“違和感”を貫くこと。SOFTMACHINE山岸航介とRen Yokoiが語る:Motivators Vol.11

photography_Takao Iwasawa, text_TAISHI IWAMI

“違和感”を貫くこと。SOFTMACHINE山岸航介とRen Yokoiが語る:Motivators Vol.11

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Ren Yokoiが“今もっとも話したい人”を迎える対談シリーズ「Motivators」。今回はブランドSOFTMACHINEの創設者であり、近年はMustache X名義でDJとしても活躍する山岸航介を迎えた。Renは26歳で山岸は40歳と年齢はひと回り以上違うが、DJをするようになった時期はほぼ同じ。Renは冗談交じりに先輩・山岸を「(DJの)同期」と言うが、その突出した個性を持つパフォーマンスやメンタリティを心からリスペクトしている。互いの考えを話してもらうことで浮かび上がった、自己表現のあるべき姿とは。山岸の厳しくも愛のある言葉とRenの思いがクロスする、興味深い内容となった。

―今回、Renさんが山岸さんを指名したのはなぜですか?

Ren Yokoi(以下、Ren):仲良しだから。年齢は航介さんがひと回り上ですけど、クラブでDJするようになったのは、ほぼ同期!(笑)

山岸航介(以下、山岸):そうだね、4年くらい前に始めたから、同期だね。

―RenさんはDJとして、山岸さんのどんなところに魅かれたのでしょう。

Ren:一人のDJとしてもそうなんですけど、最初に衝撃を受けたのは、FAKE EYES PRODUCTIONです。

山岸:(FAKE EYES PRODUCTIONは)スケボーキングとかやってたShigeoJDと、元DEXPISTOLSのDJ MAARは今は活動休止中なんだけど、の3人でやっているプロジェクトで。今は俺がDJやって、ShigeoJDが歌を乗せたりギター弾いたりしてます。

Ren:あのセットってDJが現場を主導して、ShigeoJDさんが歌を合わせてるのか、事前に打ち合わせしてるのか、どんな感じなんですか?

山岸:DJが主導だよ。打ち合わせはするんだけど、その通りにはいかない。

Ren:つまりライブとDJのハイブリッド・セットじゃないですか。近いことをしてる人たちはいると思うんですけど、FAKE EYES PRODUCTIONは唯一だと思うんです。

山岸:ShigeoJDはなんでもできるからね。歌えるし楽器も弾けるし機材にも強い。そういう意味では、なかなか被るものはないかもしれないね。

Ren:そこで具体的に意識していることってなんですか?

山岸:ShigeoJDが乗せやすいよう、音数の少ない曲をかける、とかかな。でもライブって、ずっとやってると間延びしてお客さんも飽きちゃうから、現場で話し合いながら途中でちょっとShigeoJDに休憩してもらって、自分だけでDJやってまた入ってきてもらうとか、いろいろあるよ。

Ren:なるほど。そうやってFAKE EYES PRODUCTIONや一人でのDJをやりつつ、SOFTMACHINEもやっていて、両立できてるのがすごいなって思う。そういう人、俺の出会いのなかでは航介さんが最初なんです。

山岸:それは逆というか。DJで食っていこうとする人のほうが厳しいと思うよ。俺の場合はSOFTMACHINEが本職なんだけど、そこではやっぱり好き勝手はできないわけ。お客さんのことも考えなきゃいけないし、スタッフも食わせなきゃいけないし、お金も作らなきゃいけない。

Ren:はい、わかります。

山岸:でも自分はDJ一本じゃないから何をやっても勝手。ギャラがなくてもいいし、受けたくないオファーなら蹴ってもいいし。だからSOFTMACHINEとの両立は難しいことではないよね。

Ren:そう言われればそうかもしれないですけど……、DJとして中途半端な感じはないですよね。

山岸:DJとかアーティスティックなものは、自由なほうがいいと思っていて。でも、DJで食っていこうとしている人って、いろんなことを考えすぎて、その人が本来やりたかったことをやってるようには見えない人が多い気がする。でも俺はやりたいからやってるだけで、やりたくなくなったらやらない。言い方は悪いけど、DJは“遊び”なんだよね。遊んでたらお金もらっちゃった、みたいな。もちろん真剣にやってるよ。遊びが一番本気だから。

