MUSIC 2018.07.19

宇多田ヒカル『初恋』リリース! OKAMOTO’S、前野健太、夢眠ねむ、きのこ帝国が“ウタダ愛”を語る

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

前野健太

ー宇多田ヒカルさんと前野さんのエピソードが何かあれば、お願いします。

前野健太:いや、ないです(笑)。恐れ多いです。尾崎豊さんの『I LOVE YOU』をカバーされてましたよね宇多田ヒカルさん。尾崎豊さん大好き・・・共通点ですかね・・・。

ーありがとうございます(笑)。宇多田ヒカルさんの好きな曲とかってあります?

前野健太:いや・・・歌が最高ですよね。

ー声が、ということですか?

前野健太:なんか揺れっていうか。声もそうですけど、歌の強いハリとか揺れとか。そういうのが圧倒的にすごい。

ーでは、アルバム聴いてもらって、率直にどんな感想ですか?

前野健太:いやちょっと考えたい・・・いや、あのすぐどうのこうのっていえる感じじゃないですよね。あの、咀嚼するというか、なんだったんだろうっていうのをちょっと考えたいというか、そういう感じですね、今。すごい鳥が、最高の鳥だなってなんかこう…。鳴き声というか、もう圧倒的な鳥。三曲目とかもう最後、とんでもない花束って感じがすごいしました。一曲一曲、一個一個あるんですけど…。

ーじゃあ、あんまりこういう分け方したくなかったら申し訳ないですが、特に印象に残っている曲などは?

前野健太:好みというか好きなのは『パクチーの唄』ですかね。日常の言葉というか、ずっと聴けて。最初から日常の日々の言葉が輝き出す音楽というか。一曲目からさらっと肯定していく感じで入っていって、日常のことをずっと歌ってるじゃないですか。そんで『パクチーの唄』にきた時にその日常を祝福する感じが、マックスにフワッと花開くというか。雨の日、緑、パクチー。なんかこのパクチーからその次の『残り香』、これがすごい好きですね。この並びが好き。他の曲でもこの匂いってところにすごいぐっとくる。『あなた』の「肌の匂いがかわってしまうよ」っていうフレーズ。そこになんかとてもぐっときてて、この『残り香』で匂いっていうのがまたぐっときて、「肩を探す」っていうフレーズのラブソング、そんなのありました?

ーいまだかつて?(笑)

前野健太:背中をなんかどうとかっていうのは聞いたことあるけど、なんかあなたの肩を探すっていうので、これはやっぱ男の人には書けないっていうか、このフレーズ。もうこの曲すごい大好き。「知らない街の 小さな夜が終わる頃 夢を見てた」昔のワンシーンをなんかこう、ポッと照らす感じ。これ一番好きかもしれないです。『パクチーの唄』とこの二つがなんか僕はすごく、あ、こういうのあったなって、「知らない街の小さな夜が終わる頃」このフレーズでおっきな漠然とした夢というか、すごく大きなまだわからない可能性みたいな、良い予感っていうのを思い出しましたね。「ほろ酔いのあなたと 夢を見てた I miss you」なんですよね。で「肩を探す」。

ーやはりそこですか(笑)。

前野健太:まだまだここなんですけど(笑)。

ーさっき“男には書けない”とおっしゃってましたね。

前野健太:最初は、二曲目の『あなた』を聞いてた時は、なんかすごく男っぽいなって思ったんです。今日、『First Love』を最初に聴いてて、歌詞読んでて、やっぱりこれ女の人の感情っていうか、あ~こういうのは絶対わからないとか。でもこの『あなた』を聞いたら、急に男っぽいっていうか、「この胸を頼りにしてる人がいる くよくよなんてしてる場合じゃない」まぁ、どっちとも取れるんですけど、男の感情も女の感情も。でもなんか、男の人が聴いて、勇気をもらうっていうか、あ、女の人ってこうだなとかじゃなくて、毎日働いている男の人たちにもぐっときちゃう歌詞といいますか。あれって思って。宇多田さんってこんな感じだったけなと。すごい不思議だったんだけど、やっぱり最後のほうにくると、やっぱり女の人には絶対わからない感じだったんですよね。それは女の人とかがどうというか、男女というか、強い花っていうのを感じましたね。

ー歌詞について聞きたいのですが、「肩を探す」以外で気になったり、メモしたりした部分はありますか?

前野健太:一曲目の「好きだって言わせてくれよ」とかこういうのも最高ですけど、『初恋』はやっぱすごいですね。『初恋』っていうその言葉が、I need youになるっていうのがちょっとすごくないですか。I love youとかI want youじゃなくて、I need youになるっていうのが。初恋からもうI need youになるって感じが、なんかすごかった。でも、そうなんだなって思って。自分の中でそういうこととしてきてなかったけど、実際はI need youになるんですよね。英語の微妙なニュアンスはわかんないですけど、I love youとかI want youじゃないですよね。そこに唸りましたね。でも、そのほうが、英語全然知らないけど、I want you、I love youって言われるよりも、I need youって言われるほうが、なるほどガッテンって、なりません? そう思うと、なぜ出会ったとか、どうしてあの恋があったのかとか、どうしてあの人と出会ったのかっていうのが、I need youのほうがロマンチックですよ。I want you、I love youよりも。

