MUSIC 2019.11.29

[Interview]JQ from Nulbarich
果てなき想像が創る現実

Photography-Toshiaki Kitaoka Text&Edit-Mizuki Kanno
EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

初のミニ・アルバム『2ND GALAXY』をリリースしたNulbarich。スペイシーな雰囲気をまとった楽曲たちが、彼らの次なる目的地の“規模感”を物語った作品だ。デビューからわずか2年で日本武道館、今年は台湾や韓国、そして12月1日に控えるさいたまスーパーアリーナでのワンマンと、“想像を想像で終わらせない”モンスターバンドは、このステージで私たちにどんな夢を見せてくれるのか。Nulbarichのフロントマン、JQの脳内に広がる宇宙を覗く。

自分というジャンルで1位になれるのは、自分だけ

ー2019年はNulbarichにとってどんな1年間でしたか?

「デビューから丸2年が経ちましたが、自分の固定概念が一度リセットされた年でした。それは国内外問わず、いろんな土地を巡ったことで今まで得られていなかったインプットを、感覚的に取り込むことができたからだと思います」

ーどんなインプットを得ることができたんですか?

「僕たちの常識=世界のそれな訳ではないことに改めて気付かされました。並ばないとかね(笑)。もともと海外に旅行程度で行くのは好きでしたが、実際にその国で制作したり、セッションするってなると感じる違和感は色々あって。アメリカではいろんな人と曲を作るのが当たり前なんです。一曲に対して10人くらいいたりもする。僕はずっと1人で曲を作っていて、Nulbarichがはじまったことで“友達と作る”って感覚までに広がってはいたけど、驚きました。あと梅雨の時期の台湾。街中のメンズほぼ全員がタンクトップで(笑)。湿度も凄いし、スコールもドカンとくるから、それじゃないと耐えられないからだと思いますが、日本じゃそのスタイルってなかなかないですよね。いい違和感を摂取できたことによって、自分の考えが少しずつほどけた。価値観の違いを、国単位で感じました」

ー日本という国は客観的にどのように映りましたか?

「海外からみる日本の印象って“無機質”なのかなって。東京は特に。感情がなくみえるし、ある意味無垢。そこに美しさを感じているのかなと。日本のアニメ文化に海外の方は興味を抱いてくれるけど、一概にアニメがいいって訳でもなくて、アニメの“現実味のないところ”が良かったりもするんですよね。海外ってもっとみんな人間臭いから。例えばアメリカって宗教などの歴史的背景も相まって、いわゆるヒーローに憧れる人が多い国のイメージがあって。土臭い感じから這い上がって行くストーリーに美しさを感じる。僕たちが当たり前だと思っていた日本のこの空気感は、世界からすると独特だったりするんだと思います。どの国も真似できないアイデンティティ。だから自分もより自分らしくいればいいんだなと思えました。僕自身のオリジナリティを追求する。自分に関するスペシャリストって僕しかいないから。何かのジャンルに飛び込むと、自分の憧れが存在してしまうから、それを超えていくことは絶対にできない。1番にはなれないんです。でも、僕のオリジナリティのトップを僕以外が超えることは困難なので、そこをとことん追求していこうと思いました。海外の人とコミュニケーションをとる上でもそこが1番大切。『お前っていうジャンルに関して、お前を超えるやつはいないんだから、胸をはりなさい』って教えてもらいました」

脳内に無限に広がる想像の宇宙=2ND GALAXY

ー過去にもEYESCREAM.JPでインタビューに答えてもらっていますが、「自分がどの規模感で歌っているかが、絵として思い浮かんだら具体的に制作を進めていく」とお話されていましたよね。今作でJQさんが想像した規模感を教えてください。

「武道館を終え、ツアーが始まり、目指すはさいたまスーパーアリーナ。そこでどういう音色を鳴らすかみたいなのは大前提にありました。細かいアレンジは伝わりづらい環境なので、説得力のある音を1つ放つみたいな。なので今までのNalbarichにはない、シンプルな音を作り込みました。モードはスペイシーです。単純に今の世界的なブームの一つでもありますよね。去年のパリコレ然り、ルックの作り込み方やコラージュの感じとかまさに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『ET』、『ストレンジャー・シングス』の世界観。あの感じに今みんなが夢中になっているタイミングでもあったので、自然とそのモードになっていました。宇宙に憧れる少年がポスターを眺めているというデザインのこのジャケも、感覚的に80〜90年代の世界観。その頃のアメリカの子供部屋ってNASAのポスターがセットのイメージで。誰しもが憧れたんですよねまだ見ぬ宇宙に。僕はその世界観が好きなんです。ただ眺めていただけの星に実際に行ってみようと誰かが思った瞬間から、その先のストーリーを世界中が欲した。これが第一の宇宙。もう1つ無限のものがあるとするなら、僕たちが個人で想像するイマジネーションの世界。自分が想像を止めなければその先は無限に広がり、思考の惑星が生まれる。人間の脳内に広がる想像の世界は2個目の宇宙なんですよね。それが『2ND GALAXY』です」