―今の話を聞いて、DJだけで食っていこうとしてるRenさんは……。

山岸:どう思うかって話ですよね。別に否定はしてないんですよ。

Ren:俺は最近、会社を辞めてDJだけでやっていくことにした。自分でそこまで追い込まないと、本当の意味で本気になれないと思ったんです。

山岸:タイプの問題だよね。俺はDJに対してそういう感じで本腰入れようとすると考えすぎちゃってダメ。将来どうしようとか、どうやってお金を生むかとか。変な真面目さが音楽に出ちゃう。そうなると、どんどんやることが狭くなっていくんだよね。

―シンプルに、何が自分に合ってるかってことですか? 逆にDJを仕事にして、服作りを自由にやる人もいると思うんです。

山岸:俺の場合はもともと洋服が好きで洋服を仕事にした。そうすると洋服を買わなくなる。洋服を買って着るのが好きだったのに、自分たちで作ってるから必要なくなっちゃって。そういう部分のつまらなさも出てくる。でも、それが自分のやりたかったことだし、やっていこうと決めたことだから、ここまできたら続けなきゃいけないっていう使命感もあります。自分の思ういいブランドってそういうものですよ。

―そういうもの、というのは?

山岸:基本的にチームプレーですから。ワンマンで好き勝手やって成功してる人もいると思いますけど。ということは、俺が違うと思っていても折れなきゃいけないことあるし。

―はい。

山岸:奥にいるスタッフはもともと彫師で、SOFTMACHINEのグラフィックもやってくれてるんですけど、彼はアーティストなんです。それに対して、俺は経営者でありディレクター。自分のことをアーティスティックではないとずっと思っていて、だからかそういう人への憧れは心のどこかにあったんだと思います。本当は洋服でそれをやりたかったんだろうけど、絵を描いても上手くないし、彫師にもなれない。でもDJを始めたときに、ちょっとその快感があったんですよね。“これって俺にもできるアートだ”って。そこでやりたいことがもう一つ見つかった感触はありました。

Ren:人生どこでどうなるかわからないですよね。

山岸:そうだね。あと、俺は性格悪いから、本業のある人間がDJだけで食ってる人より上にいったら困るだろうなって(笑)。そういう意味で、申し訳ないけど一部のDJの人たちは甘ったるいと思うことも多い。俺はDJもブランディングが必要だと思ってて、音楽ができればいいだけじゃない。DJプレイはめちゃくちゃかっこいいけど誰にも聴いてもらえない人っていっぱいいるじゃん。キャラクターや人柄、トータルのブランディングが大切。俺はそれを服でやってきてるから、それが染み付いてる。そりゃ俺のほうが売れるよって思うもん。

Ren:やり方教えてほしいなあ。

山岸:やり方っていうか、全部を固めないとさ。人前に立つのに、見た目とか、髪の毛から何からだらしねえヤツもいるじゃん。

Ren:それが個性になってたらいいですけど。

山岸:そうなってたらいいんだけどね。根本的にだらしねえDJ、多いよね。連絡が取れなくなったりさ。レスが早いとか、期限を守るとか、そういうのって普通のことだと思うんだよね。

Ren:すみません!

山岸:誰もがほしがるほどの才能を持ってたら他の誰かがやってくれるけど、そこまでいってないなら自分がやらないと。

―SOFTMACHINEはタトゥーカルチャーと密接な繋がりがありますが、それについても話を聞きたいです。

山岸:人に「えっ?」て言われるような、誰もやってないことをやりたかったんです。(15年ほど前にブランドをスタートさせた)当時、タトゥーのカルチャーと洋服をミックスアップしたものってほとんどなかったから。今も日本ではあまり見ないけど。

Ren:海外だとエド・ハーディーの流れとかありますけど。

山岸:海外はタトゥーをアートとして捉える考え方があるからね。アメリカだとタトゥーアーティストはアイドルだったりもするし。

Ren:俺、タトゥーはまったく入ってないんです。

山岸:それでいいと思うよ。俺も、もし今入ってなかったらもう入れないもん。でも、なんでタトゥーだったのかっていうと、俺は小学生の頃から洋服屋になろうって思ってて、いろんな服を買ってたんだけど、同じものを着てる人と会うのがストレスで。だったら肌を変えちゃえ、みたいな。絶対的にオリジナルだから。それでタトゥーって素晴らしいなって。

Ren:「今入ってなかったらもう入れない」のはなんでですか?

