Korea’s New Generation
6 Samuel Seo : ユースが抱えた内情を代弁してくれる青き預言者
トレンドに敏感な韓国のメインストリームの音楽シーンに対して本当の新しい音楽を問いただしている人がいる。Samuel Seoは歌はもちろん作詞・作曲・編曲をも自らスタイリッシュに手がけ、リスナーから熱い支持を集めている。
Samuel Seoというアーティストをご存知だろうか。2015年にデビューして間も無くファーストアルバム『FRAME WORKS』をリリースすると翌年、韓国のグラミーにあたる韓国大衆音楽賞のR&B/SOULアルバム賞を受賞。勢いそのままに発売したセカンドアルバム『Ego Expand(100%)』も、今年の同音楽賞にノミネートされるなどそのクリエイティビティにおいても筋金入りの実力を持ったニューカマーだ。
[M/V] Samuel seo(서사무엘) – 창문
彼自身が楽曲の全てを手がけているというが、そんなサムエルの音楽を一つのジャンルで説明するのは難しい。むしろ一言で“多様性”だ。例えば「Make Up Love」や「창문」、「BLUE」のように一曲一曲でも雰囲気は大きく変わり、ゴスペル、ピアノやシンセサウンド、そしてラップ…並べると想像もつかない様々な要素をさらっと織り交ぜ、斯くもスタイリッシュに仕上げてみせるのだ。また最近KOHHやSALUといった日本のHIPHOPを聴いているらしく「KOHHの思ったままを歌詞にするスタイルは、下手したらダサくも捉えられるけど吐き出し方が上手いからそうさせないし、SALUの曲は聴いているだけで気持ちいいんです」と言う。
そして自身の歌詞については「日常のほんの少しいびつに感じた部分を忘れずに日記にしています。それを端緒に曲にして、誰しもが経験し得ることを改めてリスナーと共感したいんです」。と言う。背伸びをしない自然体なスタンスで、ジャンルの垣根をなしにあらゆる可能性を信じるサムエルの指針がそこにはあった。実は日本語と英語が流暢なサムエル。「今、音楽をやっているのも目指してなった訳ではないんです。幼少期を日本で過ごして、韓国に戻った時に、韓国の競争社会に衝撃を受けました。どこでも競争というのはありますが、ひどく勉強を強いられて…弁護士を目指していましたが、弁護士しか職業が無いと思わされていたくらいの競争レベルだったんです。中学をカナダで過ごして、考えを整理し、あの韓国の中で生き残る為には…というのを突き詰めた結果、昔からピアノをやっていたのもあって音楽をやろうと決心しました」
서사무엘 (Samuel Seo) – B L U E Official M/V
「幼少期にいた日本が韓国の対照として記憶にあって、柔軟な自分になれたと思っています。なので、自分のことHIPHOPアーティストだとも自覚していません。ラップはもちろん好きだったから音楽に溶け込んではいるとは思うんですが。でもあくまで曲ができるまでの要素のひとつだと考えています。僕にとって何より大事なことは多様性をもたせること。ソウルの音楽シーンにおいてもっと尊重されるような場が増えて欲しいと願っています。トレンドに敏感だからこそ、全てがトレンドから作られてしまう空気にすらなってしまうから、実力のあるアーティストがもっとスポットライトを浴びれるようなシーンにしたいんです。僕ができることは、この音楽活動を通じて有名になり、この現状を変えること。その影となる部分にいる人に役立つ活動をしていきます」
photo_Tammy Volpe text_Mami Chino