Ren Yokoiによるマンスリー対談シリーズ「Motivators」の今回のゲストは俳優・村上虹郎。村上淳とUAの間に生まれたその境遇は、Zeebraを父に持つRenと重なる。親から受けた影響や、一般的な日本の教育とは異なる環境で形成された価値観。Vol.1のJESSEに続く二世同士の会話は、“個の輝き”をキーワードにした興味深いものとなった。
ーこれまではRenさんがよく知っている方との対談が続いていましたが、今回は初対面の相手となります。ところでお互いの両親同士の交流ってどうなんでしょう?
村上虹郎(以下、村上):存在は知ってると思いますが、それ聞いてくるの忘れた!
Ren Yokoi(以下、Ren):俺も(笑)。
ー村上さんは、高校時代にモントリオールに留学していましたが、そのきっかけは音楽だったと聞きました。
村上:そこはなんとなくなんです。理由がないと行かせてもらえないかもなというくらいで。Renくんはインター(インターナショナルスクール)出身ですよね? ということはバイリンガル?
Ren:むしろ日本語の方がつたなかったする(笑)。「あれ? 日本語だと言いたいことが言えないぞ?」って。
ー日本語だとナンパできないそうですね(笑)。
Ren:どっちにしてもナンパはからっきしです。
村上:そこは言語じゃなくて気持ちの問題だと。
Ren:やべえ。俺いきなり虹郎くんにやられてる。
村上:まあ、僕もできないですけど。
ー虹郎さんが通われていた学校についても、教えてもらえますか?
村上:シュタイナー学園という、なんとも不思議な学校。競争社会や情報社会に触れさせない教育というか。まず通信簿も教科書もないんです。
ーそれは驚きです。
村上:もちろん数学も国語もあるのですが、情報的な社会や理科の進み具合はめちゃくちゃ遅くて。公立の学校で同年代の人たちがやってることなんてまったくわからなかった。基本的には、外で体を動かして、体にいいものを食べて、ナチュラルな思考でいること。テストとかでバチバチに競争するのではなく、個の豊かさを大事にしようって。
Ren:すげえ。おもしろいね。
村上:生活しているとニュースやいろんな情報にも触れるわけで、完全には難しいんですけど。インターはどんな感じでした?
Ren:インターもインターで、いろんな国籍のヤツがいるから面白いよ。
ー虹郎さんがおっしゃった”個の豊かさ”は、インターもシュタイナーも近い気はするのですが。
村上:そうかもしれないですね。僕らの場合は”誰が一番輝いているか”が大事だと思うんです。
Ren:うん、そうだね。
ー今、二人ともにその“輝き”が仕事になっていますよね。
Ren:自分から表現しないと何も生まれないんですよね。いろんな国籍のいろんな考えを持ったヤツらが一つのところに集まる。そこで自分を出さないと「お前はなんなの?」ってなって、友達もできない。そういう状況が今のパフォーマンスに直結している部分はあると思います。
村上:モントリオールの学校に通い始めたばかりの頃、授業で映画『グリーンマイル』を観て、次の時間はそれについてディベートをしたんです。みんな立ち上がって必死でディベートしていて、「グリーンマイルについて、そんなに思うことあるの? なんだこれ?」と。その状況も理解できなかったし、言葉もよくわからないし、もう大変でした。
Ren:わかる。最初は「あれ? なんだ?」ってなるよね。
村上:まず1回ひよる。
Ren:うんうん。
村上:日本人って特にそこが弱い。同じアジアでも中国人や韓国人ってそうじゃないと思うんです。日本は自分を出すということが制限されてしまってる風潮はありますよね。それが奥ゆかしさや品でもあるんですけど。
Ren:うちの家族は超アメリカン。日本じゃねえなって思ってた。
村上:それくらいでやっと世界と対等っていう見方もできるし、いいじゃないですか。うちは意外と二人ともすごく日本人的。
ーUAさんは大阪出身で、村上淳さんは東京出身ですよね?
村上:親父も生まれは大阪なんですけど、東京育ちのシティボーイ。母親は対極、今はド田舎に住んでいます。
Ren:うちの家族は絶対田舎には住めねえなあ。
村上:ずっと東京ですか?
Ren:そうだね。
村上:めちゃ都会の人だ。今も実家暮らし?
Ren:20歳からひとり暮らし。うちはアメリカンな色は強いけど日本的なルールも持ってる。だから日本男子としてキメるところはキメようって感覚で家を出たの。