山岸:入れてなくてかっこいいほうがかっこいいでしょ。”タトゥー入ってるあの人”っていうより、入ってなくてもすごく気になる人。だから俺はある意味自分のことをズルいと思ってる。覚えてもらいやすいから。

Ren:航介さん、タトゥー以外でも目立つポイントいっぱいありますよね。

山岸:違う人生でこのマインドがあったら、入れなくてもいいなって思う。だから入れてない人に薦めたことないし。もちろんそれでもタトゥーのカルチャーは好きだと思うけど。

―人と同じことが嫌でタトゥーに興味を持った。でも外から見れば”あのタトゥーの人たち”って括られちゃうこともあるじゃないですか。

山岸:確かに、同じだと感じる人もいるかもしれないですけど、自分は違うと認知してもらえる自信はあります。それはタトゥーの内容にしてもそうだし、DJをやってることもそうですね。この見た目でSOFTMACHINEというブランドをやっていながら、テクノとかをかけるってことに、ある種の違和感を持った人は多いと思うんです。テクノとかハウスとかDJって、チャラいものだと思ってる人もいますし。

Ren:違和感。なるほど。

山岸:どんなものでも最初は違和感があると思うんだよね。そういうものしか、未来のスタイルにはならない。ヒップホップにしても、最初はダボダボの服着てラップして、「なにそれ?」って言われたはず。それが今はパイオニアと呼ばれてる。でも、あらゆるものが出尽くしちゃった今、どうすればいいか? 自分の好きなことを好きなようにやればそうなるんじゃないかなって。例えば、パンクファッションを好きな人が、もちろんランシドも聴くけど、きっとスティーヴィー・ワンダーも聴いてたりもするんだよ。

Ren:それはありますよね。

山岸:そこに素直になること。スタイルを勘違いして誰かの真似になったらかっこよくないじゃん。俺はそういうふうに天の邪鬼的な生き方をしてるから、他の人とは違うと思うんだよね。

Ren:航介さん、そういうところありますよね。

山岸:DJでもそうで、全員が思い付かないような曲を次に選ぼうって。それの繰り返し。

Ren:違和感を上手く作る。

山岸:そう、違和感を違和感なくやる。

Ren:俺は直感的にかけたいものをかける。そんな感じでやってますね。

山岸:そこが俺の場合はもともとひねくれてるんだよね。「この曲かけたい」っていうところに、誰も思い付かないものでありたい、常に変えていきたいっていう感覚が勝手に付いてきてるというか。おかげで誰もやらないミックスにはなってると思う。

Ren:わかります。俺はそこで展開に流れを作るというか、テンションの上げ下げを考えるようにしてますね。そうやってお客さんを飽きさせないことって、航介さんの言う違和感を感じさせない違和感だと思うし。まあ、一番いいときは、何も考えずに次が見える状態に入るんですけどね。

山岸:俺も、昔より感覚的にできるようにはなったかな。

―昔は感覚的ではなかったんですか?

