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『Rest』 発売中
―確かに、リズムがシンプルになったことが聴き手を導くベースにあって、 テンポ感やさまざまな音の色合いでストーリーを描いているように感じました。
「速い曲を録音していると、次はちょっとゆったりした曲を録りたいと思ったり、今度はまた別のチャレンジをしてみたくなったり。曲順に関しては、そういう制作中のリアルな心の変化が表れている部分もあれば、レコーディングを終えて、改めて意識した考えたこともあるの。最初はもう少しボリュームがあったんだけど、あまり長いアルバムは飽きちゃうから削っていくなかで、から、1枚を通して旅をした気分になるようなバリエーションを心掛けたわ」
―前作から今作までの8年間で、リスナーの環境は大きく変わりました。まだフィジカルが強かった時代からダウンロード、そしてストリーミングが完全な主流に。それによってこの作品の前を通る人の層は広がると思うんです。改めて、ご自身の音楽のアイデンティティを示すとすれば?
「音楽の聴かれ方が変化していることはすごく感じてる。若い人が私の育った環境とは違ったアプローチで、私の音楽を聴いてくれることはとてもいいことだと思う。でも、そこにたいして、古いやり方のよさを示したいとも思ってるの。今はヴァイナルの売り上げが伸びているという状況もあるわよね?それはコレクター向けの話なのかもしれないけど、美しいヴィジュアルのジャケットを手に取って、楽しんでもらうことも含めて作品。このインターネット時代に我々は何を失ったのか、私が音楽をやるということは、過去の意図を思い出させる行為でもあるの。写真家が今あえてフィルムで撮る。そういう現代に合った過去の呼び戻しみたいなことは、このアルバムのサウンドにもあるのかもしれない」
―その感覚、わかります。
「私には3人の子供がいるの。1人目はもう20歳で、彼の0歳から10歳くらいまでは、ひたすらフィルムの写真。その5年後に生まれた娘はビデオがたくさん。で、その下の5歳になる娘は、まったく現像していないデジタルの写真が何百枚何千枚とフォルダに。彼女が生まれた頃には、私自身がすでにiPhoneを使っていたから。それは時代の変化としては当然のことなんだけど、これだけ選択肢が増えたのなら、その中から自分の意思で“何かを選んでいく”という作業もまた、すごく面白いことだと思うわ」
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