえるでしょうし、自分たちのことを知っている人が他ジャンルの音楽を好きなリスナーにJairoのことを紹介したくなるようなアルバムとして受け入れてもらえたら嬉しいですね。やっぱり、根底にはビートボックスならではのよさを広めていきたいという思いがあるので。

YAMORI:そうだね。これまで培ってきたものや、自分たちが育ってきたビートボックスシーンに対しても恥じない作品を世間に届けたいです。というのも、けっこう怒っているんですよ。音源だけ聴くと、これをビートボックスと呼んでいいのか? と思うものも世の中にはけっこうあるので。自分から見たら、ですけど。

ーある意味、『2CHANNELS』は何よりもビートボックスへの愛を追求した作品なのかもしれないですね。今後、どんな活動をしていきたいですか?

John-T:具体的な目標を掲げているわけではないんですけど、予想だにしていない大きなところから呼ばれることが増えてきたので、とにかく大きな舞台を目指していきたいというのが正直なところですね。

YAMORI:どうしてもビートボックスってわかりにくさがあるんですよ。例えば、フェスに出ても普段ビートボックスを聴かないオーディエンスがどうやって楽しんでいいのかわからなくなったりしていそうというか。自分が理想とするのは、純粋に音楽として受け止めてもらって、心地よければ自然と身体を動かしてもらったり乗ってもらうことで、Jairoとして大きくなりながら、ビートボックスに対して、何万人ものオーディエンスが声を上げる世界線を地道に作っていかなくてはいけないと思っています。

John-T:たしかに。見たいな、その景色。

INFORMATION

Jairo 2CHANNNELS

2026年1月7日(水)リリース
https://www.instagram.com/jairo_beatbox
https://x.com/jairo_yamot

「2CHANNNELS」presented by Jairo
1月17日(土)代官山UNIT
GUEST : SPIDERHORSE
Supported by BeRec,Rainy Man
Ticket : https://5961.zaiko.io/e/jairo2channels

-->