ー確かに終わりが見えないものって、宇宙と想像の世界だけですね。

「このジャケットの男の子はいつか宇宙に行くことを強く想像しているから、靴や本やいろんな物が浮き始める。想像は現実にも影響を与える。ってことを表現したかったんです。というのも、今まで知り合ったミュージシャンたちと、“60歳になっても集まれるバンドをやりたいね”くらいのゆるい感覚で2016年にNulbarichをはじめましたが、ミュージシャンになった暁には、いつかマディソンスクエアガーデンに立って、パンパンに埋めてやるみたいな謎の野望も併せ持っていて。そこをがっつり追っている訳でもないけど、インタビューとかで繰り返し言っていたら、その2年後くらいには武道館を叶えていて。想像を続けていると意外と現実にも影響を与えて、結果が出てるんですよね。こんなにも早く武道館に立てるなんて思ってもいなかったですから。今回のスーパーアリーナだってそう。デビュー当時なんてアー写も揃っていない、でもラジオでかけてもらってる。どうしよう、じゃぁキャラクターで、みたいなところからのスタート(笑)。最初からこの2年間を想定していたかと聞かれたらノーだし、できると思ってもいなかった。けど、ミュージシャンとしての夢を想像していると、何かが起こりそうな時に自分が動く方向は明確に見えていて」

ー明確に想像しているから無意識の内に、備えているのかもしれないですね。

「少年よ大志を抱けじゃないけど、想像し続けることはすごく美しいし、夢のあることだなって思う。この少年が持つ純粋な気持ちは、今回の作品で表現したかった要素の一つだし、さいたまスーパーアリーナに向けての僕たちの想像の世界が、アルバムの音に表されています」

ー「Rock Me Now」から「Lost Game」の流れがとても好きです。

「『Rock Me Now』は音源とはまた違ったアプローチになると思います。この良さを残したカオスなアレンジ。今作の中でこの2曲がもっともギャラクシー感の漂う楽曲なので、ラストの方に持ってきています。『Lost Game』はただ自分たちが感じていることを歌詞に書いているだけでは、多分生まれることのなかった楽曲。『HELLO WORLD』という映画の中で、主人公が未来の自分と壮絶な別れをするんですが、その状況を見届けないといけないというシーンで流れる曲なんです。絶望ですよね。僕はその主人公みたいに、目の前で起こる人の死を受け入れなきゃいけない人生なんて歩んだことがないから、何度も見返して、自分だったらどう思うかなっていうのをひたすら想像しました。映画が良かったから想像がどんどん膨らみ、それを自分に落とし込むことで、自分が感じている以上の規模感の曲ができました。今作は自分の想像力とバンドのそれによって世界観を広げられた作品でもあるので、そこもアルバムのタイトルに繋がるパーツでもあります」

ーさいたまスーパーアリーナという規模で聴くのが楽しみです。

「今絶賛リハ中で。今回の曲は自分たちとしてもかなり冒険な曲が多いので、新しい技を習得している感覚でテンションが上がります。今回は演奏するっていうよりかは、自分たちも今まで以上に楽しめるライブになるのかな」

ーJQさんの2ND GALAXYには、今もまた新しい想像が広がっていますか?

「前回の武道館のライブ中ももちろん幸せだったけど、もっとでかいところに立ちたいうという欲がその日のステージ上で芽生えたことで、『俺まだいける』って思いました。今回はこれを引っさげてスーパーアリーナに立ちますが、また次の欲が生まれることを待っています。ということを自分自身に言っておきます。人間は欲深い生き物なので(笑)。まだまだ想像が新しい惑星を生み出している途中です」

INFORMATION

2ND GALAXY

On Sale
https://jvcmusic.lnk.to/2NDGALAXY

Nulbarich ONE MAN LIVE -A STORY- at SAITAMA SUPER ARENA!
2019.12.01

http://nulbarich.com/

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