ー個人的なイメージなのですが、いろいろ経た感じの人かと思って。歌詞が意外とみずみずしいじゃないですけど、こんな感情に今なるっていうのがすごいと思って。そこから宇多田ヒカルさんってどんな感じとかって見えてきたりしました? どういうテンションで書いてるかとか。

前野健太:いや、むしろどういう状態で歌詞を書かれているのか、むちゃくちゃ気になりますよね。喫茶店とかじゃないでしょ、たぶん。いや、喫茶店とかなのかな・・・。

ーいや、違うのでは(笑)。

前野健太:違うでしょ? どう書くんだろう・・・。どういう状態で歌詞を書かれているのか非常に気になりますね。あと、歌詞が先なのか、トラックというか、曲が先なのかとか。

ー『パクチーの唄』とかって、仮であてたりしたやつなのかなって思ったりしたんですよね。これ後から歌詞あてられます?

前野健太:いや。パクチーは深いですよこれ。パクチーがお好きなんだと思う。

ーあ、ご本人が?

前野健太:どうしよう全然好きじゃなかったら。むしろ好きじゃなくてこの曲を書いてたら、すごいですね。でも、僕「パクチーパクパク」っていうところももちろん好きですけども、なんか全体的に風景が全然ないなって聴きながらずっと思ってて。感情の部分がやっぱりすごい色々書かれてて、風景が全然でてこないって思ったら急にこの「夏の庭でリサイタル始まる」とか「今日はお日様の誕生日かも/カレーを作っておめでとう」、「緑色 嘘が下手で優しいの/どんより雨の日だって必要」って急に風景と色がふわっとでてきて、だからたぶんここで俺の知ってる日常が急にフワッと表われてきて、宇多田ヒカルさんが日常に対して想ってる感情っていうか、そういうのが女心っていうか風景にふっとでてきて、ここですっと入ってきたんですよ。『パクチーの唄』が、宇多田ヒカルさんの日常との距離感、僕はこれが一番感じたんですよ。これ聴きながら、散歩したいですね。これ聴きながら、街を歩いたり、自転車乗ったりしたら、とても幸せ。でも、なんか日常を肯定する感じというか、最後ね。

ー最後すごいですよね。最初聴いた時ビックリしました。

前野健太:なんか濃いじゃないですか歌詞が。すごく濃いんだけども、僕が最高の鳥だなとか強い花だなとか思うのは、やっぱり音像っていうか、言葉と音色っていうのがなんか…。なんか感情の部分があって、こういう温度感なのかとか、そういうのを音楽から感じられたかな。だから、ただ濃い、ただ強いっていうんじゃなくて、その宇多田ヒカルさんにしかない感情の部分というのは、やっぱり音楽じゃないと説明できないのかなって。この曲が言葉よりもすごい感情の部分が伝わってきた。

ー音も含めてってことですよね。

前野健太:はい。むしろ音楽のほうに感情をすごく感じたというか。歌詞よりも、言葉よりもなんか新しい感情を感じた。温度感が独特のラインでいくじゃないですか。湿度って感じかな。それがもう一回聞きたくなりましたね。最後の曲を。

ー濃い質問になるんですけど、前野さんも曲を作られるじゃないですか? 自分と比べてという部分は…。

前野健太:ずば抜けた鳥ですよね。圧倒的な鳥の鳴き声というか。俺はスズメみたいな(笑)。スズメって21年くらい生きるらしいんですよ。(本人注:後日調べたらスズメの寿命は約一年半でした(笑))ツバメが1年半くらいで。まぁ外敵が多い。最近うちのマンションの駐車場に、ツバメが巣を作ってて、管理人さんが「ツバメの一生は1年半、スズメは21年」って。(本人注:後日調べたらスズメの寿命は約一年半でした(笑))スズメはずいぶん長生きするなあと思って。俺はスズメですね。宇多田ヒカルさんはちょっともうずば抜けた鳥。
まあ比較って難しいですよね。難しいっていうか、歌詞にもでてくるけど「人の期待に応えるだけの 生き方はもうやめる」って宇多田さんはやっぱりすごい期待されてて、もうスーパースターじゃないですか。俺誰からも頼まれてないのに、毎日歌書いてる人間なんで。大きな違いはやっぱりね、そういう部分かな。まあほとんど違うと思いますけど。

ー曲のこともう少し聞いてもいいですか。

前野健太:俺、四曲目もすごい好きだったな。『誓い』。あれ、すごい新しいリズムっていうか、日本語の乗せ方がなんか、日本語が拡張されるっていうか、なんか今までに日本語たちがしなかった動きっていうか。日本語の響き?日本語が喜んでるよ、あんな風に動きをされて。びしっとハマって、めちゃくちゃかっこよかったです。

ーあんな譜割も聞いたことないですよね。

前野健太:聞いたことない。でも、全く思い出せない。やっぱりパクチーが残っちゃう。

ーでもそういうアルバムですよね。渾然一体となってるところにパクチーがくるっていう。

前野健太:これたぶん、パクチー会社からすごい送られてくるでしょ。

ーそれは送られてこないです(笑)。

前野健太:送られてこないか~。たぶんそれくらい強いですよ、この曲は。緑色がずっとなんかこう見えるっていうか。

ーなるほど。

前野健太:聞かしていただいてありがとうございました。いや~濃いですね。これヘビー級ですよ。

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