韓国の音楽シーンが面白いというのは、すでに多く広まっている事実だろう。欧米のトレンドを飲み込みつつ、独自のサウンドを作り出し、今や確固とした世界的なトレンドまで成長したK-Pop。Keith Apeの”It G Ma”以降、大きな注目を集めることになったヒップホップシーンからは、ついにJay ParkがJAY-ZのレーベルRoc Nationとの契約を結んだというニュースも飛び込んできた。
いわゆるK-Popブーム以降も着実に世界的な広がりを見せている韓国の音楽シーン。今回EYESCREAMでは、次の韓国シーンを担う注目アーティストたちに、ソウルでの取材を敢行。知られざるアーティスト像に迫っていく。
Korea’s New Generation
1 Sik-K : メロウでセクシーな次世代ラッパー
Sik-Kは次の韓国のシーンを担うアーティストになる可能性を感じさせるスケールの大きいアーティストだ。それはヒップホップシーンだけの成功を意味しない、彼はよりポップなフィールドでも十二分に活躍できる魅力を兼ね備えている。
彼は2013年に1人で作ったミックステープでデビューし、大人気トラックメイカーデュオGroovyRoomもメンバーのクルーYelows Mobを立ち上げている。「カナダのバンクーバーに住んでいたときに、インターネット上で始まった」クルーを軸に活動してきたSik-Kだが、昨年リリースのセクシーでメロウな”Rendezvous”などで注目され、そして2017年により大きなステップアップをしつつある。
Sik-K (식케이) – 랑데뷰 (Rendezvous) MV
今年韓国のアーバンミュージックシーンの第一人者Jay Parkが新たに設立したレーベル『H1GHR MUSIC』に第一号アーティストとしてサイン。初めてのリリースとなったEP『H.A.L.F (Have.A.Little.Fun)』でそのポテンシャルを遺憾なく発揮している。EPと言いながら11曲を収録している同作にはボスのJay Parkや、Crushをフィーチャーした耽美でメロウな”party (SHUT DOWN)”、さらに大物アーティストSimon Dominic とThe Quiettを迎えた”아주 조금”などが収録されている。『H.A.L.F (Have.A.Little.Fun)』というタイトルについては、「仕事がすごい忙しいから少しは楽しくやってみようという意味もあるし、人生の半分しか来てないという意味」だと明かしてくれた。
ミュージックビデオも公開されている、収録曲”party (SHUT DOWN)”についてSik-Kは「ある程度作られたところにCrushがいいかなと思って連絡したんです」と話してくれた。パーティーについては「パーティーはそんなに好きじゃないよ、お酒もあんまり飲めないし」という彼の曲作りの、アイディアは意外なところから生まれてくるという。
식케이 Sik-K – party(SHUT DOWN)(feat. 크러쉬(Crush)) Official Music Video
「(曲のアイディアは)アートとかっていうよりは、美味しいものを食べたりするほうが曲になるんです。美味しいものを食べないと、1日の気分があがらないんです。前の日に、明日は何を食べようかって考えるんです。寿司を食べようと思って、食べられなかったりすると、すごい気持ちが落ちちゃうんです」と食が大事な要素になっているという。去年は東京にも美味しいご飯を食べにくるために2回もきているという。その時は焼肉に行って、韓国にはない美味しい牛タンを堪能したという。
Sik-Kといえばメロウなボーカルともラップともとれないスタイルも特徴だが、そのルーツは幼少の頃から聴いていたR&Bにある。フェイバリットなアーティストとしてMusiq SouldchildとかMaxwell、 D’Angeloとか最近だとdvsn、あとはJay Parkだね」をあげてくれた。ただSik-Kの携えているメロウなムードは、その音楽的なルーツだけが理由ではないようだ。「というよりも自分のいま生きている感じが、メロウな感じがするんです。すごいポジティブで、いまは不満なこともまったくないですね」というほど、現在の環境は音楽に集中できているのだ。自身で作ったクルーYelows Mobの時から、満足できた環境にいたという彼だが、よりよい環境に引っ張り上げてくれたJay Parkについては「例えば僕がキリスト教の信者だったらイエスで、仏教徒だったらブッダみたいな存在。それくらいの存在ですね」と最大限のリスペクトをこめる。
「20歳の頃はラッパーだと思ってたよ。いまはもっといろんなことができる人になりたいですね」と現在自身に大きなポテンシャルを感じているSik-Kは最後にこう話してくれた。「この年代といえば自分の名前が出てくるようなアーティストになりたいですね。トレンドの音だからといっても、あとで聴いてもダサくないようなアーティストに。そういう洗練されたアーティストになりたいですね」
photography_Tammy Volpe text_Tetsuro Wada translation Risa Sahira