山岸:感覚で生きてるフリして頭のなかで計算してた部分がありましたね。DJをやるようになってから、感覚的にできるようになった。DJって、数日前とかに(セットを)どうしようか考えるんですけど、結局は膨大なカタログをUSBに入れて、ステージに立ったときに曲を決める。

Ren:俺もそうですね。USBを4本持っていって、直感で選びます。

山岸:次に選ぼうとする曲の、あるフレーズだけが頭の中に浮かんできたりもするよね。

Ren:わかります。だから最近、CDJを3台使うようにしてるんです。それで自分のなかで足りないフレーズを感覚的に入れてます。

山岸:2曲混ぜたままばっちりはまってるときは、3台目を使ってそっちに繋いでいくとかね。あとは、3台あると次の選択肢を二つ作れるっていうのもあるよね。みんな3台使うと忙しいって言うけど、そうじゃなくて余裕ができる。

Ren:そうですね。忙しさはないですね。4台あってもいいくらい。ミキサーにもよるんですけど。

山岸:Pioneerだったらうまく混ざってくれるんだけど、アレヒ(Allen & Heath)だと、俺の場合は音が出すぎちゃって調整が難しい。アレヒは単純に2曲の音を出しちゃうとそのまま音が倍になっちゃうから。その調整がね。

Ren:俺もアレヒはまだ慣れないです。でもテクノやるならあれが一番いいんですよね。

山岸:うん。キックの音もこもってないし、キツめのテクノが丸くなる。アレヒというと、VENTのフロアを想像するんだよね。

Ren:俺はCIRCUS TOKYOかな。ロウとハイとミッドが階層で分かれてて、いい音してるんですよ。

―この対談連載を続けていくなかで、Renさんのメンタルの部分にも変化があるなと感じます。近いところだと、Daichi Yamamotoさんとの回のときに、フロアがいくつかあるパーティーの場合、別のフロアの状況を考えながらDJをするようになった、とか。

Ren:それでいうと、最近はSONICMANIAやULTRA JAPANといった大きなステージにも出演するようになってきて、9/8(土)にはWOMBのヘッドライナーもあったり。そうなってくると俺が誰かに合わせるんじゃなくて、自分を出していかなきゃいけない。

山岸:主役になっていっていいと思うんだよね。そういう強気のモチベーションっていいじゃん。

Ren:どうやっても合わないときは合わないし、そこはタイムテーブルを組むオーガナイザーの手腕でもあると思うんです。例えばどんなにキャリアのある人でも、そのパーティーのなかでオープンDJが一番はまるんだったらオープンをやるべき。オープンって誰にでもできるものじゃないのに、そこは若手枠みたいな風潮もあるじゃないですか。

山岸:昔は特にそうだったみたいだね。でもそれって、(オーガナイザーが)早い時間は客が入らないって思ってる部分もあるわけで、それは違うよね。俺はオープンDJ、好きなんだよね。そこでしかできないこともあるから。ダンスミュージックから始める必要もないし、自分の引き出しを出せるチャンス。

Ren:そうなんですよ。俺はオープンであろうが最後であろうが、自分のプレイをわかってくれてるうえで、そこに入れてもらった意味があるんだって考えてます。だからこそ自分がやりたいことをやろうって。今はそういうマインドですね。

「Motivators」

Vol.01 : JESSE
Vol.02 : 野村周平
Vol.03 : AI
Vol.04 : 村上虹郎
Vol.05 : 安澤太郎(TAICOCLUB)
Vol.06 : Ryohu × KEIJU as YOUNG JUJU
Vol.07 : DJ DYE(THA BLUE HERB)
Vol.08 : CHiNPAN
Vol.09 : Daichi Yamamoto
Vol.10 : K.A.N.T.A

INFORMATION

山岸航介 aka Mustache X
9/8(土) #WOMB [REN YOKOI & FRIENDS] @ 渋谷WOMB
9/21(金) TAKKYU ISHINO & Neel @ 表参道VENT

Instagram @inkedlife
SOFTMACHINE softmachine-org.com

■ Ren Yokoi
9/3(月) World Connection @ 渋谷Contact
9/7(金) Studio Freedom Opening Reception Party @ Studio Freedom
9/8(土) #WOMB [REN YOKOI & FRIENDS] @ 渋谷WOMB
9/17(月) ULTRA JAPAN 2018 @ Tokyo Odaiba Ultra Park
9/21(金) @ プリンスギャラリー紀尾井町
9/22(土) @ 渋谷hotel koe tokyo
9/28(金) LiLiTH “the party!!! #40” feat. Soul Clap @ 渋谷Contact
10/1(月) World Connection @ 渋谷Contact

Instagram @renyokoi