Korea’s New Generation
5 Heize : 誠実な言葉をのせるソウルの新ミューズ
韓国ヒップホップブームの火付け役であるサバイバル番組『SHOW ME THE MONEY』の、女性版ともいえる番組が『UNPRETTY RAP STAR 』だ。その2015年のシーズン2に出演したHeizeは、2ヶ月間という短い放送期間の中、キレのあるラップで多くの視聴者を唸らせた。Heizeはしかしラッパーという幅に止まることなく進化を続けている。
「両親の反対を押し切って、故郷の大邱から一人でソウルにやってきました。アルバイト生活をしながらの音楽活動をいつまでも続けるわけには行かず一度は諦めかけていたんですが…故郷に帰ろうとした寸前に、この番組出演のオファーがありました。こんな千載一遇のチャンスを見過ごすわけにはいきませんよね。『SHOW ME THE MONEY』のお陰で既にHIPHOPが大衆化されていた上に、この番組のように女性のラッパーを対決させてサバイバル番組自体も流行っていて。私にとっての全ての条件が揃った絶好のタイミングと有難い舞台があったお陰で一気にHeizeとして知られるようになりました。でもこのシーンに対しては率直に、HIPHOPが単なるトレンドの一つでしかないと感じています、昨年からDEANをはじめ、ユ・スンウ、EXO、そして今回のニューアルバムでは4Menのシン・ヨンジェなど、様々なアーティストとのコラボレーションを実現しましたが、コラボすることで自分にない感性に出会えるし、自分のスタイルも再認識できました。そんなことを繰り返しながらトレンドやジャンルに振り回されない、もっとHeizeの音楽として聴いてもらえるような活動をしていきたいんです」
헤이즈 (Heize) – 널 너무 모르고 (Don’t know you) MV
まっすぐにこう話す彼女が、今韓国のアーバンミュージックのシーンを牽引する人物のひとり、HEIZEだ。取材を敢行した6月、ニューアルバムのリリース直前ということで街中の至る所で彼女の広告を見かけた。『UNPRETTY RAP STAR 』に殴り込みをかけ、人気をかっさらって以来、状況が一変したというイット・ガールらしいその人気の高さを実感した。
何より取材中、時にあどけなく笑い、時に雲一点の迷いなくまっすぐ語ってくれた彼女の姿勢からは同性にも愛される、ミューズとなった所以も確かに感じられた。そんなドがつくほどに正直な彼女に自分のジャンルについて聞けば日本語で「自分Heizeというジャンルだ」と力強く答えてくれた。
GroovyRoom – ‘Sunday(feat.박재범,헤이즈)’ Music Visual
では、Heizeが考える自分のスタイルとは何なのか。「高校生の時から、曲に歌詞をつけることが習慣で、日記に書くようなことを私は曲にしていたんです。まさに私をラップに引き込んでくれた曲、Free Styleの『And After That』がすごくセンチメンタルで柔らかくて…強がる必要ないと気付けました。なのでそういう“日記”を書くからには“正直でいること”を最も大事にしています。悲しくても貧乏でもダサくても全て隠さずに歌に込めて本心を伝えたいんです。その姿を見て共感してほしいし慰めになれればなと…それが私の役割だとも思っています。有名になったとしてもその想いは絶対に変わりたくないし、立場が変わっても変わらずにいれると確信しています。何よりその時々の自分を正直に綴ることで、いつか振り返った時に今まで出してきたアルバムが積み重なって自叙伝みたいになりますよね。そうなれたらいいなと思います」
photo_Tammy Volpe text_Mami Chino